第十三回東方SSこんぺ(アメリカ)

奥様は普通の魔女

2014/03/09 00:31:45
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 奥様の名前はマリサ、そして、旦那様の名前はコーリン。
 ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。
 でもただ一つ違っていたのは、奥様は魔女だったのです。






1.
「今のなんだ?」
 目を覚ました魔理沙は、ゆっくり周囲を確認する。身体中がズキズキして痛い。まるで、何処かから落下して身体を打ったような痛みがする。
「痛っ」
 ベッドの上でのたうち回る。とはいえ、後遺症の残るような痛みではないらしい。それにしても。今の声。天から降ってくるような声。
 今のなんだ?
 そして、何て言ってた?
「やぁ、マリサ。おはよう」
 背広姿にネクタイを締めながら、霖之助が微笑みかける。
 ……、香霖?
「香霖、なんで私の家にいるんだよ!」
「そりゃ、確かに君の家だが……」
 答えながらネクタイを器用に締め、霖之助が苦笑気味に答える。
「僕の家でもあるからね」
「……どういうことだ?」
 魔理沙が周囲を見る。それは魔理沙の住むあの魔法の森の家、霧雨魔法店ではなかった。洋風の内装ではあるが、鏡台に洋服ダンス、カーテン……全て身に覚えがないものだった。
 何より、今自分が寝ているのは……。
「ダブルベッド!?」
「……そりゃ、そうだろう。僕らは夫婦なのだし」
「夫婦!?」
 なぜかパジャマを着ている私が、香霖と同じ家にいる。それも、ダブルベッド。
「そ、そんな、香霖、お前、いつの間に私に」
 思わず身体を両腕で抱きしめて、魔理沙は霖之助を見つめた。だが、霖之助に動じた様子はない。
「……さては、またお義母さんか」
 霖之助が頭を抱えてそうつぶやく。
「お義母さん?」
「君のお母さんだよ」
「私の、母親?」
 お母さんだって?魔理沙は混乱する。
「いるんでしょう!お義母さん!分かってるんですよ!」
 霖之助が声を荒げて周囲を見渡す。すると、突然、空中に姿が現れた。
「なんだい、やぶからぼうに?」
「お義母さん。また、マリサに何かしたんですね?お得意の魔法で」
「……酷いことを言うね、この人間は。これだから人間に嫁にやるのは嫌だったのさ」
 そう皮肉気味に答えたのは……。
「魅魔様っ!」
「……そうだよ。って、なんで様づけなのさ?」
 空中から突然姿を現したのは、いつもの隙間妖怪ではなかった。現に目の前でふよふよ浮いているのは博麗神社の怨霊、魔理沙の親愛なる師匠、魅魔様だった。
「マリサ、あんた悪いものでも食べさせられたんじゃないかい?この人間に」
「いい加減にしてください。それよりお義母さん、あなたがマリサに魔法をかけたんでしょう。記憶喪失ですか?それとも別の記憶を植え付けた?」
「失礼な。実の子の頭をいじったりは……しない?しないかって言われると、そりゃ、ちょっとは間違ってしたりするかもしれないけどさ。本気でやったりはしないよ」
 魅魔様と香霖がにらみ合うとは。なんて貴重な風景だろうと魔理沙は思う。
「いや、香霖も魅魔様も落ち着いて」
「大丈夫。僕は落ち着いているさ」
「あたしもだよ。人間風情に本気になったりはしないさ。私は大魔女ミマだからね」
「怨霊じゃなくて?」
 そう魔理沙が言うと、霖之助が頷いて笑う。
「そりゃ良いね、マリサ。うまいことを言ったよ」
「怨霊?あんた、実の母になんてこと言うのさ。そんなことだから、人間なんかと結婚しちまうんだよ」
「……いや、香霖は半人半妖だろ?」
 そう魔理沙が言うと、今度は魅魔が爆笑する。
「それだったら、私も半分認めてやってもいいね!」
「マリサ、僕は普通の人間だよ。それでも愛してる、って言ってくれたろう?」
 普段の香霖らしくもない、恥ずかしいせりふだと思った。にも関わらず、その瞳の色は確かに真剣なものだったので、魔理沙はらしくもなくドギマギする。
「やだね、愛なんて言葉。そんなもんは一種の流行病さ」
「流行病でも不治の病です。さ、お義母さんのせいじゃないなら、さっさと帰ってください」
「何だい?人を呼び出しておいて、茶菓子の一つも出さないのかい?」
「いきなり現れる人の分なんて用意できませんからね。それに僕は出社するんで」
「……出社!?」
 魔理沙が大声をあげる。その声に霖之助が顔を曇らせる。
「済まない。前にも言ったがどうしても変更できなかったんだ。許してくれとは言わないが、できるだけ早く帰って来るつもりだから」
「はんっ、これだから人間ってのは。困るよねぇ、マリサ」
 魅魔が勝ち誇ったように言う。
「いや、出社ってどういうことだよ?店、じゃないのか?香霖は自営業だろう?」
 混乱している魔理沙に、二人は不思議そうな表情を浮かべた。
「本当に、マリサ、大丈夫かい?」
「我が娘ながら、心配になるね」
 香霖がそっと寝ている魔理沙のすぐ傍に腰掛けた。
 その距離感は本当に夫婦のもので、兄妹のものではなくて魔理沙がはっと息を呑む。手のひらで魔理沙の額を触れると、霖之助はうなずいた。
