第十四回東方SSこんぺ(絆)

        

2014/08/20 00:00:22
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本当にあった?都市伝説を集めるスレ 

37 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:20XX /09/14 (日) 00:02:41 ID:beh3in7de
最近『サナエさん』って都市伝説について調べてるんだけど、なんかガチで視線を感じて怖いから厄落としも兼ねて書かせてくれ

89 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:20XX /09/14 (日) 00:02:41 ID:Atm5Gt3w
 >>37
それ噂で聞いたことあるけどかなりヤバいやつらしいよ
こんなとこに書いてないではやくお祓い池。

93 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:20XX /09/ 14(日) 00:07:23 ID:d68jZtJ8
 >>37
 >>89
ガチなやつなの?最近見え見えのガセばっかだったし詳細頼むわ

105 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:20XX /08/ 10(日) 00:28:49 ID:beh3in7de
 >>89 
 >>93
とりあえず知ってることだけ書いたらお祓い逝く。今も誰かにみられてる気がして結構ビビってるwww
少し前にさ、N県の中学校で何人も行方不明になる事件があったんだけど。その事件で行方不明になった生徒の一人がつけてた日記に、その子の前に居なくなったやつ一人一人の名前とか恨み節が書かれてたらしいんだよ。
ちなみにその子はかなり虐められてて、先に行方不明になってたのはその虐めっ子ばっかりだったんだって。
 
108 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:20XX /09/ 14(日) 00:30:37 ID:gm4dp822h
 >>105
あー、あの事件か。ニュースでずっとやってたから覚えてるわ。
でもそれはいじめられっ子が厨二病拗らせてただけだろ?結局その子も行方不明なんだし

1~0 名前:後ろの潤オ蹉名ェ探羅饐日:2?XX /33/ 77(月) 99:37:37 ID:be3後7n*e~
 >>1サ5
ここナまでだと確かにそうなんだガけど、その日記、そェの子が行方潤オに冀ウった後も書かれ礙てたらしいんサだよ。『今日は○○(その子の後に潤オ不シ明になった子ね)が~』って。しかもそのン子そ娜くりロの字で。
しかもそれニを気饐悪がったその子の親が日記薈タを捨てよ饉としニたんだけど、サ♪その捕前にその二驪ガは急死ナ嘴て、日記帳も何処かに消えた潤イだっ哥鐚鐚

116 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:20XX /09/ 14(日) 00:37:43 ID:gm4dp822h
おい、お前なんか色々おかしいぞ

1*~ 名前:後ろの正面名無しさん投稿日:???? /37/ e7(日) 37:ea:呪 ID:be37ehind
そ歟でさ、実はま驕輔>生サ縺ナ縺エ豁」縺励¥ 譁・ュ励′陦ィ遉サ輔l縺ェ縺・樟雎、何か躍+?ヒ?0・・}?芭灯遏?探?Cワカ>??オヌM・GfサYス^N曚麈C???凵Eテ?Vl?Ci)ヨK・惚ラテ絎?・-ュ・L1隆モ゚?ユ?L・?・タ駈モE?umメg?ァvョタ"?稠ー?トシ?C2ヌヨャ・・9ソ繝+・]1ニ3オL・?・!XR?゙eЕ???゚ゥb゙

1~"後ろの正面名無しさん投稿日:???? /37/ e7(日) 37:ea:祟 ID:be37ehind
ツカマエタ






 ◆◆◆


「殺してやる」
 未だに痛むタバコ痕を抑えて呻く。もう何度そう思って口にしてきたかなんて覚えていない。殺したい相手は、沢山いる。私を虐めるあいつらも、助けてくれない教師どもも、無関心な両親も、どいつもこいつも百万回殺したって足りないクソッタレどもばっかりだ。
 殺してやりたい。殺してやりたい。今までされてきた仕打ちの分だけ……いや、それ以上に苦しめて殺してやりたい。
 中学に入ってすぐの頃から、私はずっとクラスメイト達に虐められている。理由なんて知らない。多分私が大人しくて、何をしてもやり返したりチクったりしないからとか、そんな理由なんだろう。どうでもいい。
 上っ面だけはいい連中に騙されてる教師共はお得意の事なかれ主義も相まって役に立たない。元々家を空けがちで、たまに帰ってきたかと思えば『勉強しているのか』『成績はどうだ』の二言しか口にしないクソ両親は端からアテにはしていない。私は、ずっと一人で耐えている。
 靴が無くなったり中に画鋲が仕込まれていたりなんかは日常茶飯事。弁当にゴミを入れられたりもすれば、便器に顔を押し付けられてトイレの汚水を飲まされたこともある。暴力なんか数えきれない。今日だってそうだ。宝探しとか言って教科書や筆記具を隠され、やっとのことで見つけ出したら今度は目の前でバラバラにされた。
 そうやって虐められる度に、私は唯一自由になれる自分の部屋で「殺してやる」と呪うのだ。
 もちろん本当に殺したりはしない。殺してやりたいけど、あんな屑共の為に残りの一生を台無しにする気はない。後一年、一年耐えられれば、奴らとおさらばできるんだし。
「……さて。元気にしてた、シロ?」
 鞄を放り投げ、私はケージの中のたった一人の親友に声をかける。
 声に反応して鎌首をもたげるのは、小さい頃から飼ってるアルビノのアオダイショウのシロ。この白蛇だけが、私の支えだった。
「よーしよし……ちゃんと元気にしてたみたいね。はいご褒美。珍しいでしょ?」
 ちろちろ指先を嘗めてくるシロを撫でてやりながら、さっき近所の川で捕まえた赤蛙を出す。太ってたからシロの餌に丁度いいと思ったのだ。それにしても珍しいよね、今時赤蛙なんて。
 ケージに放り込むと、シロはすぐに飛び付いて、あっという間に呑み込んでしまった。よっぽど嬉しかったのだろう。
「ほんと、お前だけが癒しだよ。シロが居なかったら、きっと今ごろ自殺してた。お前がいるうちは、まだまだ大丈夫だわ」
 ……もっと言うと、シロが毒を持ってて、それであいつらみんな殺してくれたらもっといいんだけどね。
 駄目だ、何を考えてもあいつらへの殺意しか沸いてこない。学校から帰ったばかりの時は、いつだってそう。考えたくもないのに、恨みしか沸いてこない。全部全部、あのクソッタレどものせいだ。
「あーあ、カミサマとか呪いとかが実在して、あいつらみーんな、祟り殺されればいいのにさ」
 言ってて自分で馬鹿馬鹿しくなる。カミサマやオカルトなんて、存在するわけないもんね。

 ――Q.カミサマやオカルトは本当に存在していると思いますか?
 ――A.してるわけないじゃん。バカじゃないの?

 脳裏に浮かんだQ&Aに即答する。そんなの、当たり前。全知全能で、人を救ったり願いを叶えてくれる存在。嫌なやつをバレないところから一方的に痛め付けられる術。そんな都合の良いものなんて、作り話の中だけの存在なんだもの。



 ……少なくとも、その時まではそう思ってた。


「ねぇ」


 でも、でもね。


「ねぇってば」


 私、知ってしまったの。


「貴女はカミサマって、信じる?」


 そういうのが、実在するってことを。


 ◆◆◆


 そいつはまるで最初からここに居たとでも言わんばかりの様子で、私の勉強机に腰掛けていた。蛙みたいな印象を受けるのは、被っている変な帽子のせいだろうか。何処から入ってきたのかも分からないし、なんだか薄気味が悪かった。
「誰よ、あなた」
「私? ……ふふん、聞いて驚かないでよ。私はね、カミサマなのさ!」
 白いニーソックスに包まれた脚をぶらぶらさせながら、そいつはありもしない胸を張る。こいつは何を言っているんだろう?
「ごっこ遊びならお友達とやって。人の家に勝手にあがって、おまけにカミサマ? 何考えてんの? それとも宗教の勧誘? あれ、最近は子供まで使うの?」
「あー、信じてないなぁ?」
 そいつは小さな頬を膨らませてむくれる。可愛らしいけど、蛙のイメージがますます強くなった。
「当たり前でしょ。カミサマなんているわけないじゃん」
「あーあ、最近の人間はこれだから……じゃあさ、こうしよう。貴女、何か叶えたい願いはない?」
「願いだって?」
「そ。とりあえず、一つだけ叶えてあげる。そしたら、私がカミサマだって信じられるでしょう?」
 ふーん。どうやら、本人は本気で自分がカミサマだって思い込んでいるらしい。……よし。それなら少し無茶を言って、からかってやろう。
「じゃあさ、こいつを祟り殺してよ。本当にカミサマだっていうんなら、それくらい簡単でしょ?」
 引き出しからクラスの集合写真を取り出して、Y美のことを指差してやる。こいつは3年B組のボス猿の彼女で、男の威光を笠に着て一番好き勝手やってるクズ中のクズ。折角だから、一番憎らしいこいつを選んでやった。
 どうせ、こいつにはなにも出来やしないだろうし。人を殺せなんて無茶を吹っ掛けてやれば怖じ気づくか、逆ギレでもして逃げ出すに違いない。
「へぇ、そんなんでいいんだ?」
「え?」
 でも、そいつは逃げなかった。それどころかニコニコと笑って、「朝飯前だよ」なんて言って。

 ――ざりり。

「!」
 なにかが這いずるような、物音が聞こえた気がした。けれど、振り返っても何も居なくて。気のせい、なんだろうか?

