第十三回東方SSこんぺ(アメリカ)

I've been Working on the railroad

2014/02/02 10:39:31
最終更新
サイズ
15.32KB
ページ数
1
閲覧数
71
評価数
24/24
POINT
147
Rate
1.38
I've been Working on the railroad
All the livelong day
I've been Working on the railroad
Just to pass the time away...


 ヒロシゲは二人を乗せて走る。音もなく、揺れもなく、ただひたすらに東に走る。

「東京に行くのも久しぶりねぇ」

 四人まで座れるボックス席の半分を占領した蓮子は、だらしない姿勢のままそう言った。

「そうね。前に行ったのはいつだったかしら? ……それより、恥ずかしいからちゃんと座ってよ」
「大丈夫だって。大体この車両、私達しか居ないじゃない」

 蓮子の言うとおり、彼女たちのいる車両には他に誰もおらず、貸切状態であった。しかし、メリーはそういう問題じゃないの、とたしなめる。

「大体、これだけ空いていたら別の車両から移ってくるかもしれないわ」
「心配ないわよ、どこもガラガラだったもん」

 メリーの言葉を意にも介さず、蓮子は寝そべったままひらひらと手を振った。そんな彼女の様子に、「もー」と呆れた声を出し、メリーは肩を竦めた。

「あ、富士山。後半分ってとこかしら」
「みたいね」

 顔を上げた蓮子が、壁面のカレイドスクリーンを指差す。以前見た時と同じ、少し遠目に見える雲の傘を被った富士山の姿が写し出されていた。

「それにしても、代わり映えの無い景色よね。いくら綺麗だって言っても、もう少し変化が欲しいわ」
「まぁ、映像だからねぇ」

 飽きちゃった、というメリーの言葉には、蓮子も正直同意見であった。
 走っている場所と時間の通りに決まった映像を映す、ヒロシゲのカレイドスクリーン。卯東京と酉京都を直結しているこの新幹線の最大の売りであるその映像は確かに美しく、素晴らしいものであったが、変化がなければ流石に飽きるというものであった。

「この新幹線って、もっと長かったらその分カレイドスクリーンの映像も増えてたのかしら。東京より東とか、京都より西とか」
「うーん、どうかしらねぇ。でもそうなったら、三十六景も五十三次も関係なくなっちゃうからヒロシゲの名前はつけられなくなっちゃうわね」

 そんな他愛の無い話をしながら、二人は他に誰も居ないヒロシゲの中で寛ぐ。蓮子がもう一度壁を見ると、カレイドスクリーンに映しだされている富士山の姿は、先程よりもより大きなものになっていた。

「そう言えば、この新幹線って、線路はどうなっているのかしら?」
「線路?」

 聞き返すと、メリーは「そう、線路」と首を縦に振った。

「私、列車の最前列から線路を眺めるの、結構好きなのよ」
「ふぅん、初耳だわ」
「初めて話したからね」

 中々変わった趣味だと思ったが、蓮子は特に何も言わなかった。元々からしてお互い変人のようなものだし、今更何か言うほどの事でも無かったからだ。

(――でも)

 この付き合いも、いつか終わってしまうのだろうか。蓮子はぼんやりと、そんなことを考える。
 休みに入る前のこと。蓮子は、大学の同級生に告白された。返事はまだ返してはいないが、彼女は迷っていた。
 告白されたことそのものはやぶさかではなかったし、恋愛という甘い響きの言葉に、蓮子は子供じみた憧れを抱いてたのだ。
 だが、もし付き合うことになれば、秘封倶楽部としてメリーとともに活動することは難しくなってしまうのではないかという懸念があったのだ。
 メリーは今までずっと共に過ごしてきた、大切な親友だ。けれど、いつまでも二人はずっと一緒、なんてことは有り得ない。今回の告白がなくとも、だ。いつかは二人とも、結婚したり、遠く離れてしまったり、或いは、死別してしまったり――とにかく、こんなことをできなくなる日はやってくるのだ。線路を辿る列車も、いつかはどこかで止まる時が来る。旅は永遠などではない。蓮子はそれが当然だと思っているし、もしかしたら、今がその時なのかも知れないと考えていた。
 友人を取るか、恋愛をとるか。その二つの板挟みに悩み、とりあえず落ち着いてメリーと話をしてみようと思い、今回の東京行きを計画したのだった。

