第十二回東方SSこんぺ(嘘)

目を閉じる前の光景

2013/10/27 02:54:14
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 吐く息は白く。身を包む朝の空気はちくちくと刺すように肌寒い。
 朝の十時。寒さに目を覚ました後、藍が作った朝食をささっと頂いて私は博霊神社に来ていた。
 この時間だと朝ご飯も終わり朝の片づけで忙しいはずなのだけど、もうここ十年とちょっと前からは打って変わって静かになり、まるで誰人っ子一人もいないくらいにだ。
 ――いつもゆったりなのか忙しいのかよく解らない毎日をずっと過ごしていた博霊霊夢が、年齢の所為かもう動くことも億劫になってしまって、見た目も年齢に相応しいシワのある顔になってしまった。
 昔のような若々しい姿は今ではもうその面影すらないけれど。でもそれは彼女がれっきとした人間である証。
 妖怪である私とは時間の流れが違うからどうしても人間である霊夢のほうが先に老けてしまう。それが若干羨ましいのか妬ましいのか、私と会うたびに彼女は若いって良いわよねぇなんて言い出す。
 別に私もそれほど若い部類でもないはずだけど。
 だからお返しにシワが一つ増えるたびにそれを言って茶化してあげれば、貴女は鬱陶しいわと言いながらも笑顔で答える。
 そんな関係は昔と変わらず。幾つになっても博霊霊夢は変わらない。
 ともかく。そんな朝の時刻。
 私は先ほども言ったように博霊神社にやってきて、そそくさと霊夢の寝室にお邪魔していた。
 すやすやと眠る彼女の寝顔を拝見しようと思って来たのだけれど、どうやら今日は早くに起きていたようで重たい瞼を少しだけ開けて、部屋に入ってきた私の顔をぼんやりと見ている。

「ふぁ……あら紫おはよう。ずいぶんと早いご到着ね」
「貴女もずいぶん起きるのが早いわね。寒さで目が覚めちゃったのかしら?」
「そうでもないわよ。もう寒くもなくなってきたかしら。この前までは寒かったけれど、今日は何ともないわ。」
「そうね。もうちょっとしたら蕗の薹が顔を出しているのを見れるかも」
「あら、それは風情があっていいわ。ぜひとも見てみたいものね」
「言ってくれれば連れて行くわよ? 動くのがきついならスキマを開くから、そこから見ればいいわ」
「それだと味気ないじゃない。自分の足で行くからいいのよ」

 そう言って、彼女はしわくちゃの顔をもっとくしゃくしゃにしてにっこりと笑った。
 神社の中の広い部屋で障子を開けた先に見える庭の景色を眺めて。私と貴女はそんなとりとめのない話をしている。
布団から上半身だけ起こして貴女は目を細めてその景色を懐かしむように見ている。
 まったくもう――この子はいつになっても変わらないのね。

「もうちょっと私を頼ってもよくなくって?」

 私の言葉に彼女はそうね考えとくわ、とだけ言ってうんと一つ背伸びして。
 布団からよっこらしょと起き上がり、昔とは打って変わって露出がとても少ないごく一般的な巫女服に身を包んで、彼女はゆっくりと外に出て箒を握る。
 外はまだ肌寒いけれど。
 彼女の周りだけはどうしてこうも暖かいのだろうか。
 春前の、いまだ冬の頃のお話である。



―――



 「うん、もう寒さもなくなってきたわ。桜の芽吹きはそろそろだと思わない?」

 境内にて一人、ゆっくりと箒で掃除をする霊夢を眺めていると、そんな質問が飛んできた。
 私を見るでもなく彼女はちょと遠くを見るようにして、そう言うのだ。
 霊夢の言葉に私はそうねぇとだけ答えて同じように少し遠くを見る。この前遊びに行った白玉楼ではまだ桜は蕾のままだったはずだ。冬も終わりきっていないのだからそれは当然だけれど。
 どう答えたものかと思案して私は彼女に合わせるように話を続けていく。

