第十二回東方SSこんぺ(嘘)

変わる心

2013/10/27 22:41:38
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 作られた太陽によって恒久的に照らされた、かつては誰からも忘れ去られてしまった地底。
 人の目と心の声、そして光が怖くてそれらから目をそむき続けてきた私がたどり着いた場所。嫌われた者たちを受け入れる最後の受け皿でもある世界、旧地獄。
 私一人だけでは大きすぎる地底の屋敷。この屋敷に訪れる者は滅多にいない。
 旧地獄の中ですら、私と会話をするのをよしとする者はいないだろう。それでも構わない。私だって、心の中にある見えない敵意や汚れた感情を見たくないのだ。
 それに私は嘘が嫌いだ。

 でも、最近は時間をもてあましてばかりだった。こいしは心を閉ざして、いつも何処かへふらふらしている。
 その上、怨霊の管理はお燐がいつもしてくれるだろう。
 こいしはいつ帰ってくるかも分からない、動物たちには好きなようにさせている。
 そもそも屋敷にいる動物達は私を恐れている。これも私の心が読める事と、他者の心や嘘に対する容赦の無さが理由に違いない。
 そんな中、私は部屋にこもっている。
 でも、最近ある些細な疑問のせいで、もやもやとした日々を送っていた。本を読んでも、寝ている時でもその疑問は私の頭から離れることは無い。
 いつもは相手の心を読み、会話を遮ってしまう私でも、自らの心の中に出来た疑問を消すことはできない。
 でもそれは、私にとって未知の存在であり、私の想像力を働かせてくれる。
 本の中の物語で見る心の中の気持ちや、他人の気持ちはすぐに形にして理解が出来るけど、自分自身が生み出してしまった、自分の中にある自らの気持ちは、簡単にその原因を理解して形に出来る物ではない。
 私が疑問を持ち、形には出来ない物。それはある日に吐かれた嘘だ。
 私は嘘が嫌いだ。嘘は本来相手を傷つけるものであり、相手を信頼していない象徴でもある。 かつてそんな経験があった。だからこそ嘘が嫌いなのだ。
 心を読む事は、要らない気持ちまで知ってしまうから不便だ。知らなければ良かった幸せだって私にもあったはず。

 ただ、そんな分かりきった事だからこそ、考える事を私はやめない。
 なぜなら、嘘をついた本人は私のペットなのだから。
 そして、そのペットは深い罪悪感の中で私に嘘をついていたのだ。
 漠然と外の、決して変わる事のない、光の届く事無い地上の蓋で閉ざされた地底の景色を見つめている内に、私は疑問を抱く理由となった出来事を思い出す。
 この屋敷に赤い巫女が来る前、ペットのお空に不思議な力がついた事に私が気付く以前に、お空と親しかったお燐の様子がおかしい事があった。
 今考えると、それは屋敷に赤い巫女がやってくる原因であったに違いない。私の顔色をうかがいながらも、不安な気持ち持っていたお燐を見て、様子のおかしい理由を私は聞こうとした。
 しかし、しどろもどろになりながらお燐は何でもないとただ答えるだけで、私には何も教えてはくれなかった。
 でも、お燐との会話の中でただ一つだけ分かった事があった。それはお燐が心の中で嘘をついていた事。そして、その内容がお燐の友人であるお空に関する事だった。

 会話をする時は普通を装っていたけど、心の中では地獄鴉のお空を心配していた。
 あの子は根が純真だし、何か危ない事でもあったのだろう。心を読んだ時はそう考えていた。でも、まさか地上の神様から人工的な太陽を作り出すほどの強力な力を貰ったなんて、当時の私には想像もつかなかった。
 そんな強力な力を手に入れたせいで、お空は増長をしてしまった。
 その事をお燐は私に相談したかったけど何処か私に恐れていた所もあり、その悩みを切り出す事が出来なかったに違いない。私に相談してしまったらきっと、そんな問題を起こしたお空が手に負えなくなってしまったと判断されて、処分されてしまうと思っていたからだろう。
 大切な友人を失いたくない。お空を守るために、お燐はそう考えて私にそんな嘘をついたのだ。
 私はお燐の心を見て、とても動揺してしまった。
 そしてお燐に対して何も追求する事が出来なかった。むしろ、それが今まで私が見てきたのとは違う嘘であった為、お燐の言った事が嘘だとはすぐに考える事が出来なかった。

