第十四回東方SSこんぺ(絆)

私がケバブを12人前も食べた訳

2014/09/14 22:08:32
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☆1


 そろそろファミ通を読みに行きたいなーとボンヤリ空を眺めている。
 墓場で。
 1人で。

 もう暦も9月になっちゃって、台風とかわんさかやってきて全身吹っ飛ばされたり体中が水による侵食で色々もげたりしたが私は割りと元気に今日も墓場で突っ立っていた。
 青娥様の勅命はとっくに終わってるし、別に家も用意されてはいるんだけど勅命期間のクセなのか今日も墓場でぐーぐーぐー。
 青い空と白い雲は私の平和であり、それは人間だったら怠惰にもほどがあって世の中全く回らないってのは知っているんだけど、まぁボンヤリする事もキョンシーの特権なんだろうからファミ通を読みにいくまでボーッとしてたかった。
 いつになっても、墓場は人気がなく霊気に満ちて妖怪たちも脅かす相手や異変がないときはとにかく静か。

「ウォオオオオオオッホオ!AIEEERUEEEEEEE!!」

 なんて私が突然叫んでも雀さん達がビビって逃げるぐらいですむから楽だ。誰も気にしない。
 ああ、今日も何事もなく空虚である。
 私だって神霊廟を守って博霊の巫女とバトルしてたのが懐かしくて楽しかったなぁなんて思う。
 いや、そうか? めんどかったよな?
 青娥様なんて完全に私を盾にしてたし。矛と盾の両立ですよワタシ、はっはっは矛盾だらけだー……
 あ、すごくどうでもいいですね。

 私は誰も聞いちゃいないのをいいことに、どっこらせっせっせーと大声で叫びながら飛び起きて、膝についてる汚れとかフリフリのスカートなんかをパシンパシンと叩いてるとケータイの着メロが鳴る。

 ライライキョンシーズデデンデンデデン♪

 パカッと開けてピッと押す。それで話が出来る。キョンシーでも簡単です。

「はろーはろー聞こえますか」
「聞こえるわ。蘇我だよ」
「あー、私は宮古芳香です」
「お前さんの事は聞いてねぇんよ。ったく、なんであたしがコヤツに電話せにゃならんのか……」
「っていうか、蘇我さんに電話番号教えてましたっけ?実はテレパシー?」
「霍青娥から聞いたわ。付箋に番号書いてきよったんだけど、あいつの使ってる猫の付箋、どエラい可愛いから今度一セットよこせ」
「なんで私に言うんだ。いいと思うけど」
「でな、お前なんであたしが電話してるかわかるか?わからんよな。一言で言ってやるから耳かっぽじって聞くんよ」
「なんで自分で勝手に質問しといてわからない扱いなんですかね。わかりませんけどね、ゾンビですからね」
「地底の寅丸星もやられちまったって。従者スレイヤーに」
「あー、ついに。で、何それスレイヤーってなんだ?」
「お前さんに説明しても意味ないのわかってるから。しらばっくれるな。とにかく、神霊廟で緊急会議じゃ。早うくるんよ」
「あっ、はい」

 ツーツーツー。
 電話の切れた音は、墓場の空より虚しい。

 このガラパゴスとか滂沱とか名がついている携帯電話はとっても便利な通信マジックアイテムだった。
 なんでも外の世界では急速に廃れてしまって、幻想郷に一気に倉庫単位で流れこんできたのだ。
 河童が電波局もチャッチャチャーと開発しちゃって、一家に一台座敷わらしとケータイってのが幻想郷のトレンドである。
 私も良く迷子になるからという屈辱的な理由からバッチリ紐で括ってもたされている。じーぴーえすなる謎の機能でどこでも居場所がわかっちゃう。
 便利な!!!