「そうね。暖かくなっているのだからそろそろ花も目を覚まして開く頃でしょうね」
「ふふっ……そうなると忙しくなるわ。萃香にお酒をご馳走して、地下の客人に料理を用意してあげて、他にももっと来るでしょうしたくさん作っておかないと」
「忙しくなるわねぇ。手伝いましょうか?」
「そうは言うけれど貴女一度もここの台所に立ったことないじゃない。滅多なことは言わないの」

 出来ないことは言うもんじゃないわ、と霊夢。
 これは一本取られた。思えば彼女の前で私は一度も料理を振舞ったことはないのだ。そもそも下手すればここ何百年と包丁すら握っていないかもしれない。あぁ優秀な従者がいるがゆえに自堕落になってしまった。
 でもこうまで言われると何だか引き下がれない気分になる。何とかしてでも彼女に私の手料理を食べさせ、ぎゃふんと言わせてみたい。
 私だって料理の一つや二つは出来るのだ。ただやらないだけで。
 なんて――霊夢に言わせて見ればそれはやってないと一緒なんだろうけど。

「でもどうしてお花見の時期に霊夢のところに集まるのかしらね」
「それなりの広さもあって、寝る場所もあって、当然桜もあって、何よりここほど人間と妖怪が一緒にいてもおかしくない場所はないからじゃない? こっちはいい迷惑なんだけれど」
「のわりにはずいぶんと楽しそうにしてるわよ」
「そうかしら」
「そうよ。それも毎年」
「……そうかしら」

 少し思案顔になって、でも霊夢はすぐに考えるのをやめて止まっていた手を動かし掃除を続けた。
 もう歳もあるのに彼女はそれを気にする素振りも無く必死に箒を動かして落ち葉を集める。
 落ち葉と言うよりそれは枯れ葉であって。葉っぱすらついていない枝ばかりだけど。
 霊夢はそれを丹念に掃いて集め、袋に集めるともせずそのまま放っておいていそいそと神社の中へと戻っていく。
 何を思い出したのかしら。今日は一段と忙しないわね。もしかしてお昼には誰かが来るのかしら?
 私は境内に残された枯葉の山をスキマに放り込んで霊夢の後を追う。

「ちょっと霊夢どうしたの?」
「ん? えっとね……この辺にあったはずなの。そうそうこの辺にね」

 霊夢はちょうど台所に立っていて、何かを探しているらしく調味料やその他諸々が詰まった棚の中を手探りで探っている。もうやはり歳だからか記憶もおぼろげの様でそれに視力も落ちているのか目を細めてしきりに手を伸ばしている。
 ――最近のことだけど。
 もう老齢もいいところになった霊夢はこのところ物忘れが顕著だ。加えて見間違えも多くなっている。単純に年齢による衰えなのだろう。気温の感じ方も、緩慢になってきた動きも、シワが増えていき白髪になっていくその姿も、衰えが来ているからだ。
 それを彼女は気づいているのだろうか。一度もそれを苦にすることは口にはしていないが、頭の中ではきっと考えたことがあるはず。
 ともかく今は何も自分がそう言う年齢だと自覚しないよう、私はそれなりに気を使って彼女との会話を楽しんでいる。気を使って、って言うほどのこともしてはいないけど。
 そこまで思い返して気づくのだけれど、もうずっと、たぶん十年くらい前から神社に入り浸っている気がする。家に帰るのは晩ご飯をこっちで食べてからだけで、それ以外の時間はほとんどここで過ごしている。。
 霊夢はそれに関しては何も言いはしない。もう慣れているのだ。別に今さら入り浸る者が増えても気にはしないのだろう。若いときのほうが来客は多かったようだし、気苦労絶えない人生である。

「あぁもうどこだったかしら……」

 私が少し考えている間も、彼女は物を探す手を止めなかった。と言ってももう老人、動きは緩慢で、物をどかすのも一つ一つ止まってからだ。
 本当にあるのか、実は無いのではないか。とは一言も口には出さないで私はその様子を見守る。
 変わるだの変わってないだの考えてきたけれどやはりもう昔の霊夢ではなくなってきている。
 若いときの力強さはもう影すらも無く、行使できていた術も今や滅多に使うことも無くなった。今ではこうやって物忘れも酷くなってきて、傍から見ていると形が次第に崩れていくようだ。
 その姿を見るのが私には一番辛い。
 もしこのまま崩れていってしまうと――霊夢はもう死んでしまうときですら霊夢ではいられなくなるのだろうか。
 私はその結末が一番辛く、そして怖い。
 だから。私は霊夢に昔と変わらないわ、なんて言い続けている。周りから見れば下手くそな嘘かもしれないけれど、そう彼女に言い聞かせることでまだ若いままなのねと思わせることが出来るなら。
 嘘をつくのも悪くは無い。。

