第十二回東方SSこんぺ(嘘)

幻想郷嘘々四方山話顛末

2013/10/27 23:53:59
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「むぅ……差し入れでもらった焼き貝をついつい食べ過ぎたせいか少し眠い……眠気を取り除くには眠るのがいいというけれど」
 昼下がりの三途の河の岸、船のすぐ傍らで渡し守である小野塚小町は目をこすりつつ眠そうな声を上げた。
「――――」
「そうかい? それじゃお言葉に甘えて少しだけ寝させてもらおうかね。確かにお前さんも船漕いだ船で転覆とか嫌だろうしねぇ」



「――――――――」
「いや、お前さんが悪いんじゃないんだ。少しだけ仮眠のはずがぐっすり寝ちまったのが悪いんだ、が……さてどうしたものか…………」
 夕闇の迫る中、きっと疲労が溜まっていたんだろうなとどこかで言い訳がましく考えながら。
 結果的にサボリとなってしまった小町は頭を抱えるのであった。

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                      些細な一言が嘘となることもある。

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 白玉楼にて。
「妖夢見て見てこのチラシ。優良な選ばれた団体限定で、このマリサ資金って所から低金利でお金貸して貰えるんだって」
「……」
「ただし手付金として先にお金が少し要るんだけれども」
「幽々子様」

 命蓮寺にて。
「見てくださいナズーリンこの壷。試供品なんですけれども持っていると幸せになれるらしいですよ」
「……」
「そして、これを売る相手を見つけると今度は販売価格の一部がマージンとして」
「ご主人」

 異空間にて。
「大変ですぞ太子様! 先ほど連絡があったのですが太子様が里の上空で入道と接触事故を起こしたと!」
「……」
「注意力散漫だと悪評が立つところ、今なら示談金を振り込めば醜聞が広まることなく内々に済ませられるとの事です!」
「布都」



「M資金詐欺をご存知ですか?」

「ねずみ講というシステムを知っているかね?」

「世の中には振り込め詐欺という手口がありましてね」

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                      美味い話は大概嘘である。

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「うあぁぁぁまずいまずいまずいまずい!!」
 妖怪の山の自室にて、射命丸文は外聞を寸毫も気にすることなく頭を抱えて床を転げまわっていた。
 事の起こり、そして理由は非常に単純な事である。
 まず先日の宴会の席で、伊吹萃香と席が同じになった際『最近珍しい酒を手に入れて飲んだ』と話したことが発端であった。
 舶来のウェクーというらしいそれを飲んだが故の世間話の後、萃香に『珍しい酒とは聞き捨てならない、飲ませて欲しい』と頼まれたのである。
 文はそれを了承したのだが、その宴会で既にかなりの量を飲酒していた文はすっかり忘れていたのである。
 宴会開始前、景気づけということでそれを飲み干してしまっていたという事を。
「ああああああぁぁぁぁぁ!!」
 つまり萃香にその酒を渡すということが不可能となってしまっているのであり、結果として嘘をついてしまった事になっているのである。
 鬼に対し嘘をついた場合、その後どうなるかは……想像に難くない、いや、想像したくないものである。断じて。
 不幸中の幸いというべきか酒の種類は発言していないので、それ以外にも珍しい酒であれば『珍しい酒を飲ませる』という約束を遵守することは可能である。
 しかしウワバミである萃香に対し、妖怪の山や人里で一般的に手に入るようなものでは既に飲んだ経験がある可能性が高い。
 その場合満足してもらえない公算もまた非常に高いのである。

 と、にっちもさっちもいかなくなり現実逃避で転げまわる文に会いに来た者がいた。
「文様、少々よろしいでしょうか?」
「……あぁ、椛ですか。私が死んだら灰は風に撒いてください。風となって幻想郷を翔け巡りますので」
「何を言い出すんですかいきなり。それよりも先日、慧音さんに頼んだ件の調査結果がきてますよ」
「調査結果? あぁ、あれですか」
 流転を止め立ち上がり、とりあえず応対をする。
 少し前から山の一角で妙な匂いがするという報告が有り、それについて色々なことに詳しい人里の賢者に調査依頼を出していたのである。
「はい、これが報告書です」
「ふむふむ……これはこれは…………これだ!!」
「わっ!? なんですかいきなり今度は大声を出すなんて」
 あわよくば何かの記事になればという魂胆での依頼だったが、それが今回彼女を救うこととなった。



