第十三回東方SSこんぺ(アメリカ)

自由と幻想のデモクラティズム

2014/03/09 23:58:30
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 薄暗く、人口密度の高い部屋特有の、ねっとりとした空気。

「もはや、革命しかないんじゃないか」

 それに似た、ぬめっとした誰かの言葉を聞いて、河城にとりは思わず身体を強張らせた。その言葉を予想していなかったわけではない。しかし、実際に耳にしたそれは、想像よりもはるかに、どろりとした気味悪さを湛えていた。

 にとりがいるのは、妖怪の山の中腹に位置する小さな隠れ家。様々な妖怪が能力を駆使し、外敵に見つからないよう万全を期された、言うなればアジトである。しかもそれでも警戒が足りないと、この中に入る者には例外なく、覆面を着用する事が義務付けられている。これらは全て、千里眼や念写など〝見る〟ことに長けた天狗への対策だった。そう、にとりたちの敵は天狗。妖怪の山は今、戦争前夜といった様相であり、たとえるなら黒色火薬が乱雑に詰め込まれた火薬庫。ひとたび火花でも起きようものなら、一瞬にして誘爆し殺し合いが始まらんばかりの、一触即発の状態なのだ。

 部屋の中では先の言葉に対して、男衆の怒号にも近い賛同の意見が上がりはじめていた。

 ――天狗を倒せ!

 その一言が呼び水となり、また次の者の魂を奮い立たせる。

 ――守旧派を殺せ!

 一人から二人。二人から四人と伝播していくその熱は、皆の声に煽られて炎となり、それぞれの心の中で燃え盛っていく。

「天狗を倒せ!」

 そんなシュプレヒコールが何度繰り返されただろう。気がつくと、にとりも声を枯らさんばかりにして絶叫していた。

 なぜこのような事態になったのかというと、当然、相応の理由がある。
 もちろん様々な要素が絡み合った末の帰結ではあるのだが、あえて単純化して辿ってみると、鬼が山から去った事に根本の要因を見る事が出来る。より正確を期すのであれば、鬼が何の手も打たないまま山を去った事、ではあるが。

 本来、山と海は多数の怪異が存在する、妖怪の本拠地である。海のない幻想郷においては、自然、山こそが最大の妖怪のコミュニティとなるが、その中で鬼は、長く絶対者として君臨していた。と言っても、彼ら自身が群れ、従える事に熱心だったわけではない。放っておいても集まってくる雑多な妖怪たちの相手をしているうちにいつの間にか出来上がっていた、力を背景とした不文の法とコミュニティの内部に、気付いたら取り込まれていただけの話である。

 ところが鬼は、曲がりなりにもその社会システムが機能しはじめた矢先に、ある日忽然と姿を消してしまったのだ。

 その理由に関しては、いくつか噂はあるものの、確かな事はわかっていない。しかし、兎にも角にも鬼は去った。既に出来上がった緩やかな社会をそっくり残したまま。そしてここで最も重要なのは、鬼の後を継いだ天狗の一族が、そういった社会や連帯への志向が強い種族であったという事だ。もちろん鬼の治世でも、それぞれの種族や個体が、全く個別に暮らしていたわけではない。縄張りもあれば交流もあり、争いも狭量な仲間意識も、厳として存在した。ただその流れが、天狗の代になって一気に加速したのだ。つまるところ、山は妖怪による一つの社会として、次の段階へと移行したのである。
 ただし、それにも問題があった。

「もう天狗に好き勝手されるのは御免だ!」

 天狗たちは保守的で権威主義的で、ほとんどの場合横暴だったのである。
 彼らは間違いなく山で上位に位置する種族だが、それでも悲しいかな、天狗は鬼ではない。鬼ほどの絶対的膂力があるわけでもなければ、比肩する霊格があるわけでもない。だからこそ彼らは、個としての強さに支配と権力の根拠を求めなかった。天狗という集団の力による、天下の統一を図ったのである。そして実際に、彼らは山の妖怪たちを支配した。

 たとえば今、にとりの向かいにいる猩々は一年のうちの半分以上を、天狗のための土木工事に借り出されているし、部屋の隅で腕を振り上げている袖もぎも、季節ごとに大量の布を納めるように厳命されているらしい。一方でそのような天狗社会への貢献が出来ない種族――たとえばにとりの友人でもある厄神などは、ヒエラルヒーの更に下層へと貶められていて、そういった事を思い起こさせる事件が起こるたびに、にとりのはらわたは怒りで煮えくり返りそうになる。また、この点に関して言えば河童も大きな事は言えないが、一般的に天狗たちは性欲旺盛であるともされており、天狗たちの御眼鏡に適う種族の若い娘が度々行方不明となる事件は、もはや頻発しすぎて誰も気にとめないほど。二口女の頭領の娘が消えた時などは、穴が多く便利だから狙われたのではないかと、他ならぬ天狗の手によって、下卑た推理ごっこが行われる始末であった。

 そう。実際のところ、天狗たちが生産的な活動に従事する事はほとんどなかったのだ。
 彼らの興味はもっぱら精神的な部分にあり、悲しいかなそれは必ずしも高尚な領域へのみ向いているわけではなかった。一部では芸術や妖術方面で、目を見張る成果をあげた者もいたが、そうでない者が圧倒的多数だった。新聞と称して他者のゴシップに耳目を傾け、哨戒と称して他種族の監視に当たる。主たる食糧の供給もやはり他種族からの上納によってなされていたし、生活に必要なあらゆる労力や道具、耳掻きや鉛筆に至るまでも全て、山の妖怪からの献上品によるものであった。結局のところ、彼らは社会といえば自分たち天狗社会の事を指すのだと傲慢にも豪語していたが、その根本的動力は、他種族からの強奪によって成り立っていたのである。
 なればこその、今この小屋に渦巻く呪詛の嵐なのだ。

