第十二回東方SSこんぺ(嘘)

優しい嘘

2013/10/27 22:53:04
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 ――――月。
 いつもより日の高い、連子の窓から爽やかな風が鼻の先を撫でる春の朝。
「ようやく、春って陽気ね……」
 昨日まで続いていた冬のような寒さは何処かへ逃げ込んでいったようで、ようやく窓を広げてこの風を肌で感じることが出来る。その嬉しさに溶けるように、太陽のもとに身をさらして、空を見上げた。
 向こうに据える柔らかな陽射しは、私たちを抱擁するかのごとく、その存在を訴えかけていた。
「あ」
 けれど、私――――稗田阿求の目に留まったのはそのような傲慢な太陽の姿ではなく、その反対の空に伴侶のように静かに佇む白い月だった。
 夜の闇が昼の光に嫁がせたようなそれを見つけて、私は書類の編纂を一度止め、見入るために筆を置いて髪をかきあげた。
 髪の影が視界から消え、より明確に視界に映る月の姿。
 一日の始まりに見える黎明月。もう何度も見てきたはずのその景色に、私は軽く頭を小突かれるような、小さな、小さな違和感を覚えた。
 俗にいう既視感。デジャヴー。
 このような感覚は、私にとっては決して珍しくない。何度も転生を行っている私にとって、事実、ほとんどの出来事は初めてでありながら初めてではない。
 満開の桜の景色に一種の同一感を憶えたり、会ったことのない人物に対して妙な親近感を得ることもある。
 この黎明に見えた月もきっと、同じことなのだろう。
 けれど、一体何があったのか――――それは私には決して思い出せない。
 だからせめてもの気持ち。贖罪をするかの如く、ゆっくりとした追憶に思いを馳せようとしたときだった。
「おい、阿求!」
 風流の欠片もない、無粋な声が邪魔をする。思いの入りから出鼻をくじかれてしまった私は追憶を諦め、不機嫌に声を荒げて返事をする。
「……どうしたのですか、魔理沙さん」
「これ見てくれよ、これ! 私は裁判も辞さない心意気だ」
 鈍感なのか、それともわざとなのか。声に潜めた怒気などは察する気配もなく、振り向いた先に現れた白黒の服の少女――――霧雨魔理沙さんはせわしない様子で私の書斎に入り込む。
 ……一応は私的で重要な部屋なのだけれど、魔理沙さんはお構いなしだ。今更注意を促したところで、彼女が取り合わないのは目に見えている。
 呆れて黙り込んだままでいると、魔理沙さんはやはり図々しく私の隣の読書机の椅子にドカリと腰を下ろして、手前の机に持っていた綴じ本を広げた。
 一体何なのだろうと腰をあげ、魔理沙さんの隣に横付く。
――――そこに広げられたのは、幻想郷縁起第玖巻だった。
 私は思わず眉間にしわを寄せた。
 ぎこちなく首を動かして魔理沙さんを見上げると、ニカリといつもの星のような笑みを浮かべている。その明るい笑みが、さらに私の心中の不安を重くさせる。
 魔理沙さんは今朝方早朝に、代々私の家系で編纂を続けている幻想郷縁起の閲覧を申し出てきた。少々訝しみながらも、断る理由もなし、許可を下ろしたから魔理沙さんはここにいる。
 彼女自身、手癖の悪さで評判とはいえ、そういう経緯がある以上、彼女がこの本を持っていることには問題はない。
 そう、問題はない。問題があるとすれば、魔理沙さんが目の前に堂々と広げたのが第玖巻――――つまり第九巻ということだ。
 幻想郷縁起は稗田家に代々伝わる、一代一冊の記録。第九巻となれば、何を隠そう編纂したのは私である。それに難癖をつけられるとなれば、心中穏やかではいられない。
「……何がおかしいと?」
 声を抑え、冷静さを保ちながら訪ねる。心なしか、先ほどまで暖かく感じた薫風が、冬のソレにすりかわっているように感じた。
「ここ、ここ。『英雄伝』の欄だよ」
 やはり私の様子には目もくれず、魔理沙さんは飄々と指をさす。それは、幻想郷に住まう人物を種類別に分けたページだった。
 その中でも、魔理沙さんが示したページは――――。
「……『英雄伝』の何が?」
  『英雄伝』。
 妖怪のことに重きを置いて書き連ねている幻想郷縁起の中で、一風変わった内容が記載されている場所だ。そこには妖怪ではなく、妖怪たちに立ち向かう人々についてが書かれている。
「私や霊夢、百歩譲って咲夜……あー、千歩譲って香霖が書かれてるのは良いとしてさ。永琳や輝夜がいるのはどういうことだ? 異変解決に携わってるから……ってわけでもなさそうだ」
 急に立ち上がった魔理沙さんが不機嫌そうに机をバンと叩く。いつもいつも、勢いだけは快活な人だ。
「あぁ、そのことですか……」
 どうやら、この欄に宇宙人御一行が載っているのが不満のようだった。つまりは「自分たちとあいつらを分けろ!」と文句をつけたいらしい。
「確かに、それはもっともなご意見ですが……あの異変ののち、永遠亭の方々には里にいたく御助力して頂いていますし、一応は私たちと同じ『人間』であるはずです」
 文句を言う隙を作らないように、一息で説明する。
 実を言えば、幻想郷縁起に関しては日々要望や訂正願いが多数寄せられる。これくらいのいちゃもんについては慣れっこなのだ。
 このような些事でクレームを叩きつけられても、私にとっては痛くも痒くもないというところを早々に見せつけてやらねばならない――――そして今回は、それが功を奏したようだった。
「……む」
 私の理路整然とした態度が意外だったのか、魔理沙さんは鼻白んで黙った後、つまらなさそうに長い溜息をついた。