「ねぇ霊夢。何を探しているのかしら」
「むー……何だったかしら。探していれば思い出すかもしれないけれど。あっ! あったあった」

 そう言って。
 彼女は小さな筒を棚の奥から取り出した。
 別段埃を被っている様子もなく、外装に汚れや劣化もないのでここ最近の物なのだろうかと思うけれど、それにしてもどうして棚の奥なんかに置いてしまうのだろうか。
 それを大事そうに両手に持って真新しい布巾で全体を拭った後、両手でぎゅっと包むようにそれを持った。
 ……あれ?

「ねぇ、重ねて聞くけど霊夢、それって一体何なのかしら」
「んー? ふふ」

 くすり、と笑って彼女は答える。

「もう三時だもの。休憩したいから、飲み物と思って……これはそのためのお茶の葉よ」

 素敵な笑顔は、なんともずいぶん若々しかった。



―――



 昼も過ぎ午後三時のお菓子時を迎えたところで、私はスキマをちょちょいと広げ自宅のお菓子を拝借し、霊夢と一緒に縁側で食べていた。飲み物は先ほど彼女が探していたお茶の葉で入れた温かいお茶だ。
 羊羹があったので持って来てしまったけれど、これって確か藍のじゃなかったかしら。帰ったら謝っておかないと。

「美味しいわねこの羊羹」
「でしょう? 霊夢が淹れたお茶も美味しいわよ」
「はいはいお世辞をどうも」

 まだ春遠い時期なのだから家の中で暖まって食べればいいのに、と言ったのだけど私は外の景色を見ながら食べたいわ、なんて言うものだから縁側に二人仲良くお茶と羊羹を間に置いて座っていた。。
 そう言うところは昔と変わらず。
 まだ若い頃も貴女はこの縁側でよくお茶を飲んでいたわね。
 あのときはずいぶんと軽口を叩くこともあったけれど、今ではもうすっかり落ち着いちゃって。じゃじゃ馬だったときが嘘のよう。
 ホント、変わったわね。

「ちょっと昔だとこの時間になれば必ず魔理沙がお茶をねだりに来たものだけど、もう歳だから出無精みたいね」

 ぽつりとこぼした一言は最近めっきり来ることが減った友人に対しての言葉だ。

「そうねぇ……昔みたいに紅魔館に無理矢理侵入したりはしてないみたいだし、彼女ももう落ち着くときでしょう。まぁそれでもこの前様子を見に行ったときは元気に研究してたわよ。爆発が起きてたけど」
「もう全然変わらないわ魔理沙も。ふふ」

 友人の相変わらずの様子に霊夢は少し笑う。
 そう。霧雨魔理沙もいまだ健在だ。
 霊夢よりはまだ活発だけどそれでも若い頃と比べると方々へ出かけることは少なくなったようだ。
 それでもまだ本人いわく借りっぱなしの本は増えていく一方だけど。

「でもたまには来るんでしょ?」
「そうよ。変わらず箒に乗って来るんだけど、ふらふらになりながら飛んでくるもんだからおかしいの」
「まぁ……無理してなければいいけど」
「言っても無駄よ。あの歳になっても無茶ばかりしてるんだから」

 霊夢はまた遠くを見るようにして言った。

「紫。私だって解ってはいるのよ。もう本当にお婆さんになってしまって昔のように動き回るなんて、とでもじゃないけど出来ないし無理にやろうにも体が動いてくれないわ。言いたくないけどもう歳なのね」
「……でもまだしっかり生きてるわ。貴女はまだ昔と変わらず、生きてる」
「それもいつまで続くかしれないものよ。もしかしたら今日眠ってしまったらそのまま死んでしまうかもしれない」