「あやややや。さすがにこれだけ嫌われると肩身が狭いですね」

 その時、にとりの隣に座っていた文が、この光景にぽつりと感想をこぼした。
 天狗でありながらこちら側に与する一派の者として、彼女はいま何を思うのだろう。にとりにはわからない。ただその様子がいつもと変わらなかったから、にとりもいつものように軽く返した。

「仕方ないよ。恨むなら過去の自分を恨む事だね」
「いやはや、まったく。返す言葉もありません。ただ、強いて言うのであれば――」
「あれば?」
「失った信頼は、これから取り返す事も出来る」

 文はそう自分に言い聞かせるように低い声で呟くと、やおら立ち上がってパンパンと手を叩いた。一同の視線が、文に注がれる。集まった百の種族の百の首長が、天狗を裏切った天狗を見定めようと、値踏みするようにねめつける。彼女はその中で少しも気後れすることなく、いつもの調子で話し始めた。

「さて。皆さんの気持ちが固まっている事は理解できましたし、守旧派の爺連中が話し合いで落としどころを見出すことも今さら不可能でしょう。ですので、冒頭に私から報告した、現政権幹部たちが本日深夜から行う予定の緊急会議について、もう少し詳しくお話させて頂きたいと思います。よろしいですか?」
「構わない。続けてくれ」

 この中のリーダー格の男が、簡潔に先を促す。

「了解です。ではまず場所と時間のおさらいですが、会議はこのあと深夜から、政治区画西端の新聞評議会西事務所にて行われる予定です」
「なぜそんな場所で?」
「秘密裏の会議だから、というのが一番大きいでしょうね。守旧派は今、過激派の主張が広まって突き上げを喰らっている事に焦っていますが、かといってそれを表には出したくない。けれど、いつもみたいにお社でしゃんしゃんと会議をしていたら、その内容が全部筒抜けなのは、いい加減学習したのでしょう。人員も、場所も、厳選する必要があるとようやく気付いた。だけどそれは結局、彼らはなに一つ変わってはいないという事の証明でしょうね。信頼できる内々の者のみで、文字通り密室で全てを決定したがっているのです」

 もっとも、誰が信用に値するかなんて、もう誰にもわからないんですけどね――文が自嘲気味に吐き捨て、そのまま続ける。

「ですので、私たちが行動を起こすのであれば、その秘密裏の会議であるという一点を突くという事に尽きます。天狗の居住区に近く動きにくいのは確かですが、夜の闇がある程度助けてくれますし、警備も手薄。そんな状態で、出入り口の少ない小さな事務所に大天狗をはじめとした幹部連中が集まるわけですから、ここを狙わない手はないわけです」

 文が得意気にまくし立てたのを聞いて、ほうぼうからなるほどと声が上がった。得心がいったのか、早くも血気に駆られて立ち上がる者もいるし、雄たけびをあげて自らを鼓舞する者もいる。文はそんな部屋の中をゆっくりと見渡し、たっぷりと時間を置いて、一同の注目が再び自分に戻ってくるのを確認してから、低い声で言った。

「会議は長引く事が予想されますので、なるべく疲労が溜まる時間帯に仕掛けます。山の上、方角にして東南北の三方からの同時爆撃を合図に、四人一チームの突撃班二組が事務所に入ります」
「天狗相手にその人数では少なすぎないか」
「持ち場ごとの細かい作戦行動は、後ほど各々のリーダーから説明がありますが、その点に関して言えば問題はないと考えています。どうせその頃には建物はぼろぼろでしょうから、深入りする必要は全くない。第一の役目はあくまで、中に隠れた鼠を外に炙り出す事ですから」
「なるほど。それで外に逃げ出てきたところを、待機班で一気に叩くというわけだな」
「その通り、我々の持てる火力は、基本的に全てこちらに投入します。一対一なら天狗に分があるのは否定しませんが、我々の先制攻撃と物量を押し返してくるほど、どうしようもない戦力差ではありません。それにこちらには〝神のご加護〟もありますからね」
「……違いない。清教派の戦いに、敗北という結果はありえない」

 男が自信満々に言い切り、文が頷いて応える。その一連のやり取りを、にとりはまるで夢を見ているかのように眺めていた。現実感はまるでなく、けれど滾る身体と心は、今すぐにでも憎き敵を打ちのめしたいと喚いている。
 ここから、新しい時代が始まる。
 その確かな予感に、涙さえ出てきそうになる。見ると他の仲間たちもそれは同じようで、立ち上がって叫んでいない者はもう一人としていない。消音の仕掛けがなければ、山中がこのアジトの存在に気付くところだっただろう。山猿も鬼婆も入道も、普段は静かなあの雛ですら、血走った目で戦いの正当性を喚き散らしている。誰もそれを止めようとする者はいなかった。これはそう、言ってみれば聖戦なのだ。

