第十三回東方SSこんぺ(アメリカ)

火力発電所のような彼女たち

2014/03/09 21:50:00
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 春ともなれば気もそぞろ。神社の参道から雪が消えれば、陽の目を見た石畳は物欲しげに巫女を見上げるのだった。
「…………」
「おん。どうした霊夢」
 さも当然のように、我らが巫女・博麗 霊夢の隣にいるのは魔法使いの霧雨 魔理沙である。霊夢はじっと、萌え芽吹かんとする命を薄らと隠した土を見つめている。
「霊夢?」
 魔理沙がその表情をひょいと覗き込む。すると眼だけ動かした霊夢が魔理沙を捉え、
「肉、食べたくない?」
 唐突に議を発した。
 すっ と霊夢が顎を上げる。二人の頭上、梢の枝もとにはスカートの中身を晒すこと厭わぬ烏天狗が、これまたさも当然のように鎮座しており、今か今かと新聞のネタを待ち構えていた。
 声高に宣言する。
「バーベキューパーティ! バーベキューパーティだ!」
 はらはらと黒い羽根が舞い散り、轟音と共に少女がひとり空を駆けた。バーベキューパーティ開催の知らせはすぐさま郷中を駆け巡り、ほどなく人妖・神仏・仙人から獣まで、森羅万象くまなく知るところとなる。
「開催は一週間後、場所はここ博麗神社。肉を持て! 肉を! 肉を!」
「アメリカンだな、霊夢」
 一週間後。この挑戦に呼応した幻想郷に巣食う主要な勢力の長たちは、その威信と肉に対する並々ならぬこだわりを胸に、各々が最高と自負する食肉を手に神社に集結。