 私の答えに納得がいかなかったのか、それともからかい甲斐がないと思ったのか。……多分、後者だと思う。
「はー、こっちは命をかけて戦ってるってのに、薬配るだけで同じ扱いかよー」
 まああいつらは命かけても死なないんだが、魔理沙さんは皮肉を続けると椅子を反対に跨り、拗ねたように椅子の背もたれを抱いた。その姿はまるで遊び相手を失った子供のようだった。
「んじゃ、妹紅も一緒か。あいつは竹林への護衛をやっているんだっけ?」
 魔理沙さんが口にした名前に、私はピクリ、と眉を動かした。
 話題から出ること自体は予測出来た名前だったけれど、眉をひそめたのはそれが理由ではなかった。
「あぁ……。妹紅さんは、そうですね……」
「なんだ、訳知り顔だな」
 私の曖昧な反応に、魔理沙さんはにわかに表情をあくどく光らせる。……目ざとさは一級品だな、と呆れながらに首を横に振る。
「あの人は元々里の人間なんですよ。ですから、彼女自体はあなたたちよりもっと前から書かれていたのです。それと――――」
 言葉を続けようとして、ハッと口を噤む。最後は消え入りそうなほどだったので、幸い魔理沙さんは気付いていないようだった。
「あー……、不老不死のせいで忘れてしまうが、一応はあいつも人間なんだよな」
 ふーん、と魔理沙さんは頷くと、失っていた元気を次第に取り戻していた。
 私も気を取り直し、コホンと一つ咳をすると話題に入り直す。
「不老不死とはいえ、元は地上の人間でしたからね。蓬莱の薬を口にして不老不死になったとのことですが、その間一体何があったのか……知っているのは慧音くらいでしょうか」
「そうだなあ、あいつが一番仲良いしなあ」
 私の言葉に魔理沙さんも頷く。
 妹紅さんの話となれば、ワンセットで浮かんでくるのが里で寺子屋を営んでいる上白沢慧音の顔だ。彼女は里に住んでいる時間も長い為、妹紅さんとの仲も良い。
「ふーん……そうだな。今日は暇だし、暇つぶしにでも聞いてくるか」
「……私ですら聞いたことがないというのに、魔理沙さんに話すわけはないと思いますが」
 じろり、と睨む私の視線に魔理沙さんが返すのは、やはり快活な笑みの表情だった。
「はは、『鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス』っていうだろ?こういうのはテクニックがものを言うんだぜ」
「……魔理沙さんは『殺してしまえ』がお似合いだと思いますが」
「まぁ、それじゃまたな!」
 私の皮肉も受け取らないまま、魔理沙さんは箒を手に取る。するとそのまま、女装をつけて開き戸から外に飛んで行ってしまった。
 全く、騒々しい人だ――――心の中で悪態をつきながら、また書物の編纂に勤しもうと筆をとった時だった。
 手前に置かれた、読書机の上を見る。その机の上は昨日の夜片付けた通りに、何もない綺麗な体裁だった。
 けれど、私の絶対に忘れることのない両目が、確かな違和感を覚える。
 ――――足りない。何かが足りない。
「……あっ! 幻想郷縁起!」
 しまった、やられた! 「またな」とはこういうことだったのか!
 そういえば――――そういわなくとも彼女は手癖が悪いのだ。なんの警戒もせずに秘蔵の書物を見せてはいけなかった、見張りを一人や二人つけておくべきだったのだ!
「追いかけなきゃ……!」
 私も大急ぎで外履きに履き替え、玄関から外に出る。けれど、その時にはもう魔理沙さんの姿は遠い空の向こうだった。
 ……とはいえ、私は空も飛べなければ足も速くはない。むしろ遅いくらいだ。
 あのひねくれ者が話の通り慧音の家に行くとは限らないし、どうしたものか――――数秒立ち往生して考えていたときだった。
「お、阿求じゃないか」
 聞き慣れた声が聞こえた。顔をあげると、腰まで下ろした長い白銀の髪が視界に映る。 
「妹紅さん!」
その、この世ならざるものほどに美しい髪を携える少女は、先ほどまさに話題にしていた人物――――藤原妹紅さんがいた。
「なんだか魔理沙が凄い勢いで屋敷から飛んでいったけど……珍しいな、外で考え事なんて」
 先ほどの私と同じように彼方に飛んでいる少女を見つめる妹紅さんに、私は外に駆けだした本題を思い出して声をあげた。
「魔理沙さんに本を盗まれたんです! すみません、追いかけて頂けませんか!?」
「何、またあいつ……。分かった、すぐ行く!」
 魔理沙さんの手癖の悪さは里中に伝わっているらしい。妹紅さんは苦々しい表情を浮かべると、すぐさまに地を蹴って空に飛んだ。
 丁度よく妹紅さんが通り過ぎてくれてよかった。ひとまずは一安心といったところだろうか。彼女は妖術にもすぐれ、妖怪を相手どった護衛なども引き受けている。それに不老不死でもある。ともかくは魔理沙さんに彼女を撒くことは出来ないだろう。
 そう、あのときと同じように――――
「あのとき……? ッ!」
 一瞬脳裏に流れた、ぼやけた映像。それに、あのときという、無意識に私が思い浮かべた言葉。
 けれど、その先に行くのを禁ずるように、酷い頭痛が私を襲う。
「また……っ」
 また。何故だろうか、妹紅さんの話をすると、私は記憶にしこりのようなものを感じるのだ。それが、先ほど魔理沙さんに言わなかったことだった。
――――そういえば。
 私と妹紅さんは、別段会話を良くする間柄ではない。だというのに、何故、妹紅さんの声を〝聞き慣れた声〟だと思ったのだろうか。
 既視感。デジャヴー。これにもやはり私の記憶が関係するのだろうか。
 ――――一体、過去の私と妹紅さんに、何があったというのだろうか。
 思い出せるはずのない霞んだ追憶。その先を見るために、私は静かに黎明に浮かぶ月を見上げた。


