第十三回東方SSこんぺ(アメリカ)

西行妖VSアメリカシロヒトリ

2014/03/08 09:32:12
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 俺の名は西行妖。
 咲くことを忘れた、しがない桜の木さ……。
 かつてはただの妖怪桜だったんだが、咲くたびに人を死に誘うって言われて封印を喰らっちまったわけだ。西行どんにあやかって勝手に俺の下で死ぬ奴がいっぱいいたからこうなったっつうのに、勝手な奴らだよな。
 まぁそうして色々あって、西行どんの娘さんとは、お互いに封印しあう一蓮托生な関係になって、今ここにいるわけだ。
 別に、今は不満には思っちゃいないさ。
 咲くことが出来ねえのは桜としてちょっとアレだけどよ。それはそれで『咲かない』っていう存在感が逆に出てきてるしな。
 それに、咲くことこそ出来ないが、その代わり葉っぱはすごい茂らせるんだぜ。咲けねえ分の鬱憤を込めて茂らせてやるんだぜ。
 うん? そりゃあ、咲けねえっていっても葉っぱは出さなきゃ仕方ねえ。繁殖はしなくてもアレだけど、光合成くらいはしとかなきゃな。
 だから、咲く分のエネルギーを余計に茂る分に回せるわけだ。そんなわけで、俺は今年も自慢の葉っぱを誇らしげに……

「ぼりぼりぼりぼり」

 食われとるーーーーー!?
 毛虫に俺の葉っぱすげえ食われとる!?
 なんだてめえ!? 見かけねえ毛虫だな! 名を名乗れ!!

「クックック……我々の名はアメリカシロヒトリ。貴様を食すものなり」

 アメリカシロヒトリだと!?
 貴様、この俺を桜の大妖、西行妖と知っての狼藉か!!

「知らんな貴様など。我々の地元、ユナイテッド・ステイツでは、有名な桜と言えばワシントンに切られた奴くらいのものだ」

 なにそれ怖い。
 そんな痛そうなことで有名になった上に、実在したかすら疑わしそうな奴に負けるなんて……悔しい!

「ぼりぼりぼりぼりぼり」

 食うな食うな食うな!!
 ち、ちくしょうこの害虫めが! 見ていやがれ!
 妖夢さん妖夢さーーーん! 庭師の妖夢さーーーん! 助けてーーー! 庭の桜に害虫が湧いてますよーーーーーー!!

「フン、何をするかと思えば他人頼りか。桜の大妖が聞いて呆れるな。ぼりぼりぼりぼり」

 うるせーな! こちとら封印喰らってんだよ! 慎ましく暮らしてんのに葉っぱ食うんじゃねえ! あっやめてそこ感じる!!

『みょん? 何か呼ばれたような気が……』

 白玉楼から少女が一人、庭へと姿を現した。
 あれこそこの白玉楼の庭師の魂魄妖夢さん。どうやら、この俺の魂の叫びが届いたようだ。
 フフン、どうやら貴様もこれまでのようだな、アメリカシロヒトリ!

『こんにちはー、次回の白玉楼ライブの打ち合わせに来たんですけどー』
『あ、はいはーい』

 だがしかし、そこにやってきたのは騒霊楽団。妖夢さんはそっちの応対に走っていってしまう。
 ちょっと、そっち違う! そっち違うのおおおお!!!!
 魂の叫びはとどかなかった。

「クックック……中々優秀な庭師ではないか。ぼりぼりぼりぼり」

 これ見よがしにアメリカシロヒトリどもは俺の葉っぱを食害していく。らめええ。
 それにしてもこの野郎、この季節葉桜は俺だけじゃないというのに、何で俺にばっかり群がるんだ。

「貴様が一番でかいし、美味そうだったからな。ぼりぼりぼりぼりぼりぼり」

 くっ、なんということだ!
 俺は咲くことが出来ない分、葉っぱを茂らせることに尽力してきたし、よくお嬢が俺の葉っぱで桜餅を作っているので、おいしさや栄養をも出来るだけ追求してきたことが仇となったか!
 ……だがな、アメリカシロヒトリ。貴様は重大な考え違いをしている。
 この場において貴様は所詮よそ者。俺の味方が妖夢さんだけではないということを知るのだな。