 博麗神社はソースと煙と肉と肉と肉により、アメリカンに彩られことになる。



 火力発電所のような彼女たち-Like American Families-
 第百二十五季 3月9日



 いつもの編み上げからエア・ジョーダンに履き替えた東風谷 早苗が守矢神社を出たのは、明らみはじめの午前五時。木樹が作る濃い影の中を、彼女は毟られた葉の痕を辿って歩いていた。
 やがて山肌の一角で足を止める。地面の一部が、えぐれていた。
「ア、ハン」
 息をついて、破壊された罠を検分する……左様。彼女はここに、鹿獲り用の罠を仕掛けていたのだ。
「どーいうこった……?」
 実際、奇妙な状況であった。早苗が仕掛けたのは獲物の体重によりトリガを絞り、ねじりバネでワイヤーを括り付けるという極々ありふれた足くくり罠だった。動作不良でワイヤが跳ね上がったものとも思えないし、余人の手により罠が解除されたものでもない。足早に次の目的地に急ぐが、そこでも、そしてその次にも、早苗を待ち構えていたのは無力化された罠であった。
「っかしいなあ。ねえこれ、どういうことだと思います?」
 わざわざ重たい罠を背負って山を歩いた苦労をふいにされた早苗が、落胆した様子で横手の茂みに問いかける。哨戒天狗の犬走 椛が、ばつの悪うそうな顔で早苗の前に姿を現した。
「えー。そうですね。鹿の仕業じゃないですか。鹿」
「鹿ぁ?」
 椛曰く、早苗の仕掛けた鹿獲り用の罠は、罠に気づいた鹿により蹴り壊されたものだという。なるほどそういう視点で現場を再度眺めると、この鹿道には常にはない巨大な足跡があるようにも見える。
「というか。何時から気付いてました。私の監視」
「気付かれてる、と思ったから近づいてきたんでしょう。あなたがそう思った時には気付いてましたよ。それより、心当たりがあるんですね?」
 椛は嘆息して早苗を手招きした。見晴らしの良い場所に立つと、口元を隠していたストールを解いて風を飲む。しばらくの後、双眼鏡を構えた早苗に位置を指し示した。
「あそこ、湖沼の畔です。見えますか」
「……ええ、見えました。なんてデカさですか、あれは」
 そこに居たのは、オオジカであった。目算で、体長三メートル、体重は七百キロか。巨大。とにかく巨大。それが、北方山系の南山脈の片隅で、息をひそめるように水を飲んでいた。
「あれを仕留めるのが、私の今日の仕事でしてね」
 周辺地域の治安維持を任務とする国境警備隊には、凶暴で知恵のまわるオオジカが、どういう具合か山に現れたという通報が多数寄せられていた。
 面倒くさそうにぼやく椛とは対照的に、その横では早苗が目を輝かせていた。いかにも、早苗は本日、鹿を獲りに山に入っている。総ては霊夢に肉を用意するため、ひいては肉により幻想郷に八坂の権勢をアッピルするためであったが、そういった信仰活動を差し置いても、斯様な怪物にまみえて血が騒がん方がおかしいというものである――なぜならば、彼女は風祝であるからだ。鹿を狩るのは、彼女にとって祖先に報い、己の血に従う本能的な行為に他ならない。
「決めました。あれは、私の獲物です」
「まあ? 私は排除できればなんでもいいけれど。……足は、引っ張るなよ」
 油断ならない相手だ、と前置きし、椛は早苗を伴って、湖畔に留まり、湖沼を飲み尽くそうとしているオオジカに接近した。
 風を操る早苗と千里眼を持つ椛が力を併せれば、鋭敏な嗅覚をもつ野生の知恵者にも、気付かれぬまま距離を詰めることができる。オオジカの尻を向こう二十メートルにして、この事実に一番驚いていたのは他ならぬ早苗であった。彼女は椛の指示に従って風を操り、こちらの臭いと音を遮断していた。一人では、こうもうまくはできなかっただろう。犬走 椛。彼女は、こういう狩りに、あるいは戦争に慣れている。
「それで、どうします」
 アイサインで問いかける。椛は、この早苗の肩ほどしか身長のない小柄な、しかし手練れの白狼天狗は、肩から提げていた突撃銃のストラップを外し、楯の裏にはめ込んでいたバイポッドを接続し伏撃ちの姿勢を取った。この山にしては珍しい、西側の銃。椛が胸のポーチから取り出した弾倉は角ばって短く、それで早苗はこの銃が半世紀前に製造されたM16の試作機であると悟った。
 樹脂が盛られ、輪郭に併せて成形された直銃床に頬を押し付ける。後部照準器はキャリングハンドルごと換装され位置を修正されており、小柄な椛でも問題なく狙いをつけられた。スコープは使わない。理由はお解りだろう。
 距離はほんのわずかであったが、相手はどうしようもなく巨大だった。たとえ頭部に弾丸を叩きこんでも頭蓋を破れるかどうかは怪しい。ゆえに椛は前脚を狙った。動きを止め、その隙に早苗が肉薄、致命傷を与える。汗を握りしめた早苗が、今か今かと飛び出すタイミングを計る――その視界に、それまでなかったものが映り込んだ。
「なんだ、アレ……」
 オオジカが口をつける水面に気泡が立つ。勘のいいオオジカは泥を蹴り、全身を水面から遠ざけた。一拍遅れて水柱が立つ――その中心に人影。
 水中のアンブッシュ。
 一体、どこのどいつだ。
 ミミズクじみた特徴的な髪型。
 あれは神子だ。
 豊聡耳 神子だ!
 椛は速やかにオフハンドの姿勢に移行した。体軸を真っ直ぐに揃え、保持したライフルの重量を骨盤で広く受け止める。背筋を伸ばし、やや顎を上げるのが、椛の安定するやり方だった。ヘビーバレルに換装されているこのライフルにはハンドガードがない。代わりにバイポッドに左の掌底をつけ――再び頬とストックが触れ合い、照準器と狙点が一本の線で結ばれた。即ち、ライフルが椛の手指の延長となった。
 神子は手にした笏でオオジカの頭部に一撃を見舞うことに成功していた。奇襲で文字通り頭を叩いたのだ。快音が響き、手ごたえもあったが、無力化には至らない。第二撃を構える前にオオジカが神子に突っ込む。
 体重差ばかりはいかんともしがたく、神子は弾き飛ばされ水中に没した。そして射線から人影のなくなった瞬間。椛が引き金を絞った――軽くも尖った衝撃波と共に、弾丸が大気を裂いて飛翔、至近距離のライフル弾がオオジカの前脚を付け根を破壊。
「行け、東風谷ッ!」
 二十メートルの距離を早苗は三秒で縮めた。その気配を察知したオオジカがヤバレカバレに後脚を蹴り上げる。しかし動きは鈍い。神子が見舞った一撃が効いていた。早苗の風が吹き抜ける。
 鮮血が迸り、オオジカの首が胴から離れ地に落ちた。風が、刃を成して切断を果たしたのだった。
「とったどー!」
 勝鬨もそこそこ、早苗はオオジカの解体処理に着手した。椛が追いつくころには、心臓に深々と貫き手が入っており、バケツをぶちまけたように血液が放流される……血抜きだ。
「このまま解体をはじめます。でも、これだけの大物。わたし一人ではどうしようもありません」
「手伝うよ。乗りかかった船だ」
 椛が腰に差していたナガサを抜き、早苗の後に続いた。これだけの巨体、血を完全に抜くには頭を落とし、心臓を突いただけでは不十分だ。椛は素早くその他の主要な動脈を断ち、さらに血を流させた。ちょうどそのとき、湖沼からようやく神子がざぶざぶと這い出してきた。
「あんたら、ちょっとは人の心配をしたらどーなのよ」
「あ、神子さんこんにちわ」
「ええ、こんにちわ。それ、私が狙ってた獲物なんだけど」
「神子さんも鹿肉ですか?」
 神子は鷹揚に頷いてみせた。しかしずぶ濡れな上に、流れてきた血液でちょっと目も当てられない状態になっており、平時の神々しさは微塵もない。
「鹿狩りは豪族のたしなみだからね」
「あら、風祝だって負けていませんよ」
 睨み合う両者の間で、椛だけが黙々と作業を続けていた。内臓の取り出しを急がねばならない。左様、鹿は毛皮に覆われた生き物で、しかも体温が高い。放っておけば内臓は急速に腐敗し、肉に臭みを残すことになる。
「ふたりとも、手伝って」
 早苗と神子はひとまず休戦し、椛と共に鹿を転がしザクザクと解体を始めた。腹を裂き、丁寧に刃を入れて、直腸から食道までを一気にに除いてから、今度は背中を上に転がした。
「犬走さん、よかったら内臓食べちゃってください。味塩ありますから」
 猟犬には内臓を与えれば、褒美と受け取って大人しくなるが、さて目の前の豪族はどうしよう、と捌く手は休めないまま早苗は思案した。ほどなく、鹿肉の中ではいっとう味が良いとされる背ロースが取り出される。二本ある背ロースのうち一本を渡す、そこらへんが落としどころかな、と踏んでいた早苗だが、神子の側はやや思案する素振りを見せた。
「なあ、早苗さん。ここは協力しないか?」
「へえ?」
「同じ鹿肉、同じロースを使っても差別化は難しい。うちには火加減にかけてはピカイチのプロがいるけど、現代人の味覚欲はまだ理解できていないんだ。味付けには不安が残る」
「なるほど。いいですよ。確かに布都さんの料理は美味しかったですからね」
 物部 布都の炎の料理人っぷりは早苗も重々承知するところである。
 かくして、守矢組と霊廟組は手を結び、共に肉の祭典、バーベキューパーティに挑むことと相成った。
「しかし……早苗さん。こんな大物、この山にはよく現れるのですか?」
「まさか! 寒帯から亜寒帯にかけて生息する生き物ですよ。この島国に自生しているなんて聞いたことがありません」
「じゃあなぜ」
「"彼女"にとって都合が良ければ、ここではなんでも起こりうるのですよ」
「……なるほどね」
 話は終わったとみて、椛が声をかける。
「残りの肉はあとでうちの若い連中に取りに来させよう。無駄にはしないよ」
「ありがとうございました、犬走さん」
「椛でいい。肉を分け合った。私たちは友達だ」
「オーケー、椛。バーベキューパーティ、きっと来てね」
「私たちが腕を振るうんだ。きっとうまい肉を切り分けてあげるよ」
「それは楽しみだな」
 かくして、三者は三様にバーベキューへの備えを始めた。
 そして無論のこと。このとき、幻想郷中の猛者・有力者たちも、同じように準備を完了しつつあった。