  ▼


 ――遥か昔――

 迷いの竹林の奥深く。
 暮れた空は闇を黒々と映し、竹林の中の鬱蒼とした緑は闇に馴染んで不気味さを演出する。
 まるで猛獣――――いや、妖怪でもいそうなその空間に、パチリ、パチリと何かが弾ける音がする。
 馴染んだ黒を払い、竹筒に赤みを帯びさせるそれは、炎の光。
 焚き木も無しに燃ゆるその不思議な炎の前に不格好に座り込むのは、一人の少女。
 けれどその風貌たるや、異形と違わない。
 月灯りも届かない竹林だというのに、腰までに届く彼女の長い髪はその月光と同じ、白銀の色をしていた。
「……何の用だ」
 倦怠感を孕んだ、重く威圧するような声。
 麗しい少女の声色で響くそれは、また一人の少女へと向けられる。
 その少女の格好も、異形とは言わないまでも不思議なものだった。
 桔梗色の髪に、血を散らしたような真紅の花飾り。極彩色に重ねた着物は、宵闇には目立ちすぎるほどだった。
 けれど、服装はともかく普通の少女。異形を前にあのような声かけをされれば、委縮しているに違いない――――もしこの場に第三者がいれば、そう思っただろう。だが。
「先日は里の子供を助けていただき、どうもありがとうございました! これ、お礼の品です、お受け取りください!」
 気怠かった異形の少女の声を弾くように、極彩色の少女は溌剌とした声をあげてお辞儀をする。
 雰囲気にそぐわない言葉と仕草。それに、今まで威圧を醸していた異形の少女も調子を崩したように白銀の髪をかいた。
「……その挨拶、何度目さ。えっと……稗田阿弥さんだっけ?」
「だって、藤原さん一つも受け取ってくれないのですもの」
 拗ねるように言葉を返す極彩色の少女――――稗田阿弥に、異形の少女――――藤原妹紅は「あーッ!」と狂ったような声をあげてさらに髪を強くかきむしる。
「いらない、って何度言ったら分かるのさ!」
「藤原さんが受け取ってくれるまでです」
 激昂する妹紅に、阿弥はなんともないとばかりにニコリと笑みを投げかけた。
「確かにお金も飾り物も着物も、藤原さんには必要のないものでしょう。ですから、今回は絶対に必要なものを持ってきました!」
「……絶対に必要なもの?」
 妙な自信にたじろいだのか、妹紅が首を傾げる。
 その反応にさらに自信がついたのか、阿弥は凄い勢いで肩に提げていたリュックを下ろして、取り出した箱を高々と掲げた。
「ええ、お弁当です! 里のみんなで作ったんですよ、おいしいですよ!」
「……帰って」
 右手で額を押さえながら、妹紅が淡々と拒否の意思を示す。
 その一言に阿弥はムッと顔をしかめる。けれど、それは自信の的が外れたことにではないようだった。
「あまり強がらないでください。本当はお腹が減ってたまらないんでしょう?」
「強がってなんかない。要らないから持ち帰ってくれ」
 その自信は何処からくるのだ、とため息混じりに妹紅が左手で帰れと促す。
 しかし、阿弥は反対にズイと妹紅に近寄って顔を寄せた。髪色と同じく澄んだ桔梗色の目はしかと妹紅の顔を捉え、妹紅はどぎまぎして視線を横に逸らした。
「な、何だよ」
「――――嘘です」
 先ほどの冗談じみた溌剌さとは打って変わって、真剣味を帯びた声色で阿弥が言い放った。
「藤原さん、お腹減っているときは唇を尖らせてむすっとする癖があるんですよ? 気付いてないんですか?」
 鼻と鼻がつきそうなくらいに近づいていた顔を離し、阿弥が妹紅の眼前に人差し指を突きつける。
「……なに、それ」
 突拍子もない指摘に、妹紅が目を瞬かせる。その様子をスイッチに元の元気な阿弥が戻ってきたようで、頭の後ろをさすりながら「えへへ」と声をあげた。
「驚きましたか? 私の目は一度見たものは忘れないんです。以前、お腹を鳴らしていたときにその顔をしていました」
 自慢をするように胸を張る阿弥。
 にわかに信じられない話だが、どうやら癖については図星だったようで、妹紅はすんなりと信じて「へえー」と感嘆な声をあげた。
「凄いね。私のお父さんみたいだ」
「え? 藤原さんの父上も、一度見たものは忘れなかったのですか?」
 思わぬ意外な話の繋がり方に、今度は阿弥の目が瞬く。
「そうは言われていたけど、本当かは分からないな」
 適当言ってすまない、と興味を引いてしまったことに謝りながら、妹紅が少し儚げな表情を浮かべた。
「何しろ、記憶なんて曖昧なものは証明が出来ないから」
 苦笑のような笑みを浮かべて、妹紅がそう言う。その言葉の後に闇へ響いた余韻は、幼き時代を懐かしむような間だった。
 パチリ。焚き火の炎が、一際大きい音を立てて弾ける。
その音に引き戻されるようにして、阿弥が少し拗ねたように口を開いた。
「……なんだかそれ、私が疑われているみたいですね。私、少し傷つきました」
「あ、ち、違う、そうじゃないんだ」
 先ほどの間のせいか。取り付く島のなかった態度が和らぎ、妹紅が少し慌てたような声をあげる。
「本当ですか?」
 その慌て振りに追い打ちをかけるように、阿弥が再び顔を近づけて問う。
「本当だよ」
「本当の本当?」
「本当だって!」
 阿弥の畳み掛ける問いに、完全に妹紅の調子は崩れていた。
 困り続きの妹紅に、阿弥は最後に満面の笑みを浮かべて、手に持つ弁当を差し出した。
「じゃあ、お弁当食べてください!」
「……それは」
 不当な要求に、当然妹紅が渋った声をあげる。しかし、最早無理矢理通さんと阿弥がもう一度悲しみの表情を形取る。
「やっぱり、嘘だったんですか?」
「……分かったよ! 食べるよ!」
 もう調子を整えることなど出来ないのか、妹紅が諦めるように慟哭して、半ばふんだくるようにして阿弥から弁当を受け取る。
 けれど、妹紅の苦悩はそれからも続いた。
「うっわ、なんだこれ! こんなの絶対私一人じゃ食べきれないだろ……」
 重箱形式の弁当のふたを開けると、そこにはぎっしりと詰まった食べ物の数々が。さらにはそれは三段式であり、もっと言うと重箱自体の大きさが異常だ。個人のものと一家族用のものを間違えて詰め合わせたのではないかとでもいうほどだった。
 何かの間違いだろう、そう思って妹紅が阿弥を見やるとそこには期待とは違った満面の笑みがあった。
「そりゃもう、里のみんなの感謝が詰まっていますから」
 何故か誇らしげに胸を張る阿弥に、妹紅は嫌な汗を頬に流す。どう考えたとしても、この弁当は一人で平らげられるものではない。
「無理言うなよ! あんたも食べてくれ」
「え、本当ですか? いただきます、いただきます!」
 妹紅が悲痛に叫ぶと、阿弥は嬉しそうに対面に座り込んだ。
 ため息を吐きながら、妹紅が箸を握る。入れ間違いか意図的か、何故だか箸は二膳あったらしく阿弥も箸を握っていた。
 改めて重箱に詰められたそうそうたる料理の数々を目の前に、妹紅は息を呑んだ。
 確かに、一見量に圧倒されがちだが、妹紅が今回息を呑んだのはそこではなかった。
 見た目でも分かる。一つ一つの料理に丁寧な手間がかけられている。これだけ品々が多いというのに、焼き魚に添えられた香草、華形に形取られた煮物、崩れどころの一切ない卵焼きの断面。
 おそらく、阿弥が言った通り、里の人々の想いが詰まったものなのだろう。これを残すなどしてぞんざいに扱うことは、妹紅には考えられなかった。
「いただきます」
 小さく呟いて、箸を伸ばす。まずは焼き魚をほぐして掴み、口へと運んだ。
「……む」
 あまりの完成度に、薄く声を漏らす。
 これはアジだろうか。淡白なうま味が、スッと口の中に広がる。嫌味の無い、塩だけで味付けされた脂身。そして後に薄く残る香草の香り。とっくに冷めているはずなのに、気にならないほどの上品な味わいだった。
 しかし、やはり焼き魚にはご飯が食べたくなる。半ば無意識の衝動に駆られ、重箱を分けて見つけたおにぎりを妹紅が掴んだ。すると。
「あ、それは」
 隣で煮物をつついていた阿弥が短く声をあげる。
「……? このおにぎりがどうかしたのか?」
 おそらく自分の掴んだおにぎりを見てのことだろう、そう思い、妹紅はおにぎりを持ち上げて首を傾げた。
 それに阿弥は「ええ」と頷いて、答える。
「それは藤原さんが助けた女の子が作ったおにぎりですよ」
「……へえ」
 それを聞いて、妹紅は手の内のおにぎりをまじまじと見つめる。
 見れば、確かに他のおにぎりよりも不格好だった。ただ、他のおにぎりよりもぎゅっと強く握られていて、ズッシリとした重さがあった。
 ――――あの子が握ってくれたのか。
 先日、自分が助けた少女を思い浮かべながら、そのおにぎりを一はみする。
「――――うん、おいしい。これはいいお嫁さんになるんじゃないかな」
「そうですか。きっとあの子も喜びます」
 もぐもぐとまたおにぎりをはみ続ける妹紅に、阿弥が微笑みかける。するとそのとき、阿弥が重箱の端に詰められた、もう一つの不格好なおにぎりに気付いた。
 ――――あ、これもあの子が作ったやつだ。
 そのことを黙って、そっと阿弥がおにぎりを手に取る。そうして、妹紅に気付かれないように口に運んだ――――
「!」
 強い塩味に、思わず表情を固まらせる。
 これは間違いなく、塩の配分間違いだ。一緒に作っていた大人たちは一体何をしていたんだ――――そういう気持ちで阿弥が妹紅を見やった。
「藤原さ――――」
「――――おいしい。おいしいよ」
 阿弥の位置から表情の伺うことができない妹紅は、そう言い聞かせるように呟いて、おにぎりを少しずつ食べていた。
「……、」
 それ以上呼びかけることなく、阿弥もまた、そのおにぎりを口に運ぶ。
 あんなに大量にあった料理達は、思いのほか早く、残されることなく食べきられた。
 ただ、少女の作ったおにぎりだけは、少しだけ塩味が強かったようだった。