「助けに来たぜ! 西行妖の旦那!!」

 そう言いながら、俺の幹をつったかつったか駆け上がってくる黒い虫。そのフォルムや黒い点々がちょっとキモい。だがその勇姿を見紛うはずはない。
 待ってたぜヨコヅナサシガメさん!
 ヨコヅナサシガメさんも最近来た外来種の虫で、害虫であるカメムシの野郎の仲間なのだが、ところがどっこい。
 その中でもサシガメ科の奴らは植物を食べずに他の虫を食べてくれる益虫なのだ。
 ヨコヅナサシガメさんが来てくれれば、アメリカシロヒトリなど恐るるに足らず。
 しかし、そこに騒霊楽団との打ち合わせを終えた妖夢さんが帰ってきて。

『あれ、なんですかこの黒くてキモイ虫は。害虫に違いないですね! 成敗!』
「ぎゃあああああああああああ!?」

 ヨ、ヨコヅナサシガメさあああああああああああん!?
 ヨコヅナサシガメさんが死んだ! この人でなし!!
 妖夢さん何やってくれてるんですか! 害虫こっち! それ益虫!! 
 くっ……ヨコヅナサシガメさんは俺にとっちゃぐうの音も出ないほどの益虫だが、唯一の弱点はあまりにも見た目がキモくて、害虫より先に駆除されてしまうことだ……!
 ていうか妖夢さん! サシガメさんに気づくくらいなら、こっちに気づいてよ!!

「ククク……やはり浅はかなのは貴様だったな、西行妖……! ここは高所だ……。低いところしか見ていないあの庭師に、我々の存在が察知できるものか。ぼりぼりぼりぼり」

 アメリカシロヒトリが葉っぱを食いながら不敵に笑う。
 確かに、こう高くては、カエルやキリギリスなんかもそうそう上がってこねえ……。
 鳥類は幽々子のお嬢を恐れてここに近づかないし、アシナガバチさんは去年妖夢さんに巣が駆除されてしまった……よく考えるとろくな事してねーな妖夢さん!!!
 しかし……これは……絶体絶命ではないのか……?

「我々はこれが全てではない。じきに、他の場所にある巣からも、我々の弟たちが出てくることだろう。そうすれば我々は貴様を食いつくす。そして――次は他の桜どもの番だ。フッフッフ……ハァーッハッハぼりぼりぼりぼりぼりゲフンゲフッ!!」

 ――――!
 こんの……クソ虫が……。この妖怪桜である俺様ならともかく、他の奴らは何の力もない、ただの桜なんだぞ!! ふざけやがって!!
 嘗めるなよこの虫野郎!!
 ただ植物が、害虫に食われるだけの存在だと思うなよ……!
 植物にも、植物の意地があるんだ!! 慄け! そして思い知るがいいアメリカシロヒトリ!!
 貴様が何を食ってしまったのかを!
 貴様が何を敵に回してしまったのかを!!
 俺は桜の大妖、西行妖様だああああああああああああ!!!!!



 ――その時、不思議なことが起こった。
 咲けない筈のこの体に、力が通い、つぼみが灯る。

「なん……だとっ……!? ぼりぼりぼりぼり」

 アメリカシロヒトリの顔が驚愕に歪んだ……かどうかは虫だしよくわからないが、確かに、その時俺は、激情のままに咲き誇ったのだ!
 ――さぁ、誘ってやろう、死の淵へと。

 害虫どもめ――駆逐してやる!

 俺の気合とともに解放されたその妖力が、俺に群がる害虫どもに牙を向き、容赦なくその命を刈り取っていく。

「くっ……ぐああああああああ!! よもやここまでやるとはな……! だが忘れるなよ西行妖! この世に食物連鎖のある限り、第二第三の我々が現れることだろう! そのことゆめゆめ、忘れるでないぞ……フッフッフ……ハァーッハッハぼりぼりぼりぼりぼりゲフンゲフッ、ぐふぅっ!!」

 ――そうして、この桜の大妖、西行妖を追い詰めた恐るべき害虫、アメリカシロヒトリは、死んだ。
 しかし、その強大な敵を退けた俺の胸中に去来するのは――決して喜びなどではない。




 やっべ、咲いちゃった。







 こうして、白玉楼の主、西行寺幽々子は消滅した。
 幻想郷のパワーバランスの一角が欠け、白玉楼で管理されていた亡霊は統制を失い、ついでに西行妖の力も暴走し、世に混乱がもたらされた。
 そうして天は轟き、地は裂け、湖は枯れ、大結界は崩壊し、霊夢さんは死に、魔理沙さんも死に、ちょうどそのときコケた紫さんは「え!?私がコケたせい!?」と驚き戸惑い、滲み出る混沌の闇が世界を覆い、あらゆる生命体は蓬莱人とあとなぜか咲夜さんを除いて絶滅し、地球は死の星となったのだった。