「さ、終わったよ」
「……終わったって、何が」
「貴女の願いを叶えたって言ってるの」
「は? でもあんた、ここから動いてないじゃん」
「こんなの三下の仕事だもの、私が直接動くまでもない。あ、心配しないでね。三下って言ってもちゃんとした祟り神だよ」
 ぎぃ、とそいつは笑った。さっきまでとはまるで違う、気味の悪い笑み。顔自体は人形のように可愛らしいのに。ゾッと寒気が走った。
「……で、でも、Y美が死んだって証拠が無いわ。あんたが適当言ってるだけかもしれないじゃない」
「あーうー……そこまで信用ないと、流石に傷付いちゃうなぁ。っていうか、すぐに確認出来ないような願いを言うから悪いんじゃない。そんなに気になるなら、その子が今どうなってるか直接見て来たら? 疑われても知らないけど」
「ぐっ」
 そう言われると何も返せない。ノコノコ出掛けてY美の周りの連中に「先程Y美が死にませんでしたか?」だなんて聞けるわけがないし、うっかり本人に出くわそうものなら、何をされるか分かったものじゃない。
「まぁ、明日学校に行けばすぐ分かるでしょ。じゃあ、また明日同じ時間に来るから。私の事を信じるかどうか教えてよ。……あ、そうそう」
 そいつは袖の中から何かを取り出して、私に握らせた。
「万が一願いが叶っていなかったら、それで美味しいものでも食べると良いよ。文句は聞いてあげるからさ。じゃ、また明日ね」
「あ、ちょっと!」
 言うだけ言って、そいつはふっと姿を消してしまう。私は理解が追い付かないまま、立ち竦んでしまって動けなかった。夢でも見ていたのだろうか?
 ……いや。夢なんかじゃない。
 さっきあの子に握らされた何かが、ちゃんと私の手の中にある。見てみると、翠色に透き通った綺麗な石だった。確か、母親のアクセサリーによく似たのを見た覚えがある。あれは確か……そう。翡翠だ。これはきっと翡翠に違いない。こんなもの、小さな子供が持ち歩くようなものじゃない。なのにどうして、あの子が持っているの? まさか、本当に……
「馬鹿馬鹿しい」
 そんなの、あるわけない。きっと、これもイミテーションかなんかだろう。それでも怪しいけど、とにかくカミサマなんているわけないんだ。
 もう寝てしまおう。きっと私は疲れているんだ。


 ◆◆◆


 いつも通りに学校に行くと、今日は珍しく机に何もされていなかった。いつもだったら、落書きや枯れ草を突っ込んだ空き缶なんかが花瓶がわりに置かれていたりするのに。
 普段騒いでる連中も今日はなんだか大人しいし、普段から私に因縁をつけてくるやつらも、今日は私のことなど眼中に無い様子だった。新しいいじめのやり方でも思い付いたのかとも思ったけど、そういう訳でもないらしい。なんにせよ、なにもされないならそっちの方がありがたい。
 それから、私は気付いてしまった。

 Y美が、居ない。彼氏のボス猿やY美の取り巻きも何人か居ない。
 いつものこの時間なら、下らない話をしてキンキンうるさいバカ笑いの一つでもあげているはずなのに。

『まぁ、明日学校に行けばすぐ分かるでしょ』

 昨日の、あの子の言葉がフラッシュバックする。まさか、そんな……

「えー、今日はクラスの皆さんにお伝えしなければいけないことがあります。もう知っている人も多いと思いますが……昨晩、Y美さんが事故で亡くなりました」
(…………!)
 でも、それを裏付けるような言葉が、チャイムと共に入ってきた担任の口から出てきてしまった。嘘、でしょう?
 その後も通夜がどうとか、屋上のフェンスが老朽化して危険なので近付かないようにとか、クラスメイトのざわつきが聞こえたけど、ほとんど頭に入らなかった。本当に、あの子がやったの……?
 朝礼が終わっても、しばらく頭が混乱してていた。でも、時間が経って落ち着くにつれて、だんだんと喜びが沸き上がって来る。
「……ねぇ、聞いた? Y美、電車に轢かれてバラバラになって死んだって……」
「聞いた聞いた。AとかD君もその場にいて、轢かれるとこ、目の前で見ちゃったんだってさ。それで今日は休んでるんだって……」

 そして。休み時間にそんな会話を聞いたとき、私の喜びは急速に膨れ上がった。
 ……そっか、死んだんだ。
 憎くて憎くて、ずっとずうっっっと殺してやりたいと思ってたアイツが、こんなにもあっさり、ゴミのように死んだんだ……!
 もう止まらない。どんどんと喜びが大きくなる。今すぐにでも立ち上がって、踊りの一つでも踊ってやりたい気分だった。勿論、目立っても得はないから、我慢したけど。
 おまけに、クラス中がY美の死で持ちきりだったせいかその日はなにもされなかった。普段はトイレとか物陰でひっそり食べざるを得ない弁当だって、教室で堂々と食べてやっても誰も気には留めなかった。全員、それどころじゃなかったのだ。
 ずっと憎んでいた相手が死んで、おまけに平和。なんて素敵な一日なんだろう!
 私は何年ぶりかもわからないような幸福を噛み締め、羽が生えたと錯覚してしまいそうなくらい軽い足取りで家に帰る。
 カミサマ、本当にいるのかも!
 

 ◆◆◆


「ただいま! やったよぉシロ! Y美、死んだってさ――あ」
「やぁ、お邪魔してるよ」
 家に帰ると、あの子――カミサマが、昨日の言葉通りにやってきていた。昨日と同じ格好で、私の勉強机に腰掛けてるのも、昨日と同じ。ただ、昨日と違って、大きな壺を傍に置いていた。壺そのものは特に変わったところもない、アジア系の雑貨屋なんかで売ってそうなやつ。
 だけど、部屋に入ってからずっと、中から何かを引っ掻くような音がガリガリと響いている。一体何が入ってるのか見当もつかないけど、ろくなものじゃないのは間違いなかった。
 そんな壺の音など聞こえていないみたいに、カミサマはにっこりと笑って口を開く。その時の笑顔は昨日と違って、外見に見合った可愛らしい笑顔だった。
「それで、どうだった? 願いはちゃんと叶っていたかな? その様子だと、聞くまでもなさそうだけど」
「うん、勿論! Y美のやつ、電車に轢かれてバラバラになったって! ざまぁないわ! もう最高!」
「へぇ、それはよかったね。で、私がれっきとしたカミサマだって信じる気になってくれた?」
「信じる信じる! カミサマなんていないって思ってたけど、こんなの信じるしかないわ!」
「おや、それは重畳。お互い得をしたみたいで何よりだ。……ところで」
「な、なに?」
 ぎぃ、と。またあの薄気味の悪い笑みを浮かべたカミサマが、私の耳元に迫ってくる。まるで巨大な蛇にでも睨まれたみたいな感覚だった。さっきまでの高揚なんかすっかり冷めて、氷を入れられたみたいに背筋に寒気が走る。喉がからからに乾上がって、舌が回らなくなっていく。
 ……やっぱりこの子は人間じゃない。今更のように、思い知る。
「まだ、叶えたい願い事はあるかな?」
「……ある、沢山、ある。」
 回らない舌でなんとかそれだけ言うと、カミサマはますます口の端を吊り上げる。寒気が、強くなった。
「……じゃあさ。その子、シロだっけ? その蛇に私の力を分けてあげよっか」
「え……?」
 カミサマの紡ぐ蕩けるような声が、私の心をざわりと揺さぶる。……カミサマの力を、シロに?
 自分が生唾を飲み込む音や心臓の鼓動が、うるさいくらい耳に響く。本当にそんなことができるなら、願ってもない話だった。
「もちろん、条件はあるよ。それでもいいなら分けたげる」
「条件?」
「そう。流石にタダって訳にもいかないからね。カミサマだってギブアンドテイクなのさ」
「何をすればいいの?」
「そうさねぇ。いくつかあるんだけど……まずは、私とお喋りしてくれること」
「何を喋るの?」
「その日あったこととか。中身はなんでもいいけど、沢山お喋りしよう。私の話を聞くだけでも構わないけどね。いい?」
 案外カミサマも淋しいのかな。まぁ、そのくらいならお安いご用だ。わかったと頷くと、カミサマは続ける。
「次に、日記をつけること」
「日記?」
「うん。その日あったことを包み隠さず書き残すの。願い事のこともそうだし、もちろん私とのお喋りのこともね」
 ただし、とカミサマは付け加える。
「これは最後の条件でもあるんだけど……日記以外には私のことと、願い事の方法は誰にも内緒にするように。他の人には絶対の秘密にすること。……以上! どうかな?」
「……それだけ?」
「そ。これだけ」
 拍子抜けするような条件だった。あんな力を与えるなら、絶対とんでもない要求が来ると思っていたのに。裏がありそうなくらい安い条件だった。もしかして私をからかっているんじゃないだろうか?
「本当にそれだけなの? 本当は何か隠してない? いくらなんでも簡単すぎるわ」
 そういうとカミサマは愉快そうに咽を鳴らした。どこか、蛙の鳴き声に似てる気がした。
「良い子だ。持ちすぎるのはよくないけど、疑心を持つことは大切だよ。人の甘い言葉を疑い、自分の行いを疑う。その疑心を持たずして、人は正しい道を歩めない」
 でもね、とカミサマは笑う。
「私は人じゃなくてカミサマだ。だから私の言葉は掛け値なしに信じていい。信心なくしてカミと人の間に絆は生まれない。人が信心を無くしてカミを疑えば、そこでカミと人の絆は途切れてしまう。いいかい? カミサマはね、心の底から自分を信じ敬う人間を裏切らないのさ」
「……つまり、隠し事や嘘はないってことでいいの?」
「そういうこと。まだ何かあれば全部言いなよ。疑心を持ったままでは信じきれないでしょう?」
 脱いだ帽子をくるくる回しながら、カミサマはにっこり笑った。理屈全部に共感できるわけじゃないし、一から百まで信じるのはさすがに無理だったけど、疑いを全部吐き出せというのは成る程と思う。信じているもの――つまり、私のことを裏切らないというのもシンプルで分かりやすい話だった。
「わかった。じゃあ教えて欲しいんだけど、どうして私のところに来たの? 貴女みたいなカミサマがやってくるような特別なものなんて、私には無いと思うんだけど」
「あぁ、そのことか。……貴女、昨日赤蛙を捕まえたでしょう? あれ、私のだったんだ」
「えっ! そうだったの!? それはその……ごめんなさい」
 昨日捕まえた赤蛙は、既にシロの胃の中だ。普通に川の近くで捕まえたものだから、野生の蛙だと思っていたのに。
「あぁいや、そこは気にしなくていいよ。一匹や二匹くらい大したことはない。まぁでも昨日は一応気になって探したわけなんだけど、そこで貴女を見つけたの」
 ここからが本題なんだけど、と言って、カミサマは懐かしむように目を細めた。
「私ね、ちょうど貴女と同じような年頃の子と暮らしているの。素直で明るくて、ちょっと抜けたところもあるけど、私のことを慕ってくれてる可愛い子でね……この前だって……」
「えーと、うん。それで? どうして私の前に現れたの?」
 そのまま脱線して如何にその子が可愛くて愛らしいか力説し始めそうだったから、慌てて引き戻す。そんな話を聞いても、羨ましさで虚しくなるだけだもの。
 ……でも、いいなぁ。こんなにもカミサマに愛されてるなんて。きっと何不自由なく暮らしているような、幸せな子なんだろうな。
「おっと、話がそれちゃったね。まぁ、そこでだ。そんなあの子と同じ年頃の貴女を見かけたわけなんだけど。なんていうのかな、貴女の思い詰めたような顔を見てさ、あの子とダブっちゃったのよ。情に絆されるってやつさね。それで、これも何かの縁と思って貴女の前に現れたってわけ」
「そんなに思い詰めた顔してたかな? いつも通りだったと思うけど」
「恨みや憎しみを顔に出すときは、本人が思ってるよりもずっと恐ろしい顔をして いるものなのさ。覚えておくといい。迂闊に表に出すと損になることが多いからね。……それで、どう? もう質問はない? 私の出した条件は呑めるかな?」
 私は大きく頷いて、ケージから出したシロをカミサマに差し出した。カミサマはシロを壺に入れると「じゃあ明日またくるから」と言って、昨日と同じようにすうっと消えてしまう。その去り際、シロの入った壺がガリガリと音をたてた気がした。
 ……やった。これで、私を虐めてきたクズどもに罰を与えてやれる。そして、私はシロと一緒にこれまでの不幸なんか忘れるくらい幸せになってやるんだ。怖いことなんかない。だって、私にはカミサマとシロがついているんだから。
 ……でも、本当にシロをカミサマに預けて良かったのかな?
 壺の音の残響はまだ私の耳に響いている。本当は気味の悪いその音は、高揚感に浸る私に、泥のような不安を残していた。