「熱はないようだね。今日は休んでると良い」
「じゃ、あたしが介抱しよう。薄情なあんたはさっさと出て行きな。まったく、こういう日に出社とかさ。ふざけてると思わないかい?」
「正直、お義母さんが一番信頼できませんがね」
 霖之助はそう答えると、今度は本当に心配そうに魔理沙を見て言った。
「マリサ、調子が悪いなら寝ていなさい。酷くなりそうなら病院へ。遅くなっても僕は帰ってくるから」
「明日の朝に、かい?」
「必ず、今日中に!」
 そう香霖は怒って言い返した後、そっと頬を出してしばらく待った。
「香霖?」
「……ああ、そうだね。すまない。すぐに許してくれとは言わないが」
 霖之助は苦笑してうなずき、部屋を出て行こうとする。その様子を魅魔が嘲笑し、ムッと睨んで行った。
「偉い、さすがあたしの娘。ようやく正気に戻ったね」
「……どういう意味なんです?」
 魔理沙は本当に訳が分からなかった。まるで、疾風怒濤のように、夫を名乗る香霖と、母だと言う魅魔様の婿姑戦争を見せられたわけだが。
「なんだい、分かっててやったんだろ?いつもなら、キスしてるじゃないか。幸せそうな顔をしてさ」
「……キス!?」
 何、言ってるんですか、魅魔様。
 魔理沙が凍り付いた。確かにあの位置なら、香霖の頬にキスできたろう。そして、そうしたら、きっと次は香霖が。
「あんた、今日はどうしたんだい?」
 魅魔が不思議そうに魔理沙を見つめる。
「ウブなネンネじゃあるまいし、人妻がいまさら何言っているんだか。まるで少女みたいじゃないか」
 そこまで言って、うん?と魅魔がもう一度魔理沙を見つめた。そしておもむろに何事か唱えると目を細める。
「あんた、マリサじゃないね」
「……霧雨魔理沙ではあるんですが」
 思わず魅魔の前なので敬語になってしまう。
「そうかい。……そういうことかい。通りで、なるほどね。あんたはつまり、マリサじゃないわけだね。となると、うちのマリサは何処に行った?そしてあんたはどこのマリサだい?」
「……つまり、この世界は幻想郷じゃないってことですか?」
「幻想郷?ああ。そういう名前の世界から来た、ってことだね。そうだよ。ここは幻想郷なんて名前じゃない。ついでにあたしやあたしの娘の世界でもない。あたしは魔法の世界の住人で、あたしの娘のマリサはこの世界で留学していた際に、あの唐変木と知り合って恋に堕ちたってわけさ。で、ここセイラムで暮らしている」
 そう言って肩を竦める。
「唐変木?そこまで言わなくても……」
「なんだい?あんたもああいうのが趣味かい?止めときな、ああいうのは自分の世界に浸りがちで妻を省みないもんさ」
「こっちのマリサがそう言ってた?」
「……」
 魅魔は何も言わずに、いーっと口を開くだけだった。つまり、存外、娘は幸せらしい。別に無関係なはずの魔理沙だが、何だかほっとする。
 確かに、こんな邪魔があっても夫婦でいられ、それも毎朝キスをしているというのであれば、険悪ということはないのだろう。
「とすると、私はどうすれば良いですかね?」
 魔理沙が魅魔に尋ねる。
「そうだね。私も娘がどこに行っちまったか調べてみよう。だから、あんたも何でココにいるのか思い出してみな。どうだい?何か思い出せるかい?」
 そう言われて、魔理沙は腕を組んだ。そういえば、いつもに比べて腕が長いような気がする。
「確か、竹林で不審な二人組を見て……」
 魔理沙は記憶を手繰るように言う。そう、あの二人を追って……。
 二人?誰だった?
「そうしたら、見失ってそこにてゐがいたんだ。てゐに聴こうと思ったらなぜかてゐも逃げ出して……」
 あいつ、また悪さでもしているのかね。そう思って今度は兎狩りとばかりに、てゐを追っていったら……。
「そうだ、てゐを追っていったら、あいつがこっちに手を振って待ってたんだ。そこで箒から降りて、話しかけようとしたら途端に落とし穴に落っこちた!」
 人間を幸福にする程度の能力の因幡てゐ。
 彼女を追っかけても人間である自分が不幸になる可能性はない。そんな油断があったのかもしれない。
「それが原因だね。とすると、その穴をどうやって調べるか?」
「全く手がないんですが、それは……」
 魔理沙は苦笑した。今から幻想郷に戻って竹林を調べる。いや、幻想郷に戻れる時点で解決してるわけで。
「分かった分かった。しょうがない子だねぇ。でも、なんだかほっとけない気がする娘だよ。その辺はあたしに任せて、とりあえず待ってな。相手側の反応があるかもしれないからね」
 魅魔は慣れた感じでそう言って笑った。
「相手?」
「そう。どこかに黒幕がいるかもしれない。世の中は神様の機械仕掛けの舞台。すぐにあっちから襤褸を出してくるさ。だから安心をし」
 そう言って、ぎゅっと一度魔理沙を抱きしめる。それはとても暖かい抱擁だった。
「あんたは娘じゃないかもしれないが、ちゃんと面倒は見てやるからね。帰してやるよ、元の世界に」
「ありがとう。魅魔様」
「まぁ、何より様づけがこそばゆいんでね」
 照れ隠しでそういうと魅魔は指で円を描き、バイバイと手を振って姿を消した。







 
2.