「ほほぉう、確かに珍しいというのは正しいね。味は未知数だけれども確かに珍しい」
「いやぁ、約束を守ることができて私もホッとしています」
 萃香が興味津々という様で見ているそれは、猿酒であった。
 猿が木のウロに木の実を溜め込み、それがいつの間にか発酵し酒となった物を猿酒という伝説がある。
 現在では樫の実や団栗から作る酒を米から作る酒と区別するためにその名を用いるが、今目の前にあるのはその伝説の方の酒であった。
 これが異臭の元であり、慧音の届けてきた報告書はそれの存在と位置を報告するものであったのである。
「本当に全部貰っていいのかい?」
「はいどうぞ、もちろんです」
 嘘を真実に変えることができ、文はホッと胸をなでおろすのだった。

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                      嘘から真が出ることもある。

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「すみませんにとりさん、配電システムのことで相談が……あ、すみません来客中でしたか」
 神奈子の指示でにとりの住処にやってきた東風谷早苗は、まず来客中であったことに侘びを入れた。
「いや、気にしなくていいよ。こっちは長引きそうなんでそっちを先に。いいだろ、盟友?」
「あぁ……あ、そうだちょうどいいし少し手伝ってくれないか? こっちの質問に全部『はい』か『Yes』で答えてくれればいいんだ」
「はい?」



「じゃあ次からはヒューズの材質を変えるということで、O.K.かな?」
「はいそれで大丈夫と思います。ところで、さっきの質問の後からずっと魔理沙さんがいじっているその機械は……」
 自分の要件を済ませた後、早苗は自分の好奇心からの質問をした。
 にとりとの話し合いの前に、先客であった霧雨魔理沙の頼みで機械から伸びたコードに触れた状態でいくつかの会話をしていた。
 内容は『森近霖之助は女性である』『冬は夏よりも寒いと思う』などの当たり前の内容に対し常に肯定で答えるというものだった。
 それを踏まえての早苗の言葉に対し、魔理沙は手を止め振り返りにやりと笑い答えた。
「外の世界から来たお前さんなら知っていてもおかしくはないな。嘘発見器って装置だ」
「堀川雷鼓って付喪神に、外の世界の魔力を得た時のアレコレを聞いた時たまたま話題に出たんで実際に作ってみたんだよね」
「そうそう。機械+魔法のお陰で多分外の世界のそれよりも高性能なはず、なんだが……」
「結構うまくいっていたんだけれど、一部の面々にはどうにも効かないみたいなんだよねぇ……」
 最初は自信あふれるテンションでしゃべる魔理沙とにとりであったが、徐々にテンションが下がっていってしまった。
 どうやら自慢の逸品の不備がどうにも心にトゲとして引っかかっているらしい。
「と、言うとどういった場合に?」
「とりあえず、八雲紫とか八意永琳とかああいう一定ライン超越しちゃってるようなのは無理だな」
「魔力的ゆらぎとか一切出ないくらいに自分を完全に管理しちゃってるから……それはまあ探知方式上仕方ないんで諦めたんだけれど」
「問題は氷精とか地獄鴉とか……」
「温度差によって機械が作動しないとかですか?」
「いや、そうじゃないんだよな。なぁにとり?」
 とりあえず思いつきで述べた早苗の意見は、あっさりダメ出しされてしまった。
「そのあたりはちゃんと対策済みさ……問題は、一部の質問で嘘に嘘と反応しないんだ」
「例えば『昨日の弾幕ごっこで勝ったのはどちらか』とか『宴会があったのは3日前であるか』とか、な」
「……それってもしかして」
「心当たりあるのか!?」
「教えてくれ! 機械の構造にミスはないはずなのに何故こうなるのか全然わからないんだ!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」
 隘路を照らす僅かな光明かもしれない早苗にすがりついてきた二人にやや怯えつつ、二人を宥めてから早苗は思いつきを述べ始めた。
「昔に推理クイズの本か何かで読んだんですけれども、ポリグラフ……あ、すみません、嘘発見器には感知できないタイプが2種類いるんだそうです」
「2種類? 片方は紫とかのタイプか?」
「おそらくそうなると思います。まず片方は、自分自身を完全に制御できるか自分自身すら騙すタイプ」
「ふむふむなるほど」
「そしてもうひとつは……その、言葉が悪いのですけれど健忘症というか完全に記憶から抜け落ちるタイプです」
 しばしのしじま。
 お互いに顔を見合わせ、3名は全員が同じことを考えていることを悟った。
「なるほど、前の勝負でどっちが勝ったか忘れてりゃそら嘘をついたという自覚もないわな」
「こりゃ機械の調整とかでどうこうよりも、一緒に行動した人に聞き込みとかしないと嘘の検知は無理だなぁ……」
「あの、なんだかごめんなさい」
「いや早苗は何も悪くないぜ」
 空気に耐え切れず謝りだした早苗をフォローした後。
 どうにもならない根本的な壁に対し発明コンビは大きく嘆息するのであった。