 闇夜の中の出来事。
 その日は里で大きな催しがあった。すっかり日が暮れ、いつもは静まるべき里の景色。
 けれどその日だけはあちらこちらが人で賑わっていた。
 そんな中、髪の長い少女が一人。人ごみに寄ったのか、それとも花でも摘みにきたのか、人がまばらな草原の真ん中で屈んでいた。
 そんな彼女の隣を、黒い影がかすめる。闇夜に混じるような体色をしたそれは、狼のような速さで竹林の方へ駆け出した。
 次の瞬間には、草原に少女の姿はなかった。代わりに残るは、耳をつんざくような悲鳴。
 犬か猿か――――形容し難い風貌の異形は、少女の服の襟をくわえ、連れ去ろうとしていた。
 あまりに素早い誘拐。その場にいた誰もが、一瞬困惑し、状況を飲み込むことができなかった。
 けれど、それは少女の絶叫によって強制的に引き戻される。浮遊感に襲われていた人間たちはすぐさま駆け出す。だがもちろん、その時には異形は少女ごと竹林の中に引き込もうとしていた。
 もう間に合わない――――誰もがそう思っていたそのとき。
 竹林から飛び出した白銀の影が、紅蓮の炎を携え――――
 ――――いけない、寝てたか。
 ハッ、と立てた片膝に乗せていた頭を妹紅が起こす。
 夢の景色を思い返し、いやに現実感のある夢だった、と眼を擦る。いや、そもそも夢じゃなく現実であったことの焼き直しだった。
 約一週間も前。
 妹紅は竹林の妖怪にさらわれた一人の少女を救った。
 何か正義感が芽生えたわけでもなかった。ただの気紛れ。それ以外のなにものでもない。
 だからこそ、妹紅はあんなに感謝されることが意外だった。今まで同じようなことがなかったわけでもない。けれど皆すべからく、彼女の白銀の髪に怯えるか、怪しげな術の炎に命乞いをするかのどちらかだった。
 ――――なのに、あいつは……。
「……そんな寝方しているんですか?」
「うわぁっ!?」
 不意に耳元に響いた声に妹紅が心底驚いて肩を揺らす。
 その声は今しがた思い浮かべていた人物――――阿弥のものだったからだ。
「ちゃんとした布団で横にならないとダメですよ。ましてやもう寒い時期なんですから」
「……なんでいるんだ」
 じろり、と苛むような瞳で妹紅が阿弥を見やる。その視線を受けても、阿弥はやはりマイペースな笑みを浮かべて返した。
「それはですね、是非里に住まないかとお誘いに」
「……なんだって?」
 訳の分からない誘いに、妹紅が首を傾げる。その反応を待っていましたとでもいうように、阿弥は溌剌に「はい」と頷いた。
「今丁度空家がございまして。そこなら藤原さんをお誘いできると思ったのですよ。こんな寒空の下では大変でしょう?」
「里に……」
 妹紅が少し、感情の籠った声を漏らす。けれど、それはただの一瞬だった。
「……良い、気にしないでくれ」
 お礼を受け取らなかったときのように、冷ややかな態度で断る妹紅。しかしもちろん、それで食い下がるような阿弥じゃなかった。
「とはいえ、ですね――――」
「――――はぁ……」
 やはり食い下がる阿弥の声を切るように、妹紅がため息と共に立ち上がる。
「……藤原さん?」
 いきなりの動きに声を止めた阿弥だったが、その声はさらに凍ることになる。
 妹紅が自分の住家としているボロ小屋の後ろに回り――――鉄の斧を取り出してきたからだ。
「ふふふふふふ藤原さん!? 駄目です、私も調子づいたかもしれませんが殺生は、殺生だけは……!」
「違うよ。見てな」
 言葉を焦らせる阿弥をたしなめるように呆れた声をあげて、妹紅が斧を持った手で指をさす。
 その指の先にあったのは、もう片方の空き手。一体何をする気なのか――――阿弥がその手を見つめていると――――瞬間、鮮血が走った。
「――――え」
 驚きに漏れるように、一声だけが口をつく。
 阿弥の目は、一度見た景色を忘れない――――けれど、何度思い返しても、今起きた出来事を理解することができなかった。
 ――――振りかざした鉄斧で、自分の腕を切り落とすなど。
「うっ……!」
 痛みに、妹紅が悶える。当たり前だ、腕を一本斬りおとしてうめき声一つあげないなどありえない。
「藤原さんっ! 何を馬鹿なことを――――」
 そう叫んだ近寄った阿弥の声が、再度固まる。
 阿弥が目撃したのは、腕を斬りおとすこと以上の異常な光景。
「……嘘」
 愕然とした声。その反応は、必然だった。
「――――ある」
 そのトーンのまま、阿弥はもう一度呟いた。
 阿弥が見たのは、斬りおとされた、鮮血の流れる腕の断面。
 しかし、ある。あるのだ。
 ――――その、斬り落とされたはずの腕が。
「……ご覧のとおり、私は不老不死なんだ」
 驚く阿弥に答えるように、妹紅が口を開く。
「だから食べ物も、寝床も、金も何もかもいらないんだよ、私には」
 治ろうとも痛みは変わらないのか、額に脂汗を浮かべて紡ぐ。
 不老不死。それは、数多の人間が求める最大の欲望。けれど、妹紅の声の調子は自慢をするようなものではなく、むしろ自嘲するような響きだった。
 ――――失望したかな。気味悪がられたかな。
 諦めるように、妹紅が目を伏せる。そうして、今の阿弥の表情を見ないように振り向いた。
 ――――どちらにしろ、もう会うこともない。これでいいんだ、これで……。
 これでいい。そう妹紅は心中で壊れたように繰り返す。そして、最後にせめて別れの言葉をと口を開く。
「分かったら放っておいて――――」
「――――凄いです!」
 そのまま小屋の中に去ろうとした妹紅の背後から響いたのは、予想もしていない、いつもの明るい声だった。
「本当に不老不死なんですか? 本当だ、傷一つない――――あれ、吹き飛んだ左手は何処にいったんですか? 治ると消えるんですか? それとも手品?」
 駆け寄り、妹紅の手を掴み見ながら阿弥が歓喜の声をあげる。その反応に、妹紅は目をぱちくりとさせた。
「お、驚かないのか?」
「え? 驚いているじゃないですか! それはもうびっくりですよ!」
 問う妹紅に、阿弥は極まれりといったように声を大きくする。その答えが、さらに妹紅の心中の壁を崩していった。
「そ、そうじゃなくて……」
「あ、そうです! そうじゃなくて空家の件ですよ! 是非来ましょう!」
 この期に及んで阿弥はまだ妹紅の勧誘を続ける。
 めげないどころの話じゃなかった。何のために不老不死を見せつけたと思っている、何のために誰とも触れ合わない生活を続けていると思っている、何のために――――
 そんな胸の内で溜まっていた気持ちが、一気に弾け飛んだ。そうなったら、もうクールなど気取ってはいられなかった。
「あんた、話聞いてなかったのか!? 私は不老不死だから、そんなものはいらないと――――」
「――――不老不死だから、なんです?」
 初めて声を荒げて叫ぶ妹紅の声を、阿弥は対照的に静かで鋭い声で切り裂いた。
「お腹も減るようですし、寝るようですし、ご飯も寝床も必要じゃありませんか?」
「でも、私は食べなくても寝られなくても死なない――――」
「人は死なないために生きているわけじゃありませんよ?」
 問う形式で、されど反論を許さない阿弥の声。
「生きるために生きているのです。違いますか?」
「――――ッ!」
 首を傾げながらも、阿弥の双眸は真っ直ぐに妹紅を見つめている。四言目で、妹紅は完全に言葉を失った。
「とにかくっ! 私は里にはいかないっ! 早く帰れよっ!」
 もう子供の駄々のように、妹紅がぷいとそっぽを向く。これ以上何を言っても無駄という意思表示に、流石の阿弥も仕方なく身を引いた。
「仕方ないですね……今日のところはいったん――――あ」
 帰り支度をしようとした阿弥は、先ほどの鋭さを失いながら小さく声を漏らした。
「……次はなんだよ」
 また面倒事か、と髪をかく妹紅に、阿弥はてへ、と自分の頭を小突いた。
「えへへ、いつもは夜に護衛に送ってもらい明け方に帰っていたのですが……今日は日中に来たせいで今丁度夜なので妖怪がいっぱいで……帰れないです」
「……」
「どう、しましょう……?」
 もう、先ほどのような鋭さは欠片もない。最早一介の子供のようにおろおろとし始める阿弥に、妹紅はしびれを切らして立ち上がり、叫んだ。
「ああもうっ! 分かったよ、送ってくから早く帰れッ!」