 だから最近起こってる従者スレイヤー事件の被害者達が全然連絡すらつかないのは異変だって騒がれているのだ。
 ……ああ、そうだそうだ、思い出した、従者スレイヤー。まだ続いてたんだなぁ。
 阿呆と言われる私でも、その特徴を伝えるのは簡単だ。

「毎週木曜日に何処かの大きな組織のNO2めいた従者が消える。消えた組織の玄関口やらポストやら床の間やらに『従者スレイヤー推参』と赤い毛筆で描かれた名刺が入っている」
 
 とってもシンプル。
 スレイヤーって殺す者=辻斬みたいな意味らしいんだけど、別に死体があったり指が送られてきたり首がどっかに吊るされてたりって事はない。
 ただ、その名刺が入ってた日から忽然といなくなってしまうんだって。
 最初に消えたのが紅魔館の十六夜咲夜で次が白玉楼の魂魄妖夢。
 それから永遠亭の優曇華院が消えて、東風谷早苗に火焔猫燐、さっきの電話の話だと命蓮寺の寅丸星もやられたって話だ。
 みんながわかっているのは、幻想郷で異変を起こした組織から順番に、従者が消えるって事。
 で、各組織はほとんどが従者に頼った生活をしてたから大慌て!
 肝心の神社異変解決軍団は妖怪同志のなんか争いなんだろーっと人間(十六夜咲夜とか東風谷早苗とか)も消えてるのに無視して麦茶ばっかり飲んでいる。
 人間は麦茶の方が知り合いの消失よりも大事なのである。ああ、人類。
 まぁ、みんなそこそこに慌ててるんだけど、名刺を置いてくバケモノすら未確認で捕まる気配がまるでない。
 次第にあんまり探し立てる雰囲気もなくって、一番捜査に熱があった紅魔館も今では調査に妖精を出すこともやめてるっぽい。
 そうか、寅丸星が消えたか……

 来週の木曜日には、異変を起こした順番から見てつまり我々神霊廟の誰かが消える可能性が高いって事だ。
 ヤばくね?
 私は青娥様の従者だから消える可能性が、ある。

 ウォオオッホオ!
 こうしちゃいられない!!
 行かなくては!!!

 ファミ通を読みに!!!! 


☆2


 鈴奈庵という貸本屋があるのは幻想郷の人間にとってお馴染みなんだけど、その一角に『コンビニコーナー』が出来たのはつい最近の事だ。
 外来の週刊誌とかを置くのに、白くて少し剥げたラックが使われている。
 木製のしぶーい本棚を使っている物静かで暗い照明が鈴奈庵の基本形なんだけど、この週刊誌コーナーだけウルサイぐらい明るい。
 白熱灯ってのをこれまた外来から取り寄せて、外の世界のコンビニってのそっくりの空気を作り、立ち読みしやすい空気を作っているんだって。
 店主曰く、最新の雑誌を取り入れないと性質上意味が無いのだけれど幻想郷に迷い込んでくるのはとっくに賞味期限が切れた雑誌がランダムでどうしようもないと。
 なんで外来のコンビニというのを再現して、雰囲気だけでも外来のブルジョワジーを味わって欲しいんだって。
 ブルジョワジーってヨーグルトの名前みたいだよね!
 そんなコーナーに週刊少年ジャンプやらマガジンやらるるぶやらコアマガジンやら東京ウォーカーやらSMARTやら今から始めるミクシィ!やら快楽天ビーストやら新潮やら電撃プレイステーションやらファミ通が置いてある。
 コンビニコーナーの週刊誌は扱い方も雑多で、良く端っこが折れてたり欠けてたり青いビニールで止めてあるのが無理やり剥がれてたりしている。
 そういうところまで、外の世界の薄情さと白々しさを表現していて、全てが町内みんな友達な雰囲気の幻想郷の中でもひたすら周囲に無関心かつ乱暴に雑誌を読むことが出来るのだ。
 私はその寒い現代さが大好きなのである。
 仲が悪くも良くもない、無味無臭さがいい。
 個々は生きているけど、相互関係は死んでいるって訳。
 