 なにもかもが、不思議な世界だった。
 まず、鏡に映った自分。
 幸い、吸血鬼と違って魔女という種族は姿が映るらしい。そこに映った姿は成人女性のそれだった。いつも見慣れた自分の姿ではない。腕も足も長く、霊夢やアリスあたりに自慢できそうな姿であった。ただし、残念ながらこれは、自分の未来の姿ではない。そうは知りながら、着替えつつ自分の体をさまざまチェックした。うん、これは後学のためであって、別にほかの気持ちはなかったのだよ?そう、魔理沙は言い訳して着替えた。
 次に、家の様子。
 内装品はすべて西洋風に統一され、何より河童たちが扱うような家電製品に満ちあふれている。音声が鳴る機械だけではなく、映像で瓦版をしたり舞台を演じたりしている機械もある。チルノに製氷させなくても冷凍する機械があり、八卦炉がなくても火がつく機械がある。水道は水を汲む必要がなく、部屋を掃除するのは箒ではなく吸引機だ。
 なにもかもが、違う。あと、ひたすらベルが鳴る機械があった。あれはなんなのか。さっきずっと鳴ってたんで枕を重ねて黙らせた。
 そして、何よりアルバム。
 そこには自分と香霖の姿が映っている。ただし、幼い頃からの知り合いではないらしい。すでに成人している自分と、香霖が微笑んで写っている。格好は様々で香霖がこんな格好するのかという不思議な光景であり、自分もこんな格好するんかいと突っ込みたくなるような光景でもあった。特に目玉はウェディングドレスの自分とイブニングドレスの香霖で、もうなんだか、想像の埒外の姿だった。ちなみに、自分ではなくマリサ、なのだが。
 結局、そんなものに目を通しているうちに、時間が過ぎてしまう。こんな状況にあっても絶望するより好奇心が勝ってしまうのが、魔理沙らしいと言えるかもしれない。
 そんな風にのんびり、好奇心を満たしていると。
「無事なのか!マリサ!」
 ドンドンとドアを叩く音がする。
「あ、今、開ける」
 魔理沙がドアを開けると、そこにいたのは慧音と妹紅だった。
「ほら見なさいよ、大丈夫じゃない」
 妹紅が慧音に声をかける。いつものモンペ姿ではなく、ズボンにチョッキという姿だ。それに対して慧音はいつもの冠はなく、長い髪を一つにまとめてポニーテール、エプロン姿の主婦そのもの、という感じだった。
「良かった、マリサが無事で」
 慧音がほっとため息をもらす。
「えっと、私、何かしたのか?」
 慧音の安堵する様子に申し訳ない気がして魔理沙が聴くと、慧音は首を振った。
「いや、電話に出ないので、何かあったんではないかと」
「電話?」
 電話。そんな機械があったとすると?
 妹紅がひょいっと、勝手知ったる様子で部屋の中に入る。そして、髪をかきながら戻ってきた。
「あれなの?コーリンの家では電話は寝るの?」
 慧音が怪訝な顔をすると、妹紅は枕を差し出した。
「これ、電話の上に」
「……ああ、あのリンリン鳴ってたやつ!あれが、電話なのか」
 確かに早苗が言ってた気がする。しかし、あれは備え付けではなくて、手に握ってなかったろうか?あと、もっとごつい奴なら香霖の店で見た気がした。
「……うん、それが電話だ。ちなみに、普通は枕をして寝ないぞ?」
 慧音があきれたように言うと、魔理沙は立て板に水、すぐに言い訳をする。
「いや、頭痛が酷くて、つい音がうるさく思えてな」
「ああ、そういうことあるよね」
 妹紅はうなずくと、慧音も納得した。
「無事なら良いんだ。コーリンのお嫁さんに何かあったんではこちらも申し訳ないからな」
 慧音はそう言って頷く。ああ、この世界でも慧音は律儀な奴なんだな、と魔理沙も微笑が漏れる。
「ほら、普通の理由だったでしょ」
 そう言うと妹紅は苦笑して慧音に言った。
「それで頭痛は直ったの?」
「ああ、今はね。ところで、電話ってどう使うんだ」
 魔理沙の言葉に二人は同時に黙り込む。
「……少し、休んでた方が良いな、マリサは」
「あたしもそう思う。ついでに一応言っておくけど、電話が鳴ったら受話器をとるのよ?」
 妹紅の言葉に魔理沙は自信満々にうなずいた。
「受話器をとる。これ、これだな?」
「……そう。そうよ。マリサ、今日は寝てなさい。コーリンが帰るまで。せっかく今日という日をもったいないけど」
 妹紅も慧音と同じように言った。
「それから、なんかあったら私たちを呼べば良いぞ。お隣同士なんだから、気にするな?大丈夫だ、私たちも今日たいした行事があるわけじゃない。本当なら例年通りコーリンやマリサたちと過ごせれば良かったが、コーリンが仕事ではな。仲間外れにしちゃ悪いのだろう?」
 慧音が心配して言ってくれる。どうも、マリサが独りで構わないから、と前に遠慮していたようだった。それでも来てくれるということは親しい付き合いらしい。
 そういえば、アルバムには自分と香霖と共に、良く慧音と妹紅が写っていた。
 ……よろしい。段々、設定が分かってきた。ついでに、電話の使い方も分かったので魔理沙としては満足な展開である。
「分かった。サンキューな、二人とも」
 二人は微笑んで手を振って帰って行く。
 その途中慧音が、やっぱり前にも言ったがマリサは変わっている。魔女なんじゃないか、と言っている。妹紅からそんな訳ないでしょ、と突っ込まれて、いや、悪い魔女だとか言いたいわけではなくて、などと慧音が言い訳をし始めていた。
 なんにせよ、良き隣人は助かるものだ。汝の隣人を愛せよ、だな、と魔理沙はうなずく。
「と、すると、この後は」
 アルバムを思い返すと、夫の友人と妻の友人がそれぞれいるはずだった。そして、その友人はたぶん、魔法の世界の住人であろう。







3.
 リンリン、とまた電話が鳴った。
 今度は枕を置くなどという愚かなまねはしない。受話器を取り、颯爽と答えることにした。しかし、何を言えば良いんだろう?
