第十二回東方SSこんぺ(嘘)

優しい嘘とはそうでなく

2013/10/24 18:16:27
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おおなんじゃ、お主は暇か。
ならばそうじゃな、儂が佐渡にいた頃の話でもしてやろうか。




ある日、里の外れに出たならば一人の童が立っておった。
時は未だに朝早く、諸用にしては動くでもなし。
不思議と思うたがとりあえずここにいると危ないと思ってな、手っ取り早く驚かして帰させようと思ってた。
とりあえず、どろんと化けてそいつの前に出た訳じゃ。



「これ小僧、道をお尋ねしたいのじゃが」
「いいや違うね、おまえは狸だ、化け狸」



儂はいたく驚いた。
いきなり儂を見抜くとは、お主、童の割にやりおるのう、と。


後に聞いた話じゃが、どうやらそやつは町の中じゃ有名な嘘つき小僧だったらしい。
育ちのせいか脳の仕組みか分からぬが、あやつはやたらと勘が良かった。



それからあやつは毎日この場所にやってきた、何故かと聞いてもはぐらかす。化け狸にも容赦なく、じゃ。
儂はそいつが少し気になりだしてのう、
日がな一日突っ立ってばかりじゃ、と暇の潰しに「嘘つき合戦」を提案してみた。



儂が一日一つ何かを仕込む、それを見破りゃやつの勝ち。
"しんぷるいずべすと"のただこれだけじゃ。






ある日の話をするならば、そう、饅頭を出した日のことだったかの。

狸の出すものと言ったら相場が決まっておるじゃろう。
だがあやつは一考もなく言った。


「背中に隠してあるほうが泥じゃ」


この日は儂の負けじゃった。
疑わせて、一度取り下げたところで背中のを食わす気じゃったがまさかその上をいくとは思わなんだ。






まあ、戦績は五分と五分じゃったな。
いやいや決して数えておらんかった訳じゃないぞ?儂が言うなら五分と五分じゃ。







そんな風に儂らは遊んでおったわけじゃが、気になることが起こりつつあった。


日に日にあやつはやつれてきておったんじゃ。
目も窪んで頬もこけて、手も足も枝みたいになってきてまさに病人の見本市じゃったな。


だがそれでも毎日やってきてな。
それとなく尋ねてみてもあやつは「元気」の一点張りじゃ。



気になって気になって気になり続けて数週間。
いつものように嘘つき合戦を終えたある日、あやつはこう言った。



「ばあちゃん、今日はおいらが嘘つくんだ」



何やら決意を秘めた目じゃった。儂は何となく分かったよ。


「・・・明日もここに来る!」


それだけ言って儂を振り切るように逃げていった。
返答一つも待たずにな。



その日の夜、家を覗き込んだなら、あやつは寝床に伏せていた。
周りに家族の目もあって、どいつもこいつも沈んでおった。
いつになるか分からない、死神はさんあやつの周りをぐーるぐーると回っておった。


本土に行かねば医者はおらぬ。
その金すらも家族にゃあらぬ。
その時間すら家族にゃあらぬ。


王手飛車取り全駒寸前じゃの。"ちぇっくめいと"じゃ。



儂はおおいに困ってしもた。

あのままあやつを死なせたら、これじゃあやつの勝ち逃げじゃないか。
人間に、嘘をつかれて逃げられるなど化け狸の名が廃る。


人の寿命を歪めてしまうは摂理としては良くはない。
だが、儂が、狸が嘘で負けるとあらば、そんな条理ぐらいは許してもらうとしようじゃないか。




全ての灯りが消えた後、部下連中をけしかけた。そしてあやつを持ってった。


佐渡の狸のみんなを使った一人を担ぐ百鬼夜行。
言ったことはただ一つ。

「揺れて眠りが覚めたとしても夢の中だと思わせておけ」


仕組みがバレれば儂の負け。
一日一つの嘘合戦、あやつは最後に嘘一つ。だから儂ももう一つ。
今宵限りは延長戦。



部下の狸は不思議の顔を浮かべておった。
何故こんなことをするんじゃと。わしには合理が分からんと。


「なんぼ路銀を費やしてでも勝ちたい勝負があるからじゃよ」


それ以外に理由がいるか。
それが分からぬならば次の貴様は鍋の中じゃと脅したもんじゃ。



あやつと出会った数週間、のんびりしてた訳じゃあない
全部調べて確認済みじゃ。使える道に使える医者。



狸の出した高速道。舟より速く海を越え、足より速く道を過ぎた。
なにせ猶予は数時間、日が昇るまでが勝負。勝負じゃからのう。
走らせて走らせて診療所まで駆け込んで、扉を叩き医者も叩き起こした。
嘘をつかれて終わってたまるかただそれだけの事なのじゃ。