 私は急ぐ事もないのにドタドタと足音を立ててラックの前に立つ。
 えーっと、ファミ通……あったあった、相変わらず謎の妖怪みたいな良くわからない生き物が表紙だ。
 ぶっきらぼうに手にとって、目次を確認して目的のページまでなんとなーく読み進める。
 ファミ通というのは外来のテレビゲームというやつの攻略と品評の雑誌である。
 遊戯に批評家がいるって段階が驚気で愚かめかしいし、この雑誌の点数というのがまたあてにならないと青娥様に教わったが、だからこそ妙に点数が低いのを見る時が面白かったりする。
 私がファミ通で気に入ってるのは、ずばりギャグ漫画だった。
 白黒の『なんとかトルテ』、というのもまぁまぁ面白いんだけど一番いいのはフルカラーの『なんとか外伝』である。
 この『なんとか外伝』は幻想郷に入ってくるギャグ漫画では『セクシーなんとか外伝』の次ぐらいに面白い。
 外伝ってタイトルがつくと漫画は面白いのだ。

 まさか『なんとか外伝』を知らない人はいないと思うが、説明しよう!
 タヌキの柴田おばさんと猫のオザワオジサンがラグビー部の浜村というオッサンから任務を言い渡されて、取材と言いつつテレビゲーム業界の人々と浜村を貶める漫画だ。
 何故かこの漫画の人々は血管が弱いのか、屠自古様みたいな口調で喋りながら鼻血をたっぷり出す。
 私はそのたんびにケラケラと笑うのである。
 従者スレイヤーに消される前に、読んどかなくっちゃね!
 
 今週号もやっぱり後ろの方にこの『なんとか外伝』がのってた。たまーに1年ぐらい載ってなかったりするので貴重だ。
 今回も結構久々だった気がするんだけど、何時ものパターンっぽい。
 ほのぼのとしたSDのオザワオジサンがタヌキ柴田おばさんに電話をかけ、原稿が間に合わないわオホホって軽い口調でオバサンが言うのを

『このクソアマァ……取材のタクシー代全部キサマ持ちにするぞ』
『ふふ、ええよ。クレイジータクシー呼んだるからなぁ!』

 などと掛け合いして突然リアルな表情になって鼻血を垂れ流すところからスタートする。
 私は良くわかんないけどケラケラと笑う。
 と、笑いっぱなしのまま半裸侍SNK高津がお約束の『よぉ来たのぉゲーメスト!』って言ってるのを見て最高潮に笑ってたら

「おい、おぬし、も少し静かにしてくれんか」

 って注意される。そうね、ウルサかったよね。ごめんね。
 私を訝しんで注意したお姉さんは大きめの眼鏡をかけていて、9・1分けロングヘアーに葉っぱのヘアピンをしている。
 和洋折衷の良くわからない服を来てるんだけど、妙に『このミステリーがスゴイ!1998年版』を読む姿は様になっている。
 ミステリアスお姉さんだ。
 しかし人間風だが、獣の妖怪だ。
 臭いでわかる。私の嗅覚は鋭い時は鋭いのだ。ん、じゃあ鋭くない時は鋭くないのかな?
 ついでに、土の感じや独特の毛の香りでわかるが山の妖怪だ……タヌキかな。え、タヌキのお姉さん?? 
  
「どーもすみません、ところでもしかして柴田先生ですか?」
「え、なんじゃ急に。いや違うけど」
「その口調、柴田先生だろー!うわー、幻想入りしてたんですねー!サインください!鼻血で!」
「だから違うって。聞き分け出来ん子じゃのう……お主、豊聡耳のところの――」
「お忍びですか!?そーかそーか、気にしないでください私は言いふらしませんから。ところで猫のオザワおじさんはどこ?」
「え、ええい、ついていけん。勝手にするがよい」
「勝手にはさせないわよ。全てはなるように、なるのだから」
「「はい?」」

 いきなり会話に入ってきたのは亡霊だった。
 それこそ勝手に入ってきた。それまで私達はいるのも気が付かなかったんだから二人して驚く。
 柴田先生(仮)の後ろにいつの間にかいたのは西行寺幽々子だ。
 ピンクの短髪、水色の和服にもっふもふの何か良くわからんおやすみキャップみたいなのに亡霊三角巾をつけた私と並ぶ幻想郷の大食い担当である。
 我々が復活した神霊廟異変の解決のキッカケはこの亡霊だったと、我々に挑んできた連中は皆言った。
 ふわふわした印象のクセに、このピンクヘアーのおかげで解決した異変がたくさんあるんだそうだ。
 ふふふ、と今も妙にセクシーかつ訳有り気に微笑んでいる。
 dancyuを片手に。
 この亡霊、御飯の献立見に来たんだ!!!