 ◆◆◆


「Y美が死んだからって調子こいてんじゃねーよ!」
 次の日。シロの居ない朝を迎えてから向かった学校では、今までと何も変わらない最悪の日常が待ち構えていた。
 昨日すっかり油断して靴箱に置いてきてしまっていた上履きはズタズタにされていて、机にもいつものような落書きが所狭しと書かれていた。おまけに教室に入るなりこの罵声だ。どうやら、Y美の後釜にはあいつの腰巾着だったK弥が座ったらしい。昨日の今日だって言うのに、おまえらの頭と一緒で軽い椅子なんだね。低能の集まりなんだから当たり前か。K弥は耳障りなダミ声でなにやら私を罵倒していた。悪いけど、私猿の言葉は知らないんだよね。大体、いつまで上に立っているつもりでいるんだろう? もうおまえらなんか怖くもなんともないのに。
 だっておまえらの命は全部、私が握ってるも同然なんだよ?
「ニヤついてんじゃねぇよ! ブタのくせに!」
 いきなりK弥に張り倒されて、取り巻きに金切り声じみた嘲笑を浴びせられる。痛いしウザいしやかましい。公害みたいな連中だ。……それはともかく、顔に出ちゃってたか。気を付けないとね。
 それにしても鬱陶しいなぁ。ブタ面なのはお前の方じゃん。家畜が人間様に軽々しく口きいてんじゃねぇよ。
 ……そうだ。シロが戻って来たら、まずは実験もかねてこいつを祟り殺してやろう。どうせその内全員殺すんだけど、とりあえずシロがカミサマの力を本当にもらっているかどうか確かめないとね。
 でも、どうやって殺すんだろう。殺し方とか、指定できるのかな?

 ……あぁ。夜が待ち遠しいなぁ。





「おかえり。待ってたよ。どう? 見違えたでしょう」
「う……ん?」
 家で待っていたカミサマが、壺の中からシロを出して見せてくれた。でも、昨日とそこまで変わっている風には見えなかった。
「違いわかんない? ほら、なんというか神々しいオーラみたいな……」
「いや、まったく……」
「……そっか、わかんないかぁ。まぁ、人間には見分けなんてつかないよね」
 一瞬、カミサマがまたぎぃと笑った気がした。でも、もう一度見直した時には普通の笑顔だった。なんだ、気のせいか。
「しょーがない、試しに何かお願いしてみたら? 貴女も試したくて仕方ないんでしょ?」
「うん! ね、シロ。K弥を殺してきてくれない?」
 昨日と同じようにクラス写真のK奈を指差しながら、シロに声をかけてみる。シロは舌でちろりと写真を舐めた後、

 ――ざりり。

 昨日聞いたものと同じ音をたてて姿を消した。出ていったのではない。カミサマが帰るときのように、ふっと姿を消したのだ。これだけでも分かる。シロはもう、昨日までのシロじゃないんだ。
「さて、あの子の初仕事だねぇ。上手に出来るかな?」
「出来るに決まってるわ。だって、シロだもの」
「ふぅん。随分あの子に熱をいれてるんだね」
「そりゃあもちろん。なんたって小さいときからずうっと一緒に暮らしてきたんだもの。あの子だけよ。私の本当の家族は」
 仕事だ仕事だとろくに家に帰らず私に興味も示さなかった両親が、小さい頃唯一私に与えてくれたのがシロだった。それ以来ずっとあの子と過ごしてきたから、あの子との絆は両親よりも強くて深いと思っている。
「へぇ。でもそんなに大切な蛇なら、私に軽々しく預けてもよかったの? 何をするかも分からないのに?」
「貴女は私を裏切らないんでしょう?」
「……そっか。そうだったね」
 カミサマは帽子を目深に被って小さく咽を鳴らした。笑っているのだろうか。
「ま、それならずっと大切にして信じきってあげることだね」
「言われなくてもそのつもりだよ」
「おっと、そりゃ失礼。……あ、そうそう。あの子についていくつか注意があるんだった」
「注意?」
「そ。あの子、前よりもずっと大喰らいになってるだろうから、餌は沢山用意してあげてね。それからこの前渡した翡翠、まだ持ってるかな。もう売っちゃった?」
「あれ、やっぱり翡翠だったんだ。持ってるよ。だって私の歳じゃ売りに行けないもの」
 引き出しから取り出す翡翠を見せると、カミサマはそれを肌身離さず持っておくようにと言った。
「翡翠には魔除けの力があるの。もし貴女が何か呪術的な仕返しをされても、簡単なものなら護ってくれるよ。それに翡翠は自然との繋がり――つまり、あの子との繋がりを強くしてくれるの」
「ふーん……仕返しは心配ないと思うけどなぁ」
「あんまり油断しない方がいいよ? 人を呪わば穴二つって言うでしょう? それと、あの子の力を使いすぎるのもオススメはしないかな」
「どうして?」
「貴女の周りで死人が沢山出たら、誰だっておかしいって思うでしょう? 誰かにバレてしまうかもしれないよ」
「わかった。気を付ける。どっちにしてもこれはちゃんと持ち歩くわ。魔除けはともかく、シロともっと仲良くなれるなら嬉しいもの」
 口ではそう言っておいたけど、あんまり使うなって言葉には従えないなぁ。だって、殺したい相手は沢山いるんだもの。仕返しだって大丈夫でしょ。誰もこんなオカルトなことなんて信じていないしね。
「ふーん……ま、持ってるならなんでも構わないけどね」
 カミサマは値踏みするような目で私を見ていたけど、すぐにそれもやめて自分の帽子で遊び始めた。くるくると回される帽子のてっぺんにつけられている二つの目と、何度か目があった気がした。目はぐるぐると左右バラバラに視線を動かしているのに、その時だけは両目ともしっかり私を見ている様に見えて仕方なかった。正直に言うと、気味が悪い。

 ――ざりり。

 シロが戻ってきたのは、その時だった。外見はあまり変わっていないけど、口元から少しだけ、鉄の臭いがする赤黒いものが垂れていた。どうやら、しっかりと喰い殺してくれたらしい。
「お、首尾は上々だったみたいだね。初仕事にしちゃあ上出来だ」
「ありがとう、シロ!」
 シロの頭を撫でながら、空いた手で写真の中のK弥を塗り潰す。これで二人目。まだまだ殺したいのは沢山いるけど、次は誰にしよう。私を何度も殴ってきたH江、水泳の時間に私の制服をズタズタにしたA子。ゴミを食わせようとしたM香に、私をXXXしてきた、FとRとI……候補が多すぎて決まらない。なにせクラスの半分近くが私の復讐相手だもの。全体の人数が40人で、その半分だから大体残り20人。二人死んだから18人かな。教師も入れれば、もう少し増えるかもしれない。多いなぁ。
 ……そうだ。あいつらに点数をつければいい。10点満点で、高い順から殺していこう。何か罪滅ぼしをするなら減点して、点数次第では見逃してやってもいい。あ、見つかったらダメだから、この事を調べようとする奴は例外で点数関係なく消さないと。
「それじゃ、今日のところはお暇するとしようかな。その子の初仕事も無事終わったみたいだし。日記、ちゃんとつけておいてね?」
「……あぁ、うん。分かってる。ありがとうね」
 カミサマの言葉に我に返って、さっきの帰りに買ってきておいた日記帳を見せる。約束通り、今日から毎日誰にも見つからないように記録していかないとね。誰かとの秘密の共有なんて初めてだから、なんだか楽しみだった。
 ……あれ? でも。
「ねぇ、そう言えば貴女、名前は何て言うの?」
 私はカミサマの名前を知らなかった。逆に、カミサマに私の名前も教えてはいなかった。お互いに貴女、で通してきたし、それで不自由もなかったからだ。でもどうせ日記をつけるなら、ちゃんと名前で書いておきたい。別にカミサマでも分かるけど、名前を知らないままというのはなんだか気持ちが悪い。
「名前? そうだね……」
 カミサマは思案顔でしばらく虚空を睨んだあと、これだけ言って姿を消した。