「私、アリス。あなたの後ろにいるの」
「ついでに私もね」
 その声は受話器からではなく、背後からした。ダイニングのテーブルからだ。
「こんにちわ、魔理沙。とってもいいお天気でお茶会日和よ。コーリンが仕事とか、本当に甲斐性がないんだから、特別に遊びに来てあげたのよ」
「あなたはいつも暇でお茶会日和だけどね、アリス。今日くらい異性と過ごしたら?」
「あんたに言われたくないけどね、パチュリー。あなたにだって、そんな予定は無いんでしょうに」
 やっぱりこいつらか。
 それも、魅魔様と同じで、突然空中から現れたらしい。
 しかし、魔理沙の記憶にある二人よりももっと成長していて、アリスは美しく都会派に明るいイメージで、パチュリーは美しいが影のある魔女らしいイメージになっていた。なんというか、まるで戯画化してより大人になったような感じだ。
 ついでに、魔法で電話を鳴らしただけで、こいつらは最初からテーブルに着いたのだろう。我が家でもあるかのように、テーブルで紅茶を飲み始めている。この感じを見ると、この3人の茶飲み話はいつもこうして始まってるんだな、と魔理沙は確信した。
「それで、マリサは相変わらずお義母さんとやり合ってるの?」
 アリスが心配したように言う。
「やっぱり、いつも喧嘩しているのか、マリサと魅魔様は」
 たぶん、丁々発止で魅魔様と口論しているんだろうな。あの魅魔様と口論しているという「私」をちょっと見てみたい。
「まるで他人事のように言うのね?」
 パチュリーが本を読みながらつぶやく。どっちが他人事だか。
「ああ、まぁ。他人というか、私というか」
 歯切れの悪い魔理沙に、二人は意味ありげな視線を絡める。
「そんな調子だと、まだ、言ってないんじゃない?」
「もう、言ってしまえば良いのに」
「……何が?」
 魔理沙の言葉に、二人ははぁっとため息をつく。
「あなたでしょ、この間私たちに打ち明けてくれたのは」
「本当は私たちより彼に言うべきなのに。口を滑らせるなんて、まぁ、あなたらしいけど」
「な、何だよ。私、何を言ったんだよ?」
 二人がいよいよ、呆れた表情を浮かべた。
「記憶喪失にでもなったの、あなた?」
 アリスがまじまじと魔理沙を見つめて言う。
 周囲では甲斐甲斐しく人形たちが動き回って紅茶を淹れたり茶菓子をおいたりしているが、これは「人形遣い」の技ではなく魔法なのだろう。
「まぁ、そのようなもので」
「……大丈夫なの、マリサ」
 パチュリーが暗い瞳に、真剣な憂慮の色を輝かせて言う。
「気をつけてね。あなただけの身体じゃないのだし」
 アリスも重々しくうなずいた。
「……」
 そして、魔理沙はただただ、ふーんと返し。
「……はい!?」
 私だけの身体じゃない?
「どんな子になるのかしらね、パチュリー」
「マリサに似れば金髪、旦那に似れば銀髪ね」
「男の子は母親に似て、女の子は父親に似る、って言うけど?」
「その方が良いんじゃないかしら?外向的で冒険心豊かな男の子か、内向的だけど思慮深い女の子。ちょっとステレオタイプだけど、悪くないわね」
「逆なら逆で、両親に似て良いものね」
「そういえば、双子ってこともあるのね」
 ……。
 勝手に続いていく二人の言葉に、魔理沙は呆然となる。そう、確かに私は今、人妻でウブなネンネではないのだそうな。つまり、それは。あの、俗に言う愛の結晶とか、そういう。コウノトリが云々とかいう。
「あのぅ、ちょっと良いかい?」
「「どうしたの?」」
 勝手に話を続けていく二人の魔女に、おずおずと魔理沙は声をかけた。
「もしかして、それって、私に……」
「赤ちゃん、できたんでしょ?」
「おめでとう。前も言ったけどね」
 ということでした。
 私、この世界では妊娠しているそうです。急展開過ぎるんですが、それは。
 魔理沙は純粋に仰天していた。
 どういう展開なんだ、これは?







4.
 妊娠しているそうなんで、この世界のマリサに悪いとあまり激しい動きはしないことにして、魔法を使うことにする。二人の魔女に魔法の使い方を尋ね、不思議そうな顔をされながら教えてもらった。なんでも、鼻を蠢かすのがポイントらしい。
 まぁ、簡単なことならできるようになったのだが。
 とりあえず電話にも対応できるようになったし、二人が帰った後は魅魔様待ちなのだが、なかなか回答が帰ってこない。
 もしかして、私はずっとこのままで、マリサを演じ続ける必要があるのだろうか。
 魔理沙は少し、不安になっていた。妊娠しているという現実が、余りに自分から遠いイメージだったからだ。
 不安が募っていく。一人になるということは、そういうことであるらしい。
 ラジオという機械から鳴る音はロックンロール。明るい強いリズム感があって気を奮い立たせるにはちょうど良い。クラシックもジャズも良いが、今はそういう気分じゃない。
 それにしても、今日のラジオやテレビはクラシック中心の音楽ばっかりだった。それも賛美歌や壮大なクラシック曲ばかり。それならいっそ、ロックの方がましだ。
 とはいえ、音楽を聴けば明るくなるというわけじゃない。メルランあたりの音なら気分も盛り上がるかもしれないが、ルナサの音を聴いてたら気分は落ちる一方だろう。
 そんなことを思って幻想郷を思い出し、暗澹たる気分になったときだった。夜も遅くなってドアのベルが響く。
「ただいま、マリサ」
「お帰り、香霖」
 魔理沙はそう言うと、意を決して打ち明けることにした。キスをする、その前に。
「私なんだが、その」
「うん、分かってるよ。お義母さんから聴いたからね」
 霖之助はそう言って、優しく頷く。
「まぁ、半信半疑だけれど、本気で僕たちの仲を裂きたいならもっと他の方法があるからね。それより、君も不安だったろう?見ず知らずの男の妻になってた、なんて」
 思慮深い瞳に心配そうな表情を浮かべる。
 こんなところは幼い自分にそっと見せてくれた香霖によく似ている。今の私には絶対見せてくれないような感傷的な表情。あるいは、幻想郷の香霖も他人にはこんな顔をするんだろうか?