「今日は何作るんですか?」
「カレーよ」
「そうですか。カレーですか。思ったより普通でびっくりしてるんですが」
「おい死人共、もうちょっと静かにしてはもらえんか?」

 我々は柴田先生(仮)の事を無視して続ける。

「カレーは意外と複雑なの。スパイスの配合や分量、それと具材とのバランスは毎日変わっているモノ。それだけでなく、更に具材自体の加減やどこまで煮詰めていくかによってスパイスが生きるか具から出るエキスを優先させるかも違ってくる。煮込み料理の中でも、時間の変化に敏感……カレーを作るって事は生き物を錬成するような行為なのよ」
「へー、すごいですね。それどこで仕入れた情報ですか?」
「この本に書いてあったわ」
「へー」
「幻想郷では本の通りの新鮮なスパイスは手に入らないけれどもね。その分和食材で代用したりするそうよ」
「その情報はどこから?」
「妖夢から」

 あ、しまったなぁと私は反省する。
 この儚げ麗しい亡霊貴族様がコンビニコーナーでdancyuを立ち読みしてる理由だからだ。
 魂魄妖夢がいないから、彼女はカレーを作る為にレシピを調べに来ている。
 もしかしたら気配を感じなかったのは、恥ずかしくてこっそりと来ていたからじゃないだろうか?
 それは柴田先生(仮)もおんなじで立ち読みはバレると恥ずかしいと思っているのかな。
 私は二人に向かって頭をギュッっと下げる。

「なんかすみませんでした。お忍びのところお騒がせであった!」
「お、おう、なんじゃ、なんかこっちが悪い事してるよーな気になるから頭あげな」
「いいのよキョンシーちゃん。私こそお礼を言わせて欲しいから頭をあげて」

 うい!
 私は直角90度キッチリに体をピンと伸ばす。
 すると、西行寺幽々子が帽子越しに頭を撫でてくる。
 妙にくすぐったい。エヘヘ。
 急展開についていけない読者みたいな顔をしている柴田先生(仮)は、眉間の辺りを指で掻きながら言った。

「ああっと、スマンが儂はもう帰ってもいいかな?」
「ちょっと待って、柴田先生サインお願いします!」
「だから儂は柴田先生じゃないぞい」
「減るモンでもないし、いいじゃないの、書いてあげなさいな」
「そうだぞ!柴田先生、お金こっそり盗んだりしてるんだし色紙の一枚ぐらい持ってるんでしょ!それに書くがよい!」
「なんじゃその訳わからん理由は」
「あら、良くモノを盗むのね貴方」
「幽々子殿は余計な口挟むでない」
「いーじゃーん!せんせー書いてよー!!」
「う、ううむ困ったのう……」


 ライライキョンシーズデデンデンデデン♪

 げっ、いいところで電話だ!
 私は大急ぎで鈴奈庵の外に出てボタンをおす。ピッ!

「はろーはろー、聞こえますか?」
「蘇我だが」
「そうですか。柴田先生にサインもらいたいんで、きりますね」
「待てい。おどりゃ、なんか忘れとるじゃろ」
「サインペンは入りませんよ、先生は鼻血でサイン描くから」
「そうじゃねぇ!おどりゃ、早う神霊廟に来いって行ったよな。1時間も何しとるんじゃ」
「鈴奈庵でファミ通読んでたら柴田先生と西行寺幽々子に遭遇しました。我々はサインを要求しています。緊急事態です」
「え、なんぞ亡霊がいるんだ。まぁ、そんなの全部ほっといて真っ先にこっち来い、いいな?」
「あっ、はい」
「先立って電話で言っておくが、この従者スレイヤー異変に対してウチらはな――」