「決行は、本日夜明け前」

 文が、静かに手を掲げながら言った。

「今こそ、奪われてきたものを取り返す時です。私たちはこの場所を越えて、陽の当たる場所へ行く。私たちは、種族はばらばらでも一つです」

 それは、厳かで力強い開戦宣言。
 言い終わるよりも早く、小屋の中は全て、歓呼の雄たけびで埋まっていた。


   ※
   ※
   ※


 決行までの空き時間は、各担当ごとに集まってのミーティングと、最後の準備に充てられる事となった。
 しかしにとりの場合は前線に出る兵士ではなく、むしろそれを補佐する技師という役割であるため、戦いはもう始まっていると言っても過言ではない。事実、開戦を告げる号砲であり、同時に事務所ごと天狗の大部分を焼き払う爆撃投射機は、にとりたち河童の手によるものだ。一度工房に帰ってそれらの最終チェックを行い、その上で文たちに引き渡す。最終的にトリガーを引くのはもちろん河童だが、現地への配置は速さに勝る天狗に任せねば終わらない。
 そのために、まずは工房へと戻る道すがら。日の落ちた山道を、にとりは文と並んで足早に歩いていた。
 言葉は少ないながらも、ぽつぽつと話をする。

「にとりは、現状を後悔してませんか?」
「……別に、後悔はしてないよ。多分、こうなる運命だったんだと思う」

 返事をしながら、ここに至るまでの事をぼんやりと思い返す。
 にとりは、文たち天狗に虐げられる河童一族の一人として、辛い事を経験しながらも、これまでそれなりに楽しく暮らしてきたつもりだった。机上論では険悪であるはずの天狗にも知己はいたし、河童やその他の種族の友人ならもっといる。たびたび天狗によって課される、想像性の欠片もない機械類の製作命令には辟易していたし、そのあまりにも無茶なスケジュールには殺意さえ抱いていたが、それによって日銭を稼ぎ、また次の自分のための機械製作に取りかかれるという一面も確かにあって、具体的に何がどうあるべきかなどという明確な問題意識は持ち合わせていなかった。ただ、天狗様方がもう少し優しくなってくれたら良いな、という程度のものだ。父親が労働力として山に連れて行かれた、という深刻な事実も一応はあるのだが、それも物心つく前の話。悲しいと思うより先にそれが当たり前になっていたし、母親はその事を話したがらなかった。だから、にとりにとって父親とはあくまで物語上の存在でしかなくて、その為に胸を痛めるというような対象からは外れていた。ときどき人里を眺めて仲睦まじい父娘なんかを見かけると、そんな自分を疑問に思うこともあったけれど、だからといって今さら脳を作り変える事も出来ない。固定化されたものの考え方は、中々変えられない。にとりはずっと、そんな風にして生きてきたのだ。

「そうですか。あなたは強いですねえ」
「そんなことないよ。私には、一緒に戦うみんながいるから」
「そういうものですかね」
「たぶんね」

 その意味では、こうして行動を共にしている文の胸中は、一体どのようなものなのだろう。
 にとりは彼女の横顔を盗み見て、ちらとそんな事を考えた。天狗でありながら、同じ天狗を裏切ってこちら側についた者たち。彼らの協力なしには、敵の動向を探る事も、戦力を集める事も、今よりずっと困難を極めたことだろう。その意味では、天狗という種の優秀さは論を待たない。ただ、優秀であるがために一枚岩になれないというジレンマを抱えているのは、悲劇的な矛盾であった。
 天狗たちは彼ら特有の精神性によって、日夜権謀術数に明け暮れ、今や彼女たち以外には理解できそうもない複雑な統治機構を確立していた。
 しかし利害関係が絡まりあい、複雑化すれば、当然組織の硬直化が発生する。天狗内にも絶対的な階級は存在しており、有力者の子息がそのまま次代の有力者となるのは当然の事。コネもツテない市井の天狗たちは政治に口を挟む事も許されず、ただ社会の一員としての役割を果たす事が求められる。

 曰く、規律を守る事。
 曰く、子孫を増やす事。
 曰く、同胞を守る事。

 いくら支配階級とはいえ、下級の天狗たちが利する政策が布かれる事はまずなかったし、だからといって自由を謳い、好きに生きる事もまた認められていなかった。天狗には天狗の仕事が、義務が、生き方が強固に規定されている。ある程度の〝天狗としての権利〟は存在するが、それらの社会規範よりも優先されるものでは決してないし、そんな事を求めればたちまち彼ら独特の司法システムによって相応の罰が下される。好きに生きたいが為に死ぬような、計算も出来ないバカは天狗にはいなかった。せいぜいが反権力を匂わせて溜飲を下げる、お遊びの程度のものだ。

 だがしかし、そんな状態で不平不満が、あるいは疲労が蓄積しないはずがない。

 事実、上層部は終わりのない権力争いに疲れきっていたし、下層の者は疎外された自らの状況を嘆いていた。さらにその下の、被支配階級の種族たちに至っては、もはや説明の必要すらない。社会は疲弊しきっていた。そうした中で、ある種の必然として生まれてきたのが、文たちが所属する改革派と呼ばれる集団だったのだ。今日までの守旧派とは一線を画し、変革の必要性を訴える者たちが、主に若手の間から徐々に生まれ始めたのである。

「ところでさ、文の方こそどうなの。後悔してる?」
「どうなんでしょうね。私を含めて、こちら側に来た仲間たちが捨てざるを得なかったものは確かに多いですが――」

 彼らは下層の天狗はもちろん、被支配階級である別種族ともよく話をした。
 自分たちの考えは、最終的に被支配層も利するものだと密かに広め、それに影響されたにとりたちのような者を徐々に増やしていった。にとりが今、文と対等の立場で会話をしているのも、他ならぬ文の提案だ。これからは種族や立場などで区別される時代ではないと力説したうえで、フランクに付き合うようにとりに求めてきた結果なのである。
 もちろん、この手の改革派と呼ばれる天狗は粛清の対象であり、改革の気勢は幾度となく退けられた。それでも、心に鍵をかけられないのは、人も妖怪も同じ。ゆっくりとしたペースながら、改革派はその勢力を拡大していった。そもそも下層の天狗たちが改革派に傾倒し易い下地が出来たのは昨日今日の事ではないし、それが改善されるような抜本的な社会制度改革は、結局一度とてなかったのだから。抑圧されること自体が、彼らが拡大を続けるエネルギーとなっていたのだ。