「じゃあ、〝サナエ〟とでも呼んで頂戴。その方が色々と都合がいいからね」

 都合がいい、と言うのがどういう意味かは分からなかったけど、私はその名前を日記に書くことにした。


 ◆◆◆


 シロがカミサマの力を得てから一ヶ月。
「はー、やっと終わったー」
 ホームルームも終わって人気のなくなった3年B組の教室で、私は軽く体を伸ばす。窓から射し込む夕焼けがとても眩しかった。
 ちなみに、今の3年B組はそれまでのクラスとは大幅に姿を変えている。というか、私が変えたと言うべきかもしれない。なにしろ余りにもクラスメイトが死にすぎたせいで、三年だけクラスが再編成されたのだ。一体、何人死んだんだっけ。
 A、U香、F、R、Iに……後は、私が復讐を初めて以来私の周りを何やら嗅ぎ回って詮索してきた、オカルトマニアを自称するイカれ女のM。この子は違うクラスだったけど、バレたら嫌だから消えてもらった。
 ともかく、クラス替えの結果私の周りはほとんど違う人に入れ替わった。何の因果か、私はB組のままだったけど。
 そのお陰か虐められることはもうなかったし、少ないけど友達もできた。これまでみたいに朝学校に行っても靴や机が汚されたり壊されていることもないし、無理矢理人気のないところに行かれてサンドバッグの代わりにされることもない。食事だって誰かと一緒に堂々と食べられる。そんなの全部当たり前なんだけど、少し前までの私にとっては有り得なかったから、この日常は素晴らしいものだと思えた。
 ただ。その代わり、というわけではないんだけど。最近誰かの視線を感じるようになった。誰のものかは分からないけれど、学校にいる間ずっと、私は誰かに見られている。視線を感じるのは学校の中だけで、登下校の間や出掛けてる間は平気なのだけれど、なんだか不気味だった。Mのように、私の秘密に感づいているやつがいるのだろうか?
 ……だとしたら、早く見つけ出して始末しないとね。
 だって、まだ復讐は終わっていないのだから。半分以上殺した今でも、恨みを忘れることは断じてなかった。それどころか、何気ない今が幸せであればあるほどに、こんな当たり前の幸せさえ奪ってきた奴等に対する恨みは増す一方だ。しかも奴等は、クラス替えがあったのをいいことに私にやってきた仕打ちを忘れるつもりでいるらしい。今日も廊下で見かけた連中が相変わらずバカ笑いしていたのを見て、イラついて仕方なかった。
 誰が忘れてやるものか。ただの一人も見逃してなんかやらない。お前達は皆殺しだ。一人一人確実に消してやる。どこへ逃げたって、必ず復讐してやる。
「さてと。そろそろ出なきゃね」
 さっきよりも随分傾いた夕陽を見て、私は教室から出ることにした。川に行って、蛙を捕まえてこないといけないからだ。
 私の幸せと復讐心に比例して、シロはどんどんと大喰らいになっていった。最初は蛙も一、二匹も捕まえて来れば十分だったんだけど、今では十匹は捕まえてこないといけなくなった。餌は冷凍マウスなんかもあるんだけど、シロは蛙の方が好みらしかった。流石に人を喰べたら、しばらくは保つのだけど。
 〝サナエ〟さん――カミサマとの話も、沢山日記に書いた。カミサマはあの日以来あまり来なくなり、ふらっと気まぐれにやってくる程度になった。けど、カミサマはやってくる度に不思議な話をしてくれた。もしかしたら話の種を仕入れるために余り来ないのかもしれない。カミサマが言うには、なんでも天狗とか河童とか魔法使いとかがいる所に住んでいて、毎日のように騒ぎを起こしているんだそうだ。信じられない話ばかりだったけど、カミサマはまるで本当のことのように上手く話すものだから、つい聞き入ってしまう。
 でも一番多いのは、やっぱり一緒に暮らしているという女の子の話だった。カミサマはその話をするときが一番いきいきとしていて、その話を聞く度に、私はその子のことが羨ましくなった。
 退屈な学校も行かずに仲のいい友達と遊んで、お祭りとか宴会も沢山ある。不思議で刺激的なことが毎日のように起きて、おまけにお酒を飲んでも捕まったりしない暮らし。そんなの、誰だって憧れる暮らしだ。少なくとも、こんなクソッタレな私の生活なんかよりはずっといい。シロのお陰で随分マシになったと言っても、滅茶苦茶だったこれまでの時間はどうしたって戻ってこないのだから。
 きっとその子は、無理矢理飲まされるトイレの水や泥の味も、押し当てられるタバコの熱さも、誰からも人間として扱われない苦しさも、どれもこれも経験したことはないんだろう。
 ……私がその女の子だったらよかったのにね。こんなの、不公平だ。
「……はぁ」
 溜め息がでる。何を考えているんだか。私だって、もうそんな暮らしとはおさらばしたんだ。これからはシロと一緒に好き勝手に、面白おかしく暮らしてやる。逆らうものは皆殺しだ。こんなに楽しい暮らしなんてあるものか。
 さぁ、帰ろう。蛙を捕まえて、シロに食べさせてあげないと。ぼうっと考えている間に通りすぎてしまった靴箱に引き返して、私はロッカーを開ける。その途端、中からメモが落ちてきた。差出人なんて勿論かかれていなかったけど、たった一文、こんなことが書かれていた。

『貴方の秘密を知っています。お話ししたいことがあるので、明日の放課後屋上に来てください』

 握りつぶしたメモをポケットにねじ込んで、辺りを確かめる。けれど、いつもの視線は感じない。お守りとしてブレスレットにした翡翠を一緒に握り混んでしまったみたいで、指がずきずきと痛んだ。



「ただいま」
「や。ありゃ、どうしたの? なんだかずいぶん疲れてるみたいだけど」
 家に戻ると、カミサマとシロが部屋で私を迎えてくれた。待ち伏せとか尾行を警戒して帰ったんだけど、結局何もなかった。それでそのままいつも通りに帰ったのだけど、無駄に神経を使ったせいか、疲れてしまった。
「ちょっとね。ほらシロ、ごはん……あのさ。一つ聞いてもいいかな?」
「んー?」
 ビニール袋から出した蛙をシロのケージに放り込んで、私はカミサマに一つ質問してみることにした。
「貴女ってさ、一体何処に住んでるの? 前に私くらいの年齢でもお酒を飲んで大丈夫とか言ってたけど、外国?」
「うんにゃ、れっきとした日本の土地だよ」
「なんていうところなの?」
「夢の国さ」
「夢の国……? テーマパークにでも住んでるわけ?」
「あはは、まさか。まぁ、普通の人間には一生縁の無いような田舎だよ。あぁ、地図を見ても無駄だと思うよ。どうせ載ってないだろうから」
 カミサマはそう言うと、帽子をくるくる回して笑った。多分、私をからかっているのだろう。夢の国だなんて。天狗だ魔法使いだのが、誰にもバレずにこの狭い日本に住めるわけがない。まぁ、知ったところでどうするわけでもないし、教えたくないなら別にいいんだけど。それより、今日の復讐だ。
「ねぇシロ、食べ終わったらこいつとこいつを殺してきてくれるかな?」
 既に半分近くが塗り潰された写真の中の二人を指差して、ちょうど蛙を口に入れたばかりのシロに見せる。ターゲットは昼間廊下で見た奴等。手紙のこととかでなんだか今日はイライラしてるから、パーっと派手に二人いっぺんに始末して憂さ晴らししよう。

 ――ざりり。

 写真の二人を暫く見つめた後、シロは部屋を出ていった。これでよし。これで明日からあいつらの存在を認識せずに済む。そう思うと、少し気分が晴れた。

「おやおや、今日も精が出るねぇ」
 と、カミサマが話し掛けてくる。相変わらず、帽子をぐるぐる回していた。
「まぁね。でも、随分片付いたわ。お陰で平和になった」
「あら、そりゃ良かったね。でも、ちょーっとやりすぎじゃない?」
「なにがよ」
「あの子の力を無闇に使いすぎてないかってこと」
「別にどうってことないでしょ? 貴女との約束はちゃんと守ってるんだしさ。何も問題ないと思うけど」
 あれから毎日かかさず日記はつけてるし、シロにもちゃんと沢山食べさせている。約束事をちゃんと守っているなら、後は私の自由。あんまり口出ししないで欲しい。
「いやまぁ、それは そうなんだけどさ。別にあの子の力を使うだけならリスクがあるわけでなし、好きにやってくれていいとは思うんだけど」
 でも、とカミサマは帽子を回すのをやめ、片手で持ち直しながら言った。
「ちょっとばかり勘違いしてやしないかなと思ってね」
「勘違い?」
「そ。あの子の力が何を原動力にしているかは、貴女もよぉく分かってるよね?」
「私の恨みと食べ物でしょ?」
「半分正解かな。貴方の恨みは当然として、あの子は自分が喰らう蛙達の恨みも自らの力に変えている。大喰らいになったのは、自分の力を維持するのに沢山の恨みが必要になっているということなの」
「そう。だから冷凍マウスは食べたがらないのね」
「そうだね。その鼠はもう別の者によって殺された後の抜け殻で、恨みはそっちに向いているから」
「ふーん……それで、私の勘違いっていうのは?」
「祟り神っていうのはね、本来特定の恨みを晴らしてくれるようなものではないんだ。むしろ無差別に人を恐怖に陥れて、怯えを得る妖怪に近い存在なの」
「……?」
 話が見えてこない。そんなカミサマの定義と、私の勘違いとやらがどう繋がると言うんだろう。とはいえ邪魔をしても仕方無いので、無言で促しておくことにした。
「でもそのままだと本当に妖怪と変わらないよね? そこで登場するのが信仰だ。信じて敬うかわりに暴れないでくださいってお願いするの。その信仰によって濾過されて初めて、祟り神は神徳――カミサマとしての力を持てるようになる。人間が不利になるようなことを〝何もしない〟ことで、人間へ恩恵を〝与える〟というわけだね。例えば流行り病の神様を信仰して鎮めることで、無病息災のご利益を受ける、って感じでね」
 けれど、あの子――つまりはシロのこと――はそうじゃないとカミサマは続ける。
「あの子の場合、貴方達の剥き出しの恨みを貴方以外の誰かにそのままぶつけることしかできない。結果的に貴方の願いを叶えてはいるんだけどね。でも前に言ったよね? そんなのは三下の仕事だって。要するに、あの子の力は単なる呪いの域を出ていないってこと。それじゃいつまでも一人前の祟り神には遠い」
「それで?」
 黙って聞いていれば、好き勝手言ってくれる。つまりカミサマは、シロの力が大したものじゃないとほざいているのだ。幾らカミサマでも、私やシロを馬鹿にするのは許せない。
「嫌なやつを思い通りに殺せるならそれで充分じゃない。他に何か必要?」
「……ま、そう思うなら好きにすればいいけどね。ただ、一つだけ忠告しておこう。いいかい。恨みは祟りを絆し、祟りは人を絆し、人は恨みを絆す。〝人間〟が何かを〝祟る〟なら、この三つの繋がりは絶対のものなんだ」
「……?」
「つまりさ、祟りや呪いが起きたという事実は、例え無関係だろうと人間を惹き付ける。そしてその人間は祟りを畏れ恨み、その念が別の祟りや呪いを産みだすの。別に復讐は復讐を生むだけだからやめなさい、みたいな道徳のお話をするつもりはないんだけど。祟りが人の起こすものである内は、人はこの絆と読んでもいい繋がりからは絶対に逃れられないことは教えておかないといけないと思ってね。それを理解した上で頼り続けるというなら、いつか手痛いしっぺ返しを受ける覚悟をしておかないといけないよ?」
 カミサマは薄く笑ってそう言った。そこでふと、靴箱に挟まれていたメモのことを思い出す。