 ぽつりとこぼしたその言葉が、ひどく重たく圧し掛かる。
 怖さを感じてるわけでもなく。悲しいと思っているわけでもない。ただただ一重に虚しく思っているのだろう。
 落ち着いた様子で周りをしっかりと見渡せている――昔と比べると本当に変わった。博霊霊夢と言う人間はここに来てようやく円熟味が増したと言うべきか。

「でもいきなりどうしたの? 悲観気味じゃない」
「悲観してる……わけじゃないわ。もうずいぶんと若いつもりだったけれど、ちょっと解ってきただけよ。ほんのちょっと、ね」

 お茶をゆっくりと飲みながら霊夢は言う。シワが目立つ顔を少しだけ崩して笑う。

「紫もきっとこんな気分かしら? 長く生きるって言うのも面白いものねぇ」

 ふふふと笑う霊夢を見て。
 あぁ彼女も立派に人間で、そして人間として死んでいくのだ――と、実感していく。
 幻想郷の巫女だの、博霊だのそんなものは関係なく、彼女は彼女として。博霊霊夢として今まさに天寿を明確にしてその道を歩いているのだと。
 今さらながら頭の全部で理解した。
 私は――霊夢からその言葉を聞きたくなかったんではないだろうか。
 心のどこかでいつまでも彼女と一緒に過ごせる。この幻想郷を心行くまで堪能できる……なんて甘い夢を見ていたのではないだろうか。
 だとしたら、それはなんて甘くて幼くて稚拙な願いだろう。
 いつまでも一緒だなんて。妖怪と人間の寿命差はこの世界じゃ常識なのに。

「でももし叶うならもっと長生きしてみたいわ。今までいろんなことが起きたんだから、これからもきっと起きるわ。たくさんの異変とか、怪異とか。そう言うのにこれからも立ち会ってみたいものね」
「――そう、ね」

 だから私は。
 彼女の言葉に合うようにそれとなく何の気ない口ぶりで、気にもしてないと言うような身振り手振りで、霊夢に返答するのだ。

「そう思えば長く生きるのも、悪くないわね」

 嘘を返すのだ。



―――



 夕暮れが見える空を眺め、境内に立つ。

「あら。もう帰るのかしら。いつもなら夕飯まで食べてあっさり帰るのに」
「今日はちょっとね……家に帰って藍のご飯を頂くわ。霊夢も来るかしら? 送り迎えなら私のスキマで一瞬よ。体にも優しいわ」

 昼間にあった少しの暖かさも今はどこかへ行ったかのように肌寒く。寒くないと言っていた霊夢もそれが堪えたのか上からもう一枚別の服を身に纏っている。それでもやはり寒そうだ。時折、腕を擦って暖を取ろうと必死になっているのを見て、おかしく思った。
 まったくもう。
 寒いのなら玄関までの見送りでよかったのに。わざわざ律儀に外まで来て見送らなくてもいいのに、そこのところが変わったわ。昔の霊夢は素っ気無い態度でじゃあねって言って居間に引き篭もって煎餅食べてたのよ。
 こうやって昔と言わないといけないなんて――つくづく妖怪の身は不憫で堪らなく感じる。貴女にとって数十年前は昔と言えども、私にとってはほんの瞬きの間でしかないのだから。

「霊夢」
「何よ紫」
「貴女の今日の晩ご飯は何かしら」
「お魚でも食べるわ。鮭を塩で焼いて、白ご飯と一緒に少しずつ食べて味わうの」
「ずいぶんとまぁ美味しそう……私の分はあるのかしら?」
「無いわよ」

 ぶっきらぼうにそう言って、彼女は払いのけるように手を振った。
 それでもその後は少しだけ笑って。

「今度来たらご馳走してあげるわよ。だから」

 一瞬だけ間を空けて。
 言いたくない言葉を振り絞るように彼女は口を開く。

「また来なさいよ」
「――霊夢」
「まだ、まだこんなに寒いんだから温かいお茶でも用意してあげるわ。お茶請けも……そうね。添えといてあげるわよ。だからまた来なさいよ。この歳になって思うんだけど一人でいるのがよっぽど心苦しいわ」