「大丈夫だよ。お義母さんはああ見えて、魔法世界の大物なんだから」
 そう言って、ほら、と白い紙のボックスを見せる。
「ホールケーキにターキー。この世界ではご馳走なんだ。せめてこっちにいる間くらい、快適に暮らしてもらおうかなと思ってね」
 霖之助は格好をつけるように、ネクタイを緩めながらそう言う。
「それで、先に言っておくよ。寝室は君が使ってくれ。大丈夫、鍵が掛けられるからね。後、必要なら銃でも渡そうか?僕は紳士のつもりだから、大丈夫だとは思うけど」
 そう言って、悪戯っぽく笑って両手を上げ、がおっ、と言ってみせる。狼のまねだろうか。こんなことはうちの世界の香霖はしないなと苦笑する。
「何でも、他にも気づいたことがあったら言ってくれ。僕はいつもマリサに言われてたんだ、お前は肝心なことに気づかないからね、って」
 霖之助はそう言ってまた笑う。
「ありがとう、コーリン、さん?」
「ああ。呼び捨てで構わないよ。……そういえば、君は最初から僕のことをコーリンって呼んでたな」
「……私の元の世界にも香霖がいるんだ。そいつにあなたがそっくりなんだよ」
「……そうか。そいつは僕みたいにいい男かい?」
「……あ~、たぶん、あなたみたいに変な奴だよ」
「なるほどね。偶然の一致か」
「たぶん、当然の一致だと思う」
 魔理沙の答えに香霖……、コーリンがふむ、と頷いた。
「良し、表情も明るくなったようだし、食事といこう。二人っきりが気が重いというなら、ケーネやモコーも呼ぼうか?あるいはアリスやパチュリーを呼んでもらっても良いよ?」
「アリスやパチュリーとはあなたは仲が悪くないのか?魅魔様とはあんなに険悪なのに?」
「魔法世界の連中は基本、人間を軽蔑してるがね。例外も多いのさ。マリサは違ったし、その友人も違うようだよ?良く皮肉を言われたり、あなた本当にマリサのことを愛しているの!最後まで愛していられるの!なんて責められたりしたがね。まぁ、そのくらいには、仲は悪くないね」
 コーリンが微笑んだ後、ちょろっと舌を出しておどける。
 こういう、いちいちオーバーアクションのところが全く香霖らしくなかった。ただ、その奥に潜んでいるものは、香霖らしい不器用なやり口だと思う。
「で、どうする?呼ぶかい?」
「いや、あなたを信頼しているよ。あなたとマリサの話を聴きたいからね。そうすると、他の人がいたら話しづらいだろう?」
「君と二人っきりだって話しづらいさ。正直、君が僕の知っているマリサじゃない、って頭で分かってても納得するのは難しいんだ」
 コーリンにしてみればマリサ相手に、自分の馴れ初めから全てを話すように感じるらしい。
「そうだな、どこから始めようか?やはり、出会いから、ということになるのかな」
「勿論。時間はあるからな。ゆっくりやってくれ」
 私の言葉にコーリンは少しおどけて言った。
「本当に君はマリサじゃないのかい?」
 それからはコーリンの独壇場となる。彼と「彼女」の歴史。
 魔理沙は彼らの記憶の光景に少し浸っていた。自分ではないマリサが、この目の前のコーリンと過ごしてきた時間。全く関係ないはずなのに、それはおとぎ話というには身近で、自分の話というには遠い話だった。
 マリサと何度も偶然、ぶつかったこと。
 惹かれ合っていったこと。
 ときに反発したこと。
 結婚する前の日に、魔女であることを知ったこと。
 魔法を使わない約束をしたこと。
 こっそり魔法を使われたことが腹立たしくて八つ当たりしてしまったこと。
 そんな自分が許せなくて、なんとか和解しようとしたこと。
 そのときにパチュリーやアリスに邪魔されたこと。
 ケーネやモコーが相談に乗ってくれたこと。
 魔法を含めてマリサだと理解したこと。
 それでも人間の世界にお嫁に来てくれたマリサを幸せにしたいこと。
 いや、幸せにするのではなく、二人で幸せになるのだということ。
 そして、そろそろ三人になれればと思うが、そんなことをマリサに言って悲しませたくないこと。
 最後の話を聴いて、思わず喉まで言葉が出そうになる。
 だが、それは反則だった。魔理沙はマリサのために、ぐっと言葉を飲み込む。
「で、今は幸せなのかい?」
「君の見たとおりだね」
 コーリンはそう言って最後のターキーの一切れを食べ、自分のグラスのビールを飲み干した。魔理沙はすでに食事を終えてケーキも食べ終えている。
「さ、こんなところで僕ののろけ話も終わりだな。どうだい、胸焼けしたろう?」
「胃腸は良い方なんだ。それでも、少しもたれたかな?」
 コーリンはその言葉に微笑む。
「さ、食器の後片づけは僕がしよう。君はシャワーでも浴びて寝ると良い」
 その言葉に答えようとした矢先だった。
 ホールケーキの飾りに目がいったのは。
「これ……」
「ああ。マジパンでできた飾りだね。サンタクロースの」
「……紅白」
 といえば霊夢。だが、そうじゃなくて、この赤い衣装。そして、急に思い出す、あの白いセーラー服。
「赤い服と白い服の二人組……」
 魔理沙は何度か復唱した。
「どうしたんだい?」
「あいつら!そうだっ!あいつらだ!あいつら、また平行世界間を移動してたんだ!」








5.