「ちなみに、なんでそんなのが好きなわけ?」

 そんなことはおくびにも出さず、蓮子は話を続ける。

「うーん、どこが好きかって言われると……そうね。なんだか、線路を眺めていると、このままどこまでも行けそうな、そんな気がするのよ。ずっと今の、楽しい旅をしていられる。ずっと、ずうっと……そんな風に思うの」

 予想していたより子供じみた答えに、蓮子は意外に思った。同時に、自分がこれからそれをぶち壊しにしてしまうかもしれないと思うと、少し申し訳無い気持ちになった。

「……メリーって、以外とロマンチストなのね。初めて知った」
「あら、そうでもなきゃ、あなたと一緒に境界を暴いたりしてこなかったわ」

 その言葉に、蓮子は思わずなるほど、と感心した。

「線路は続くよ、どこまでも……か」

 なんとなく童謡を思い出し、ちょっとだけ口ずさむ。すると、メリーが意外そうな声をあげた。

「あら、その歌、日本語ではそんな歌詞なんだ」
「どういうこと?」
「それ、英語だと全然違うのよ。I've been working on the railroad……ね?」
「あー、ホントだ」

 蓮子の童謡とほぼ同じ節で歌われたメリーのそれは、歌いだしからして既に意味が違っていた。

「日本のそれはなんてタイトルなの?」
「そのまんま、線路は続くよどこまでもってやつ。楽しい汽車旅を唄った童謡ね。英語の方はどうなの?」
「英語のもそのまんまよ。I've been working on the railroad(俺達は線路で働いている)、こっちは線路工夫達が毎日やっているきつい労働のことを歌にした、アメリカの民謡ね。労働歌ってやつ」
「へぇ、おんなじ歌なのに、中身はまるっきり逆なのね」

 汽車に乗っての楽しい旅という娯楽に対し、日々行われる過酷な線路工事の仕事の苦労。まさに対極と呼べるような立場の歌であった。

「こういう違いってやっぱり、風土の違いの影響なのかしら」
「そうね。日本で訳された時期とアメリカで原詩が生まれた時期にズレがある、ということもあるでしょうけど」
「ねぇ、試しに全部歌ってみてよ」
「えー?」
「いいじゃない、他に誰も居ないんだから。どうせ他に話題もないんだしさ」
「分かったわよ」

 興味津々と言った様子のメリーにせがまれ、蓮子は気恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをしてから、歌い始めた。