「――――ここまでくれば大丈夫だろ」
 迷いの竹林の入口。
 片手に灯していた火の術を消しながら、妹紅が気だるげに呟いた。
ここまでくれば里は目と鼻の先だった。このあたりならば、少女を襲ったようなはぐれ妖怪が現れでもしない限り安全だった。
「ええ、では、また明日」
 礼儀正しくお辞儀をしながら繰り出された言葉に、妹紅が「げっ」と露骨に嫌そうな声をあげる。
「また来る気なのかよ……。冗談はやめてくれ」
 懇願するような妹紅の声を無視するように、阿弥はくるりと一回りして竹林から躍り出た。
「ふふふっ。冗談かどうかは明日分かることですよ。それでは!」
「……全く」
 宵闇を陽気に駆ける極彩色の少女。その背中を見つめながら、妹紅はまんざらでもなさそうに微笑んだ。



「妹紅さん、今日は甘味物を貰ってきましたよ」
 いつもの通り妹紅が焚き火で暖を取っていると、訪れる極彩色の少女。最早見慣れたその少女に、妹紅はため息をつきながら苦笑を浮かべて迎えいれる。
「……毎日毎日、良くくるよな、お前も」
「もう、私の日課ですから」
 そう言って、阿弥はいつものようにマイペースに微笑む。
 阿弥が妹紅のところに通い始めて、一月の時間が流れようとしていた。
 出会いは冬の始まり。今はもう冬の真っただ中で、寒気は凍えあがるほどに増していた。
 着物を着こんでいる阿弥も流石に寒いのか「寒い寒い」と手を擦りながら焚き火に手をかざす。
「そう、これこれ。向かいの和菓子屋さんからお饅頭を頂いたんですー。ちょっと季節外れですが、保存していたそうで栗入りなんですよー」
「へえ、栗は好きだよ」
 はい、と手渡された栗饅頭を、妹紅は苦言一つもなく受け取る。
 それが、この一月の二人の進歩だった。
 阿弥は妹紅への呼び方が変わった。妹紅もたまに阿弥の名前を呼ぶとき、下の名前で呼ぶようになった。
 少し。けれど確実に、妹紅は阿弥に心を開いていた。
「妹紅さんが助けたあの子、中々賢いようでよく私の家で本を読んでいるんですよ。もしかしたら将来化けるかもしれませんよ」
 栗饅頭を口にしながら、阿弥が話題をあげる。それはいつの日だったか、妹紅が助けた少女の話だった。
「ふーん、確かに聡明そうな顔立ちはしてたけど……そういえば、名前はなんていうんだ?」
 懐かしさに感慨耽るようにして、そういえば名前を聞いていなかったと妹紅が阿弥に問いかける。
「えっ……と……」
 すると、一瞬の間と共に阿弥の口が淀んだ。
「おいおい、まさか忘れたわけじゃないだろうな? 絶対記憶なんだろ?」
 すぐに返答が返ってくると思っていた妹紅は、首を傾げながら少しだけにやけた笑みを浮かべた。
 その笑みがどうやら絶妙に阿弥の感情を撫ぜたのか、手に持つ栗饅頭を落とさないかという勢いで阿弥が両手をぶんぶんと振った。
「ち、違いますよ! 忘れたわけではなく、聞いていないだけです!」
「……それもどうなんだ」
 よく家に来る少女の名前を知らないというのは、少し考えれば大問題ではないだろうか。阿弥自身も自覚はあるらしく、彼女にしては珍しい女々しい声をあげる。
「うー……。どうやら私、好かれていないようで……。なんと声をかけても知らんぷりされるのです」
 一生懸命話しかけても無視をされ続ける阿弥の姿。その姿はなんとも、思い浮かびそうで思い浮かばない光景だった。
「どうせ私のときみたく押し付けがましな会話してるんだろ? そりゃあ子供には好かれないさ」
「ひ、酷いです! あれは妹紅さんが意固地過ぎるからですよっ」
 妹紅の言葉が胸に刺さったのか、半ば泣きそうな声で阿弥が叫ぶ。その有様を楽しむように、妹紅はにやにやとした笑みを浮かべて言葉を並び立て続ける。
「そうなのかなー。もしかして毎日私のところに来るのは、友達がいないからじゃ……」
「い、い、いますしぃっ! いっぱいなんですからね!? 引っ張りだこなんですから!」
「本当かなぁー」
 それはいつかの繰り返しのような問答。問う者と答える者は逆で、状況も全く違ったが、まるで仕返しのような景色だった。
 けれど、この話には落としどころがない。やがて阿弥は、いじけるように妹紅に背を向けた。
「あ、その目は信じてない目ですね!? いいですよ、もうっ。今日は帰って他の友達と遊ぶことにします」
「あー、待ちなって。どうせ一人じゃ帰れないんだから」
 そのまま竹林の先へ入り込もうとする極彩色の少女。いつもより明るい苦笑を浮かべ、妹紅は立ち上がって阿弥の背中を追いかけた。



「さて、それでは! また明日!」
 いつもの場所まで妹紅が阿弥を送っていくと、発つときの不機嫌さは何処へやら、阿弥はいつもと同じような元気な声をあげて手をあげた。
 取り直すのが早いのか、それとも単純なのか――――そんな阿弥の様子に、妹紅は呆れながら頬をかいた。
「また明日、って。それ、毎日言わなきゃいけないのか?」
 別れるとき、阿弥は決まってその挨拶をする。絶対記憶の瞳を持たない妹紅でも、そう言わなかった日は一日もないと断言できるほどの頻度だった。
「ふふ、だって、言わなかったら妹紅さんが寂しがると思って」
「冗談よしてくれ。来なかったら来なかったでせいせいするさ」
「あっ、それ酷いですよー!」
 妹紅に鼻で笑われると、阿弥は怒ったように腕を伸ばす。
「来るなら次は暮れる前に来て朝に帰ってくれ……。送る身にもなってくれ」
そんな阿弥に、妹紅は追い打ちをかけて文句を言う。
けれど、それは追い打ちとは真逆だったようで阿弥は「ふっ」と黒い笑みを浮かべた。
「送ってもらうために来ているに決まってるじゃないですか、やだなあ」
「……もう来るなよ。送っていくのも一苦労なんだ」
 一転、妹紅が不機嫌になって、いつものように邪慳な言葉を紡ぐ。しかし、今になってはこのやり取りは、一種のおふざけのようなものになっていて、阿弥は妹紅から逃げるように竹林から出ていった。
「えへへ。そう言いながらも、いつも送ってくれるじゃないですか」
「あのなあ、私はお前の相手を明け方までするのが嫌なだけなんだ。勘違いするなよ」
「はいはい。そういうことにしておきます。それでは!」
 憎まれ口をさらりと流し、阿弥が里の方へ走っていく。
 その背中を、妹紅はしばらく見送った。
 実際、妹紅も阿弥を邪慳に扱いたいわけではない。
 ――――それでも、この不死という属性は、彼女に永遠に付きまとう。
 死なないということは、返せば死ねないということだ。
 老いることで死ぬことも、自害をすることもできない。それが意味するのは、彼女意外の人間は全員彼女より先に死ぬという事実だった。
 ならば、誰とも知り合わないほうがいい。誰とも触れ合わないほうがいい。そう思い、ずっと生きてきた。
 ――――だというのに。
「妹紅さーん!」
 妹紅が思考に耽っていると、不意に阿弥の声が響いた。
 顔をあげる。そこには、いつの間にか振り返っていた阿弥が両手を振っていた。
 そして、彼女はこう叫んでくる。
「また、明日ですよー!」
 ――――ああもう。これは仕方ない、仕方ないんだ。
 そう心の中で呟いて、妹紅は阿弥には見えないよう、小さく手を振りかえした。