 魔理沙が声を上げたときだった。
 まるで、そこまで立っていなかった旗が立つのを待っていたように、事態が動き出す。
 寝室から、大きな音がしたのだ。慌てて二人が向かうと、そこには魅魔がいた。それも紅白一対の二人組を連れて、彼らをダブルベッドに転がしていた。
「ほいっ!つれてきたよ。今度の神隠しの主犯、うちの娘を拉致した張本人たちだよ」
 そう、この二人組。
 魅魔様同様、懐かしい顔。
「岡崎夢美!北白河ちゆり!」
 二人組が、何かに縛られているように転がされている。
「お久しぶりね、魔理沙」
「や!」
「いや、そんな状況で格好つけられても」
 非統一魔法世界論の岡崎夢美教授とその助手北白河ちゆり。
 かつて、幻想郷にも現れた平行世界を超えていく二人組。世界線を越え、次元を越え、可能性空間移動船でさまざまな平行世界を股にかける。そうだ、この懐かしい連中を竹林で見つけたのだ。
 良くあの竹林には、結界を越えて様々な連中が現れる。この二人もそこで見かけたのだ。何をやってるのかと追いかけていったところ、途中で見失いそこでてゐを見つけたのだが。そこに、あの穴が。そうか、あれが平行世界間の歪みか。
「お前等、こんなところで何やってるんだよ?」
「私は魔法の世界の魔力の原理を調べようと」
「私はそれに付いていって」
「つまり、いつも通り、ってことか」
 こいつらについては。
「だとして、何で私だけ身体ごと来なかったんだよ!?」
「それは、調べてみないと何とも」
 夢美は転がされつつ、そう答える。
「ちゆり、計測器で調べてみて」
「いや、私も縛られているんですけどね」
 二人して芋虫のように動く。
「魅魔様、こいつら解放してもらって良いですか?」
「大丈夫なのかい?」
「まぁ、気は良い奴ですよ」
 魅魔は何事か唱えると、二人は自由に動けるようになる。
「良かった。これで楽になったわ。それじゃ、ちゆり」
「任せてください」
 そう言うと、何かの機械で魔理沙の周囲を調べ始める。
「ガイガーカウンター?」
 コーリンがぼそっとつぶやくが、夢美は首を振る。
「どう?」
「ああ。やっぱり魂だけ位相が違ってます。これ、魂だけ切り離されて、平行世界を玉突きしちゃってますね」
「あら素敵、そのドミノ倒しは非常に危険ね」
 夢美は安穏とそういった。科学者の危険は、いまいち緊迫感が足りないのかもしれない。偏見かもしれないが。
「どこかで一つ抜けたら、もう戻れないもの」
「おい!夢美!」
 魔理沙がきつく言うと、夢美は頷いた。
「大丈夫よ。あなたの魂はどんな次元、どんな平行世界でも強力だわ。そうそう消滅したり灰になったりはしないわよ。ま、確率論的な事故は防げないでしょうけど」
 夢美は不安になりそうなことを言って、計測器の結果に目を通した。
「うん。いける。全ての平行世界の値はまだ一定になっている。これなら大丈夫ね。誤差も少ないし」
 こいつら、どういう理屈で確信を持って言ってるんだろう。だが、彼らができるといえば、できるはずだ。
「じゃ、魔理沙。あなたの魂を元の世界、幻想郷に戻すわ。そうすれば、玉突きして魂が元に戻っていく。……事故らなければね」
 不安を煽る夢美に魔理沙は苦笑を浮かべた。
「はいはい。やってみるしかないんだろう。そうしないと、この世界のマリサも戻れないんだろうし」
「そういうことね」
 何を威張ってるのか、夢美は胸を反らして言った。
「ねぇ、魔理沙。こいつら懲らしめた方が良いんじゃないのかね?」
「魅魔様。それは後で」
「了解」
 魅魔は簡潔に答える。
「じゃ、被験者の承諾は得たし、帰らせるけれど。……最後のお別れはしなくて良いの?」
 夢美の言葉に魔理沙は軽く頷いて、魅魔を見つめた。
「ありがとうございます、魅魔様。あなたは本当の母親のように親身になってくれました」
「どうってことないさ。あんたの世界の私によろしく。それから、こういう男を愛しちゃいけないからね」
 魅魔の言葉に魔理沙は苦笑して、今度はコーリンを見た。
「ありがとう、コーリン。あなたは夫のように私に大切にしてくれた。多分、マリサはマリサで幸せだと思う」
「そう言ってもらえれえば有り難いな。マリサは絶対に口が裂けても言ってくれないだろうから」
「そうかな?多分、すぐにあんたを幸せにしてくれるだろうけどね」
 意味ありげに魔理沙が笑うと、コーリンが不思議そうな顔をした。
「そりゃ、どういう……」
 コーリンの言葉の途中で、突然、魔理沙の頭に鈍痛が走った。そのままベッドに倒れ臥す。
 最後に魔理沙がこの世界で聴いた言葉、それはちゆりの言葉だった。
「やっぱり、パイプ椅子が一番だぜ」







6-A.