 線路はつづくよ どこまでも
 野をこえ 山こえ 谷こえて
 はるかな町まで ぼくたちの
 たのしい旅の夢 つないでる

 線路はうたうよ いつまでも
 列車のひびきを 追いかけて
 リズムにあわせて ぼくたちも
 たのしい旅の歌 うたおうよ


「ランラ ランラ……これでいい?」

 歌い終えた蓮子は、まさか童謡を歌う羽目になるとは思わず、やや顔を赤らめていた。今更であるが、この車両が二人の貸切状態であることに感謝してすらいた。

「なんというか、本当に暢気な歌なのね。……っていうか蓮子、中々上手いじゃない、歌」
「うっさい。っていうか、私に歌わせたんだからメリーも歌ってよ」

 くすくすと笑うメリーを、蓮子は道連れにしようとしてつつく。

「いいわ、歌ってあげる――っ」
「どうしたの? ……あぁ、富士山の真下を通ってるのか」
「そうみたい。どうも、ここは苦手だわ……」

 こめかみを軽くおさえて、メリーは小さく呻いた。だが、それもすぐにやめ、こういうときこそ歌って誤魔化すものよね、と言って歌い始める。

 I've been working on the railroad
 (俺達は線路で働いている)
 All the livelong day
 (まる一日中だ)
 I've been working on the railroad
 (俺達は線路で働いている)
 Just to pass the time away
 (あっという間に時間が過ぎていく)
 Can't you hear the whistle blowing
 (警笛が鳴り響くのが聞こえるだろ)
 Rise up so early in the morn 
 (こんな朝っぱらから起きろってさ)
 Can't you hear the captain shouting
 (親方の叫び声が聞こえるだろ)
 Dinah, blow your horn
 (ダイナ、ホーンを吹き鳴らせってさ)
 Dinah, won't you blow
 (ダイナ、吹き鳴らしてくれ)
 Dinah, won't you blow
 (ダイナ、吹き鳴らしてくれ)
 Dinah, won't you blow your ho-o-orn
 (ダイナ、吹き鳴らしてくれ、お前のホーンを)
 Dinah, won't you blow
 (ダイナ、吹き鳴らしてくれ)
 Dinah,won't you blow
 (ダイナ、吹き鳴らしてくれ)
 Dinah, won't you blow your horn
 (ダイナ、吹き鳴らしてくれ、お前のホーンを)
 Someone's in the kitchen with Dinah
 (誰かがキッチンにダイナと居る)
 Someone's in the kitchen I kno-o-o-ow
 (誰かがキッチンに居る、俺は知ってるんだ)
 Someone's in the kitchen with Dinah
 (誰かがキッチンにダイナと居る)
 Strummin' on the old banjo!
 (あの古いバンジョーを掻き鳴らしてるんだ!)
 Singin' fi, fie, fiddly-i-o
 (歌ってやがるぜ、フィ、フィー、フィドリーオって)
 Fi, fie, fiddly-i-o-o-o-o
 (フィ、フィ、フィドリーオー)
 Fi, fie, fiddly-i-o
 (フィ、フィ、フィドリーオ)
 Strummin' on the old banjo
 (あの古いバンジョーを掻き鳴らしながらな)
 Someone's makin' love to Dinah
 (誰かがダイナと愛し合ってる)
 Someone's making love I know-o-o-o
 (誰かが愛し合ってる、俺は知ってるんだ)
 Someone's making love to Dinah
 (誰かがダイナと愛し合ってる)
 'Cause I can't hear the old banjo
 (あの古いバンジョーが聞こえないからな)


「……ま、こんな歌ね」
「……なんというか、まぁその、アメリカらしい曲よね」

 メリーがひとしきり歌い終えた後、蓮子は小さく感想を漏らした。
 この歌詞には、二重の意味がある。というより、後半は結構ストレートなものだ。なるほどこれでは、子供向けの童謡として直訳することはできないだろうと思った。

「まぁ、子供向けでは無いわね。でも、同じ歌なのに日本とアメリカで全く意味が異なる、というのは、境界に通じるものがあると思わない?」
「あー、わからなくもないわね」

 国の境を越えることで、その意味も意義も全くの別物に変わってしまう。これもまた、一つの境界なのだろう。二人が求めるようなものとはかけ離れては居るけれど、長旅の退屈を紛らせる与太話としては、十分なものだった。

「でももし、この二つの歌詞の境界が無くなったら、どうなるんでしょうね」
「どうなる、って、単に歌いにくくなるだけでしょう?」

 下らないことを言うメリーに、何言ってんの、と突っ込もうとした、その時だった。


 ……ブオォォォォォォォォォオン……


 腹の底に響くような鈍く重たい音が、ヒロシゲの車内に響いた。

「警笛? なんでまた……事故かしら?」

 蓮子は訝しげな声を上げる。ヒロシゲは地下鉄だし、止まる駅も卯東京と酉京都の二つきり。だから、余程の事がなければ警笛を鳴らすような事態など起きるはずが無いと思っていたのだ。
 しかし、ヒロシゲは停車する訳でもなく動き続けており、これと言ったアナウンスも無かった。まさか聞き間違いかと思って、蓮子は前に座る相方に、あの警笛を聞いていないかと確かめようとする。

「ねぇメリー、さっきの――」
「そういえば、こんな話を聞いたのだけど、蓮子は知ってる?」

 しかし、蓮子は言葉は途中で遮られてしまった。メリーの声はどこかぼんやりとしていて抑揚がなく、少し薄気味が悪かった。

「な、なんの話?」

 なんでもないことの筈なのに、知らず、蓮子の声が上擦る。

「ヒロシゲって、富士山の真下を通ってるって言われてるでしょう? 実はあれ、嘘らしいのよ。本当は、青木ヶ原の樹海の下を通ってるんですって」
「そうなんだ。でも、なんで隠しているのかしら?」