 季節が一巡り。
 春、夏、秋。阿弥はかかさず、暮れに妹紅の元に訪れた。
 もう憎まれ口も拒否も意味はなかった。いつか阿弥が言ったように、妹紅にとっても阿弥が訪れるということが日常になっていた。
 今日も同じ時間。少しだけ背が高くなり、身体が丸みを帯びた極彩色の少女がやってきた。
「今日は、これです!」
 いつもと同じく、阿弥がお土産を掲げる。
 普通、阿弥が持ってくるのはお菓子やおにぎりのような食べ物ばかりなのだが、たまに花の種や飾り物など変わったものを持ってくることがある。
 けれど、その日はさらに一風変わったお土産で、掲げられたものに妹紅は戸惑いながらも首を傾げた。
「……これって、阿弥の?」
 掲げられたソレは、極彩色の着物が梱包された箱。畳まれた状態では山吹色の羽織しか見えないが、厚みからして同じような着物が五枚は収められていた。
「そうですよ! まあ、私のお古ですけ……ど」
 最初はハキハキとしていた阿弥の声が、次第にすぼんでいく。それはきっと、妹紅の表情を見たからだった。
「その『げーっ』って顔はなんですか」
「……だって、私こんな服着ないし」
 表情そのまま、げんなりとした声を妹紅があげる。
 確かに、この色鮮やかな着物が妹紅の好みではないのは誰が見ても明らかだった。
 妹紅がいつも着ているのは、白いシャツに紅いズボンのツートンカラーの服装だ。比較的地味で、このような派手な着物など着はしないだろう。
「いいんですよ! 一応貰っておいてください」
 それでも、と阿弥がグイと着物の入った箱を押し付ける。
この一年で妹紅の拒否力も大分落ちたらしく、押し付けられたそれを渋々と受け取った。
「……ふむ。まぁ、確かに風除けくらいにはなるかもしれないな……」
 箱の中を覗き見ながら、妹紅が小さい声でぼやく。
「……なんとおっしゃいました?」
「あ、いや、ちが、そう! そういえばだ!」
 けれどそれが失言だとすぐに気付いたのか、誤魔化すようにして違う話題を口にする。
「結局、私が助けた子の名前は聞けたのか?」
 慌てて引き出したのは、もう一年も前の話題。流石に誤魔化しきれないか――――妹紅が心中で冷や汗を流す。
 しかし、どうやら絶対記憶を持つ阿弥にとっては一年という時間など些事とでも言うように「ああ!」と快活な声をあげた。
「しっかり聞けましたよ! えーとですね――――」
 機械が壊れてしまったかのように、急に阿弥の声が止まる。唇に人差し指を当てたまま、どこか明後日の方向を見て固まっていた。
「……どうしたんだ?」
 訝しげに妹紅が問う。その声を受けてやっとのこと動き出した阿弥は、しばらく妹紅の顔を見つめた後、口を開いた。
「――――やっぱり、言うのやめました」
「はぁー?」
 あんまりな阿弥の言葉に、妹紅が奇声をあげた。
 ふざけるな、という雰囲気を醸す妹紅にもおかまいなしに、阿弥はずいと顔を寄せて言う。
「本人から直接聞くべきですよ! 里の空家はまだ住居人を探し中ですから!」
「あのなあ……それは行かないって何度も言っているだろ?」
 その言葉に急激に冷めたのか、妹紅がトーンを落としてかぶりを振る。この一年、その話題が上ることは数度あった。大抵のことを受け入れるようになった妹紅だが、里へ移れという話だけは、どんなに諭されても首を縦に振ることはなかった。
「どうしても、ですか?」
「どうしてもだ」
 今日も同じく、阿弥が問う。対して妹紅も、同じ答え。
「こんなにお願いしても、ですか?」
「ダメだ。私はここから動かないよ」
 いつものようにまだ食い下がらずに、阿弥が説得を続ける。そしてもちろん、妹紅も同じ答え。
「――――そうですか」
 そして、阿弥が引き下がる。これもいつもと――――
 ――――あれすんなり諦めた……?
 引き下がって黙り込む阿弥に、妹紅が小さな違和感を覚える。いつもならこの後三つ四つは言葉責めをしてくるはずだった。
 それが、今日に限ってない。
 断ると決めている妹紅にとっては嬉しいことだが、同時に心配になるような異常だった。
 普段と違った問答に妹紅が戸惑いから抜け出さないままでいると、阿弥が腰をあげた。
「今日は、このくらいでおいとますることにします」
「え、あ――――うん」
 いつもより早い帰り。それに対して問いただすことも出来ずに、妹紅は曖昧な感情のままに頷いて立ち上がった。
 今までと同じように、竹林の中を進む阿弥の後ろをついていく。
 けれど、そこに会話はない。
 ――――なんだか、居心地が悪いな……。
 何か声をかけようとしても妹紅には話題が思いつかなかった。
 いつも、阿弥から話題を振られていた。里のことを話されたり、過去に起きた伝説のような話や、妖怪のことなど。
 結局、その日は妖怪も現れずに、ほぼ無言のままに里の前までたどり着いてしまった。
「今日も送ってくれてありがとうございました」
 ぺこり、と阿弥がお辞儀をして、背中を向けようとする。
「あ、阿弥」
 今までずっと口を噤んでいた妹紅。久方ぶりに開いた口は凍え渇いていて、うまく動いていなかった。
 けれど、今言わなければ何かが崩れてしまいそうで怖くて、妹紅はかじかんだ唇のまま言葉を紡いだ。
「な、なんだか、今日は不機嫌にさせたようで悪いな……」
 妹紅が少しだけ頭を下げて謝る。この一年で、初めての行為。そのせいか、どこか消沈していた阿弥も目を丸くして驚いた。
「あ、いや、不機嫌だなんて……。ちょっと、私が今日は元気がないだけです」
 やはり、いつもよりは光の薄い笑みを阿弥が浮かべる。
 その笑みは、妹紅が里に行けば戻るのだろうか――――一瞬だけそう考えた妹紅は、口を開きかけて――――やめた。
「でも、大丈夫です。妹紅さんが心配してくれたので、少し楽になりました」
 ひょこり、と阿弥が控えめに竹林から飛び出る。そうしてもう一度振り向いて、妹紅に対してまたお辞儀をした。
「では――――さようなら」
「……?」
 その挨拶に、妹紅は言い知れぬ感覚を覚えた。
 何かが足りなかったような、そんな、不思議な感覚。
 けれどその感覚の答えは出ず、阿弥は振り返って里の方へと歩んでいく。ザッザ、と阿弥が草を踏むその足音が、何故だか妹紅を焦らせた。