『貴女の秘密を知っています』

 まさか、その相手が私と同じように、祟りや呪いで人を殺す術を知っているとしたら……?
 ふっとそんなことを考えると、ゾッとしてしまった。
「思い当たる節があるみたいだね。ともかくだ。せいぜい過信しすぎないことだよ。貴女も〝絆されて〟いるんだから」
 そうして、カミサマはいつものように消えてしまった。後に残された私は、ポケットにねじ込んだままだったメモ書きを広げて確かめる。明日の放課後、屋上で待つ……。
 なんにせよ。本当にこの秘密を知っているかどうか、会って確かめないといけない。それに、目的も聞き出さないと。でももし、相手が問答無用で私を殺すつもりだったら……? 色んな考えがぐるぐると頭を回って纏まらない。
 ……そうだ。シロを学校に連れていこう。何をするつもりか知らないけど、何かされる前に始末してしまえばいい。簡単なことじゃないか。相手がどんなことを知っていようが、それで終わりだ。
 どの道、真実は隠さなくちゃいけない。だから、私を探るものは誰であろうと殺す。それでいいんだ。そう決めると、下らないことで神経を削られたことにだんだん腹が立ってきた。
「私を脅そうったって、そうはいかないんだから」
 腹立ち紛れに握り潰したビニール袋から、まだ中に残っていたらしい蛙の潰れる音が聞こえた。


◆◆◆


「来てくれたんだね」
「貴方は誰? 私の秘密ってなんのことかしら?」
 次の日の放課後。屋上に着いた私を待っていたのは知らない女の子だった。制服はうちの学校のものを着てるから、多分違うクラスの人なんだろう。黒髪を特徴のないショートカットにした、いかにも優等生って感じの真面目そうな子。ただ、少しだけ不思議な雰囲気を纏っているのが気になった。
「あぁそっか、直接会うのは初めてだもんね。ごめんなさい。私は3年D組のR子って言うの」
「へぇ。直接会うのは初めてってことは、最近私のことを見てたのは貴方だったってわけか。ストーカーごっこは楽しかった?」
「ストーカーごっこって……そんなつもりじゃなかったんだけど……その、ごめんなさい」
「で、何でそんなことをしてたの?」
 謝るR子に聞きながら、周りを確かめる。所々に〝工事中 キケン!〟と書かれた紙がフェンスに貼られてる以外には特に何もない。少なくとも人間の仲間はいなさそうだ。人じゃないものはわからないけど。
「その……信じてもらえないかもしれないけど、私、〝見える〟んだ。幽霊とか、そう言うのが」
「はぁ? 何言ってるの、そんなのいるわけ無いじゃん」
 カツンカツンと足踏み二回。合図をするとすぐにシロが来てくれた。これで大丈夫、いつでも殺せる。
「いるんだよ。貴方には見えなくても、確かに。ううん、本当は貴方も見たことあるんじゃないの?」
「あるわけ無いじゃん。今時超能力者気取りなんて恥ずかしいからやめときなよ」
「……本気で言ってる?」
「当たり前でしょ」
「じゃあ、一つ当ててあげよっか。貴方、白い蛇に何か心当たりはないかな
?」
「!」
「その様子だと、やっぱりあるんだね」
 シロのことを知っている? シロは私のお願いを聞くとき以外は家から離れないのに、どうして? まさか本当に何か見えているのだろうか。
 いつでも逃げられるように、そして絶対に逃がさないように、私は入ってきたドアの前に陣取る。でも、まだ殺さない。ここにいなくても、校舎に仲間がいるかも知れないからね。虐められていたときはいつだってそうだった。相手が一人だと思って校舎に逃げこんだら中で仲間が待ち伏せしてて捕まえられて、後は……なんてことばかりだったもの。こんなところで嫌な経験が役立つなんて腹が立つけど、まだ聞きたいことがあるし我慢だ。
「……へぇ。本当にそういうのが見える人っているもんなのね。それで、どうしたいの? 貴方がオカルトマニアで、本物が見つかって嬉しいとかそういんじゃないんでしょう?」
「貴方を助けたかったの」
「助けるだって?」
「最近、貴方のクラスだった人達が次から次に人が行方不明になったり、死んだりしているしょう? 昨日の夜に行方不明になった私のクラスの男の子二人も、元B組だったわ」
「あぁ、……そうだったわね」
「さっきも言ったけど、私、見えるんだ。その日死ぬ子には、決まって白い蛇が取り憑いているの。それで、その蛇は今貴方に憑いてる。だからこのままだと、次は貴方が殺されてしまう。その蛇は危険なのよ」
 コイツハ、ナニヲイッテイルンダ?
 私がけしかける前からシロが憑いてる? それに今度は私に憑いてるだって? そんな馬鹿な話があるわけない。今日はともかく、普段は夜に私がけしかけるまでシロはずっといるんだよ?
 ……あぁ、そうか。こいつの言ってることは出任せだ。シロのことも、当てずっぽうが偶々当たった過ぎない。そうだよね、バレるわけがないんだ。おおかた、最近B組連中が沢山死ぬから、オカルトだなんだとでっち上げて同じB組の私をカモにしようとしてるんだろう。それなら、本物で遊んであげようじゃないの。
「う、嘘でしょ……どうしたらいいの?」
「私の家の神社に来て。お祓いしてもらえるように私から頼んであげるから」
「それで死なずに済むの?」
「わからないけど……きっと大丈夫よ」
「良かった……このこと、他に知ってる人はいるの?」
「ううん、誰にも話してないよ。誰も信じてくれないもの」
「そっか……」
 ちょっと怯えるフリをしたら、すぐに尻尾を出した。お祓いとか言って、小遣いを巻き上げるつもりなんだ。怯える演技はとても上手くいった。これまでずっと怯えてきたもの、それくらいは簡単だ。
「じゃあ、これから私の家に行きましょう。早い方がいいと思うし……」
「わかった」
 すっかり信じ込んだフリをして、ドアを開けるために背中を向ける。その時だった。R子のやつが、後ろから掴みかかってきたんだ。
「やっぱりデタラメだったのね……嘘つき!」
「嘘つきはどっちよ! 本当は、貴方がその蛇を使ってみんなを殺したんでしょう!」
「なッ……」
「バレバレの芝居なんかしちゃってさ、あんなので騙せてるつもりだったの? 私があんたをずっと見てたのは知ってたんでしょ? 他の人は蛇が憑いたその日に死ぬのに、ずっと憑いてるあんただけはいつまで経っても死なないなんて、おかしいと思わないわけないじゃない!」
 腕で首を絞められて、フェンスに押し付けられる。蛇がずっと取り憑いている、という言葉の意味はわからないけど、こいつは全部分かってるんだ。で、私を殺す為にわざわざこんなところに呼び出したと。騙してるつもりが、騙されてたのはこっちだったってわけね。
「あんた虐められてたんだってね。殺したのはその復讐? それなら、なんでMまで殺したの。あの子は関係なかったのに……!」
 ぐいぐいとフェンスに押し付けられたものだから、金網が食い込んで痛んだ。老朽化したフェンスはみしみしと悲鳴をあげる。こいつ、ここから私を突き落とすつもりなんだ。
「殺人鬼、あんたも死んじゃえ!」
 フェンスのあげる悲鳴が酷くなった。……死ぬのは、お前の方だ。
「シロ」
 隠れていたシロをけしかけて、私を掴んでいる手を噛ませる。R子がギャッと叫んで力を緩めた腕を振りほどいて、私は逆にR子をフェンスに押し付けた。
「そうだね、殺したよ。だってMは余計なことをしたんだもの」
「なにを……」
「あの子、私のことを嗅ぎ回ってたの。もしバラされたら、私の復讐が台無しになるじゃない」
「そんな馬鹿なことでMを殺したって言うの!? 何が復讐よ、そんなくだらないことなんかしないで、あんたが自殺でもして死んじゃえばよかったんだ!」
 R子は私を押し退けようと腕を掴んできて、そんなことをほざいた。私が死ねばよかった? どうして何も悪くない私が死ななきゃいけないの? 死ぬべきなのは、あいつらの方じゃない。悪いものには罰を与える。このバカはそんなことも分からないの?
 ……まぁ、なんでもいい。どのみちこいつはおしまいだ。
「シーロー。こいつ、殺しちゃってよ」
「このっ……!」
「っ!」
 迫ってくるシロから逃げるようにR子がばたつかせた脚が当たって、私は手を離してしまった。でも、もう遅い。シロはもう目の前だ。逃げられるものか。
 けれど、R子が私の予想外の行動に出た。私の襟を掴んで、自分ごとフェンスに体当たりをしかけたのだ。私は慌てて突きはなそうとして――


 バキリ。


 フェンスが壊れて、私達は空中に投げ出される。その一瞬、私達は何からも浮いていた。無重力っていうのはこんな感じなんだろうか、なんて場違いなことを私は考えていた。
 それからすぐに重力に捕まって、私達はまっ逆さまに落ちていく。その瞬間、R子と目があった。R子は怒りとも悔しさともつかないような目で私を睨みつけてきたかと思うと、ふっと表情を消してなにごとかを呟いた。声は耳に入ってこなかったけど、 スローモーションのようにゆっくりと動く唇から、何を言っているのか分かったような気がした。



 オ・マ・エ・モ・イ・ズ・レ。



 ぐしゃりという音がして、意識がぶっつりと切れてしまう直前。
 ――ぎぃ、と。カミサマがたまに見せるような不気味な笑顔を浮かべる、R子を見た気がした。

◆◆◆

 目が覚めると、私は白いベッドで寝ていて、周りには両親と白衣を来たお医者さんがいた。話を聞くと、どうやら私は屋上から落ちたにも関わらず、奇跡的に軽傷ですんだのだそうだ。一応検査をすると言うことで入院しなくてはいけないらしいけど、すぐに退院できるだろうと言われた。
 R子はどうなったのだろうと思ったけど、お医者さんも両親も何も言わなかった。私を気遣ってくれているつもりなのだろうか。生きていられたら、困るのだけど。
 お医者さんが席を外して、部屋には私と両親だけになった。けれど、両親は大して心配はしてるそぶりも見せなくて、どうしてそんなことになったかなどは聞いてこなかった。 ただ一言、自分達は忙しいのだからあまり迷惑をかけるなと言って出ていってしまった。
 まぁ、そんなもんだよね。この二人に人間味なんか始めから期待していない。私が怪我をして帰ってこようが物を壊されて帰ってこようが気にもとめないような冷血動物だもの。私に対して成績票の数字と世間体を悪くしないことだけを求める、どうしようもないやつら。
 窓を見ると、外はもう真っ暗だった。そりゃそうか、屋上から落ちたのはもう夕方だったもんね。
 ……それにしても、暇だ。あれからシロはどうしてるんだろう。R子はちゃんと死んでるんだろうか?