 メリーの抑揚の無い話し方のせいで、薄気味の悪さが増す。努めて平静を装う蓮子だが、思考がうまく回らず、普段ではあり得ないような間抜けな質問をしてしまった。

「あら、そんなことを聞くなんて、蓮子らしくないわね。青木ヶ原の樹海と言えば、一度入ったら二度と戻れないことで有名じゃない」

 くすくすと、メリーは笑う。けれど、その笑い声でさえ、どこか虚ろ。

「……あぁ、樹海にまつわる悪い噂のせいでイメージが下がってしまうことを避けるために、公にはしていないのね」
「そういうこと」
「でも、樹海で迷うなんて、私には今一理解できないわ。夜空を見れば済む話じゃない」

 きもちがわるい。そう思い、蓮子は無理矢理にでもふざけてみせる。

「それは蓮子だけよ。それに、この辺りって、境界の裂け目も多いでしょう? 容易に迷い込んでしまえるわ」
「メリーは心配症なのよ。少なくともこれに乗っている限りは迷うことなんてないわ。ほら、カレイドスクリーン見てよ。もう富士山なんてとっくに……」

 無理に明るい声を出して壁を見た蓮子。しかし、その表情はすぐに凍りついた。

「え……?」

 美しく飾られた、作り物の日本の絶景を映す、ヒロシゲのカレイドスクリーン。しかし今のそれは、なにも映すことなく、沈黙していた。
 墨で塗り潰されたかのように、その壁面はただただ黒く。

「まさか……!」

 蓮子は鋭く息を呑む。まさか、このヒロシゲそのものが、結界の裂け目に入り込んでしまったというのだろうか?

「メリ――」

しかし、その名を呼びきる前に、メリーは再び歌い始めた。

 線路はつづくよ どこまでも
 野をこえ 山こえ 谷こえて
 はるかな町まで ぼくたちの
 たのしい旅の夢 つないでる

 線路はうたうよ いつまでも
 列車のひびきを 追いかけて
 リズムにあわせて ぼくたちも
 たのしい旅の歌 うたおうよ

 I've been working on the railroad
 All the livelong day
 I've been working on the railroad
 Just to pass the time away
 Can't you hear the whistle blowing
 Rise up so early in the morn
 Can't you hear the captain shouting
 Dinah, blow your horn
 Dinah, won't you blow
 Dinah, won't you blow
 Dinah, won't you blow your ho-o-orn
 Dinah, won't you blow
 Dinah, won't you blow
 Dinah, won't you blow your horn
 Someone's in the kitchen with Dinah
 Someone's in the kitchen I kno-o-o-ow
 Someone's in the kitchen with Dinah
 Strummin' on the old banjo!
 Singin' fi, fie, fiddly-i-o
 Fi, fie, fiddly-i-o-o-o-o
 Fi, fie, fiddly-i-o
 Strummin' on the old banjo
 Someone's makin' love to Dinah
 Someone's making love I know-o-o-o
 Someone's making love to Dinah
 'Cause I can't hear the old banjo


 メリーの歌に、メリーの歌が重なる。日本とアメリカ、全く違う同じ歌の重唱が、蓮子の耳朶を打つ。

「メリー、まさか……」

 ブウウウウウン……

 鈍い音がして、蓮子は辺りを見回す。カレイドスクリーンが、息を吹き返していた。しかし、それが映すのは美しい日本の海や富士の山などではなく、ひたすらに鬱蒼と繁る、樹海の景色。夜色の闇にシルエットだけを映す、陰鬱な木々の群れ。それだけだった。

『私、列車の最前列から線路を眺めるの、結構好きなのよ』

 先程聞いたばかりのメリーの言葉が、幻聴となって蓮子の耳に蘇る。メリーは壊れたオーディオプレイヤーのように、二つの歌を繰り返していた。

『うーん、どこが好きかって言われると……そうね。なんだか、線路を眺めていると、このままどこまでも行けそうな、そんな気がするのよ。ずっと今の、楽しい旅をしていられる。ずっと、ずうっと……そんな風に思うの』

 思えば、始めからメリーはそのつもりだったのかもしれない。
 もし、メリーが始めから私の考えていることを見抜いていたとしたら?
 この車両に二人以外は誰もいないことも、歌の話も、樹海のことも、何一つとして偶然などでは無く、全てメリーが仕組んだものだったのだとしたら――
 ごくりと、蓮子は生唾を飲み込む。いつの間にか口の中がからからに干上がっていた。