 かつて私が見てしまった嘘は、相手が私に対して深い罪悪感に悩まされなどおらず、むしろ私に対して畏怖と拒絶と侮蔑と恐怖を混ぜた、目をそむけたくなる程の不快で悲しい気持だけが私に突き付けられていた。 
 大切な者と嫌われ者。それだけが昔見た嘘とあの時お燐がついた嘘の違い。
 でも、そんな些細な違いだけで、嘘でもここまで変わる事が出来るのだ。
 理解出来た今だからこそ、お燐のついたその自己犠牲と献身の様な嘘を美しく感じてしまう。
 相手の心の奥底を見てしまう事が出来るから、私には決して向けられることの無かった哀しくて美しい嘘。
 もしも、私がその気持ちに気づいたとしたら、こんな形で地底にいなかったかも知れない。薄汚れているだけだと思い込んでいた心の中にも、こんな形の美しさがある事を認める事が出来たら、妹のこいしが心を閉ざすことなんて無かったかも知れない。
 どうしてこうならなかったのか。嫉妬心や、やり場の無い怒りが私の中で渦巻いてくる。
 でも、それはもう過ぎてしまった事。
 過去の私は嘘を嫌い、そして心は汚い物だと決めつけて地底に潜ったのだ。これは変えようのない私の自身の気持ちだ。
 でも、そこから変わる事も出来るのだと、窓の景色を見て思う。
 窓の景色は天気で変化することは無く、常に造られた太陽と本来の太陽を遮った地上の蓋によって光と影を生み出している。
 天候が変化する事の無い地底の外は、まるで決して心に対しての考えを変える事の無かった私の気持ちみたいだ。
 そんな私にも変わる時が来たのかも知れない。
 お空の件以来、こいしも少しだけ変わり始めていた。屋敷にやってきたあの奇妙な赤い巫女と、こいしが新しく知り合った、黒と白を混ぜた魔法使いに出会ったのがきっかけだったのだろう。
 それならきっと私でも変わる事が出来るはず。
 昔は恐れていた嘘にも美しさがあると分かったのだから。
 
 「さとり様―!大変です!」
 ノックもせず、なだれ込むように部屋に入ってきたお燐がそれを教えてくれた。
 「お燐。どうかしたの?」
 突然部屋にやってきたお燐の焦っている気持ちは、あの時と同じ様に落ちついて、平静を保とうとしている。
 あの時との違いは、嘘をついていない事。お燐の焦りは嘘をつく余裕が無いほど、大変な事なのだと心を読まなくても良く分かる。
 「こいし様といつぞやの魔法使いが突然屋敷にやってきて戦っています!」
 「こいしが?」
 「早く来てください!こいし様すごく楽しそうですよ」
 そう告げると、お燐は走ってこいしの元へと言ってしまう。
 そこに嘘は無かった。むしろ、何か喜んでいる様な仕草が心の中に見えてしまった。
 「こいし……。あなたは嘘を美しいと思うかしら?」
 お燐を見送った後、楽しそうなこいしが気になって、本を机に置いて私は立ちあがる。
 ここからだと何も見えないけれど、耳を澄ませばこいし達の楽しそうな声が聞こえてきそうだ。きっといつもの様に、こいしは何も考えてはいないだろう。自分の中にある純粋な本能だけで行動をしているに違いない。
 でも、もしかしたら。
 もしかしたら、色々な場所をふらふらとしているこいしは無意識の内に、私よりも先に嘘にも違いがある事に気が付いているかもしれない。
 独りよがりで、前向きすぎる考えかもしれないけど、こいしが変わり始めたのもそれが理由かもしれない。
 もしそうだとしたら、なんて私は遠回りをしてしまったのだろうか。まったく、私はもっと素直になるべきなのかもしれない。
 気にしてはいないけど、少しは印象もいい方向に変わるだろう。
 ため息と共に、お燐の走り去って行った道を私は歩きだす。
 
 私は嘘が嫌いだ。
 嘘は相手を傷つけ、自らの心の中に、孤独と空白を生み出してしまうからだ。でも、誰かを傷つけない為に想う、自分を犠牲にしてまでも、大切なものを守る哀しい嘘があるのだと私は信じてみたい。
 そうでなければ、私は一体何のために心を読むのだろうか?嘘の違いに気づいてしまったからこそ、心を読む理由すらも分からなくなってしまいそうになる。
 でも、それを考えるのは後、新しく知った事もまた新しい疑問への第一歩と知れただけでも私は満足だ。今はこいしの応援をしないと。
 廊下を歩き続けると、こいし達の声が聞こえて来る。あの二人は楽しそうに戦っている事だろう。そしてこいしから聞いたあの魔法使いの事だ、こいしに対して何とも愉快な嘘をつく事だろう。
 広大な廊下の中で、二人は宙を舞い、軌跡を残していく様に弾幕の光を出していく。周りには動物達がいて、お燐もお空も楽しそうだ。そして大勢の観客。
 私がたどり着いた先には、誰もが楽しそうに二人を見ている。そして妹のこいしと魔理沙と名乗る魔法使いも楽しそうだ。
 この日、誰も訪れないはずの地霊殿は、明るい人工太陽と二人の戦いを見に来た観客のおかげで、少しだけ賑やかになっていた。
そして、その賑やかな喧騒の中で、私はちょっとだけ嘘を信じてみようと思った。
 最後まで読んでいただきありがとうございました。
 嘘も前向きに考えるとこんな違いがあるかもしれないですね。
 後、恐らくこのさとり様は、こいしの拾った希望の面の影響を受けて、物事を前向きに考えるようになっているかも知れません。
センチ寝る
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コメント