「失礼します。はい、ご飯ですよー」
 看護師のおばさんがご飯を持ってきてくれた。色の薄い、見るからにまずそうな病院食。まぁ、一応怪我人だからしょうがないのかな。
「どうも。……あの、私と一緒にR子って子も運ばれてますよね? その子、どうなってますか?」
 受けとるついでに、聞いてみる。でも、おばさんはキョトンとした顔になって言った。
「R子さん? そんな子は今日は運ばれてきてないけど」
「えっ……?」
「だって、屋上から落ちたのは貴方一人だけでしょう? 救急車に乗せられてきたのも貴方だけだったし」
「そ、そうなんですか」
「もしかして、その子に突き落とされたの?」
「あ、いえ、そんなんじゃなくて。さっき目が覚めたばかりだから、ちょっと混乱してるのかも」
「そう。ならいいんだけど……何かあったら遠慮なく呼んでくれていいからね」
「はい、どうも」
 なんとかごまかして、看護師さんが出ていったのを確かめてから一息つく。R子は運ばれていない。それなら、R子は一体何処に行ったっていうの? あいつも生きていて、どこかに隠れているの?
 もしもそうなら、私は終わりだ。どうすればいいの……?
「やぁ。探したよ。どう、私の言ってたことは間違ってなかったでしょう? 流石に昨日の今日で当たるとは思わなかったけどさ」
 声の方を向くと、いつのまに入ったのかカミサマが窓際に座っていた。予想が当たったのがそんなに嬉しいのか、にこにこと笑っている。
「何しにきたの」
「お見舞い以外に見えるかい?」
「からかいに来たように見える」
「ありゃまあ。そう邪険にしないでよ。いつもの時間に家に居なかったからもんだから探したんだよ? ま、この子を見つけたからそう苦労はしなかったけどね」
 すると、カミサマは帽子から何かを取り出してベッドに置いた。とぐろを巻いているそれは勿論、
「シロ……!」
「道端でこの子を見つけてねぇ。あなたとこの子は絆されているから、後はすぐだったよ」
 シロの頭を撫でると、チロチロと指を舐めてくる。元気な様子で何よりだった。
「ま、今回のことで少しは懲りたでしょ? 今後はやり過ぎないようにね」
 でも、カミサマは容赦なく水を差してくる。……正直、鬱陶しい。
「それくらい、言われなくても」
「わかってる、って言いたいの? 本当にそうかな? 前も分かってる、大丈夫だって言ってたのに、結果がこのザマじゃあねぇ」
「それは……」
「そうそう、次は本当に無いと思っておいた方がいいよ。翡翠、無くなってるでしょう?」
 言われて手首を確かめると、ブレスレットの翡翠が消えていた。それも、千切れたのではなく、溶けて消えてしまったかのように無くなっている。
「嘘……」
「道連れ覚悟で殺しに来るほどの恨みだったんだ、その程度で済んだだけでもありがたいと思いなよ」
「……見てたの?」
「まさか。その子から聞いたんだよ。ちなみに、R子だっけ? それの行方はその子も知らないってさ」
 シロも見ていないの? じゃあ、R子は本当に何処に……?
「もしかしたら、その子も何か呪術を使っているのかもしれないね。どこかに隠れて、隙を見て襲い掛かってくるかもよ。それこそ、さっきのように。せいぜい怪しい視線なんかには気を付けることだね」
「どうにかならないの?」
「知らない。私には関係無いもの」
 カミサマは素っ気なく言って帽子から蛙を取りだして、シロに放り投げる。するとシロはジャンプでボールを咥える犬みたいに首を伸ばして蛙を丸呑みにしてしまった。
「でもそうだね、一つ喩え話をしてあげよう」
 今度は帽子から生きた蛇を一匹取り出して、カミサマは言った。
「蛇に睨まれた蛙、なんて言葉があるよね。あの場合、蛇は絶対的な恐ろしい強者で、蛙はそれに怯える敗者となるわけだ。こんな風にね」
 カミサマがその蛇の近くに蛙を置くと、蛇は睨み付けて動けなくした蛙をすぐさま呑み込んでしまった。
「でも、本当に蛇は蛙に対して絶対的な強者になり得るかといえば、それは違うんだよ。例えば、こんな場合でも、蛇は蛙に対して強者であれるかな?」
 今度は、帽子から赤ちゃんの頭ほどもありそうな程に大きな蛙を取り出す。それを見た瞬間、蛇は怯えたように後退りしかけて、標本にでもされたみたいに動きを止めた。巨大蛙に睨まれて、動けなくなってしまったのだ。巨大蛙は伸ばした舌で蛇を絡めとり、蛇を呑んでしまった。口に入りきらずにはみ出した蛇の尾がじたばたと動くのが、私の目にありありと映された。
「結果は見ての通りだ。これは極端な例だけれど、蛇が蛙に対して常に絶対的優位を保てる訳ではないのは分かったね? 貴方も同じこと。自分が蛇だからといつまでも慢心していると、いずれ何か大きな物に呑まれてしまうのさ」
 それがいやなら、と指を突きつけられる。
「今すぐその子の力を使うのをやめて慎ましく生きるか、その子をチンケな呪いのままで留めずに、ちゃんとしたカミサマにしてしまうかの二択だ。カミサマにさえなれば、前者なら、今日以上の呪いが降りかかることはないでしょう。後者なら、その子は恨みと祟りと人の繋がりから外れられるから、貴女はその子の加護を受けられる。……まぁ、どちらにせよ。貴女はR子とやらの影に怯え続けることになるだろうけどね。それはこれまでのオイタが過ぎた代償として受け入れな」
 べらべらべらべら、さっきから勝手なことばかり。この程度で済んだことに感謝しろ? 怯え続けろ? オイタが過ぎた? ……元はといえば、誰のせいでこうなったと思っているの?
「……じゃない」
「んー?」
「元々はあんたのせいじゃない! あんたが現れなかったら、こんなことにはならなかったのに!」
 そうだ、こいつのせいで全部狂ったんだ。こいつが余計なことをしなければ、こんな目に遭わなくて済んだのに。たった後一年、虐めに耐え抜くだけで済んだのに。こいつのせいで、全部滅茶苦茶だ。
 でも。こいつはいつものように寒気のするような歪んだ笑顔で、私を嗤った。
「そろそろそう言う頃だろうと思ってたよ。愚か者っていうのは決まってそうだからね。与えられたものを自らの力と錯覚しては驕り、取り返しが付かなくなるとそれを与えた相手を逆恨みする。自分の思慮が足りなかったことを決して認めず、誰かのせいにせずにはいられない。それで、そういうやつは決まって最初から与えるもののことを敬いもしなければ信じもしないのさ」
 その子供じみた姿からは予想もつかないくらい禍々しい笑みを浮かべたまま、カミサマ――いや、サナエは私を嘲笑い続ける。シロは怯えた様子で縮こまっていた。
「始めから、オマエは私のことなんて信じちゃいなかったろう? 分かっていたよ。どう転ぶのか見物だったから黙っていたけど。ま、結果は面白味も無い物だったけどねぇ。後は落ちていくだけだろうから、せいぜい足掻くことだね」
 嗤うだけ嗤ったあと、そいつは姿を消そうとする。こいつはいつもそうだ。自分でも祟りや呪いを扱いながら、自分が被害に遭うこともなく、腹立たしい程に超然として――

 ……そうか。

 簡単なことじゃないか。

 逃げなくてもいいように、私が〝サナエ〟になってしまえばいいんだ。


「――!?」
 窓の方を向いていたサナエに飛びかかって、抑えつける。サナエが初めて、驚きの声をあげた。
「シロッ! こいつを殺して! シロッ!!」
 硬直していたシロを叱咤する。我に返ったようにシロが飛び掛かり、サナエの喉笛に咬み付いた。そこから弾けるように噴き出した赤いものが、私の顔を濡らす。シロの噛んだ痕に指を突っ込んで喉を無理矢理裂いてやると、サナエは更に血を吹き出して何度か痙攣したあと、動かなくなった。
「……いつまでも自分が強者であると思い上がるな。あんた、自分でそう言ったよね? あんただってそうだ。自分は大丈夫だって高を括って、調子に乗ってるからそうなるんだ」
 サナエは何も答えない。驚愕の表情を張り付けたまま、既に事切れていた。なら後は、食べるだけ。でも、いくら小柄とは言え、食べるには大きすぎる。
 ……そうだ。
「シロ。こいつを食べて」
 私の言葉に素直に従って、シロはサナエの死体を呑み込み始めた。カミサマの力を手に入れた影響なのだろうか。シロはこれまで人間を何人食べても、ちっとも大きくはならなかった。だから多分、今回も。




「やっぱり」
 数分ほどで、シロはサナエを呑み込み終わった。思った通り、体の大きさはは変わっていない。これなら、大丈夫。私はシロの頭を撫でて、そっと囁く。
「……ねぇシロ、私のやろうとしてること、分かってくれるよね?」
 その言葉に応えるように、シロは動かない。やっぱり、この子は誰よりも私のことを理解してくれている子。
「ありがとう、シロ」
 大丈夫、ずっと一緒になるだけだ。シロが居なくなる訳じゃないんだ。
 そう心の中で言い訳をして、私は石のように大人しいままのシロを抱き締めて、口を開けた。

◆◆◆


 ○月△日

 きょうもたくさんのひとを祟りました。
 わたしをずっと虐めていたやつら。
 わたしのひみつを知ろうとするやつら。
 わたしのいのちを狙うあいつににた髪型のやつら。
 たくさんたくさん祟りました。だれひとり逃がしたりなんかしません。
 それでも、ときどき感じるのです。だれかにみられているかのような、あの視線を。あいつににた髪のおんなをなんにん殺しても、その視線は消えてくれませんでした。
 それはずっとわたしを見ているのです。
 それはずっとわたしを睨んでいるのです。
 それはずっとわたしを呪っているのです。
 けれど、なにも怖くありません。
 だって、わたしは〝サナエさん〟なのですから。
 そしてわたしはきょうもたくさんへびとかえるを食べました。
 もっとちからをつけて、ほんもののあいつを殺してしまわないと。