 一週間後。
 約束されたかのような快晴の下、ついにバーベキューパーティの火ぶたが切って落とされた。
 無駄に面積だけはある神社の庭先には無数の鉄板とグリルが聳え立ち、めいめいに煙を上げている。このうち三割ほどは前日から、一割ほどは前々日から設営と火入れをはじめており、最長で三十時間ローストし続けている者もいた。
 縁側には特設テーブルがあり、ここには審判員としてサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア、そして博麗 霊夢の四人が座っていた。司会進行役の射命丸 文が溌剌とした声をあげる。
「サァー始まりました、幻想郷大BBQパーティ! このクッソ頭悪いにもほどがあるイベントを考えやがったファッキンビッチこと我らが博麗の巫女に、まずは趣旨と理念を語っていただきましょう!」
 マイクを受け取った霊夢がそっけなく答える。
「お肉が食べたかったのよ。以上」
 不機嫌そうであるが、さもありなんだ。二日前から香ばしい煙を嗅ぎながら、この日のために食を細めて我慢してきた霊夢はいまや、細胞レベルで肉を、フライを、ソースを待ちわびている。
 だがそんな博麗の巫女などどこ吹く風で、集まった参加者たちは皆、調理開始とともにビールの栓を抜き、やんややんやとグリルの前で互いの肉を自慢し合い、すっかり出来上がっている有様だった。
 ことここに至り、博麗の巫女はBBQパーティの主催でありながら、涎を垂らして待つ腹ペコ巫女といういつものポジションに、どういうわけかはまりこんでいた。
「あーもー! はやくお肉持ってきなさいよ、お肉ぅー!」
「イエーイ、肉だ!」
「肉肉ゥ!」
「それ、にーく! にーく! にーく! にーく!」
『イエー!』
 霊夢の叫びに木霊するように、参加者が一斉に肉コールを始めた。それが最高潮に達した瞬間、ついにオーブンのふたを開ける者が現れた! 一気に噴き出す蒸気と煙。焦げた脂とナツメグの香ばしさが瞬く間に広がる。ぐぅ、と何人かの腹が反射的に鳴った。
 皿に盛りつけた肉を持って、颯爽と霊夢たちの前に立ったのは誰であろう――レミリア・スカーレット嬢である。
「一番乗りは、この私よ!
『ハンバーグステーキ スカーレット風~目玉焼きを乗せて~』
 このデスカーレットソースをかけて召し上がりなさい!」
 
『ハンバーグステーキ スカーレット風~目玉焼きを乗せて~』
 アバディーン・アンガス(月齢十二カ月)のボトムラウンド(外腿肉)と、ラウンドレース、ヨークシャー、バークシャーによる三元豚バックリブを半々で混ぜた牛豚合挽肉に、細かく刻んだタマネギとシソ、パセリ、クリームチーズ、ナツメグを加えてミキサーにかける。そののちパン粉と溶き卵、さらに黒コショウを気持ちだけ加え、よくよく手捏ねしたあとバターを引いたフライパンで焼き色をつけたら、オーブンでじっくり四十分加熱。付合せはナポリタンスパゲッティと、タルタルソースを乗せた白身魚のフライ。ハンバーグソースはケチャップをベースにホットソースを加えて作る。焼きあがったハンバーグの上に丸い目玉焼きをトッピングし、最後にプリンをプッチンしてプレートの端っこに乗せれば完成である。
 ボトムラウンドは赤身ばかりの硬い肉だ。ゆえにレミリアは三元豚のバックリブと、脂肪の多いクリームチーズを加えて肉のうまみを引き出した。しかしなんと言っても、この料理のポイントは肉を中心に満足度の高いメニューを一皿に取り揃えた事だろう。これはレミリアの好物ばかりを集めた祝いの膳、紅魔館の誰しもが楽しみにする、最高のごちそうなのである。
「さあ霊夢、召し上がれ! ……あ、ちょっと待った、大事なの忘れてた」
 四人の前にトレイを置いたレミリアが、コウモリが描かれた小さな旗を取出し、ハンバーグの上に突き立てた。
「これでカンペキ」
「ありがとう。いただくわ」
『いただきまーす!』
 三妖精はめいめいにハンバーグを切り分け、ナポリタンを巻き、口の周りをケチャップまみれにした。空間のペドさが急上昇するなか、霊夢はまずソースを手に取った。
「それで? デスカーレットソース、ね。アメリカン・デスソース系のホットなヤツかしら?」
「ええ。かけ過ぎて、頭が飛んじゃっても知らないんだから」
「ふーん」
 紅いソースの入ったディップカップに直接舌をつける。レミリアは「どうだ、さぞ辛かろう」みたいな顔をしていたが、霊夢は無言で傍らの咲夜を見やった。瀟洒なメイドはあくまで瀟洒に、ニコリと笑うばかりだった。
「言うほど辛くなくない、これ?」
「しっ、ルナ、黙りなさい!」
「肉うめェーーー!」
 霊夢はハンバーグを半分に切り、大きく開けた口で一気に半分をモグモグと噛みしめた。粗挽き肉の弾力が歯に心地いい。肉汁が口いっぱいに広がった。
 ひとしきり食い終わると採点に移る。文が笑いを堪えながらマイクを振った。
「さァ、レミリアさんのお子様ラ……もとい、『ハンバーグステーキ スカーレット風』の点数は……
 80点、75点、75点、70点! 合計、300点! レミリアさん、暫定トップです!」
「やったーーー!」
「ハンバーグにしては、奥深い味わいが出てたわね。ナツメグを混ぜてよく捏ねたのでしょう、タマネギの甘みもあった……けど、惜しむらくは、エネルギッシュなフレーバーが欲しかったわね。私だったらニンニクを入れるな。まあ吸血鬼じゃ、仕方がないのだけど」
「ええ、お嬢様がたにお出しするもの以外には、ニンニクを使ってますわ」
 咲夜が瀟洒に応える。レミリアは、霊夢がとにもかくにも平らげてくれた事だけで満足らしかった。