 ――――なんだ? さっきの違和感……。
 探せど、答えは出ない。
 いつもより阿弥の元気がないからだろうか?
 それとも、問答のときの違和感が引きずられているからだろうか?
 もしかすると、着物を手渡された時からずれていたのかもしれない――――
 そこまで考えて、妹紅は自分の思考のおかしさに気付いた。
 ――――違う。
 ごちゃごちゃした頭を正すように、妹紅は短い言葉で思考を否定した。
 ――――全部、おかしいんだ。
 こんなにおかしいことがいくつもある。冷静に考えたならば、それ自体が既に、異常だった。
 ――――……! そういえば……!
 そして気付く、最大の特異点。
 気付いたときには既に、駆け出していた。
「阿弥ッ!」
 妹紅が大声をあげ、目前を歩く極彩色の少女を呼び止める。
宵闇に響いた声に彼女は一度だけビクリと肩を揺らすと、ゆっくりと妹紅の方へ振り向いた。
「妹紅……さん?」
 その表情は今まで見たことのないような、恐怖に塗られていた。けれど次の瞬間、見せてしまったその一瞬を誤魔化すように、阿弥は満面の笑みを浮かべていた。
「もしかして、やっと人里に来る気になったんですか? 良かった、ああでも――――」
「阿弥」
 名前を呼ぶだけで、阿弥の言葉は容易く千切れた。そして、その満面の笑みにも、妹紅は悲しそうな視線を投げかけた。
「なんで、目を合わせてくれないんだ」
 思えば、あの最後の問答からだった。
 阿弥は、一度も妹紅の表情を見てはいなかった。それはそもそも、着物を渡してきたときからだったかもしれない。阿弥の様子がおかしかったのは。
「私の癖とか表情で、私の気持ちが分かるって言ってただろ。なんで見ないんだ」
「それは……」
 阿弥が口を開く。漏れ出でたのは、いつもの阿弥からは想像できないほど拙い言葉。それ以上続くことはない、仕方なしの言葉。
 快活で、なおかつ威厳のあったかの少女からは、決して紡がれないはずの言葉だった。
「阿弥」
 もう一度、妹紅が少女の名を呼ぶ。
 そして、紡ぐ。妹紅が覚えた違和感の、最大の言葉を。
「なんで――――『また明日』って言ってくれなかったんだ」
 言わなければ妹紅が寂しがると言ったのに。
 三百六十五日、かかさずかけ続けてくれた言葉だというのに。
 それを言わないのは、それは、それはつまり――――
「……何か、私に隠しごとしているんだろ」
 その声は、震えていた。かじかみとは違った理由で。
 また明日――――その言葉を言わなかった意味を、理解してしまったから。
「もう……会えないのか?」
 信じたくはなくとも、妹紅は問う。気付かない間に流れていた涙も拭かずに。
「そんなこと――――」
「嘘はやめてくれッ!」
 無理矢理な笑みから紡がれた阿弥の言葉を、妹紅が遮る。
「これだけ付き合っていれば私にだって分かるよ……。今の阿弥、嘘をつくときの顔してる」
 その言葉は、半分嘘だった。妹紅は絶対記憶の目など持っていない。阿弥が嘘をついた顔だって、本当は知らない。けれど間違いなく、今の阿弥は嘘をついている顔をしていた。
 妹紅の言葉に、阿弥は驚いた表情を浮かべ――――そしてやがて、諦めるようにかぶりを振った。
「……私はね、転生体なんです」
 ゆっくり、阿弥は言葉を紡ぐ。
「死んだら、また次の身体を用意される。記憶は特別なものしか引き継がれないけれど、この記憶能力の術を引き継いで移る」
 淡々と、突拍子もない話を続ける。その間、妹紅は相槌一つ打たずに聞いていた。
「でも、それは人としては越権行為。だから、本当に死んでしまうずっと前から閻魔様に許しを請わなければならないんです――――今から、その奉仕に行ってきます」
 最後に、阿弥が笑みを浮かべた。そしてその頬の両筋に、ポツリと一縷の涙がこぼれた。
 普通に考えれば、信じられない話。
 不老不死と同じような、実証がなければ訳の分からない話。
「……じゃあ、もう会えないんだね」
 けれど、妹紅はすんなりと信じた。阿弥が、嘘をつくような顔をしていなかったから。
「せいせい、しましたか」
 あはは、と茶化すように阿弥が笑う。さっきよりちょっとだけ、明るい笑み。妹紅は少し、いつもの阿弥が戻ってきてくれたようだと思った。
「……馬鹿」
 しかし、自分はいつものように振る舞えない。この場で憎まれ口を叩くことなんて、できやしない。
「そんなわけ……ないだろ……」
 本音が口をつく。それは――――一年間ため込み続けていた感情だった。
「皆私より早く逝く……。でもお前は……早すぎるよ……」
 不老不死は死なない人間じゃない。死ねない人間だ。人間でありながらも、人間と同じ時間を生きることは出来ない。
 常に残され、常に悼む側に回される。その悲しみは、耐えられるものじゃなかった。
「大丈夫、明日からは代わりの子が行く予定です。寂しくなんてありませんよ」
「お前以外の奴と仲良くなっても、仕方ないだろ……」
「心配しないでください。きっと、私よりずっと、仲良くなれます」
 阿弥が妹紅のことを抱く。こんな風に触れ合うことは、一年経とうと初めてだった。気付けば何回りも小さい華奢な身体を、妹紅は強く抱き返した。
「そんな顔、しないでください」
 抱き合っていては見えないはずだというのに、阿弥は耳元でそう囁いた。
「もしかすると、閻魔様があっさり許してくれて、明日にでも帰ってこれるかもしれません」
 そうして身を離すと、阿弥はいつもと変わらない――――ように見える笑顔を浮かべ、そんなことを言う。そんなことはありえないと、知っているはずなのに。
 それはきっと、優しい嘘だった。
「本当かな……」
「本当ですよ」
「また、会えるかな」
「大丈夫ですよ、またすぐに会えます」
 いつかの問答を繰り返して、阿弥は妹紅に笑いかけた。
「だからやっぱり、私たちの別れはこの言葉が一番良いと思うのです」
 もう幾度と繰り返した言葉。
 今日も変わらず、彼女は言う。
 阿弥はもう一度だけ繰り返して、最期に優しい嘘を吐く。
 優しい優しい、嘘を吐く。
 涙ながらに、悲しいながらに。
「――――また、明日」