 屠自古様が何か言っているんだが、私の目は柴田先生(仮)が猛ダッシュで走って行ってしまったのを見逃さない。手をふってた。
 後ろ姿が遠のいていく。
 しまった!バッくれられた!!
 オザワオジサンにいつもしてる仕打ちだ!なるほど、これは思わず鼻血を垂らしながら恨み節も言いたくなるなぁ!!
 なんとか外伝は絵柄同様にリアルだったんですね。

「――おい、おい!!!」
「あ、ええと、逃げられましたんでもういいです行きます行きます」
「あのな、地下会議室内は電波がとおらないんじゃ、マジでさっさと来」

 ピッ。静寂。

 まんまと逃げられてしまったんだけれど、私のキョンシー的跳躍力を使えば運動不足の柴田先生(仮)なんてすぐに追いつくだろう。
 けどそこまでするのは、こう、趣味が悪いよね。
 私はちょっとしょんぼりしながら神霊廟に向かおうと思ったが

「ねぇ、貴方、お昼は食べたの?」

 なんて団地妻未亡人よろしくって感じに西行寺幽々子に艶っぽく声をかけられる。
 私はギュルンと首を回してニッコリ。

「それはゴチしてくれるって事ですかね!」
「ゴチよ。ゴチゴチ」
「ごーちごーちごちごっちごちー♪」
「ふふふ、じゃあウチまで案内するわね」
「あ、自宅飯なんですね。それじゃノーゴチですね、ノーゴチ。のーごっちごちー♪」

 西行寺幽々子は何故か口元を隠して笑う。
 そんなときに、

 ライライキョンシーズデデンデンデデン♪
 ピッ!

「はろーはろー、聞こえますか?蘇我様、ちょうどいいところに。我々は昼飯を食べてからそちらに向かいますね」

 どーせ蘇我様が早く帰って来いって電話してきたのだ。全く、とんだせっかちさんである。
 蘇我様の怒鳴り声が聞こえる前に、電話を耳元から離して着信終了ボタンを押す。
 ピッ。

 でも、静寂の前にちょっと聞こえた声が蘇我様じゃなかった。もっと若くて品のいい声。
 キョンシーは地獄耳だから、離してもくっきり聞こえた。

「わたし、メリーよ。今から貴方のところに行くわ」 

 これってどういう意味だったんだろう?
 メリーって誰だ。西洋系だらけの紅魔館の人かな。
 私は携帯電話をジッと睨みつける。
 西行寺も電話を睨んでいた。屠自古様にも負けないような鋭い、まるで飢えた野獣の眼光だ。飢えた野獣見たことないんだけど多分こんな目なんだ。

「今の電話……」
「うん。見てたでしょ。もしかして聞こえた?」
「ええ、私にも聞こえたわ。貴方受話音量最大でしょう。それじゃ耳に当ててても周囲に丸聞こえよ」
「イタズラ電話って初めてきましたよ。幻想郷にもうっかりさんいるんだなぁ」
「それは、イタズラ電話じゃないのよきっと。とても意味があることだわ。ハッキリとね」
「え、全然イミワカラなかったけど、なんで?んん?」
「私はわかった。全て理解したわ」
「何が」
「従者スレイヤー事件の真相」
「へー」

 この後まさかの読者への挑戦状?


☆3


 亡霊の住む部屋ってどんなモンなんだろうと思ってたけど、ふっつーだった。
 床は畳で、四角いちゃぶ台は冬場はコタツになるんだろう。
 天井は電球がついているが、昼の3時に付ける必要がないぐらいに襖と薄いピンク色で桜柄がほのかに見える障子から入ってくる日の光は明るい。
 そりゃそうだ、雲の上だもんね。幽霊は夜の暗い場所にいる、とか思ってる人間のいとあさましきことよって気分。
 桐の箪笥の上には何やら伝家の宝刀のようなモノが飾ってあって、そこは奥ゆかしい名家のソレを感じさせる。
 そうそう、出てくるお茶もいい葉っぱ使ってるっぽい。渋みがよく出ているのだ。なんかいきいきしてないけど。