「さぁ、次は誰でしょうか! おおっと、ここでなにやら巨大な火柱が上がっているぞ、あれは誰だァー! 誰のだァー!?
 藤原 妹紅だァー!」
「っしゃァア二番手に甘んじたが次は私たちの番だァア! 行くよ慧音!」
「お、おう……」
 汗と涎とその他もろもろの液体を迸らせ、タオルをバンダナよろしく巻いた妹紅と、キッチンエプロンを身に着けた慧音の両人が前に出る。妹紅はなんかもうノリノリだったが慧音はその勢いに若干引いていた。
 人里の代表者たちが饗したのは、朱鷺に詰め物をして、丸ごと油で揚げた料理であった。
「これぞ私たちの渾身の一品、『朱鷺のカリカリ揚げ』だ。おっと、切り分けるのは私の仕事よ」
 そう言って、カートの上に鎮座したキツネ色の朱鷺にナイフを入れる妹紅。なるほど表面の皮がパリパリと小気味のいい音を立てている。

『朱鷺のカリカリ揚げ』
 人里においてはありふれた食材である朱鷺の中でも、いっとう脂の乗った一羽をしめた肉を使う。特徴となるのは、まずもって詰め物だ。こういった鳥を丸ごと使った料理は、様々な具材を中に詰めて作られる。もっとも一般的なのは、余り物のパンをちぎった詰め物だろう。古くて硬くなったパンに脂が染み込んで、外はカリカリ、中はジューシーな肉と穀物という、最強の組み合わせが実現するのだ。とはいえ幻想郷にパン食は普及しておらず、代わりの品が必要になる……そこで慧音が考案したのが、せんべいであった。湿気たせんべいを割って、これを朱鷺の中に詰めるのだ。そして、調理法。朱鷺を丸ごと調理するにあたって、最も効果的な加熱法はなにか? 肉汁を逃がさず、外をパリパリに、中をほろほろのジューシーに仕上げるには? そう! 高温の油で丸ごと揚げるのがいちばんだ。寸胴鍋に油を湛え高温に保ち、朱鷺をぶち込んで三十分。油の世界から現世に戻った朱鷺肉は、えもいわれぬ色に仕上がっている。
 総じて、アメリカン・ターキーデイのメインディッシュを、和の食材で再構築した一品といえた。