「――それでも、何もしなかったよりは遥かにマシだとは思いますよ。爺たちに何もかも決められる社会は、私だってもう御免です」

 だから、文がこうきっぱりと断言したことに象徴されるように、もはや争いなしに事を収めるのは到底困難であった。
 現時点で政権を握る穏健的守旧派と、それを温いと批判して対決姿勢を強める強硬的守旧派の対立。そして彼ら共通の敵である改革派。もちろん一般天狗の間にも様々に立場があり、鬱憤の矛先として被支配階級が選ばれることもあった。当然そちらの考えに立つ者は現時点での体制を支持し、そうでない者を激しく非難したりもした。山の社会は上から下まで、様々な思惑や裏切り、懐柔、疑心と疑念が渦巻く坩堝となっていたのだ。
 その一番中心のところで、親も兄弟も友人も裏切って、それでも突き進もうとする文の原動力はどこにあるのだろう。
 こうして並んで歩いていても、にとりにはその全てを見通すことは出来ない。きっとそれは、文もにとりと同じであるからに違いなかった。

「煮え切らないね。お互い」
「まったくです。これでも快刀乱麻を旨に、切れ味鋭い記事を書いてきたつもりだったんですが。当事者になってしまうと弱いものです」

 苦笑いを見せる文に何も言葉を掛けられないまま、にとりは山道から急に脇にそれた。急斜面を滑るようにして下り、湿った落ち葉と深く垂れた木の枝の奥に隠された秘密工房へと身体を潜らせる。

「ははあ。こんなところに武器庫が。これは、大したものですね」
「私たちの汗と涙の結晶だからね。さ、こっちだよ。目的のものは」
「あんまり重くないとありがたいのですが」

 困ったような文の台詞に、今日初めて自然に笑みが浮かんでくる。残念ながら大部分が鉄で作られた爆撃投射機は、その希望には合致しない。

「にとり」
「なに?」

 くっくっと肩を揺らしながら歩いていると、背後で文が、にとりの名前を呼んでいた。
 けれど続く言葉は、にとりに向かって発せられたものではない。

「私は、後悔しませんよ。これは、自分で選んだ道です」

 おそらくは、文の本心の吐露だった。


  ※
  ※
  ※


 ――自分で選べば、後悔しないものなのだろうか。

 文に機械を託したあと、にとりがのんびりとその設置ポイントへ向かうと、既にそこに彼女の姿はなかった。
 天国か地獄か、運命を分けるにしては少々無骨すぎる発射スイッチを弄びながら、後悔しないと言いきった文の事を思う。彼女たちは、立場を明らかにしないために、表立ってはこの計画に参加しない。今頃は家に戻って、明日何食わぬ顔で仕事に出るための準備でもしているに違いなかった。

 攻撃対象である守旧派幹部たちは、確かに目標の事務所内にいるようだった。
 オレンジ色の光が、目張りをした窓の隙間からほんの少し漏れていて、中で何かしら行われている事を窺い知れる。警備に混ざっているこちら側のスパイ天狗からも、計画は順調だとのサインが送られてきており、あとはいつスイッチを押すか、という事に焦点が移っている。
 にとりが担当するのは、その運命を決めるスイッチの南側の発射台。
 辺りはまだ真っ暗だが、いずれ日が昇り、空が白み始めるだろう。
 にとりはふと思い立って、東側、北側の発射担当と少しだけ話をした。お互いの境遇やこれからの夢を語り、暗闇の向こうにいる同胞に思いを馳せる。最後に、次に星が流れたらスイッチを押そうと約束をし、通信機を切った。にとりの周りには、また暗闇と静寂が帰ってきた。

 にとりはこの暗さを、山の社会の現状のようだとはじめは思った。しかし、その中に身を浸して考えていると、果たして今までの自分たちの暮らしが本当に暗闇の中にあったのかどうかわからなくなってくる。
 にとりたち下層の妖怪が守旧派の連中に搾取され、操られていたのは間違いない。しかし同時に、緩慢ではあるが生かされてきた事も否定できない。つまるところ、にとりたちは搾取され続けながらなお、彼らに委ね続けたのだ。このような守旧派に叛乱せんとする動きすら、かつては彼らの手のひらの上にあったという話まである。時にこういった叛乱を煽り、時にコントロールして、如何ともしがたい不平や不満を上手く発散させてきた、守旧派の老獪な手管。にとりたちの行動も結局、そうした歴史の延長上にあるものなのかもしれない。
 しかし。にとりたちには一つだけ、今までと決定的に異なる点があった。

「それでも、奪われ続けていることにすら気付けないなんて、もう嫌だ」

 無意識に呟いて、にとりが信じるそれを心に思い浮かべる。
 清濁併せ呑みつつ紡がれてきた歴史に、決定的な亀裂を入れかねない外部からの侵略者。あるいは、にとりたちにとっては大いなる福音。