 私は当然言うまでもなく神霊廟には帰らずに西行寺幽々子の居城、白玉楼におじゃましているわけだ。
 どうぞどうぞ、というのに、はいはいはいなんてスタスターっと入ってったらこの和室に通されてそのまま西行寺幽々子はどこかに行ってしまったので正確にこの部屋は何なのかよくしらないんだけど多分客間だろう。
 案外あっさりと入らせてくれたし、雲の上だってのに我々は舞空術が使えるので楽ちんに来ることが出来る。
 敷地の広さは良くわかった。上から見下ろすと老舗の伝統的な家づくりで京都旅行に来た修学生とやらの気分になっちゃうぐらい面積のスケールがジャンボ。
 その点では我々の神霊廟も敵わないなって思った。
 縦には神子様の謎のパワーで無限増殖なんだけどね我々の神霊廟。横は広くないんです。
 さておき、そんな訳でちょっと来る途中は生唾ごっくんだった訳だけれど、中は案外ほっこりくる普通さだし庭の木々は近くで見ると元気がなかった。
 庭は住む人を写す鏡だって誰かが言っていた気がするけど、そうなのだろう。
 松は枝まで整っておらず緑が多すぎ侘び寂びがなかったし、桜の木々も小さな芽がちょこちょこっと出すぎていた。
 この膨大な広さに、庭師がいないからだ。

「おまたせー」

 と、朗らかに水色着物の上にピンクとカピバラのプリントがついたエプロンを着た西行寺幽々子は入ってくる。
 今しがたこしらえ直したって感じで、少し紅潮した顔と外の太陽が反射してんのか?ってぐらい眩しい笑顔。
 両手でかかえた茶の土鍋からは、スパイシーな香りがして和食が入ってないことがわかる。
 カレーだ!
 なんだこの新婚ホヤホヤみたいな雰囲気は。見れば桐箪笥の隣には布団と枕が1セットおいてあるではないか。
 この亡霊のところに男性がいなくてホント良かったねって思う。この光景、18禁ですよ?
 そんな私の思考のような何かとやらしい目線を気にせずいつの間にか炊飯器も持ってきていた西行寺はご飯とカレーを盛り付ける。
 カレーはオーソドックスな欧風カレーだと思う。
 水っぽくなくって、じゃがいもと人参に鶏肉のようなもの(我々人肉を食したりするんだけどこれは白いから多分鶏)に細切りの玉ねぎがチラホラ見える。
 福神漬けがのってない辺リがいいよね。私、あれ最初から置いてあると混ぜづらくって嫌なのだ。

「いただきまーす」

 私はニッコニコでご飯とカレーにかぶりつく。あ、ちゃんとスプーン使ってますよ?
 ガッッパクガッッパク!
 リズミカルに私は一気に半分ぐらい口に突っ込む。死体なので健康的な食べ方などしないで、量で味を感じるのだ。
 口いっぱいに入れたら適当に数十回ぐらいを高速でモムモムする。
 そんでゴックン。
 ここまでの量がめちゃくちゃたっぷりでやるものだから、私はただの大食らいに思われがちだが、青娥様に完璧美麗超人に造られている私は味覚だって完璧超人なことを忘れてはならない。
 だから、このカレーの味もここまでで良くわかっちゃったのだ。
 私に盛っておいて自分は食べずにちゃぶ台に頬杖をついていた西行寺は、

「どう、お味は?」

 と小声でたずねてきた。
 私は食べるついでに、堂々と答える。

「死んでますね、コレ」

 食べられないって意味とか、まずいって事じゃない。
 料理として死んでいるのだ。
 ええっと、もう少し説明出来るように思考を回転させると、つまり料理が生き生きしていないのだ。
 ただの反語になっちゃうんだけど、じゃがいもは芯がなく良くほどけるんだけどカレーに合った甘みがない。人参も同じくカレーに甘みをそえない。
 カレーのスパイスがそもそもハッキリしてなくて何かモニョモニョとカレーっぽい辛さだとか興奮しそうな香りっていうのがびっみょーにあるんだけどちっとも魅力的じゃない。
 家庭的な雰囲気のカレーなのに、どこか愛情が足りないようなカレーなのだ。見た目通りの食材で、何とも工夫とか楽しさがない。
 もうちょっと青娥様が外来から持ってくるレトルトカレーだって、工夫があるってモノだ。
 幻想郷にちょっと前、『大手外食チェーンの牛丼の具やらカレー』がたくさん入ってきた事があったんだけど、そんな味だ。
 疲れた人達が適当に温めて疲れたひもじい人達が食べる疲れた物体。