「金に糸目はつけぬ、こいつを治せる薬を出せ」



仏頂面のお医者が出たが、懐に一束やればそいつでお医者は満面じゃ。
医者先生は目を擦りながらもあやつの体を探ったよ。
腕に野太い注射を刺して、それから儂に薬の束を溢れるほどに持たしてくれた。



さあそこからは帰り道。
空には青が浮き出てきてて思うてたよりはるかに時間が経っておった。
風切り水切り土煙、深く静かに寝床まで。




一夜限りの百鬼夜行。
人間からは何も無く、ただの一夜が過ぎ去った。
変わったことがあるとするならあやつが大いに元気になった、ただそれだけの事なんじゃ。







「儂を騙すなんぞ、まだまだじゃよ」




次の日、あやつがいつもの場所にいた。
まだ動ける身でもないくせに、這々の体で儂に礼など言ってきおって。




「全く意味が分からぬのう」




そしてあやつは負けだと言った。
儂の本懐果たせりじゃ。ようやくあやつを打ち倒せたと大満足したもんじゃ。









そこから去るは数ヶ月。
血の色元に戻ってからに生意気盛りで合戦後。

今度は儂が言い出した。



「旧友からの報せが来ての、遠いところへ行かねばならん」



妖怪のピンチと言われりゃ黙ってはおけぬとて。
いつ帰れるかは皆目不明、寿命が来るまで帰ってこれるか分からない。
結界超えても行かねばならん。二度と戻ってこれる保障も無い。



だから最後にこう言ってやった。








「孤独で貧乏に過ごすお主が見れるのを待っておるぞ」






嘘になるか真になるか。次に会う時が楽しみじゃ。


紫「結界
  ホイホイ
  超えるんじゃない」
ハイK
punisher666@mail.goo.ne.jp
http://twitter.com/Highkaru
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コメント



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1.5あらつき削除
シンプルで、過不足なく良い
2.9mayuladyz削除
物語の完成度は非常に高いと思います

ですがひとつ注文をつけるとしたら、テーマの消化方法です

こういうコンペの場合、テーマのど真ん中を走ると
他の作品に被ってしまい埋もれてしまうのではないかと思います
読者は似た様な話を読むので、「またこれか」と途中で飽きてしまうのでないかと思います

なので
テーマのアウトコースいっぱい(拡大解釈)くらいで良いのではないか…
と素人が知った風な口を聞いております(´・ω・`)
3.7がま口削除
まさに"しんぷるいずべすと"の作品ですね。
日本昔話の様な分かりやすい起承転結とストーリーに心がほっこりしました。
最後の一言が、どっちに転んでもマミゾウさんにとって悪くない結末になる演出もグッドです。
4.5ななし削除
マミさんは仁侠のひとが似合いますね
ただもう少し山場が欲しかったかも
5.4エーリング削除
粋だね。
6.5みすゞ削除
マミゾウさん男前!
7.9PNS削除
 短いながらも切れ味抜群です。驚くほどの満足感を味わえました。
 飄々としていて、いかにもマミゾウさんらしいキャラでいいですね。
8.5ナルスフ削除
で、結局何でこいつは突っ立ってたんですかね。
9.7道端削除
 マミゾウさんの話のリズムがとても整っていてテンポが良く、童話を読み聞かせられているような心地よさ。
 嘘を基点にして綺麗にまとまっていて素敵。優しい嘘があったかい。

10.4匿名削除
とりあえず点のみ。
11.8祭囃諒削除
ちょっとだけ変に文章がなってるとこがありました。それ以外だととても面白く、化け妖怪の意地と言うのがとても伝わる、いい作品でした
12.3生煮え削除
数え歌のようにテンポ良く読めるのは良かったですけど、その所為なのか説明不足に感じられ、所々どういうことを言いたいのかわからなくて混乱する部分がありました。
13.8きみたか削除
当初少し前の時代の話かとおもいきや目一杯現代の話だったのはやられました。
聡明だけど重い病の子どもと日本中に名のしれた狸の化かし合い。
その建前に隠して嘘を付き合う両者の愛情、いいお話でした。
あとがきが創想話っぽいというか東方二次創作っぽいというか、ええ。
14.3名前が無い程度の能力削除
てっきり昔の話だと思ったら最近のことでしたか
ちょっと話の内容と時代がミスマッチな気がします
15.6K.M削除
騙し合いはそりゃたぬきが勝つよね。 
>死神はさん 死神さんは?