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                      嘘発見器を素通りする嘘もある。

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「村はずれの牛小屋の近くに狼の妖怪が!!」
「そうか、とりあえずこれを握って復唱してくれ。さんはい」
「村はずれの牛小屋の近くに狼の妖怪が!!」
「……どうやら嘘ではないようだな」
 上白沢慧音は、この鬼人正邪という妖怪を信用していない。
 『人の嫌がることを進んでやる』を悪い意味で体現したかのようなこの少女は、最近人里にちょくちょく出没している。
 裕福そうな商家にチラシを配ったり壺を売り歩いていたりしているらしいのだが、詳しいことはまだ判明していない。
 時折人の役にも立っているらしいのだが、前の異変を考えれば人を信用させるための演技とも考えられるので胡散臭さMAXである。
 故に、上白沢慧音は、この鬼人正邪という妖怪を信用していない。
 霧雨魔理沙経由で入手した嘘発見器を通したのは当然の対応と言えるだろう。
 ちなみに、このポリグラフが小物妖怪である正邪に通用することは事前に確認済みである。
「牛が喰われたりしては痛手だな」
 近くにいた者に正邪が部屋の中で悪戯しないよう見張ってくれと言伝し、慧音は急ぎ現地へと飛んだ。

 押っ取り刀で駆けつけた慧音が見たものとは!
「すみません慧音さん。人里へ行くならついでに嘘発見器の調子を聞いてきてほしいとにとりに頼まれまして」
 行儀よく対応する白狼天狗の犬走椛であった。
「それとこちらが、メインの用事。文様から先日の謝礼ということで山で採れたアケビです。どうぞ」
「……これはどうも、わざわざ来ていただき痛み入ります」



 頂いたアケビを美味しく頂戴した翌日。
「村はずれの牛小屋の近くに狼の妖怪が!! ちなみに山の白狼天狗じゃありません!!」
「そうか、とりあえずこれを握って復唱してくれ。さんはい」
「村はずれの牛小屋の近くに狼の妖怪が!! ちなみに山の白狼天狗じゃありません!!」
「……嘘ではない、と」
 さながら昨日の繰り返しのように現れた天邪鬼に慧音もまた同じ対応をした。
 違う点があるとしたら、それは狼が白狼天狗ではないと補足がついたことだろう。
「嫌な予感しかしないのだが」
 それでも被害が出る可能性を考えると無視することはできない。
 今日もまた見張りを頼み、慧音は現場へと空を駆けた。

 可及的速やかに駆けつけた慧音が見たものとは!
「すみません、赤蛮奇にわかさぎ姫からのおすそ分けを届けにきたのですけれど……こちらは貴女宛てです」
 湖で採れたのだろう、大量の淡水貝を抱えた今泉影狼であった。
「コレハ、ドウモワザワザアリガトウゴザイマス」
「…………凄い顔していらっしゃるけど、大丈夫ですか?」

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                      嘘は人を騙すのに使えるが、人を騙すのに嘘は必須ではない。

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 朝の日差しが眩しい博麗神社境内、霊夢は萃香と共にお茶を飲みまったりと過ごしていた。
 ちなみに、萃香はお茶でもいつものひょうたんのお酒でもなく鴉天狗から貰ったという酒をちびちびと飲んでいる。
 弛緩した空気の中、萃香が思い出したという風に口を開いた。
「そういえばさぁ、霊夢」
「何?」
 簡素に返事をしたあとで霊夢はお茶を啜り。
「霊夢って男の子なの?」
 毒霧のごとく盛大に噴出した。