 ――霊夢は言う。

「だからまた、来なさいよ。この歳にもなるとね――誰かと話すことが何より楽しくてしょうがないんだから」

 彼女はそう言って、シワだらけの手を私に振りにっこりと笑った。
 たまにぼけるときもあるけれどやっぱり霊夢は変わっていない。見た目だけが変わっただけで――本質は全然昔のままで。
 いろんなことばかり自分で抱えて考えていたのが馬鹿みたい。こんなことなら私ももっとずっと早くからいつもどおりにしていれば良かった。気遣いなんて、本当にもう何をやってたんだろう。
 そこまで考えて私はふぅっと息を吐き髪をかき上げて霊夢に手を振り返す。
 顔は笑顔のつもりなんだけど上手に笑えているかしら。貴女の笑顔に負けないくらいに、笑えているかしら。

「それじゃあまた来るわ」
「えぇ。また来なさいよ、紫」



―――



 朝、時刻は午前九時四十分。スキマで博霊神社境内に降り立った私はひんやりと肌寒い空気を感じ、さっさと暖を取ろうと足早に神社内へと入っていった。
 そこから玄関を通ってまるで我が家のような図々しさで家の中を歩き、霊夢が寝ている寝室へと向かう。
 いつもならこの時刻は起きていても身を起こしているだけでぼうっとしているはずなのだけれど。
 今日の彼女は目を閉じて静かに眠っていた。

「お寝坊さん、って言えばいいのかしら」

 起きる様子もなく。
 シワだらけの顔はとても穏やかで、今にも目を覚まして昨日と同じく少し暖かいわと言いだしそうだった。本当に今にも起き出しそうで。
 また来なさいよって。
 お茶用意するよって。

「貴女……そう言ったじゃない」

 ――早く目を覚ませばいいのに、今日はずいぶんとお寝坊さんね。
 何の気なしに撫でる髪はさらさらとしている。心地よい手触りだ。

「あぁ――そうか」

 私は今の状況を理解する。
 博霊霊夢はようやく眠れたのだ。
 喧騒ばかりで休む間もないくらいに忙しくて騒々しくて、たくさんの人間と妖怪ばかりが住んでいる幻想郷から離れられるようになったのだ。
 そう思えばあぁなんて――安らかな寝顔なのだろう。
 ただその眠りは妖怪の私から見ても気の遠くなるような永い眠りで、それはもう私が死んだ後でもきっと目覚めることがないくらい深い深い眠りだ。

「でも酷いわ」

 家に呼んでおいて自分は死んじゃってるなんて、作り話のようじゃない。こんなの誰に言えば信じてもらえるのかしら。文屋をやってる天狗くらいしか聞く耳持ちやしないわ。
 私は貴女が淹れてくれる美味しいお茶と、誰かからもらったお茶請けを楽しみにしてきたのに。

「――嘘つきね、霊夢」

 自分のことを棚に上げて愚痴り、いまだに目を閉じたままの霊夢の頬を撫でる。
 幻想郷は何事もなく平和で。でもどこかではまた何かが起きていて。この子が死んだことなんてまるで知らん振りしてるよう。

「最後だから私も白状するけどね。長く生きるのも悪くないけど、貴女がいないのならそう思えないのよ。なんて……きっと聞いたら怒るわよね。ふふ。ごめんなさい。それに、安心して頂戴。私は貴女が出来なかったことをこれから存分に体験して、憶えておいてあげるから――」

 ――だからおやすみ、霊夢。どうか良い夢を。
 日が徐々に昇り少しずつ肌寒い空気を暖めていく、春の匂いもそろそろ香るであろう、冬の終わりを迎えた時期。
 人の声も何かの音も聞こえない、そんな深く静かな朝の出来事だった。
さくっと書いてみてどんな作品が出来て、どこまで完成度を持っていけるだろうか、と自分を試すようにしてひねり出した作品です。
さくっと書いたからかそこまで容量もあるわけじゃないので、人によらずともぱりっと読めるかと思います。読んでくださった方は、容赦のないびりっとした感想でもいいのでくださると嬉しいです。
祭囃諒
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コメント



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1.10mayuladyz削除
素敵な話だ。目もとが潤んだ。10点を持っていけ!