 アッツアツの朱鷺肉が切り分けられ、慧音がボウルにうつされた詰め物をよそう。「このくらい?」「もうちょっと?」「はいストップ!」なんてことをやっているうちに、妹紅がペッパーミルを持ってくる。
「味付けには、自家調合のクレイジーソルトを使うんだ」
 ガリガリと、芥子・胡麻・山椒・菜種・バジルをブレンドした塩がふられる。すると肉の断面から一気に肉汁が染み出してきた。
 時に、肉汁とはどんなものであろう。この説明には、まず食材に含まれる水分を知る必要がある。食材に含まれる水分には二種類あり、ひとつは高分子化合物、すなわちタンパク質や糖質の表面に結合した結合水で、もう一つは細胞間などに存在する自由水だ。このうち結合水は食品の加熱(=自由エネルギーの付加)により活発に動き出し、油脂とアミノ酸を豊富に含んだ肉汁に変化する。加熱以外にも、いま妹紅がやったように塩をふるなどしてイオン交換を促せば、高分子と水の結合が断たれ、自然、肉汁が溢れ出てくるわけだ。
 塩をふると、まるで魔法がかかったように、肉から汁が溢れ出す。その様は耐えがたいほどに、霊夢たちの食欲を刺激した。
「いただくわ」
『いただきます!』
 無論、若い朱鷺を用意はしたが、この朱鷺肉がフォークでも簡単に繊維がほぐれるほど柔らかく仕上がったのは、慧音の丁寧な下拵えの賜物である。昨晩遅く、威勢だけはいい妹紅がグー寝している間に、慧音は日本酒と塩糀をよく揉み込んでおいたのだ。その様子は甲斐甲斐しい若妻そのものであり、同じようにバーベキューコンロの前で毛布に包まり酒瓶を傾けつつ火の番をしていた他の参加者たちが(結婚しよ)と謎の決意を固めるほどだった。もっとも、もう妹紅の唾がついているのだが。
「ハフッ、ホッハホッ フーッ!」
「ジューシーねえ。クレイジーソルトも、いい感じ」
「肉うめェーーー!」
「せんべいを使うとは、考えたわね。懐かしいわ。カリフォルニアに住んでた頃、藍が作ってくれたっけ」
「ああ。南部アメリカンのスタイルをできる限り取り入れたよ、先達は彼女らだからね」
「けれど、難点を挙げるとすれば、そうね……香りが多すぎて、鳥の風味が感じられないことかしら。ねえ妹紅、油で揚げたのよね。なんの油を使ったの?」
「菜種油、でもいいけれど、ここで私はオリーブオイル!」
 もこっ☆
「うん。オリーブの香りが強すぎて、クレイジーソルトやほんのり残っている日本酒の豊かさも、消えちゃってるのよね。でもこれは、調理法の間違いじゃないわ。もっと朱鷺が強ければ、すべて調和してたんじゃないかしら」
「ああ……いいやつを選んだんだが。やはり旬をいささか逸してしまってな。脂は十分じゃなかった」
 悔しげな慧音だったが、しかしすぐにサニーが「肉うめェ! お代わり!」と言い出したので、また顔がほころぶ。
 霊夢も、パリパリの皮と肉を上手にサンドして、モグモグするたびに変わるふたつの食感を楽しんだ。朱鷺って美味いな、と思う。
 そろそろいいかな、と前置きしてから文がマイクを取った。
「うーむ、私としてはあまりほめたくはないのですが、美味しそうですね。さて点数のほどは!
 60点、70点、70点、70点! 合計270点! あやややや! ちょっと振るわなかったか!」
「試みとしては、達成できたかな。ね、慧音!」
「ああ、妹紅。久々に、火力を振えて楽しかったろう」

 妹紅と慧音が仲睦まじく控えのトレーラーに戻ったタイミングで、早苗が布都に耳打ちした。
「布都さん。あと二十分くらいで仕上げられるよう、調整してください」
「任せておけ!」
 ……勝負事には、流れというものがある。先の挑戦者たちは、肉を柔らかく仕上げることに執心していた……早苗たちは逆だ。肉の歯応えを重視する。ギャップは大きいほどインパクトが強くなるが、今は柔らかさに評価軸が傾いているときだ。次の次、四番手で勝負をかけることを、早苗は決めた。
 布都が最後の強火を始めた。鹿の背ロース肉はアルミバットに乗せられ、オーブンの中で加熱されている――そしてこれは、実に五度目だった。数度にわたって加熱と休息を繰り返すことで、肉汁の流出を最小限に留めながら、しっかり中まで火を通すための、調理法。
 そう、しっかり、中まで、火を通す。
 鹿肉をレアで食うのは大変危険である。E型肝炎ウィルスが潜んでいる可能性があるからだ。『芯まで六十三度以上三十分間』が加熱の必須要件となる。ゆえに早苗は最初の加熱で、『芯まで七十度三十分』、熱電対を差し込んできちんと測定し安全性を確保したあと、『二百度で五分間』を四回繰り返させた。その際は、熱電対は使わない。布都の火加減は絶妙であり、感覚だけで炉内温度も、肉の中心温度もバーナーで操作し、理想的な温度条件を実現させていた。
「ソースよし、付け合せよし。肉をあと十五分休ませて……。さて、三番手の様子はどうかな……?」
 早苗が審査員席を見やる。
 そこには、聖 白蓮の姿があった。

「これは驚きです! なんと聖 白蓮、肉の祭典に、尼僧が登場だ!」
「ふふ。尼がバーベキューをしてはならないという法はないと思いますが」
 不敵に笑う聖が、四人の前に皿を並べた。銀のふたを取ると、そこには見たこともない肉が乗っていた。
「これは……肉……なの?」
 スターが恐る恐る鼻を近づけ匂いをかぐ。ジューシーで香ばしい、ビーフステーキの匂いだった。
「まずは、食べてみましょう」
 最初に肉を口に運んだのはルナだった。むぐっ、と一瞬喉を詰まらせるが、すぐにその眼の色が変わる。
「……不思議、けど、うん。美味しいわ!」
 同じく肉を噛み噛み、霊夢があたりをつける。
「そうね。これ、今大会に出されたものの中では、いちばん高価なお肉なんじゃないかしら? 聖、これって」
「ええ、お察しの通り。人工肉―― 『僧侶手作り 植物タンパク肥育人工肉のステーキ』です」
 おおお、と会場がどよめいた。白蓮の背後には、おそらく共同研究者であろう八意 永琳の姿があった。