 それは、守旧派と改革派の争いが激しくなり始める頃の出来事だった。
 突然、山の上に神社が建ち、守矢と名乗る者たちが現れたのである。彼女たちは自らを妖怪のための神であると自称し、特に現世利益を傘に信仰を増やしていった。奇跡を起こし神である事を証明し、自らの正当性と与えうる利益を広く妖怪に周知した。事実、山の生活は彼女たちによって劇的に改善し、特に電気とよばれるものの安定的供給は、河童による機械生産の技術的ブレイクスルーを生み出しもした。異世界から来訪した神は、農業革命や人口革命といった必要条件をすっ飛ばして、お手軽な産業革命を実現して見せたのである。

 しかしながら、守矢が信者数を加速的に増加させていった理由は、その奇跡の御業にあるのではなかった。
 妖怪にとって機械的な利便性など、人間にとってのそれほど重要ではないし、むしろ明るすぎるくらい明るくなった夜に、多くの妖怪は嫌悪感すら抱いていた。それでも改革派の面々が守矢への信仰に傾倒していった理由は、偏にその思想的部分にある。

 彼女たちは、〝神の元で万物は平等である〟ことを、この世界で初めて明言したのだ。

 この実存的価値観の提供こそが、権力や腕力の強さによる絶対的階級社会に疲弊していた改革派に、瞬く間に受け入れられる直接的な要因であった。神の元での平等。自由と平等の概念は、それまで彼らに欠けていた、理論的正当性を担保するものであったためだ。もちろん改革派の妖怪たちの多くはそこまで考えてはいなかったが、思想の輸入とはえてしてそのような側面を伴う。同時に、これまで曲がりなりにも成立していた社会システムを棄てよとも迫られたが、元来それに使役されているという不満の多かった彼らは、喜んでそれを棄てた。そうして捧げた信仰と引き換えに、持って生まれた妖怪としての権利を認められる事が、またそれで良いのだという後ろ盾を得た事が幸福だと信じたのである。河童は好きに機械を作れば良いし、天狗の気紛れで食料や土地を奪われる事もない。何をしても良いし、何をしなくても良い。飢えて死ぬのも、肥えて死ぬのも、自由。守矢の面々は、その良し悪しはともかくとして、山の妖怪たちを精神的な檻から強制的に解き放ったのだ。これまでの価値観を破壊された側が、他による辺を持っていない事を十分に知った上で。
 これこそが今までと今回の決定的な違い。そして、守矢が急速に勢力を伸ばした背景であった。
 改革派が神という名称を盛んに使うのも、時に自らの事を指して〝清教派〟と自称する事があったのも、このためである。もはや彼らには妖怪種の違いなどはさしたる問題ではなく、信仰しているか否か、あるいは個としてどう在るかという概念こそが、カテゴライズの根源的要素となったのである。

「陽のあたる場所へ、か」

 にとりはひとしきり考えた後そう呟いて、空を見上げた。星はまだ降る気配を見せていなかったが、口にした言葉は一瞬だけ熱を持って心に灯り、すぐに夜の闇の中に融けていった。改革派の皆が好んで使うスローガンの一つである。けれど、果たして本当に夜は明けるのか。そもそも今が夜なのか。やはりにとりにはわからなかった。

 その時、ざらりと何かが地面を撫でる音がした。

 反射的に屈んで草むらに身を隠すも、背後にそびえる爆撃投射機の大きさに思い至って立ち上がる。今さら隠れる意味はない。それよりも、この機械を守りきる方がよっぽど大切だった。

「誰だ」

 暗闇の中で声を荒げる。

「……にとり?」

 けれど返ってきた声は、にとりが想像だにしていないものだった。

「その声、まさか……椛?」

 こうした争いが表面化する前からにとりの友人であった、白狼天狗の犬走椛。
 その彼女が、にとりの呼びかけに応じるようにするりと木の陰から姿を現した。真っ白な体毛が、僅かな月明かりの中で一際眩しく光っているように見えた。あの頃となに一つ変わっていない、にとりの友人だったときのままの椛。変わったのはただ一つ。二人を取り巻く環境だけだった。

「こんなところで会うことになるとは……」

 椛がそう言って、僅かに微笑んでみせる。
 封印したはずの懐かしい思い出が、にとりのきゅうと胸を締め付ける。最後に椛と話をしたのは、いつの頃だっただろうか。やりかけの将棋の棋譜は、その日からずっと、中盤戦で止まったまま。かつて一緒に遊び、探検し、喧嘩もした大切な友人。笑い合って、泣いて、手を繋いだ彼女。その椛が今また、にとりの目の前で笑顔を見せてくれている。
 堪えきれず、にとりは椛に語りかけた。

「椛。えっと……その、今からだって遅くないから、私と――」
「……せっかく会えたのに、またその与太話ですか。遅くないのはにとり、あなたの方です。ずっと今まで通りで良かったじゃないですか。なんで、それを自分から壊すような真似をしているんですか。私は、あなたという友人を失いたくない」
「だったら、なんでこっちに来てくれないの! 何度も誘ったのに!」

 にとりは泣きそうになりながら喚きたてると、真正面から椛を見据えた。
 このやり取りはもう、今のように事が大きくなる前に何度だって繰り返してきている。だから、このままどちらも折れなければ、結果は火を見るより明らかだった。ただ一つ今までと違うのは、これがこの友人との、最後の邂逅となるだろうという事だ。向こうも、それはわかっているのだろう。それでも二人に出来る事といえば、真っ赤な目で、震える唇で、自分の気持ちを伝える事だけだった。