 I've been working on the railroad
 線路は続くよ どこまでも
 All the livelong day
 野を越え山越え 谷越えて
 I've been working on the railroad
 線路は続くよ どこまでも
 Just to pass the time away
 はるかな町まで ぼくたちの
 Can't you hear the whistle blowing
 楽しい旅の夢
 Dinah, blow your horn
 つないでる
 Dinah, won't you blow
 ランラ ランラ ランラ
 Dinah, won't you blow
 ランラ ランラ ランラ
 Dinah, won't you blow your ho-o-orn
 ランラ ランラ ランラ ラン
 Dinah, won't you blow
 ランラ ランラ ランラ
 Dinah, won't you blow
 ランラ ランラ ランラ
 Dinah, won't you blow your horn
 ランラ ランラ ランラ ラン
 Someone's in the kitchen with Dinah
 ランラ ランラ ランラ
 Someone's in the kitchen I kno-o-o-ow
 ランラ ランラ ランラ ラン
 Someone's in the kitchen with Dinah
 ランラ ランラ ランラ
 Strummin' on the old banjo!
 ランラ ランラ ランラ ラン
 Singin' fi, fie, fiddly-i-o
 線路はうたうよ どこまでも
 Fi, fie, fiddly-i-o-o-o-o
 列車のひびきを おいかけ
 Fi, fie, fiddly-i-o
 リズムにあわせて ぼくたちも
 Strummin' on the old banjo
 楽しい旅のうた うたおうよ
 Someone's makin' love to Dinah
 ランラ ランラ ランラ
 Someone's making love I know-o-o-o
 ランラ ランラ ランラ ラン
 Someone's making love to Dinah
 ランラ ランラ ランラ
 'Cause I can't hear the old banjo
 ランラ ランラ ランラ ラン


 終わることなかれ、と楽しい旅を謳歌する歌。お前が何をしているかなどお見通しだ、と罵る歌。二つの異なる同じ歌が、重なってゆく。境界を失い、融け合ってゆく。
 既に、五十三分は過ぎていた。けれど、ヒロシゲは止まらない。東京に着くことなどないままに、東へ向かってひた走る。
 歌は終わらない。どこまでも続く線路のように、抜け出せない樹海のように。

「ねぇ、蓮子。貴女はどう思う?」

 そう言って、メリーが微笑む。迷うことなど、許されてはいなかった。


 

 ヒロシゲは二人を乗せて東へ走る。音もなく、揺れもなく、ただひたすら東に走る。
 その中に、二人は居た。
 古いわらべ歌を歌いながら。
 その中で、二人は互いの心を確かめ合っている。富士の山だけが、それを知っていた。
 二人は、互いの心を確かめ合っている。
 古いわらべ歌が、聞こえなくなるまで。