ここからは感性の違いによるものだと思うので
参考程度に聞いて欲しい

冒頭
 吐く息は白く。身を包む朝の空気はちくちくと刺すように肌寒い。
   ↑重く美しい雰囲気を演出したいのであれば
    「ちくちく」の言葉が雰囲気を軽くしてしまうので勿体と思った
    もし意図的に「ちくちく」と入れたのなら
    この部分は気にしないでね

  吐く息は白く。身を包む朝の空気は刺すように肌寒い。
   ↑「ちくちく」を省くと、ちょっと美しさが増すと思いませんか?
     それとも、そう感じるは私だけなのかな?

それから私は
「幾つになっても博霊霊夢は変わらない」
という言葉がとっても印象的だった

なので
冒頭と落ち(流れによって、話の途中でも)
「幾つになっても博霊霊夢は変わらない」
または
「博霊霊夢は変わらない」
を使っても良かったと思っている

紫は霊夢との関係を未来永劫
不変を望んでいたから

出しゃばった意見でごめんね(´・ω・`)
2.4あらつき削除
読み辛いこともなく、さっと読めました。
何かひとつ、グッとくる点があれば良かったのですが、特に無かったのでこの評価で失礼します。
3.4名前が無い程度の能力削除
ありふれた内容のせいで話の予想がついていまうのが癌ですね。「嘘」というテーマがあるからには、これを生かして陳腐な展開をひっくり返すようなオチがあるかと期待していたのですが。
4.8名無削除
あっさりしているように見えるのは深い信頼があるから。良いゆかれいむでした。
5.6がま口削除
予想通りの展開でしたが、ほろっときましたよ(涙)
霊夢も魔理沙も人間である以上こうなることは分かっていましたが、改めて真正面から描写されると心がキュッとなりますね。
静かに見送る紫も、紫らしいな、としみじみ感じ入りました。
6.3エーリング削除
>博霊霊夢
貴様、何年東方をやってるか知らんがその誤字はやめんかーッ!おかげで最後、ピンピンした若い博麗霊夢が出てきて「あんた誰?」とか言って、実は別の巫女の話でしたオチかと本気で思ってました
でも、そういう捻りもないので普通のお話に落ち着いちゃってる感じで残念です。魔理沙も霊夢も結婚せずこの年まで独身ってのも、ある意味普通じゃないのだけれど……
7.5みすゞ削除
霊夢さんも人間ですもんね。安らかに。
8.5ナルスフ削除
『博霊』って誤字なのに自信満々に連発しないで下さいよwwwwwwww一回だけならともかくさすがに笑ってしまうwwwwwwww
長く幻想郷を駆けた巫女と紫の見せた寂しさと最期の絆。一抹の寂しさを感じますね。
最期に死んじゃったけど、あー、逝っちまったか・・・みたいにスッと見送ってしまいましたね。
ただ、さすがにここまで衰えてたらもう世代交代させられてるんじゃないですかね・・・。
9.5道端削除
 きっと他の人が突っ込むであろうけれど、どうしても気になるので突っ込む。博霊ではない。博麗だ。
 
 しっとりと切ない、いいお話でした。
 しかしゆかりん、霊夢の寝顔を見たいと思うのに十時起きはさすがに遅すぎるだろ!

10.5生煮え削除
霊夢が年を取り老婆になって系の話も何作かは読んだ事ありますが、この作品で残念に思ったのは作中の霊夢を見ても若そうに見えてしまう事でした。もちろん老いた描写はちゃんとあるのですが、どうも霊夢の発言や考え方から、らしさがいまいち感じられませんでした。最後のシーンはあっさりとしていながらも趣があり、綺麗でよかったです。
11.3きみたか削除
定番の年齢差ものですな。流れのよさは十分です。話としては一捻りが欲しかったところ。
12.6名前が無い程度の能力削除
いずれやって来る未来、なんでしょうね
大きな波はありませんが、むしろこの凪のような雰囲気が話全体を静かに盛り上げていたと思います
13.3時間が足りない!削除
綺麗にまとまっていて、良いお話ですね。
ただ、やはり新鮮みがないかなと思います。
14.4K.M削除
スタンダードにまとまった話と思いました。 句点が2つ連なっている箇所が少し気になりましたが。