『僧侶手作り 植物タンパク肥育人工肉のステーキ』
 これは人工肉である。人工肉であるが、皆さんが想像しているような、ウシの肝細胞を電気運動させて発達させた肉……というわけではない。これは、この肉は蘚苔類を品種改良し、巨大に繁茂させたのち収穫、油脂を混ぜて成形したものである――
 ――つまりは、コケの一種である。
 ライフサイクルの短さを利用し何代にも渡りマイクロマシンで繊維を長く強靭にし、肉と呼べる大きさにまで成長可能な種を作る。命蓮寺は大規模大豆プランテーションを所有しており、『白蓮のように大きく!』と巨乳を強調したパッケージングを施された豆乳飲料の製造・出荷も手掛けているため、大豆の搾りかすという質の良い肥料には事欠かなかった。結果、植物としては類を見ないほど、生まれながらにして肉に近い食感と風味を備えたコケの栽培が実現したのである。
 とはいえ、肉として重要な、脂身の美味さがここには備わっていない。それはやはり、大豆と胡麻から取った油脂で代用することとなった。さらに永遠亭が石油から抽出した素材を用いて合成したグルタチオン(トリペプチドの一種)などのうまみ成分と匂い分子により、その食味は実際の肉と比較してもほとんど差がない域に達している。事実、永遠亭と命蓮寺が行った調査では、目隠しをして食べた者たちの実に四割弱が、牛肉と間違えたほどだ。
「良いわねこれ。わたし気に入ったわ」
「ちょっと違和感はあるけど、不味くはないわね」
「肉うめェーーー!」
「ずいぶん時間と労力を投資したのね。こんなごちそう振る舞ってもらえて、私はホントに幸せもんだわ。いいわ、私。こういう、何者かになろうとする姿勢、大好きよ。味はそれなりとしても、ね」
「ありがとうございます、霊夢さん」
 一口サイズの肉を食み食み平らげる。
 文が音頭を取って評価タイムに入った。
「50点、75点、50点、90点。合計、265点! 点数は残念ですが、霊夢さんの評価は高かったようです!」

 白蓮と永琳が笑顔で握手を交わす――その、背後から。
 鳴り物入りで登場した少女こそ、東風谷 早苗であった。
「いよいよ、私の出番ですね。さあごろうじろ、
 四番手、東風谷 早苗! 『鹿ロースステーキ ソース・ボルドレーズ』です!」

『鹿ロースステーキ ソース・ボルドレーズ』
 先ほど述べたような方法で加熱した鹿肉に、濃厚なソースをかけた一品。
 ボルドレーズとは赤ワイン、エシャロット、骨髄から作られるソースで、淡白な肉によく合うものだ。左様、鹿肉は淡白であり、単体ではどう転がってもサシが入った肉に、「ステーキの土台」で太刀打ちできるものではない。だが、ベストマッチするソースと絡めば、たちまち誰もがたじろぐ美味に変身するのだ。

 ようやくステーキらしいステーキがお目見えした。各々ナイフとフォークを操り肉を口に運ぶ。
「やわらかーい!」
「ソースも贅沢ね」
「肉うめェーーー!」
「うん。いい味ね。本当はもっとレアに仕上げたかったのでしょうけど、野生の鹿だからね。ソースはどっしりしていて、しかし舌に刺さる渋味もクセもない……徹夜で、アクを取ってくれたのね。とっても美味しいわ」
 鹿肉を厚く切り分けて、新鮮な肉に歯形をつけるように、ひと噛み、ふた噛みと味わった。ソースがもっとほしいと思うと、早苗が手早く用意してくれる。
 満足げな霊夢に、早苗が勝利を確信してニカリと笑った。しかして点数は、
「85点、90点、90点、85点! 合計、350点! すごい、すごいぞ! 一気に最高点数を50点も上回り、トップに躍り出たァー!」
「っしゃぁ!」
「あれやろう、早苗!」
「やっちゃいますか!」
『イエーイ!』
 高得点をマークした早苗と布都が"空中モランコ"を決め勝利を高らかにアッピルする。
 しかし次の一秒、早苗の笑顔が凍りついた。
 背後から、物凄いプレッシャーを感じたのだ……強力な、肉の波動を!
「五番手、よろしいかしら?」
 文が震える声でコールする。
「き、来てしまいました……! 泣く子も黙る、株式会社風見フーズ代表取締役社長……風見 幽香が!」
「ご紹介どうも。でも、ここで大事なのは、私の肩書じゃあないわ。そうでしょう?」
 幽香がほほ笑むと、彼女の後ろで腕を組み仁王立ちしていたリグル、メディスンが声をそろえて、
『肉!』
『煙!』
『スパイス!』
 と唱和した。
「じゃ、食べてみてちょうだい。私たちのバーベキュー。『ドライエイジングサーロインの蒸焼き』」
 
『ドライエイジングサーロインの蒸焼き』
 ドライエイジングとは塊肉を低温でひと月から半年ほど熟成させ水分を飛ばし、かつ微生物と酵素の働きによりアミノ酸を分解させることでうまみと風味を濃縮する手法である。また、筋肉とこれを束ねるコラーゲンの繊維も分解が進むにつれ脆くなるため舌触りが滑らかで食感も柔らかくなる。
 肉は自社の放牧場で肥育した日本短角種(月齢二十四カ月)。熟成を行うチルド室は低温・低湿度に保たれる。短角種の熟成には湿度が高い方が良いとされるが、湿潤な幻想郷で、かつ限られた設備しかないとあっては、カビの繁殖をコントロールできない。ゆえに幽香はあえて除湿し、短時間のドライエイジングで収率をキープする道を選んでいた。結果として、この手法は思わぬ恩恵を肉に与える。
 幽香は最高の肉牛を育てる飼料としてヒマワリの種を採用していた。高脂質でビタミン・ミネラルも豊富、ブランドイメッジの向上にも繋がると踏んでのことだ。結果、本来サシが少ないとされる短角種でありながら、出来上がった肉はサシがふんだんに入り、本来の赤身の締まりも良いものとなった……そして、ヒマワリの種には更なる効果があった。塩分の排出を促すことによる、肉中自由水の減少である。速い話、ドライエイジングには、ぴったりの肉になっていたのだ。
 調理には、不要部を削いだ角肉を紙で包み、コンベクションオーブンで二時間じっくり蒸し上げるという方法を取った。肉のうまみと風味を徹底的に保持するためだ。しかし火にも鉄板にも当てないため、焼き目で生じるアミノカルボニル反応が作る香ばしさは望めない。つまりこれは、アミノ酸のうまみと風味を、徹底的に味わうための調理法であった。