  ▼


 白昼に浮かんでいた月は、背景を黒夜に変えて浮かんでいた。
 日もすっかり暮れてしまった夜。流石に春の陽気になってきたと言えど、この時間は酷く冷え込む。
 東側の回廊で、爛々と光る月を見上げる。魔理沙さんに盗まれた私の本はまだ手元に返ってこない。
 思えば、魔理沙さんももう一介の対妖怪スペシャリストだ。一筋縄ではいかないのかもしれない。
 明日あたり、霊夢さんでも捕まえてけしかけるか――――そんなことを考えていたときだった。
 コン、コン。
 こんな夜更けに、何かを叩く音が響く。一体何の音だろう。そう思って、そちらの方へと顔を向ける。
「これはもしかして……」
 勘づくと、すぐさま外履きに履き替えて屋敷の外に出る。すると、そこには見覚えのある白銀の影があった。
「妹紅さん!」
「良かった、起きてたか」
 私の姿を見ると、妹紅さんは安堵するように吐息を吐いて取り返してくれたのであろう本を掲げた。
「……ごめん、あいつすばしっこくてさ。すっかり夜になっちゃったよ」
「わあ!」
 手渡され、歓喜の声と共に本を受け取る。幸い、本は盗まれた当時と同じ姿で、どこも欠けてはいないようだった。
「いやあ疲れた。今日だけで幻想郷一周したんじゃないかな」
「本当にお疲れ様です! ありがとうございま――――」
 お礼を言おうとして、声が固まる。
その原因は、妹紅さんの格好だ。白いシャツは泥まみれ。弾幕勝負の結果か、ところどころが煤けている。履いているズボンも何があったのか片足が酷く千切れていて、白い素足を晒している。いや、本当に一体何があったのだろう。
「……あの、妹紅さん」
 おそらく言葉以上の苦労をしてきたのだろう。流石に、取り返して貰って言葉一つで片付けるのは心が痛んだ。
「このお礼がしたいので、また明日こちらにいらしていただけませんか? 今日は更けてしまっているので……」
「……。」
 私がおそるおそるにそう話すと、妹紅さんが信じられないものでも見るような顔で私を見た。
「……えっと、どうしました?」
 何か粗相でもしてしまっただろうか。声をかけると、妹紅さんは固めた顔を微笑みに変えて首を振った。
「……いや、なんでもない。分かった、明日阿求の屋敷に行けばいいんだな?」
「はい! 御足労煩わせますが、申し訳ございません」
 本当は妹紅さんの住んでいる場所に私自身がお礼を持っていくべきだろうけれど、残念ながら私の身体は人並以下。妖怪が跋扈する竹林を抜ける術を持たない。
 妹紅さん自身に送っていってもらえるならば問題ないけれど、それでは元も子もない。
「気にしないでいいよ。それにしても、阿求――――お前、最初から私のことを『妹紅さん』って呼んでたか?」
「……?」
 突然の問いに、首を傾げる。呼び方、呼び方……。過去の記憶を洗いだして、妹紅さんのことをなんと呼んでいたか思い出す。
 ――――『妹紅さん』だった。
「え、あっ、すみません! 私ったらつい下の名前で慣れ慣れしく……!」
「いいや、いいよ。私も阿求って呼んでいるし、お互い様さ」
 思わぬ非礼に慌てふためく。けれど、妹紅さんはそんな私を見て笑って許してくれた。
「あ、ありがとうございます」
 助けてくれた上に、寛大だ。これが不老不死というものなのだろうか、某魔法使いや某紅白巫女にも見習ってほしいくらいだった。
 それにしても、もう夜も更けている。これ以上話こんでしまうのは、きっと妹紅さんにとっても迷惑だろう。話題を切ろうと、別れの挨拶をしようと口を開く。
「では、また明日に!」
「……、」
 私がそう言うと、妹紅さんは一瞬だけ表情を固めて――――どこか嬉しそうな表情を浮かべ、私の言葉を繰り返した。
「――――ああ、また明日」
今日この企画を知ったので、急いで書きました。
嘘が主題というよりは、優しい嘘を言わせたかっただけです。題目外ならば申し訳ございません。
少しでも感動していただけたならこれ幸いです。
空星ながれ
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コメント



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1.5あらつき削除
シンプルに良い話。
2.10mayuladyz削除
感動してうれションまで
するところだった(´;ω;`)

ここからはちょっと気になった事を
好みの問題なので参考程度に

まずタイトルにテーマの「嘘」を用いた為
少々インパクトに欠けていたと思う
もちろん悩んだ末のタイトルだと思うが
私なら印象に残った言葉
「また、明日」と付けたと思う

それから
文章は細かく丁寧で申し分ない
作者の表現力は素晴らしいと思う
ただ、少々くどいように感じた

極端な例だが
「山」 「川」
「?」 「おk (´・ω・`)V」
と場面によっては情報を不足させて
読者に委ね(情報を補完させる)
ても面白かったと思う

それから
テーマの消化について申し分ない
むしろもっと外れても問題ないと思う

急いで書いたにしては完成度が高く妬ましいくらいだ
これからもみんなを楽しませてくれV(`・ω・´)V
3.2エーリング削除
不死人と転生体の交流。まとまってはいます、ただテンプレすぎる
4.7名無削除
もっと読んでいたくなる温かい感じが好きです
5.5がま口削除
そういえば妹紅さんも縁起に記載がありますが、ほとんど謎の人扱いでした。
過去に阿弥とのこんな切ないやりとりがあったなんて……
もう百年も前の優しい嘘を未だに忘れず、今宵ようやく報われたんですねぇ。
6.5みすゞ削除
阿求×妹紅もいいですね。
7.6ナルスフ削除
新解釈すなあ。
ストーリーライン自体はよく、最後のほのかな前世のデジャヴで綺麗に締められてると思いました。
しかしこれ、阿弥さんである意味が若干薄かったかなあと。
阿弥さんが妹紅に入れ込む理由が薄いし、幻想郷縁起も関わってこないし、不老不死と寿命が短い人間と言うせっかくの対比も最後の会話だけで、これはもうちょっと掘り下げようがあったろうにと思います。
時間がなかったのが惜しまれるか。題材は良かっただけに、残念。
妹紅が丸くなった理由よりも、阿弥さんがああいう性格になった理由の方が気になる。なんか極彩色だし。
あと本当にどうでもいいんですが、火が燃える時のパチパチという音は焚き木から出てると思うんですが、焚き木もないのになんでそんな音が鳴るのかが割と気になりました。
8.5道端削除
 昔にあった、阿弥と妹紅の交流と「優しい嘘」。
 しっとりとしたハートフルな話で、読後感がいい、素敵な話でした。
 
 でも全体的に、読みにくい、かな。
 序盤から凝った描写が多くて、どうしてもすんなりと頭の中に世界観を構築できず、苦労してしまった。慣れたらすらすら読めたので途中からは気にならなかったですが。

 阿弥が可愛い。けど、妹紅にそこまでほれ込む理由があんまし説明されていなかったのがちょっと心残り。出会いのきっかけは妖怪退治のお礼なんだろうけど、阿弥は妹紅のどこに惹かれて押しかけるようになったんだろう。
9.9名前が無い程度の能力削除
気持ちよく読めました。スッキリする。
10.6生煮え削除
阿弥の出てくる話は何作か読んだ事ありますが、こういう快活な人物に描いたのはなかなか新鮮で楽しめました。稗田をテーマにした作品らしい品のある語り口も、阿弥と妹紅のゆっくりとした交流もよく描けていたと思います。ただとても残念なのが、阿弥と妹紅の別れの場面に至っても不思議と心が動かされない。どこか物足りない気さえする。
恐らくですが両者が長い時間を共有して掛け替えのない存在になっていったということに読者はいまいち実感が湧かない。具体的に言うと二人の交流に割いた文字数もしくは描いたシーンが足りなかった。その下準備の溜が少し不足していたために感動的な別れの場面で、いまいち感慨が湧いてこなかったのだと思います。とてもいい話というか好きな感じの話なんですけどね。
11.2きみたか削除
この場合、阿求に記憶の断片が残っているのは何かの失敗なのか、それともいい話的な奇跡なのか。いいことなのか悪いことなのかもちょっと悩んでしまうところです。てか阿弥の時代に妹紅は知られていないのではなかったでしたっけ?
12.6名前が無い程度の能力削除
うーん、阿弥ちゃん可愛いなぁ
妹紅との交流も面白かったので、もっと阿求とリンクさせる現在のシーンが多くても良かったのでは、と思いました
ところで途中で稗田阿礼=藤原不比等を匂わせるシーンがありましたが、これが本当だとするとパパの魂を持った女の子と逢瀬を楽しんでいたことになるのでは…?
13.5時間が足りない!削除
こういうストレートな話は結構好きです。
ですが、やはり何度も読んだ事があるような話ですので、もう少しオリジナリティが欲しいという感じがします。
14.6K.M削除
十分にお題を満たしていると思います。