「……馬鹿にしないで下さい。私にだって、守るものがあります」
「その中に、私たちはいない!」
「いいえ、これまでどおりの日常が、それで帰ってくるのです。そこにあなたたちはいます。いたじゃないですか!」
「違う、私たちが言っているのは――!」
「いいですか、にとり。あなたがそのスイッチを押せば、争いが始まる。どちらかが完全に勝つまで終わらない、血で血を洗う戦争となるでしょう。それでも押す勇気がありますか。その事の重大さを、あなたは理解していますか?」
「そ、そんな事、わかってるさ」
「果たしてそうでしょうか」

 椛は悲しそうに目を伏せて、一歩、二歩とにとりに近づいてきた。
 その目からこぼれた滴が、月明かりを反射して鈍く光る。

「正直に言いましょう。このクーデターに対して、私たちは準備が出来ていない。何らかの動きがあるとは上に伝えていますが、あなた方の陽動で情報が錯綜しすぎて掴みきれなかった。今も一部の私の仲間が哨戒を続けていますが、それもどこまで効果があるか」
「それでも、私を見つけたんだから大したものじゃない」
「これは、懐かしい匂いがしたから……こんな事になるなら……気付かなければよかった」

 椛は、もう完全に泣いているようだった。
 先ほどは一滴だった涙が、今はその頬を伝ってとめどなく地面に落ちている。
 そんな彼女に声をかけようとして口を開くも、掠れた息のようにしか声が出ない。言葉も見つからない。にとりはその時になってようやく、自分も椛のように泣いている事に気がついた。

 〝その時〟が迫っていた。

「今、準備万端のあなた方に攻め込まれたら、現状のこちらの警備では足りないでしょう。クーデターは成功も同然です。そうしたら何をしますか? 大天狗様を処刑でもしますか?」
「これはクーデターじゃない。革命だよ。それに、大天狗の命になんて興味ないよ」
「それはあなた個人の興味です。一つの体制が終わった事の象徴に、その指導者であった者の首がどれほど大きな意味を持つか、あなただってわかっているはずです」
「わかんないよ。そんなこと知らない」
「いいですか。もう一度言います。あなたがそのスイッチを押したら、戦争が始まります。私の友人も家族も――あなたが友達だといってくれた私自身も、殺されます。それでも、にとりはそれを押すのですか」
「……それでもって……なんだよ。よく言うよ、さっきから私ばっかり悪者にして! だったら私のお父さんを返してよ!」
「は……」

 にとりの激昂に、椛が短く息を吐く。

「出来ないの? 私と同じ鍵のアクセサリーを持った河童。椛の千里眼で見つけてみてよ……」

 そこには、怒りと哀しみの混じったにとりの瞳を、逆に冷めた目で見据える椛の瞳があった。しばらくしてゆっくりと椛が口を開き、

「ああ、それがあなたのお父上でしたか。ええ、探すまでもない。知っていますよ、あなたと同じアクセサリーを持った河童の事は。今は第七居住区の集合住宅に住んでいて、地下下水道の拡張工事に従事し――」

 それと同時に、彼女の瞳からみるみる光が失われていく。

「は、は……あははははは!」

 きっとにとり自身も、そっくり同じ顔をしていたことだろう。乾いた笑いを一つあげて空を睨むと、まさに流れ星が視界を掠めて消えていった。

 にとりは躊躇わなかった。

 手にしたスイッチの突起を力任せに押し込もうとするのと、椛がその腕に斬りつけてきたのはほぼ同時だった。剣が骨に食い込み、ぎしゅっという聞いたことのない音がした。噴き出した鮮血が二人の視界を塞ぐ。あまりの激痛に、にとりは呻きながら仰向けに倒れた。

 しかし――

「は、ははっ。私の勝ちだ」

 爆撃は、既に完了していた。のたうち回りながら見上げた発射台に既に爆薬はなく、代わりに特大の爆発音が数回、遠くから聞こえてきた。投射機を支えに立ち上がると、守旧派の事務所付近では作戦行動が遂行されているようだった。そして、椛の姿はもうここにはない。爆撃を阻止できなかった以上、ここでにとりの命を奪っても、何の意味もない事を知っているのだろう。それよりも、彼女が言っていた守るべきもののために、一秒でも早くやるべき事がある。

「私のアクセサリーは一点ものなんだよ、ばーか」

 戦闘の興奮冷めやらぬ頭では、記憶を掘り起こすのも上手くいかない。けれどもしかしたら、椛にはかつて、そんな話をした事があったような気もしたし、なかったような気もした。いずれにしても、椛は嘘をついた。にとりが、そうさせた。出来っこない事をやってみせよと、そう迫ったのだ。椛に非はないし、どうする事も出来ないと知っていたというのに。父親が今もどこかで生きているだなんて、にとり自身ありえないとわかっていたのに。

「ちくしょう、いってえなあ……」

 気付いたら、また涙が溢れてきていた。滲む視界のまま千里眼装置を覗き込むと、血に塗れてぐったりとした大天狗をはじめ、会議に参加していたらしい現体制の幹部連中が拘束されていた。この電撃作戦は、予想以上に首尾良く進んだらしい。予定ではこの後、〝極めて妖怪的な〟方法によって彼らは消える。それによって、にとりたちの新しい時代の幕開けを謳うのだ。旧き時代は終わったと、この山々の全てに朝を告げるのだ。
 いつのまにか、にとりは切られた左手を抱えるようにして、声をあげて泣いていた。耳に届くのは、仲間たちの喜びの雄たけび。高らかに謳いあげるスローガン。