 四人が、同時に肉を口に入れた。ある者は舌の上で受け止め、ある者は前歯で噛みきり、ある者は奥歯で重量を感じようとしたが、起こった反応は同じだった――
「うそっ、これがお肉……!? こんな食感、初めて」
「口いっぱい、いや、体中に味と香りが広がる……」
「肉うめェーーー!」
 "肉"は口の中で瞬時に"味"と"香り"に変わった。しかしその食味は、もはや例えるに例えようがなく……そう、強いて言うならば、
「しあわせ」
 最後の一切れを飲み込んだ霊夢が、思わずそう声に出す。
 いつまででも噛んでいたい肉ほど、すぐになくなってしまうものだ。幽香は満足げに頷いた。
「さて、では点数を見てみましょう!
 100点、100点、90点、90点、合計、380点! イヤッフゥ! 納得の高得点ですね!」

 もはや勝負は決したか。遊びに来ていた椛が早苗の肩を叩いて慰める。
 その後も様々な肉料理が霊夢たちの前に並んだが、風見 幽香の得点には及ばないまま、ついに最終エントリーを残すのみとなった。
「いやあ、熱戦でしたねえ……」
 文が、すっかり煙の臭いが染みついた上着を脱いで感嘆する。
「けれど、霊夢さん。一度も100点出していないですよね」
 傍らには幽香がいた。
「そうなのよねえ」
 いつになく、幽香が憂鬱な声を上げた。最高得点をキープしていながら、どこかその表情は浮かばない。
「あの娘。なにかを物足りなく感じているわ」
「ええ、解ります。楽しんでもいるし、楽しんでもらおうとも思っていますが、どこかで持て余している」
「最後の挑戦者は、誰なの?」
「ええと……」
「私だぜ!」
 颯爽と、神社の居間から現れたのは――霧雨 魔理沙だった。
「ちょっと魔理沙、どこから出てきてるのよ?」
「悪い悪い。それよりも、はいこれ」
 そう言って魔理沙が四人の前に茶碗を置いた。
「ごはんだぜ」
 ごはんだった。
 呆けたように静まり返る会場。
 パチパチと、薪や豆炭の爆ぜる音だけが響く。
 霊夢が、茶碗を持ち箸を取り、口を開けて、ごはんを食む。
 誰もが、同じように口を開け、閉じ、そして生唾を呑み込んだ。
「これが欲しかったのよ」
 そう言った霊夢の笑顔こそ、本日誰もが求め、そして得られなかったものだった。
「良い炊き具合ね」
「ぬか臭さもない」
「ごはんうめェーーー!」
 三妖精がざっぱにフリップに100点を書き込んで、猛然とごはんをかっ込んだ。
 ようやく我に返った文が得点をカウントする。
「えー……と。魔理沙さんの、えー。『ごはん』はですね。
 100点、100点、100点、100点。はい。400点です。満点です。優勝おめでとう! あとわたしもごはんください!」
 マイクを放り投げ紙皿を手に、魔理沙にご飯をよそってもらう文。その後ろには幽香も並んでいた。
「わたしも! ごはん欲しい!」
「我もじゃ!」
「アタイも!」
「ごはん!」
「ごはん! ごはん! ごはん!」
 怒涛の如く、審査員席に列ができた。霊夢は自らしゃもじをとって、おひつから飯をよそっていく。
 皆、焼き上げられた肉をおかずに、ごはんを食いだした。
「私にも、もらえるかしら?」
 そう言って、霊夢に見覚えのある茶碗を差し出してきたのは……誰であろう。八雲 紫だった。
 しかしいまやおひつの底には、一杯ちょっとしかごはんは残っていない。
 だが霊夢はためらいなく椀にありったけの飯を盛った。これで、霊夢の分はなくなってしまう……。
 まあ、仕方ないか。私はもう、一膳食べてるしね。
 しかし霊夢の落胆は長くは続かなかった。
「霊夢! 次のごはんが炊けたぜ!」
 ああ、なんということだろう!
 釜は、ひとつきりではなかった。居間には、湯気を立てる炊飯ジャーが所狭しと並んでいた。
「へへっ。こういうの、なんていうか知ってるか?」
 はにかんだ様な魔理沙が、誇らしげにごはんを差し出す。
「『圧倒的物量』っていうんだよ」
 霊夢は、すべての人に飯を盛る。
 それなら彼女の飯は、いったい誰が盛ってくれるのか。
「さあ、たんと食え」

 十二時間後。用意された肉と米が食い尽くされて、肉と煙とスパイスの祭典は無事、閉幕。
 帰るときには、誰もが心地よい満腹感と共にあったという。

 そして翌朝。
 霊夢は、庭先を掃いていた。
 ゴミはすべて持ち帰られ、火の痕もない。それでも、煙の匂いはまだしっかり漂っていた。
 ふと目線を上げる。桜の樹の枝先に、ひとつだけ。花がついていた。
「昨日の熱気に、当てられちゃったかな?」
 優しく花弁に触れ……そうして、天を仰ぐ。
「今日は、なにを食べようかしら」
 まるでその先に、本当に食べたいものがあるかのように。
 どこか遠い国でも見ているような、奇妙で優しい、眼差しだった。
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コメント