「うわ、汚いなぁ」
「そんな事はどうだっていいのよ! 何? なんなの一体藪から棒に!」
「最近の噂だよー。男の子は女の子より強い、って枕がついた上でとても強い霊夢って男の子なんじゃないかって話」
「なんでそんな明らかな嘘話がまかり通ってるのよ!」
 両手で萃香の両肩をつかみガクガクと揺さぶり絶叫する霊夢。
 対照的に、萃香はいつもと変わらぬトーンでどこか笑いを堪えながら回答を続けた。
「いやそれがさ、大体の人は最初嘘だろと考えても、しばらくするとさもありなんって納得しちゃうらしいよ」
「なんで!」
「桁外れに強いから、何か理由があると納得しちゃうんじゃないかねぇ……ご愁傷様」
「なんでよーーーー!!」
 もはや悲鳴と化した叫び。
 しかしこの場にそれに答えるものはついぞ居ないのであった。


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                      大きな嘘ほどバレにくい。

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「頼まれた事、判ったわよ霊夢!」
 博麗神社に飛来し境内に降り立った八雲紫は開口一番、用件を叫んだ。
「本当!? それで出処は!?」
 そして霊夢は霊夢で待ちに待った者が来たという喜びで感情のボルテージをカチ上げた。
 彼女、博麗霊夢は『実は男では?』という身も蓋もなければ根拠もないという噂を流され風評被害の真っ只中にあった。
 そこで紫に依頼しその原因を調べてもらっていたのである。
「私の頭脳にかかればこの程度雑作もなかったわ……端的に言うと、チルノと霊烏路空よ」
「……なんだか嫌な予感が全力で駆け巡る組み合わせね」
「最近魔理沙とにとりがある実験をしていて、大勢に色々質問をしたのだけれどその中にさっきの2名がいてね」
「魔理沙と河童……こっちも後でとっちめないとダメかしら」
「受けた質問の中に、間違いである質問として『博麗霊夢は男である』という物があって、それを変な風に記憶した上で」
 ここまで喋った紫は、軽くため息をついてから言葉を続けた。
「細かい部分忘れて、間違いじゃなくて正解と誤った情報を記憶しちゃってそこらじゅうで話をしたらしいわ」
「…………」
 今度は一つ霊夢が大きなため息をついた。
「人の噂も75日というけれども、情報源がまた消えたあたりで再度この内容をバラまきかねないわね……」
「そういえばここに来る途中、湖畔で新聞記者がいるのを見たけれど」
「……なるほど、そういう手もあるわね。それにしてもさすが紫ね」
 湖に向かって飛び立つために浮きつつ、霊夢はその前にというように紫に感謝を述べた。
「どんな頭の使い方したのかさっぱり予想もつかないけれど、こんな短い期間で噂の原因突き止めるなんて。ありがとね」
「いえいえ、どういたしましてー」



「ねぇ藍様」
「なんだ、橙」
 境内の端の階段にて。妖怪の式と妖怪の式の式は二人並んでそこに座っていた。
「紫様は確かに頭脳明晰だけれども、今回の件に関しては私達の地道な聞き込み調査による解決ですよね」
「ちょっとした見栄、だろうかな。そして案の定というか、霊夢に褒めてもらって嬉しそうにしておられる」
「……式の式としては、黙っているべきなんですよねきっと」
「霊夢の風評被害と違い、誰かが傷つくわけでもないしそれが妥当であろうな。紫様が喜んでいただけるのであれば我等がすることは一つ」
 ふと上を見上げれば高い空。はるか上空に白い雲が流れていた。

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                      嘘だと判っていても、それを見逃すのが平穏となることもある。

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「今、捕まったらそのおでこなんて目じゃないくらい……全治3ヶ月ぐらいの目には合うかもね。なんでも最近嘘でひどく不愉快な目にあったらしいから」
「……で、なんでそれを私に教えてくれるのかねわざわざ」
 草木も眠る丑三つ時、静謐が支配する寺の屋根の上でぬえは正邪と密会をしていた。
 正邪は現在額に絆創膏を貼っているが、これは『狼が来たぞ騒動』のあとで『一発だけやらせろ』とワーハクタクに頭突きをくらったからである。
 とはいえ、かなり加減がされていたのかダメージは大したことないのであった。
 閑話休題。
「私もアンタほどじゃないけれど人様が困っているのを見るのが大好きでね」
「ふぅん?」
「彼女の怒りとて永続じゃない。数字はあくまで例えだが、3日後に何かやらかして3ヶ月アンタが安静という事になって平穏になるよりは」
「1ヶ月空けて何かやらかして1週間大人しくして、また何かやらかしたほうが頻度的には高くなる、と?」
「そういう事。ま、お前さんが感謝されるのが嫌いなのは知ってるし感謝はしなくていいよ。私は私で自分が傷つくことなく楽しいこと見たいだけの利己的な理由で動いてるんだからさ」
 言葉が途切れ、本来の夜の世界である静寂が訪れる。
 月と星の明かりは暗く、表情の伺い知れぬしばしの間の後、先に言葉を紡いだのは正邪だった。
「筋は通っている、か」
 そう一言だけ呟くと、屋根を飛び降り夜の帳へと消えていった。
 見届けた後、ぬえもまた屋根の上を後にした。