「陽のあたる、場所って……どこだよ」

 遠くの声に合わせるように呟いて、投射機に背中を預けて座り込む。早く誰か、自分を見つけて欲しかった。ここはまだ寒くて、恐ろしい。視線を遠くの方にやると、ようやく空が白み始めてきているようだった。その明るさに、様々な思いが去来する。しかし、やがて燃えるように赤い空に変わり、にとりは吐き気を催した。朝焼けをこんなに気持ち悪く感じた事は、今までに経験がなかった。

「にとりー!」

 少し離れた場所から、雛の声がした。返事をしようとして、やめる。どうせこの投射機を目印にすればすぐに着く。明るくなってきたのであれば、それほど苦労せずに見つける事ができるはずだった。それに、正直に言うと声も出したくないくらい疲れている。
 遠くの方ではまだ、仲間たちの歌が続いていた。
 にとりは目を瞑ったまま、雛にはじめに言うべき言葉を考えていたが、思いついたそれがなんだかプロポーズみたいで、少しだけ笑った。けれどそれも、すぐに引っ込む。心にずっしりと淀んでいるのは、今この瞬間までに捨てたものと、同時に手に入れたものの重み。到底抱えきれない程の、禍々しくて巨大な何か。
 夜は明けたというのに、まだ当分の間、にとりは暗闇の中を手探りで進まねばならない事を知ったのだった――


  ※
  ※
  ※


「よろしかったのですか、これで」
「かまわないわ」

 一部始終を見終えた八雲紫は、片隅に控えた藍の問いかけに短く答えた。
 守矢が来た時点で、予見できた流れの一つだ。それが嫌ならば、とっくに介入している。しかし、この先どうなるかは、紫をしてもまだ確証が持てなかった。不確定事項が多すぎる。どうにだってなりうる。今はそんな状態だ。

「藍、これはね」
「はい」
「……いえ、なんでもないわ」

 僅かに言いかけて、やめる。藍には表の世界の事はほとんど教えていないのだから、下手に話し出すと長くなりすぎる気がした。
 しかしあれは、紫の知っているそれそのものだった。

 束縛と自由。
 体制と個人。
 歴史と未来。

 時の流れの必然として、生まれくる本質的な対立構造の発現。その結果生まれる自由と民主主義という甘い甘い装置。それこそがアメリカという概念であり、幻想なのである。
 但し――

「そうね。守矢がそれを持ち込んだ、という事はつまり、そういう事なのかしらね」

 誰に言うでもなく呟いて、ちょっとだけ頷いてみる。してみると、守矢などという小さな集団が幻想郷に来たのには、それほど意味はなかったのかもしれない。真に重要なのは、それと共に入ってきたその幻想。その概念。その歴史なのではないか――

 藍がそこで、一人納得する紫に対し、不満気に尻尾を揺らしたようだった。

「……仕方ないわね。藍、時間をあげるからこの先どうなるかを計算してみなさい。きっと良い勉強になるわ」
「わかりました」

 別の世界ではどうなったかなんて、ヒントを与えてしまっては面白くないだろう。だから紫は、それだけ指示して藍の回答を待つ事にした。
 それにまだわからない。今回は、この世界では、どうなるかなんてわからない。あらゆる可能性があるという事を信じるのは、今日までに流れた血に対する、最低限の敬意であるように思えた。流れた沢山の涙。夥しい量の血。そして今後も続く争いに立ち向かっていくであろう、小さき者たちの矜持。それら丸ごとへの、せめてもの敬意だ。
 紫はしばし目を瞑り、行き場のない魂の事を思った。介入はしないと言いつつ、後始末という仕事がまだたくさん自分に残ってる事は知っている。けれど紫はなかなかそこを動く気になれなかった。
 事務所があった場所から立ち上る黒い煙は、まるでそこで巨大な線香を焚いているかのように、紫の目には見えたのだった。
お読みいただきありがとうございました。
広山
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コメント