 線路は、どこまでも続いていく。
 二人の旅は、終わらない。
この後滅茶苦茶境界探した。
あっという間に過ぎていく日常をずっと楽しむために、線路は続くよどこまでも。
昨日カミさんに浮気がばれて大目玉喰らっちまったんだ。そんなお話。秘封の日常っぽい話ですね。
ありがとうございました。
Corner
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.7完熟オレンジ削除
この作品を投稿開始から僅か1日で仕上げたことに感服しました。
境界を探しても、二人は帰って来れるのかしらん。
2.7アメリカ探索者削除
なる程
アメリカ民謡ですか
二人が探検する姿も見たかったですね
3.7百円玉削除
うん! 秘封の日常っぽい!  ……って納得するにはずいぶんと怖かったですw  樹海の景色が映ってから蓮子の台詞が無いのがまた薄ら寒さを憶えました。
翻訳された歌と元歌をしてお題である『アメリカ』を昇華するのにはなるほどと思いました。しかもそれの境界を危うくするなんて、面白いですね。
『でも、この付き合いも、いつか~云々』の部分、場面転換が少々唐突かと思いました。これ以前にこの部分の対照となる部分の因子が薄かったから、かな?
4.5がま口削除
怖い! もはや神隠しレベルの凶事を起こせるメリーさんが素敵です。
日本の童謡が、大本を辿ると現地じゃとんでもない歌詞っていうのは結構聞きます。グリーングリーンだって元々ヒッピーの歌だったとか。
故に殺伐とほのぼの、二つの歌詞の対比が不気味さを醸し出していたと思います。
5.5ニコラス削除
元の詞と訳詞とで歌詞の内容が全然違うのがわかった……が、それ以外に何もない話だったように思われる
6.5がいすと削除
これホラーやないか!?(驚愕
こう、モチーフまでは広がりがあるのですがなんとなくそこから先に出きらなかったのと、これは「未解決のほうがいい」タイプの話で無い感じがしました。
鉄道って意外と深い造詣が必要なのだなぁと感じもうした
7.5名無し削除
アメリカの歌詞は知らなかった。勉強になりました。このメリーは紫並みに胡散臭い雰囲気を纏ってそう。
8.8ななし削除
面白かった歌と場面の選択が良かったと思う
9.10烏口泣鳴削除
歌の二つの意味が分かり、今までの糸の繋がった瞬間が素晴らしかった。
今回一番面白かったので、十点で。
10.7ヤモリ削除
さすがメリーさん、隠し事はできないぜ!
向こうだとこういう曲なんですねぇ。
11.5エーリング削除
なるほどその歌にそのような意味が。興味深い薀蓄でした。日本語と英語が混じって聞こえる歌という風景も、想像してみると不気味で幻想的なシーンとして印象に残ります。ただ短編として敢えてカットされたとは思いますが、この現象、動機は有れどこれが出来る根拠のようなものが一切見当たらないのが気にはなりました。
12.5みすゞ【5点満点】削除
この後滅茶苦茶せっ……、何でもございませぬ。キレのある短編。面白かったです。あの歌はもともとそんな歌詞だったんですね。意外でした。
13.4ito削除
 ちょっと物足りないかなといった感じでした。
 童謡のリズムが不気味な、不思議な雰囲気を醸し出していてよかったです。
 しかし、作中の童謡の扱い方に、雰囲気作り以上の意味は見いだせないように思います。
 メリーが「線路を眺めていると、このままどこまでも行けそうな」と言ったのは、
日本語の歌詞のそのままの意味で、原語の歌詞の要素は作品のどこにも関わってこない。
英語の歌詞を紹介しただけで終わっているのが残念でした。
 また、蓮子には二人のこれからの関係をもう少し迷わせて欲しかったかなと思います。
「友人を取るか、恋愛をとるか」と思い悩んでいた蓮子なのに、
その後特に何の葛藤も、今までメリーと過ごしてきた時間に対する感慨も、
全て説明なく、「迷うことなど、許されてはいなかった」と言い切ってしまうのが、
話の一番の肝になる部分を流されてしまった感じで、もったいないと思いました。
 あと、最初に「I've been working on the railroad」と出した直後に訳が欲しかったです。数行後に出るけど、英語弱いので。
14.7あらつき削除
二重の歌を使うという発想と、物語への落とし込みが素晴らしい。
蓮子の板挟みについてもう一つ何かあれば良かった。冒頭でさらっと書かれていただけで印象に残らなかったので。
原詩を出されてすぐ符合に気付けたら、評価跳ね上がってたかもしれない。
15.8みく削除
歌の使い方がとても面白かったです。パルるメリーはいいですね。
16.7ナルスフ削除
こえーよメリーさん
歌詞への仮託の仕方とそこへの持って行き方が秀逸でした。
17.7deso削除
おおお、コワイ!
ぞわぞわしました。
お二人いつまでもお幸せに。
18.5文鎮削除
線路は続くよどこまでも、慣れ親しんだこの曲が翻訳版と原曲でここまで歌詞が解離しているとは思いませんでした。
というかメリー、境界を自由に扱うとか、かなり妖怪に近づいてないですか?
19.2あめの削除
少し話がわかりにくいように思えます。
特に後半。話が急展開を迎えるわけですが、説明不足ではないでしょうか。
20.8このはずし削除
メロディーは同じでも言語によって全然歌詞が違う歌って多いですよね。
着眼点が面白く、雰囲気があって魅力のある話でした。
(こんぺの歴史上、開幕にこのような正統派作品がくるというのは驚きなようなw)
21.9めるめるめるめ削除
いつもの秘封かと思ったらホラーだったというギャップが光りますね。
誰でも知っている童謡を織り込んだのも不気味さを増していて、よかったです。
22.5名前無し削除
取り急ぎ、点数のみで失礼します。
23.4白衣削除
メリーったらお金持ち!
24.5K.M削除
まず、歌詞の著作権とか大丈夫かな……と考えてしまった。何とも言えない怖さがあります。