「おはよう、魔理沙」
 目を覚ました彼女の前にいたのは、勿論、向こうの世界の家族でもなく、事件の黒幕であるあの紅白二人組でもなかった。
 魔理沙を穴に落とした時計を持たない兎、因幡てゐ。彼女は座って魔理沙をのぞき込んでいる。
「良い夢、見れた?」
 悪戯っぽく笑うてゐの顔は、まるで魔理沙がした経験を全て知っているかのようだった。
「良い夢、だったかな?」
「さぁ?私には分からないけど。でも、あなたが人間である以上、きっとそれは幸せな夢だったんでしょ?」
 自分の能力に疑いないのか、てゐはそう言い切る。
「まぁ、悪い夢じゃなかったさ。それにしても、兎を追いかけるとろくなことにはならないな」
「その代わり、追っかけられた兎はきっと木の根っこでぽっくり、よ?酷い話じゃない?」
「そして、それを見た人間は働くのを止めてぽっくり、だな。酷い話だ」
 二人して悪い笑みを浮かべ合うと、てゐは立ち上がった。
「さて、無事のようだし、私は戻ろうかしら」
「待ってくれ、てゐ。私はずっとここで寝てたのか?」
 あの世界に行ってから。
「……どう思う?」
 そう言って含み笑いを浮かべるてゐは、いつもの腹黒いイメージのままだった。
「できれば邯鄲の枕、黄粱一炊の夢、といきたいところだな。時間は経ってないと信じたい」
「じゃあ魔理沙、訊くけどさ。あなたは夢の世界で何をしていたの?」
「そりゃ、向こうで暮らして時間を過ごしてたな」
「そう。じゃあ、こっちの魔理沙も同じように夢の世界で時間を過ごしていたと思わない?」
「だとしたら、何でまた私は元の位置で寝ているんだ?」
 その問いにてゐは首を振る。彼女にも分からないのだろうか。
「分からないわよ。でも考えてみるとしっくり来ない?夢から覚めるためには、夢の世界の出入口に戻る必要がある。この世界を夢で見ていた魔理沙も、魔理沙と同じように出入口を思い出す。兎がいたわね、って思い出して追いかけて行ったら、落とし穴に落ちて……」
 そう言って、てゐが悪戯っぽく空を指さした。
「同じ少女が空から落ちてくる。あなたはここで眠っていて、やがて目が覚める」
 てゐはそう言って笑った。
「そこで入れ替わったのかも?詳細は、あの素っ頓狂な二人組にしか分からないけれど。経験的にはそういうことじゃない?」
「いや、私に訊かれてもな」
 魔理沙の言葉にてゐは頷き、同じように答えた。
「そりゃ、私に訊かれてもね」
 てゐはそう言うと、じゃね、と永遠亭へと帰って行く。倒れていた私を心配して見守ってくれていたらしい。
 あれでなかなか、悪い奴じゃない。まぁ、一筋縄じゃいかない奴だが。
 しかし、なるほど。
 こちらに来た別の魔理沙もいたらしい。彼女はここで私の身体でどんな経験をして、どんな印象を受けて帰って行ったのだろうか?
 玉突きと言っていたから、必ずしもあちらのマリサがここに来たわけでもないだろうが。
「まぁ、たまには兎を追いかけて不思議の国、ってのも悪くないか」
 なにも、アリスにだけ、その権利を独占させる必要はないだろう。まぁ、あくまで戻ってこれるなら、だが。
 魔理沙は少しお腹に手を当ててみる。
 いつか、ここに、そういうことが、自分にもあるのだろうか?
 いや、それを考えるのは、少し早いな、と魔理沙は苦笑した。
 とりあえず、本当に幻想郷に戻ってきたのか確認するために、香霖堂に行こう。彼女は傍に落ちていた箒をつかみ、飛び乗った。
「私の知っている変人のところへ」









6-B.
「マリサ、お帰り」
 ミマとコーリンは、目覚めたマリサを見つめた。ちゆりがマリサに向かってパイプ椅子を振り下ろしたときには、これは戦争だと二人は憤激したが、触ってみるとそれはゴム風船で出来たものだった。全くもって、不思議だった。
 そして意識を失ったマリサが、ようやく目を覚ます。
「ただいま、コーリン」
 マリサはゆっくり周囲を見回して言った。
「帰って来れたのか、私は?」
「ああ。そうだよ」
「クリスマスに間に合った、かい?」
 マリサは二人を見て尋ねる。
「ギリギリ、ね」
 微笑むコーリンにマリサが微笑返して言った。
「それならコーリン。私からクリスマスプレゼントだ。とはいえ、私の懐は痛まないプレゼントで、後で死ぬほどお腹を痛めるんだろうけど」
 マリサはそう言って笑った。
 驚いて目を丸くするコーリンと、ガッツポーズを浮かべるミマ。おおっ、と紅白二人組も拍手する。
 それから、幸せそうにマリサはもう一度、お腹に手を当てて言った。
「私たちの子供がやってくるんだ」






ed
 Bewitched Theme Song
 「(サ)マリサ・スティーブンス」と「コーリン・スティーブンス」ということで、一つ。
 アメリカと聞いて、全力でやらねばと思いました。……思っちゃったんです。
 それぞれの作品「らしさ」を目指した結果、こうなりました。
 なお、魔理沙は幻想郷では人間(魔法使い)だったのが、向こうの世界では魔女になっている、ということで一つ。

 それにしても、テレ東って凄い。奥様の魔女の次がかわいい魔女ジニーなのも含めて凄い。
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コメント



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1.5名無し削除
安心して読める安定した話だったし、マリリン…もとい魔理霖好きな自分としては個人的にはお気に入りなのだが、アメリカというテーマが単なる舞台背景としてしか使われておらずいささか主題としては弱いため、こんぺのSSとしては高得点はつけづらい。