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1.7アメリカ探索者削除
非常によくできている面白いシナリオだとおもいます。
アメリカの象徴的な部分ですが、幻想郷の自由や革命にみえてしまいますね。
2.8ばかのひ削除
とてもうまいお題でした
3.1名無し削除
確かにアメリカの独立戦争とか南北戦争とか、実際の戦争ってこんなものなんだろうなとは思うのですが…いかんせん東方の二次創作として評価すると、後味の悪さ、一部のキャラを悪人に貶める手法などの悪い点が目立ちすぎて読後感が最悪に。
4.6烏口泣鳴削除
天狗に山の妖怪達が反逆するという構図は良いけれど、革命に対するにとりの思いが少なくて、物語に入り込めなかった。
5.6エーリング削除
生臭い闘争とその顛末がしっかり描かれていて、最後まで目の離せない話でした。東方の天狗って人間以上に俗物チックで、如何にもこういう事しそうな感じ、しますね。
6.2みすゞ【5点満点】削除
あまり緊迫感が伝わってこず、というか空回りしている印象で物語に入り込めませんでした。説明文も長く、興味をそそられなかったので読み飛ばし気味です。ただ独特な世界観と、妖怪の山で革命勃発というシチュエーションは面白かったです。
7.8名前が無い程度の能力削除
どこにアメリカが出てくるのかと思えば、なるほど、そういうことか。
8.8がま口削除
まさに、革命が起こる背景ときっかけのテンプレート的エピソードだと思いました。
本家でも天狗社会とその他種族は結構ゴタゴタしているという設定もあり、すっと内容が染み渡る説得力がありました。
ただ惜しむらくは、意外とあっさり制圧が完了してしまったこと。
容量制限があるので仕方ないのですが、例えば文がダブルスパイで革新派を集めたところで一網打尽! みたいなどんでん返しがあるとグイッと引き込まれるのではないかな、と考えてみたり。
しかし、お話自体はとてもよかったです。幻想郷も、今も革命中の某国もこういった民族問題が解決することを望みました。
9.9みく削除
この容量でよくこんなややこしい話を書いたなと、まず関心しました。話の背景にある政治的様相も非常に分かりやすく説明されていて、力量の高さを見ました。
題名をDemocracy(民主制)ではなくDemocratism(民主主義)にしたのは意図してだと思うのですが、アメリカ独立戦争の寓話としては人(妖?)権についてあまり触れられていない気がしました。作中の山の妖怪たちが蜂起したのは、政治参加を求めたというより生存権・幸福追求権のような基本的人(妖)権の保障を求めたからに読めたのですが、とするとその欲求は果たして紫の言う「アメリカ」の幻想なのかなと。もっと広い、古代ギリシア以来の西欧全体が抱いてきた幻想なのではないかと。
あるいは独立戦争ではなく、アメリカが続けてきた「民主主義の拡散」と「それに起因する数々の紛争」をテーマにしているのかもしません。その場合も、手法自体はアメリカの幻想だとしても、にとりたち市井の妖怪が抱いた革命権への憧れと虚しさは、果たして「アメリカ」の甘い幻想なのだろうか? と思ったりしました。
残念ながら政治学や政治思想史に詳しくはないので、これ以上はよく分かりませんし、的はずれなことを書いてる気もします。ただいろいろ考えさせられるという意味で間違いなく面白かったです。いい意味で難解な話だという印象でした。
10.9あらつき削除
素晴らしい。終始緊張感があって、物語中ずっとドキドキしていた。
一点だけ、文の本心の吐露が物語から少し浮いて見えた。文がそうすることで安心してしまい、物語の緊張感が薄れてしまった印象。その後の椛とのやり取りでも、どうせ良い奴なんでしょ?という安心感が出てしまって、完全には入り込めなかった。
11.7deso削除
面白かったのだけど、もやっとする終わり方。
締めはもったいぶったことを言わずに、アメリカとの相似と対比をもっとしっかり述べて欲しかったかなあ。
12.7ナルスフ削除
妖怪の山が安定してなかった頃の話かと思いきや、風神録以後の出来事とは。
ねっとりとべたつくような革命のお話。
楽園の負の部分を映し出す自由と言う正体のつかめない光。
13.6文鎮削除
先人曰く「民主制はクソであるが、過去のどの政治形態よりもマシ」とのことです。マシであって欲しいし、そうしなければなりませんね。
守矢神社が外の世界からもたらしたものが妖怪の山にどのような影響を与えるか、というIFはとても興味深かったです。
ただ、全体に漂う物々しいというか、虐げられた者たちの抵抗といった空気はアメリカではなく、むしろロシア革命やフランス革命に近かったように感じられました。
特に革命の号砲としてにとりが行った攻撃などは、十月革命の始まりとなったアヴローラ号の砲撃やバスティーユ襲撃を彷彿とさせました。
私の脳みそのせいなのか、どうもアメリカ独立戦争などとは違うように感じるんですよね…
14.7あめの削除
世界設定が緻密で、読み応えがあります。その分、30kbという制限の中ではちょっと物足りないかなと思いました。これは制限無しで読んでみたかったです。
15.4めるめるめるめ削除
長編のプロローグというか、前提条件の説明でかなりの割合になってしまってますので肝心のドラマを書くには容量の余裕が無さ過ぎたように思えました。
長編で読みたかったですね。
16.8ito削除
なんて情報量。
本作を読んでいて、私は現実味があるリアルな話が好きなんだろうなあ、と再認識。
この話が「東方の二次創作」としてどれだけリアルさを含んでいるのかは分からないけど、とても気に入った話です。
天狗の社会構造とか、抑圧された多種族とか、現実世界の裏写しのような幻想郷が説得力を持って描かれていて興味深かった。
本当にこういう社会があったとしたら、その社会はどんな問題を抱えているのか。
情報の出し方が素晴らしい。
作者さんは本当に嘘が上手い。
アメリカの「自由」に批判的な視点を持つSSは出ないと思っていたので、読んでいて意外だったし、とても楽しめました。
また、にとりを始めとして、複数の登場人物に「わからない」という台詞があるのがよかったです。現実って分からないことだらけだ。
17.4がいすと削除
デモクラシー、というか革命という論点だと、どーにもアメリカよりもベルリンの壁が浮かんでしまう今日このごろ。
もしくは、大学が革命の熱気にうごめいていた頃のジャップ。
また、もっとボリュームの欲しい内容をコンパクトにガンダム映画の如くした感じで、これは広げられそうやなぁと。
18.7百円玉削除
大変骨太で、薄暗くもあるお話でした。作者さんの揺ぎない創作心が顕現されているようで、重厚な内容には慄く部分も多々あります。ただその分、原作の雰囲気からは逸脱しているようでもあります。創作する上で、許容出来る範囲ではありました。
19.6このはずし削除
超社会派SS! 
テーマも内容も30kb以内で書かれたとは思えないほど重たく、ずっしりとした作品でした。
明確にヒエラルキーの設定がある妖怪の山は、舞台としてうってつけでしたね。
20.4白衣削除
アメリカという概念はもうアメリカから消え去ったのか。若干日本的アメリ感でしたが、よい感じでした。
21.6名前無し削除
取り急ぎ、点数のみで失礼します。
22.5K.M削除
なるほど自由のイメージはアメリカ。……自由よりも首輪が欲しい、とは誰の言葉だったか。