 おしまい?
もちろん、この話はとあるパラレルワールドの話に過ぎない。
だが、もしかしたらありえたかもしれない可能性の物語でもある。
画面の前の皆さん。
私が伝えられることはただ一つ。
ヨコヅナサシガメさんは見た目がとってもキモいし、集団でうじゃうじゃいると輪をかけてすげえキモいし、うかつに触ると刺されてクッソ痛いので害虫扱いされることも多いですが、一応これでも樹木にとっては害虫を食べてくれる益虫なので、見かけてもキモがって駆除せずに、そっとしておいてあげてくださいね。


このSSを、三年くらい前にあまりにキモくて殺虫剤をぶっ掛けて駆逐してしまった、近所の桜の木在住のヨコヅナサシガメさん(故)に捧ぐ。
ナルスフ
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コメント



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1.8リペヤー削除
こんなオチでいいのかーッ!?(がびーん)
爆笑しましたww
そして西行妖が意外と男前で良かったw
2.6絶望を司る程度の能力削除
カオスですね。スピード感が面白かったです。
しかしお題にそっているかというと、多少強引な気がしました。あと強いて言うならオチが強引でした。しかしこの作品のスピードにはちょうどいいのかな。つか幽々子さまぁーー!?
3.1がいすと削除
その時奇跡が起こった(BLACK RX感
4.6がま口削除
ちょ!? ええ!? ちょ……えええ!?
何て言えばいいのか、まず西行妖と虫たちが主役!? 妖夢さんは悪役!?
ゆゆ様出てこない! 西行妖咲いたぁ! 幻想郷滅びたよ! あとがき何者視点!?
東方二次創作の世界舐めてた……広すぎるし深すぎる……
アメリカってテーマはドラマを生みますね(笑)
5.3名無し削除
ええまったく。うちの地方でもアメリカシロヒトリには悩まされています…。
6.8ななし削除
妖夢さん何やってんすかー
7.4烏口泣鳴削除
最後の最後まで休む事無く駆け抜けきっていて思わず笑った。
8.4エーリング削除
ヨコズナサシガメさんからはアシダカ軍曹と同じ悲哀を感じます。木にとっては光合成は生命線。シロヒトリとの闘いもそこから繋がるあまりにひでぇオチも、スピード感があって良かったです。
9.4みすゞ【5点満点】削除
西行妖どん若いなあ(笑) 妖夢さんより大分年上だろうにというのは野暮ですか。植物対昆虫のバトル楽しく読まさせていただきました。しかし写真見たら本当にキモ(ry
10.6名前が無い程度の能力削除
なんじゃこのノリは!

……だが悪くない。
11.3ito削除
ハイテンション西行妖。お前、咲くのか? 咲いてしまうのか?
そしてなぜか滅亡する世界。
主人公が地球の運命を左右する本作は、セカイ系と分類して差し支えないでしょう、か?
しかし、地球が死の星になったのは彼のせいではないと言いたい。
彼にあったのは自分生かすための生存本能で、花が咲いたのはある種、不可抗力だと思うね。
きっと全ては気づかなかったみょんと、コケた紫が悪いのでしょう。
咲夜が生き残るのは花が「さく」のと「さくや」を掛けた洒落なのか? そもそもそれは洒落なのか?
感想を書く方もハイテンションでいこうかと思ったけど上手くいかなかった。
12.5矮鶏花削除
まさしく勢い勝負のギャグですが、勢いのままに楽しめました。
13.6あらつき削除
全く予想外のボールが飛んできて
おいおいおいそんなのもありか!と思いつつ笑ってしまったからしょうがない
14.9みく削除
2回読み直して2回とも笑ってしまいました。
ヨコヅナサシガメはカッコイイですよね。臭いし痛いから触りたくないけれど。
15.8deso削除
個人的に、こういう突っ走ったのはもう大好きですw
16.4文鎮削除
ヨコヅナサシガメめっちゃキモいわぁ…
まあ、アメリカシロヒトリもキモいし超害虫なので西行妖が咲きたくなるのも分かります。
17.10めるめるめるめ削除
ここまで潔く暴走してくれれば、いっそ清々しいというものです。
なかなかできませんねこういうのは。
18.7このはずし削除
読み終わった感想は、アメリカを代表するあの食品……ポップコーンみたい! 
つまり、さくっと読めて楽しい内容でした!w
19.7名前無し削除
取り急ぎ、点数のみで失礼します。
20.6百円玉削除
その時、不思議なことが起こってこの作品に点数が入った……!
21.6K.M削除
怒涛の勢いに乾杯。