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1.3mayuladyz削除
文法が気になりました。
特に接続詞の「でも」の使い方がおかしいと思いました
一般的に「でも」は「にもかかわらず」や「しかし」と同じ意味を持ちます
しかし、読んで見ると「にもかかわらず」や「しかし」として捉えられません
それとも意図的にこのような使い方をしているのでしょうか
 例 
  でも、最近は時間をもてあましてばかりだった。
  ↑この「でも」は前に「忙しい」という意味の文書を持ってこないといけないが記載されていない   

実は私もそうなんですが、「事」を多用しているのが気になりました
別の言葉に言いかえるといいと思います
 例
  漠然と外の、決して変わる事のない、  

   ↓同じ意味の「変わらない」に変更

  漠然と外の、決して変わらない
**************************
  お燐との会話の中でただ一つだけ分かった事
  
   ↓文書から意味から考えると「事」は不要 言い切ろう

  お燐との会話の中でただ一つだけ分かった

さらに削れる文字をいくつかあったので、良ければご参考に
 例
  お燐との会話の中でただ一つだけ分かった  
 
   ↓「の中」は不要

  お燐との会話でただ一つだけ分かった
**************************
  私は嘘が嫌いだ。

   ↓「私」は省いてもいいよな気がした
    ただし、意図して書いたのならOK

  嘘が嫌いだ。
**************************
  でも、最近は時間をもてあましてばかりだった。

   ↓少々「して」の部分があると読みにくいような気がした

  でも、最近は時間をもてあますばかりだった。
**************************

まだまだ改善の余地はあるが、腐らずがんばって良い物を作ってくれ
最後に国語の先生の説教みたいでごめんなさい(´・ω・`)
2.4あらつき削除
文章が読み辛い。でも、が多くて伝えたい部分がどこなのか読み取りにくいです。
お題に則っていて、話を通じて言いたいことも分かるので、あとはシンプルに書く技術だと思います。
3.1エーリング削除
本当に、こんな風に優しくて脆いのがさとり様なら、地霊殿異変時のお燐も迷わず相談していたとは思いませんか?
4.5がま口削除
さとりが嘘を嫌悪することと、嘘にも美しいものがあると知って戸惑う気持ちがよくわかりました。
嘘は確かによくないけれど、それを恐れすぎていてはコミュニケーションが成立しません。
さとりに勇気をもって嘘と付き合ってほしい。そう思いました。
5.5みすゞ削除
たしかに心が読めると嘘が嫌いになっても仕方ないかもしれません。
6.6ナルスフ削除
嘘もつく人の心次第。
心がわかるさとりだからこそなおさら。
心綺楼の時間軸になるまで悩み続けてた割には、ほぼ自分の頭の中でサラッと解決したなあとか思いましたが、まぁ希望の面のせいなら仕方ない。
7.3道端削除
 うーん、全体的に雑然としていて読みづらかった。
 話があっちにいったりこっちにいったり、連続していないように感じてしまう。
 あることについて(たとえば『最近ある些細な疑問』という話題)をちらつかせたと思ったら、その話題をひとまず置いておいて別の話(『いつもは相手の心を~』から『~理解して形に出来るものではない』)に逸れ、また戻ってきたかと思ったら(『私が疑問を持ち、形には出来ない者。それはある日に吐かれた嘘だ』)、また別の話(『私は嘘が嫌いだ~』)に飛び――。
 その『些細な疑問』『ある日吐かれた嘘』の内容がさっさと知りたいねん! と。
 ……我ながら神経質だなあ、と思うものの、そんな部分が読みづらくて、容量の割に読んでいて疲れてしまいました。

 それ以外にも、お燐が『相手の心の奥底を見てしまう事が出来る』さとりの前で『心の中で嘘をつ』くことが何故できたのか(嘘を吐いていることはばれているみたいだけど、肝心の何を隠しているのかはさとりには分からなかったみたいなので)のような部分を疑問に感じたり、「そんな私にも変わる時が来たのかも知れない。」と思ったときにさとりんが見ていた風景が『天候が変化する事の無い地底の外』というのもちょっとちぐはぐだなあと思ったり。
8.2生煮え削除
独白というよりも説明のような感触で、それも文章の流れが辿辿しいため、とてもぎこちない印象を受けました。なにしろ肝心の、人を傷つける嘘と美しい嘘との違いが実感としてわからない、伝わってこない。説明的ですので、さとりがそれに違いを見いだしたということはわかるんですけどね。どう違うのかが実感できないので共感もできないのです。
9.2きみたか削除
素直に読むといい話っぽいんですが、本作に関係なくこういうことを考えるさとりは大妖怪の割に発想が若すぎやしませんかねー?という違和感。そして地霊殿本編時点では碌にペットの動向を気にしていなかったのもさとりさんだったのであります。
10.4名前が無い程度の能力削除
心を読むことができるさとりが嘘が嫌いなのは想像に難しくないですね
良い嘘、悪い嘘の境界線はひどくおぼろげです
11.8祭囃諒削除
嘘のあり方をキャラクターにあてて、いろんな見方をさせていて非常に深みがあり面白かったです
12.4K.M削除
前向き後ろ向き、気の持ち様というよりも使い手に依存ですが嘘にも良し悪しある、と。