2.8がま口削除
ほう、奥様は魔女ですか。
昔流行っていたということを聞いたことがあるだけ、という感じなので元ネタが分からなかったのですが、原作もこんな感じにほのぼのしているのかなぁ、と思いました。
クロスオーバー物って大抵どっちつかずの残念な形に仕上がることが多く見受けられますが、今作品は綺麗にはまっている様に感じました。
是非、元となったドラマを見てみたいですね
3.8烏口泣鳴削除
こういう世界も良いなと思いました。ウェディングドレス姿の自分を見た魔理沙の心境が気になります。コーリンも優しくて良い。
4.4エーリング削除
魔女のイメージは日本と欧米では異なるというようなことは良く聞きますが、元はと言えばアメリカ発の本作「奥さまは魔女」の大ヒットが根底にあるらしいんですよね。良質なコメディでした。特に魅魔様の配役が絶妙で……姑っぽいよね!展開面では少し岡崎教授頼みすぎるかなと思う所はありました。
5.3みすゞ【5点満点】削除
まさかあの作品から持ってくるとは。予想外の角度からの切込みでした。お話もみんな優しくて好きです。でも、奥様側だけでなくて不思議の国に行った方のマリサも見てみたかったというのは欲張りすぎでしょうか。玉突き事件もあっさり解決してしまったので物足りなさを感じました。
6.6がいすと削除
旨いことパロディがまとめあがっていて、普通に良い作品だったという。
アメリカンホームドラマ、いいですよね。
7.3ito削除
パロディ元は分からないなあ、見たことないので。知ってればもっと楽しめたかもしれませんが。
全体として、話のポイントが分かりづらかったです。
別の世界に行った魔理沙が違う人間関係にとまどうことがメインの話かと思ったら、
簡単に紹介されるだけで、そこから話が発展するわけでもなく、読み足りない感じでした。
こーまり好きとしては、違う世界で霖之助と結婚している魔理沙が、
自分の世界の霖之助との関係を考える場面が足りないのはマイナスポイントです。
また、夢美とちゆりのくだりはこの作品に必要ないかな、と思いました。
違う世界の人間関係を書くことと、こちらに来た理由探しを同時にやると焦点がずれるし、
はっきりした原因を突き止めなくても「なぜか来てしまった」だけで話は構成可能だと思います。
そちらの方が短編らしくまとまるような気がしますし。
8.6あらつき削除
良い発想だ。
ラストに関して、マリサが魔理沙側の世界でどうなってたのか知りたかったなー。ほんの少しで良いから。
9.6みく削除
てゐの「幸福」でまとめたのは良かったと思いました。思いもよらぬネタを夢美で繋げたことも感心しました。
元ネタの大仰な言い回し成分がもうちょっと欲しかったです。平行世界の住人たちが魔理沙という部外者に対して優しいので、相対的にアメリカのコメディドラマにある毒気がやや弱く感じられてしまったのかもしれません。
10.5ナルスフ削除
奥様は魔女をよく知っていれば、もうちょっと楽しめたのだろうか。
これだけ読むと、この世界の情報を通り一遍なぞってるだけのような感じがして、若干この世界に愛着が湧ききらない感。
印象的なハプニングがあるわけでもないですしねー。せっかくぶっ飛んだ設定にしたのに、淡々としてるのはもったいない。
受け身でいるだけでなくて、もうちょっと魔理沙(とコーリン)を活躍させてあげてもよかったのでは。
ともあれ、どこかの世界のマリサとコーリン、お幸せに。
11.4deso削除
これまた懐かしいネタを。
でも、せっかくの元ネタのわりに、ちょっとおとなし過ぎた感じ。
キャラが多いわりに印象薄いし。
ウェットじゃなくもっとカラッと笑わせて欲しかった。
12.8文鎮削除
まさにアメリカンホームドラマの金字塔にして日本の魔法少女ものの原点ですね。このドラマがなければ魔理沙は存在しなかったかもしれません。
スティーブンス家(?)の雰囲気に加えて魅魔様や教授、ちゆりたち旧作組の登場で何だか懐かしい気分になってしまいました。
特に魅魔様は怨霊という存在からか、はまり役だったと感じました。あ、決して姑臭いという意味ではありません…ありませんったら。
もし魔理沙のアメリカ生活が長引いていたら、彼女は大変だと思いますが、それはそれで見てみたかった気がします。
13.7あめの削除
最初にナレーションが入り、魔理沙がそれに突っこみを入れるという入り方が良いですね。
すごく突拍子もない話だけど、これからどうなるのだろうと読んでいてわくわくしました。
14.9めるめるめるめ削除
マリサとコーリンの生活がとても幸せそうで素敵でした。
15.8百円玉削除
面白かったですねぇ。こういうアメリカンでファミリーテレビな東方小話をもっと読んでみたいと思いました。奥さまは魔女は見たことはないのですが、アルフやフル・ハウスは大好きでした。コーリン、ミマや他の出演者(あえて『出演者』と呼ばせていただきたく)もジョークの効いた話し方で、大変雰囲気が出ていました。 
オチもすんなり綺麗で、魂の玉突きの理屈にちょっとだけ理解が及ばなかったのですが、全体としてはこざっぱりとした印象です。そういったところも含めて、アメリカドラマらしい、ですね。
16.7このはずし削除
面白かったけど、原作を知ってたらもっと面白かったのかな。
恥ずかしながら「らしさ」を知らなかったものでして、純粋に読んだ感想としてこの点数を捧げます。
17.6名前無し削除
取り急ぎ、点数のみで失礼します。
18.4白衣削除
らしさのバランスは良かったと思います。が、個人的にはアメリ感らしさがもう少し欲しかったかな。
19.6K.M削除
そういえばテレビ欄で題名見た記憶ありました。見たことはないのですが