「どう? うまくいきそう?」
「それはちょっと分からないね。あまり深く突っ込むと不審がられるし」
 寺の屋内へと帰ってきたぬえを迎えたのは、聖だった。
 今回、ぬえは信者が詐欺に遭いかけた聖から『正邪をしばらくでもなんとかできないだろうか』と相談を受けて先の密談をセッティングしたのであった。
「ただ手応えは感じたね」
「正体不明の種も仕掛けもないのに、行動を誘導できるものなのですか?」
 怪訝な表情を見せる聖に対し、ぬえは真意を読み取りにくいかすかな笑いを浮かべた表情で返事をした。
「確かに私は殆ど嘘をついていない。けれど、嘘も混ざっている」
「それがコツなのですか?」
「騙す側は、騙すため常に考えを巡らせている。故に考えすぎることがあり、得てして嘘の上手い者ほど実は騙されやすいってね」
 それだけ言うと、ぬえは改めて寝るべく寝床へと入っていった。



 その後、しばらく鬼人正邪は大人しかったというが、それが次の事件の潜伏期間なのかあるいは本当に博麗の巫女を恐れて静かだったのかは定かではない。

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                      真実が、隠し味として嘘に真実味を与える。

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「すみませんでした、私、実は嘘ついていましたわ」
「ほほぅ、それはなんですか?」
 新聞記者である射命丸文は、ある日わかさぎ姫に自白したい事があると湖に呼び出された。
 煩悶の種から解放され心機一転取材に励もうとした矢先のことだったので意気揚々とやってきた新聞記者に対し、淡水人魚は神妙な面持ちで言葉を紡いでいた。
「先日お配りした貝なんですけれど、実はただの大漁ではなかったのです」
「もしや何かの異変だったのですか!?」
 すわ、スクープかと急に乗り気となった文を手で制し、わかさぎ姫は言葉を続けた。
「実は私が暇潰しに湖で養殖していたのですけれど数が増えすぎてしまってそれを……」
「はい?」
 一転テンションの下がったルポライターだが、それでも白状は終わらない。
「天然ものではなく養殖なのです。この嘘がノドの小骨が刺さったように心に引っかかりまして」
「えーと……」
「嘘で一時騙すことは簡単でも騙し続けるのは難しい、だからこそ新聞記者さんを呼んでこの事を伝えて記事にしてもらおうかと」
「いやぁ、異物混入や産地偽装ならともかくそれくらいならいいんじゃないですかねぇ……」
 冷静なコメントに対し、人魚はしおらしくよよよと泣き崩れた。
「キャラとして薄いのか最近どうにも忘れられがちなので、ここらで記者会見し新聞記事に載って皆に強く記憶してもらおうかと思ったのですが」
「本音はそれですか!!」
「紅魔館のメイド長曰く死の湖ですけれど、地道に環境を改造してようやく凄い量まで増やしたんですよ」
「なんと言いましょうか、労力かける方向おかしくないですか貴女」

 結局、リグルが蟲の知らせサービスを開始した時のように『わかさぎ姫、淡水貝養殖事業を開始』という記事を書くことで話は一段落となったのであった。
 が、しかし。彼女たちは知る由もなかった。
 このあと文を探しやってきた霊夢の強迫――もとい、お願いによって記事のメインが奪われてしまうことを。

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                      実にどうでもいい嘘という物もある。

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 ここは地獄の1丁目。正座する死神に、一段高い所から声が落とされた。
「小町、貴女には黙秘する権利はあります。もっとも、貴女が運ぶ筈であった死霊は既にこちら側で証人として押さえてあるので無意味とは思いますが」
「えっと、あのですね四季様」
「弁解は罪悪、偽証はそれ以下と心得なさい……さぁ、裁判を始めましょう」
 そして、地獄の釜の蓋が開く。