◆◆◆


 あれから、二週間。
 最近、学校でシロをよく見かける。正確にはシロによく似た、真っ白なアルビノのアオダイショウ。だってシロはもう、私と一緒に〝サナエ〟になったのだから。もうどこにも居ないはずだ。
 白蛇はずっと私を見ている。教室で、階段で、廊下で、校庭で、じっと私のことを見つめている。けれど私が近づくと、蛇はすぐに姿を消してしまう。そして蛇のいた場所には決まって、黒い髪の毛が落ちているのだ。
 勿論、それとは別の視線もずっと感じたままだ。何処かにいる誰か――恐らくは、R子の――視線。あいつと同じ髪型の子を見つける度に、わたしはそれを殺して回った。みんなR子に見えてしまうのだ。けれど、未だに本物は殺せていない。
 そして今日も、R子によく似た女を見つけた。ショートカットにした黒髪の、不思議な雰囲気の女の子。何から何まで、R子に似ていた。
 放課後になって、私はそいつの後をつけた。見逃さないように、けれど気が付かれないようにゆっくりと、確実に。
 幸い女の帰り道は私と同じだったから、慣れない道に戸惑うことはなかった。女はどんどんと歩いていき、やがて私がいつも蛙や蛇を捕まえる川にかかっている橋の前で、一度立ち止まって。

 突然、姿を消してしまった。

 慌てて辺りを見回すと、女は既に川原に降りていた。
 あり得ない。
 橋の前から川原に行くには、三十段くらいある護岸の階段を降りないといけないのだから、あんな一瞬で行けるわけがない。だけど現に、黒髪は川原を歩いている。
 間違いない。
 あいつが、本物のR子なんだ。
 私も川原まで駆け降りて、R子を追う。R子は川上の方へとどんどん歩いていく。砂利とコンクリートしかない灰色の道を、ずっと歩いていく。
 逃がさない、絶対に。

 気がつけば、R子と私は山を登っていた。川を辿っているのだから当たり前ではあるけど、一体R子は何処に向かっているのだろう?
 もしかしたら、また私を嵌めようとしているのかもしれない。R子は強かなやつだ。本当は私が後を付けていることに気が付いていて、油断したところを狙っているのかもしれない。
 でももしそうだったとして、人間でしかないR子に何が出来る? だって私はもう、〝サナエ〟なんだよ?

 そんなことを考えながら追いかけていると、またR子が姿を消した。目は離していなかったから、本当に消えたとしか言いようがなかった。
 また近くに移動しているのかと辺りを見ても、何処にもいない。

 視線を感じて、前を見る。少し離れた岩の上に、あの白蛇がいた。白蛇はこっちだ、とでも言いたげに首を振って、先に行ってしまった。
 この先に、R子がいる?
 私は白蛇に従って、また川を登った。


◆◆◆


 私がそこに辿り着いたころには、もう日が沈みかけていた。
 そこは大きな湖だった。ダム湖のようにコンクリートで周りが固められていない、翡翠の様な色をした天然の湖。雑草だらけのその畔に、あの白蛇はいた。じっと、私を見つめている。
「R子は何処にいるの? あなた、知ってるんでしょ?」
 背の高い雑草を掻き分けて、私は白蛇に近付いた。蛇はいつもと違って逃げることなく、 私を見ていた。
「答えてよ、だから私を呼んだんでしょ?」
 白蛇は何も答えなかった。ただ、そのルビーのように真っ赤な瞳は私を見ずに、私の後ろをじっと見つめていた。
「何を見て……」

 ――ざりり。

 蛇の赤い瞳に、小さな人影が映る。それと同時に、映っていた雑草が音も立てずに枯れ果ててしまった。


 この人影は、まさか。

「やぁ」

 振り返る。金色の髪が、目玉のついた帽子が、幼児の様な小柄な体躯が、私の目に突き刺さる。
 嘘だ。そんな筈はない。お前はあのとき、確かに……!
「元気そうだね。確か、今は〝サナエ〟って名乗ってるんだっけ?」
 そいつはいつものように帽子をくるくると回しながら、にっこりと嗤って。私は金縛りにあったかのように、動けなくなった。
「なんで、生きて」
「なんでだって? あはは、バカだなぁ。本当にあの程度でこの私が、本物のカミサマが死ぬと思ったの?」
「でも、シロがあんたの死体を食べて」
「肉体なんてものに縛られるのは生き物だけだ。たかが仮初の体の一つや二つ、どうされようがなんともないよ。まぁでも? そのあとにあの子を食べたのは、流石に驚いちゃったけどね。面白い見世物だったよ、蛇の踊り食いなんてさ」
 けたけたと嗤って、そいつは一歩一歩、ゆっくりと私に近付いてくる。
「いやはや出来の悪い猿真似ばかりかと思いきや、意外や意外。土壇場であんな真似をしてみせるなんてね。大した度胸だよ。……でーもー。ちょーっと考えが浅かったかなぁ。それじゃ、どこで間違えたのか答えあわせをしようか。〝サナエ〟さん?」
 一歩一歩、動けなくなった獲物を見るような視線を向けて、そいつは私を見ていた。寒気が、私を襲う。
「こ、来ないで!」
「まぁそう言いなさんな。ただの答えあわせなんだから。それに散々私の言葉を無視して失敗してきたんだ、最後くらい聞いてみなよ」
「来ないで……来ないでよ……」
 そいつが通りすぎた後の雑草が、爛れたように腐り落ちて、辺りに血のような臭いが立ち込め始めた。私は動けない体でやっと顔を背けて、カミを拒絶する。でも、カミは歩みを止めなかった。
「『カミサマは心の底から信じ敬う人間を裏切らない』。覚えてるかな? シロを引き取る時に言ったんだけど。これは言葉通りの意味なんだけど、それじゃあ信じていない場合はどうなるか?」
 ついにそいつは私の眼前に来て、「顔を上げな」と言った。体が勝手に動いて、私は顔を上げる。私を見下ろして嗤うカミの笑顔が目に入った。醜悪な笑顔だった。幼い子供にしか見えないあどけない顔に、悪意をありったけ塗り込めたような、歪でおぞましい笑顔。辺りに漂う血のような臭いは、もう噎せ返りそうなくらいに濃くなっていた。
「どうして動けないのか分からないって顔だね。そう焦りなさんな、後でちゃんと教えてあげるから。それよりさっきの続きだ。答えは簡単だよね? その逆だ。カミは人を欺き、陥れる。だから信じないお前に対して、私は二つだけ嘘をついたんだ」
「嘘を、二つ」
「そう。『シロに私の力を分け与える』それが一つ目の嘘」
「え……?」
「お前に渡したあの蛇は、預かったシロじゃなかったのさ。その様子だと、気がつくどころか疑いさえしていなかったようだけどね」
 じゃあ、本物のシロは何処にいる? どうして、あの蛇は私に食べられることを受け入れたんだ?
「あの蛇はシロから吸い出した、お前の悪意に形を持たせたもの。初めから実体なんて存在しちゃいない。そして、お前の悪意なのだから、当然常にお前に憑いている。R子とやらに見られたのもそのせいさ」
「じゃあ、本物のシロは」
「そこの蛇だよ。そっくりなんじゃない。正真正銘、お前から引き取ったシロさ」
 私をここまでつれてきた蛇が、シロ? シロは、私を売ったって言うの?
「ま、中身はもう私の眷属だがね。お前がシロと自分の悪意の違いに気が付かなった時点で、お前達の絆は切れていたのさ。そうそう、もう一つの嘘だったね。『R子の事を見ていない』。それがもう一つ。あれはあの日にちゃんと死んでいたんだよ。お前があの子の視線をずうっと感じ続けていたのは、あの子の持つお前への怨念が最も強く、そしてお前が最も怖れた人間だったから。さっきお前が追いかけていたのは、その呪いが具現となったものなのさ」
 カミの声が、頭にうまく入ってこない。私の頭に、新しい疑問が浮かんでいた。
 あのとき既にR子が死んでいたなら、私をずっと見ているのは一体だれ?
 そして、私が食べたあの蛇――悪意に実体はないと、カミは言った。なら、私の悪意がこれまで〝喰い殺してきた〟ものは、一体――
「つまり、お前は最初から間違えていたのさ。……さて。答えあわせも終わったことだし、そろそろ行こうか」
 そう言って、カミは私に背を向けた。……今しかない。例え死なないにしても、この隙を狙って倒せば、ひとまずは逃げられる。なんとしてでも逃げないといけない。このままだと、間違いなく殺されてしまう……!


「動くな」


 けれど、飛びかかろうとした瞬間。足が引き攣ったみたいに動かなくなって、私は無様に地面を転がった。
「二度も三度も同じ手が通用するわけないでしょ。遊んでないでちゃんとついてきなよ」
 カミの声に、体が勝手に反応する。私の足は処刑台に引きずられる罪人みたいに、カミの後をついていく。一足ごとに腐り落ちていく雑草達の隙間から、夜の闇でコールタールのような黒へと変色した湖が覗いていた。横にいたはずのシロは、いつのまにかカミの帽子に巻き付いている。私のことなど、見向きもせずに。
「あぁ、そう言えば。なんでそんなことになっているのか言ってなかった。私が祟り神なのはもう知ってるよね?」
 カミは振り返らないままそう言った。勿論、返事なんかできるはずもない。
「じゃあ祟り神とは何か? 『祟り、呪いと恨みと人はそれぞれ互いに絆されている』。前にそう教えたね。祟り神とはそれら全てを絆すものだ。恨みを束ねて祟りや呪いと変え、それらを操り人を統べる。つまり私はあらゆる祟り、あらゆる呪いの支配者なのさ。そんなものに、たった一人の人間の悪意ごときが逆らえるわけがないでしょう? 私を殺せなかったのも同じこと。一本の燐寸で太陽を焼き尽くせるかい? 一滴の朝露で海を溺れさせられるかい? 一握りの砂利で砂漠を押し潰せるかい? 無理だよね。子供でも分かることだ」
 そう言って、カミはまたけらけらと嗤った。
「自らの悪意を糧にするのは確かに面白い見世物だった。でも、それだけ。結果を見れば、墓穴を掘っただけだったね。そんなことをしなければ、もう少しちゃんと逃げられたろうにねぇ……ほら、ついたよ」
 気が付けば、私は湖の水面に立っていた。カミが、また嗤う。その笑顔は、これ迄にないほどに恐ろしいものだった。
「ほら、下を見て。もうみんな待っているよ」
「みん、な?」
 下を向かされて、私は見てしまった。そして、さっき浮かんだ疑問の答えを、知ってしまった。