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1.5削除
オーマイガッ! なんてことだ! この作品を食事の前に読むんじゃ無かったぜ、この飯テロリストめ!
2.10がま口削除
な、なんという! なんという圧倒的、ネイチャー東方!
腹がいっぱいの夕飯直後に拝読したのに、猛烈に腹が減ったこの肉の表現力! 完敗です。
登場人物がことごとく肉食っているだけなのに、アメリカというテーマに沿っていてかつ面白いという怪物作品だと思いました。
しかし狩りの方法といい、肉に関する知識といい、作者様は何者なんだ……?
ともかく最高でした。満点です。
3.5烏口泣鳴削除
肉汁と人口肉の件は感心した。優勝がごはんというのも、確かにその通り。
4.10百円玉削除
お肉食べたいです!!!!!!!!!!!!!
5.9エーリング削除
うん、どいつもこいつもスゲー馬鹿!(褒め言葉)皆全力で生きてる感があって、大好きですこの幻想郷。そして肉と合わさるのは米以外ありえないというこの力強いオチ。魔理沙のごはんで爆笑しました。ビールも肉と合いますが、やはり米と肉の相性は天下一品ですね。ただこの灰色背景に赤字というのは正直読みにくかったです、そこだけ少し残念でした。
6.2みすゞ【5点満点】削除
確かにごはんはうめえ……が、狩りとお料理対決で軸が分散しており、全体的にぼんやりした印象です。短編ならどちらかひとつに絞った方が良いかもしれません。
7.3がいすと削除
BBQ?っていうか料理対決?
謎のオチ。ど、どうしてそうなったん?というごはん勝利ギャグはワイと致しましては・・・
ハンバーガーというアメリカ人好みのあさましい料理(海原雄山談)が出てこなかったのが意外な感覚
8.7ito削除
おもしろかった。まさかこういう作品が出て来るとは。
書いてある内容自体は非常に馬鹿馬鹿しくてくだらないが、
その馬鹿馬鹿しいことを真剣にやりきったすごい作品だと、まあそういう感想を持ちました。
小学生並の感想ですが。
「バーベキューパーティだ!」の繰り返しとか「肉うめェーーー!」ばかり言う審査員とか読んでてすごく楽しい。
料理のうんちくとか詳しくないので、読んでて全く意味が分からなかったですが、雰囲気だけでも楽しめる良さがあった。
落ちもすごく納得して気に入った。そりゃあ肉ばっかりだとご飯食べたくなるよね!
惜しむらくは赤字がすごく読みにくいこと。
9.5矮鶏花削除
肉、肉、肉。極めて肉という作品でした。ストーリーは極めて希薄ですし、肉に次ぐ肉とごはんだけがありますが、肉の描写は肉のように濃厚で、それでいて口当たり良く入ってくる、読ませる物でした。
10.4あらつき削除
これじゃアメリカの敗北じゃないですかー。
さておき。ごはんでオトすには、アメリカの盛り上がりがもっともっと必要だったかな。
11.6みく削除
単純にどれも美味そうでした。できれば牛豚鶏ではない肉料理がもっと読みたかったです。幻想郷はジビエが豊富そうなので、鹿以外にもいろいろとあると思います。
アメリカっぽさがBBQだけで、ちょっとお題の消化が弱いかなと思いました。オチが白米なので尚更……とコメント投稿するまでは思っていたのですが、これってもしかして「米」でアメリカなんでしょうか。
12.9deso削除
なにこの飯テロ。
面白かった。肉へのこだわりが素晴らしい。
最後の決め手も文句なしです。
うん、肉にはご飯よ。やっぱり。
13.10ナルスフ削除
初っ端から有無を言わさないこのアメリカンな雰囲気。
罠を仕掛け、銃に明るく、手慣れた様子で鹿を解体する元外来人の風祝。
そして怒涛の如く押し寄せる圧巻の料理に対する作り込み。
そしてそしてその上ですべてを持っていく、誰もが納得せざるをえない『ごはん』の存在。
こいつはすげえや。諸手を挙げて賞賛せずしてなんとする。
あと霊夢さんが優しすぎて誰この聖女ってなった。かわいい。
あとあと魔理沙の「ごはんだぜ」がなぜか本当に可愛らしすぎて悶えた。かわいすぎ。
ごはんうめえ・・・。
14.8文鎮削除
うおォン、腹が減ったぁ…
アメリカ人って本当にバーベキュー好きだな~と思いながら読み始めたら、肉肉肉、しかも凄く凝っていて驚きました。
いやぁ、どの料理も食べてみたいです。特に幽香のドライエイジングサーロインの蒸焼きのお味が大変気になります。
そして、最後にごはんを出してきたところは抜群の締めだと思いました。
あと、狩った獲物をすぐに血抜きする早苗さん本格的というかマジワイルド。
15.無評価あめの削除
赤文字がきつくて、途中でギブアップ……
16.10めるめるめるめ削除
素晴らしくお腹が減る作品でした。
ドライエイジングは食べたことが無いのですけど、凄く食べたくなりました。
17.6このはずし削除
こんなに肉々しいSSを読んだのは初めてですw
カルビでご飯をかっ込むとき、日本人でよかったな、と私は思いますが、アメリカ的な男飯にもそそられるものがありますよね。
18.2白衣削除
料理が全てアメリカ風なら完璧でした。結局ごはんじゃないかw
19.7名前無し削除
取り急ぎ、点数のみで失礼します。
20.7K.M削除
もこっ☆みち……ゲフンゲフン。容量も狙ってるとしたら大したものだと思いました。