   ########################################################

                      嘘を付くだけ無駄の状況もある。

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 幻想郷嘘色々、これにておしまい。どっとはらい。
構想が中々纏まりませんでしたが、早々に諦めることはしませんでした。
さながら鷽の鳴き声響く鬱蒼とした森の中、焦燥にかられながらアイデアを求めて延々と歩き回るような感覚に陥りましたが、時間と競走して何とか書き上げました。
ひとまず表層だけでもと形を作り、精神を高速で鳥葬されていく体のように削り作品に込めました。
……本編よりここに濃くネタ詰めるのもご愛嬌そう捉えていただければ幸いです。



こ「うそ」う
そ「うそ」う
「うそ」の鳴き声
「う」っ「そ」う
しょ「うそ」う
きょ「うそ」う
ひょ「うそ」う
こ「うそ」く
ちょ「うそ」う
ごあいきょ「うそ」う
K.M
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コメント



0.簡易評価なし
1.10mayuladyz削除
短編集と見せかけて
実は一つのお話でしたか…
良く一つにまとめたなと感心した

少々あっさり気味だったけど
これはこれで良いと思う

ちなみに私は
「実にどうでもいい嘘という物もある」
の姫がちょっとズレている感じが好きだ
2.10ジューシー削除
ますます幻想郷が好きになりました。素敵な作品をありがとうございます。
3.8名前が無い程度の能力削除
中味もあとがきも巧い!
4.7あらつき削除
小気味好い面白さで。お疲れ様でした。
5.7名無削除
小町ちゃんに救いはないんですか!?
6.10完熟オレンジ削除
嘘も話によりけり、ですね。様々な嘘を堪能させていただきました。
7.4がま口削除
さくさく読めて自分好みでした。幕間の名言っぽい一言は原典があるのでしょうかね。
しかし、内容が薄い様なありきたりな様な、小話同士に関連があったようで無いような……
うーん、感想が難しいですね。
8.6みすゞ削除
【良い点】
テンポの良いショートショート集。小町のオチには笑いました。何と言うか、こんぺで一作でもこういう作品があるとバラエティが出るというか、ほっとします。ありがとうございました。
あと、あとがき。執念は認めます(笑)
【悪い点】
かなり強引に持っていった部分もあったかなと思いました。理解出来なかった話も少々。
9.9PNS削除
 全体を通して読んで、これは普通の短編にかける以上の時間(長編並)が必要な作品ではないかと思いました。
 もしこれが容量相応の時間で書かれたものだとすれば、その構想力に驚かされます。
 内容としては、金言をテーマにしたエピソード同士が、さりげなく繋がっているのがよいですね。
 >>嘘は人を騙すのに使えるが、人を騙すのに嘘は必須ではない。
 特にこれがすごく印象に残りました。あとがきもすげぇ。
10.6ナルスフ削除
とりあえずはここまで多彩なショートショートのネタをひねり出したことに、喝采を送ります。
お疲れ様でした。
(正邪ちゃんは『慧音さんに用事がある人が人里に来てるんだよ』って善意で伝えた可能性が微レ存・・・?)
11.6道端削除
 どのネタも小粒ながら、くすっとさせられました。
 そして、それぞれ独立した話であるのに、それぞれが互いにリンクしているところも面白い。ある話で文が萃香に珍しいお酒を渡すと、それを飲む萃香が別の話で登場するし、ある話で作成された嘘発見器が、別の話で活用されていたり。それぞれ細かい部分で繋がっていて、「この小道具はあの話で出てきたあれか」と想像するのも楽しい。
 最初と最後で話が続いていて綺麗に落ちているのもいいね。
12.8片隅削除
おもしろかったです。
13.6生煮え削除
ほのぼのとした雰囲気がいい感じで、息抜きのように楽しめました。話が順に繋がっているのがよかったです。
14.7名前が無い程度の能力削除
それぞれの小話に嘘が効いていて良いですね
どのお話もどこかしら繋がっているところも個人的には好きです
ただ、鵺と正邪が話している場面はちょっとどっちがどっちなのか分かりにくかったでしょうか
15.8きみたか削除
コンペ作品として高得点をつけられるか、というと躊躇してしまいます。しかし人間世界の嘘によくあるシーンを原作キャラに織り交ぜて多数つなげていく様は面白かった。正邪と慧音の組み合わせが特に良し。
16.2エーリング削除
お疲れ様です。
17.5時間が足りない!削除
わかさぎ姫ちゃんに救いの手を!