 湖の底から、無数の眼が私を見ていた。
 湖の底から、無数の声が私を呪っていた。
 湖の底から、無数の口が私に向けて開かれていた。
 私が呪い、私が祟り、私の悪意が喰い殺してきた無数の怨念が、そこにいた。

 ひっ、と私の喉から悲鳴が漏れる。

「なァに、そう怖がることはない。何も殺そうって訳じゃないんだから。それどころか、貴女が成りたかったものにしてあげるんだよ」
「な、に、」
「カミサマ。私を殺して、その上偽者とは言え無二の親友を喰らってまで成りたかったんでしょう? だから、叶えてあげる。貴方を本物の〝サナエさん〟にしてあげる」
 それから、カミは帽子についていたシロを引き剥がして、片手で月の無い夜空に掲げた。

「神事には贄が必要だ。この子の命を以て贄としよう」
 途端、触れてもいないはずのシロの首が、捻じ切られたようにぼとりと落ちる。頭の無いシロだったものは水面に投げ捨てられて、コールタール色の水に血が撒き散らされた。



 それが、呼び水となったかのように。


 水底の何かが、迫りくる。



 迫りくる。迫りくる。無数の眼が、一様に私を睨み付けて。

 迫りくる。迫りくる。無数の声が、私を呼んで。

 迫りくる。迫りくる。余りにも、無数の。

 蛇と蛙が。
 蛇と蛙が。
 蛇と蛙が。

 湖を埋め尽くすかのように、一面に。






 ――ぎぃ、と。祟り神は、嗤って。
























































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ミ ツ ケ タ
 ニ ガ サ ナ イ











 おめでとう! あの子の秘密に辿り着けたのは、あなたが初めてだよ。いやぁ、まさかここまで秘密を暴くなんてね。あの子も驚いてるんじゃないかな?
 え、私は誰かって? ここまで知ってるならわかるでしょ? カミサマだよ。
 まぁそれはいいとしてさ。折角だから何かご褒美が欲しいよね? 何か願い事でも――いらない? そりゃそうか。じゃあ、どうしたいの?
 聞きたいことがある? いいよ、なんでも聞きな。


 ……どうして私があんなことをしたか、か。なぁに、大した理由じゃない。ちょっとした親心みたいなものだよ。
 私が一人の女の子と暮らしているのは知っているね? 正確にはもう一人一緒に暮らしてるカミもいるんだけど。
 その子もね、半分カミサマで、半分人間なんだ。つまり信仰なんてなくても人間として生きられるし、なんの不自由もなくこっちで暮らせていた訳なんだけど。でも、私達はそうはいかない。カミサマってのは信仰によってこの世界との絆を結んでいるんだ。だから一切の信仰が無くなれば、私達は存在することができない。簡単に言えば死ぬんだよ。その方法でしか人間に私達は殺せないし、逆に言えば人間はそれだけで私達を殺せるんだ。
 ……話が逸れたね。そんなわけだから、私達は信仰がまだ息づいている場所、つまりは『夢の国』に移住したわけ。そこに、あの子もついてきたんだよ。
 あの子は健気でね、向こうに移ってからずっと、私達の信仰について考えてくれている。それが不憫でね。こっちにいればそんなことを考えずに、幸せに暮らしていられただろうに。勿論、今でもそれなりには楽しんでいるようだけどね、それでもやっぱりここと向こうでは訳が違う。あの子までこっちと縁を切ることは無かったんじゃないかと思えてね。
 だから、私はあの子とこっち側にもう一度絆を作ることにしたんだ。無論本人には教えちゃいないがね。私の独りよがりさ。
 でも、肉体的な絆を作ることは不可能だし、ただの信仰で結ぶことも出来ないのは私達の存在が既に証明している。
 そこで目をつけたのが、都市伝説だ。このやり方は実に私向けだったし、便利なものだったよ。人の噂、書物、世界中に網を張った電気信号……あらゆるものを媒介として流行り病の如くに拡がる祟りや呪い。下手な神話なんぞより余程多くの人間に知られているものだ。不思議なものだよね。人間は自分に幸をもたらすものよりも、自分を陥れるものの方に魅入られがちなんだ。
 後の事は知っての通り。あなたの知る〝サナエさん〟の出来上がりだ。
 ……こんなところか。まだ質問はある?
 他にやり方が無かったかだって?
 ないよ。私は祟り神だ。祟り以外のやり方なんぞ考える気もない。
 さて、もう終わりかな。そろそろ時間も来たようだしね。
 何がって? 決まっているでしょう。あなたはこれまで何を見てきたの?
 虐めっ子は皆死んだ。己を呪うものもいなくなった。そんなあの子が何を狙うか、もう言わなくてもわかるよね?
 そう。
 ここまでの全てを知ってしまった、あなた。

 人は恨みを絆す。
 恨みは祟りを絆す。
 そして祟りは人を絆す。

 つまりお前はこのお話を知ってしまった時点で、とうにあの子に絆されていたんだ。

 ……何を慌てているのさ。逃げる?

 やめておきなよ。もう手遅れなんだから。



 だって、ほら。





サ ナ エ さ ん が オ マ エ の 後 ろ に
Rispected
凋叶棕 様『騙』より 『サナエさん』
 同 『辿/誘』より 『神様たちの事情』
S
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コメント



0.簡易評価なし
1.6taku1531削除
しっかりした文章とケレン味のある表現で楽しめました。
2.9絶望を司る程度の能力削除
ま、まさかこのお題でこんな作品が生まれるとは……。とても面白かったです。背筋が凍りましたね。
・・・・・・ん?画面が、あおk[不明なエラーが発生しました]
3.6NA削除
恨みもたたりもなるほど絆かもしれませんね。
4.8白点削除
1/4くらい読んで凋叶棕さんの曲を思い出しましたが、やはりそれがモチーフだったのですね。
もう1曲の方は聞いていないので探してみます。

いかにも破滅しそうな少女、
彼女がどう転落していくのか、ドキドキしながら読みました。
全体として良い作品だったのですが、
タイトルが無くてアクセスしにくい点
掲示板との絡みが少なく、ブルースクリーンが唐突に思えた点。
この2点からそれぞれ1点引いて8点とさせていただきます。
5.5名前が無い程度の能力削除
物語としては面白かったのですが動きの多いシーンで前後の映像が繋がらない事が多かったです
それと後ろから飛び掛ってきたS奈はどこにいってしまったのでしょう?
6.4みすゞ削除
ホラーですね。面白かったです。後半はぞくぞくしました。
でもラストの「サナエさんがオマエのうしろに」という一文は余計かもです。ぞっとするより笑ってしまいました。
7.10名無し削除
面白かった
8.6ナルスフ削除
イッツホラー。胸糞悪いなー、独りよがりでここまでやるとはさすが祟り神様。
正直こんな絆を作ったところで何がどうなるの? 早苗もありがた迷惑じゃね? とか思うんですけど、まぁ神様の考えることを人間風情が理解できるわけもないか。
とりあえずサナエさんを見てきたんですけど、なるほど、こういうアレンジなんですねえ。ところどころに要素がちりばめられてる。
うん、作品としてはよく出来てると思います。話に入り込んで最後まで行けました。
それだけに、たまにS美とかS奈とか新キャラが唐突に登場したり、幻想郷に『活発』とかいう謎の存在が棲息してるあたりで笑ってしまうのが残念でしたが(誤字話)
9.5がま口削除
こわい! 中盤のブルースクリーンとか特に!
リスペクト元の曲を知っていたので「おっ? どっかで見たような……」とデジャヴを感じたのが印象的でした。
二次ならぬ三次創作とも言えそうな、新鮮な作品だったと思います。
10.5烏口泣鳴削除
悪意に嵌っていく前半が良かったです
11.10名前が無い程度の能力削除
最近ではやたらとポジティブなイメージで使われがちな絆、それをテーマにこう来るとは、お見事です。
文明の機器と祟りの融合というのはいかにも守矢さん家らしく、演出も相まってゾクッとさせてもらいました。
12.7このはずし削除
演出に凝った良いホラーSSでした。
それはそうと、こういう作品を読むときは壁に背をつけて読まないとダメですね。
サナエさんに背後を取られないように……!
13.9うるめ削除
まさしく祟り神。素晴らしいホラーでした。
14.8きのせい削除
こんぺ初作から絆の持つマイナスイメージに焦点を当てられていて、かなりインパクトが大きかったです。
掲示板に始まり、都市伝説らしい締めくくりまで、終始暗くおどろおどろしい雰囲気が立ち込めていて、最後まで飽きずに楽しませていただきました。
覚悟はしてたけど本当に救われなかったな、サナエさん……
15.6めるめるめるめ削除
 ギミックは面白いしテーマの絡め方、主題などもいい感じでした。
 話自体は先が読めるもののキツい描写がアクセントになって、飽きずに読めます。
 話の展開が速いこと、説明的なことが気になりました。(話を先に進めることばかり優先させ
ているようで、主人公が話のために都合良く考えさせられているように見えました)
 脱線してでも無駄を増やして、主人公もしくは物語に厚みを出したいところです。(説明的な
のも無駄が無さ過ぎるから、相対的に説明の比率が上がり、目だってしまっている印象)
 答え合わせ(二つの嘘)や諏訪子の動機などが、納得はできるものの驚きにはなっていない
あたり、もう一捻り必要かもしれません。ギミックが効果的に働いていないのは主人公に焦燥
感があるように見えないため。つかまったら嫌なことになると焦っているなら、ツカマエタも恐
ろしく思えますが、その焦りが感じられないのなら飾りにしか見えません。
16.6あめの削除
なるほど。都市伝説を題材にテーマである「絆」についてしっかりと書かれているなと思いました。
ストーリーについて予想を裏切る展開はありませんでしたが、説明や描写がしっかりとしていてかなり高いレベルのように思います。特に諏訪子のセリフからはまさに神様らしいカリスマを感じました。面白かったです。
17.7名前がない程度の能力削除
知った者を脅して信仰を集めずに、無差別に首を絆していくなんて、これじゃ妖怪「サナエさん」じゃないですかー!?やだー!

Y美、U香、R子…いや、よそう。触らぬカミになんとやらだ。
18.7文鎮削除
なかなか背筋がゾッとするお話ですね。
サナエさんの名前が出た時点であの曲を思い浮かべてしまいましたが、曲とは関係なく楽しむことができました。
以前、諏訪に言った時に地元の方が「ミシャグジ様は怖いよ」とおっしゃっていたことを思い出しました。
19.7K.M削除
理不尽、ではないか。まさに人を呪わば穴二つ。こういう拡散性の怖い話はスタンダードながらもやはり背筋がゾクリとしますね。