「これ西行寺、お前が作ったのか?」
「そうよ」
「料理ヘタってわけじゃないけど、どうしちゃったのって感じです」

 ちょっとハッキリ強く正直に言い過ぎたかな?って思うんだけど、私はコレでいいんだと思う。
 少し悲しそうな微笑みで

「そのとおりね。貴方が食べてよかったわ」

 って言われて確信した。
 西行寺幽々子は私に、この死んだカレーを食べさせたかったのだ。
 dancyuで研究しても彼女にはこの味が出来てしまったんだろう。
 これが彼女の今、一番の悲しみなのだ。
 私はその後無言でおかわりまでもらって完食したから良くわかる。
 彼女の家庭の味は、魂魄妖夢のカレーなのだ。だから、どうしてもそれを超えられないし超えるつもりで勉強しても至らない何かになっちゃってるのだ。
 そういう宙ぶらりんさを、西行寺幽々子は誰かにわかって欲しかったんだろう。
 魂魄妖夢が欠けてしまっている事を伝えたかったのだ。
 もう嫌というほど、そのアピールをされた気もするけど彼女は見た目よりずっとずっと暗いんだ。
 お腹をさすりながら思う。

「ごちそうさまでしたー!」

 その分ぐらいは明るく言ってやらねばならない。
 それが食べる礼儀だってのは青娥が様が言ってたんではなく、私なりの考えなんだと思う。
 微妙に頭をさげると、西行寺は牛乳を出してくれた。
 私は受け取りながら

「で、犯人誰なの?」

 と本題を切り出す。

「さっき解ったって言ってたの聞きましたよ。誰なの?」
「あら、なにの話かしら」
「とーぼーけーるーなー!もう、自分から言い出したのだろうに。従者スレイヤーは誰だって」
「ふふ、そうね、私にはわかったけど、それを教えてしまう事はないでしょう」
「なんだって」
「私は殺すわ」

 なんかイキナリぶっそうな事言い始めましたこの亡霊。
 コッワ~!

「殺してしまうでしょうね。犯人を。物語を。そして全てを」
「なんかやたら壮大になってません?」
「そうなっちゃうのよ、私は。察しが良すぎるの。全てを真っ先に、それこそ幻想郷を取り仕切っている紫よりも早く知ってしまうのよ。あなた達神霊廟の連中の復活を真っ先に感じたのも私だし、私が解決しようとすれば霊夢達が行くずっと前に皆殺しにして閻魔のところに送り届けたでしょうね」
「おぉ!?さらにやたら壮大になってませんかね!?」
「私の生まれ……死んでこうして亡霊になった所以なんでしょうね。私は自分の生前だけ良くわかっていないのだけれど、ソレ以外は真っ先に良くわかるわ」
「ふーん、そういうのって神様みたいですね。幻想郷の神様は頼りないけどさー」
「メタ・フィクションでいえば、私は語り手を超えて作者よりも早いわ。作者が解決させたいタイミングよりも私の解決はずっとずっと先に終わらせる事が出来る」
「なにそれスゴイ。霊夢達いらなくないですかねソレ」
「そうよ。あの子達は不要になる。だから私はほとんどの異変をずっと見て過ごしたいの。私の死を操る程度の能力の真髄。程度って生物上の生死じゃないのよ。それは何もかもにピリオドが打てるって事。異変にも、この幻想郷という世界すらも私は終わらせることが容易に出来るの」
「あ、ファミ通は終わらせないでくださいね。アレの漫画、楽しみなんです」
「えー、それじゃバッサリ終わらせちゃおっかな」

 小さく笑うのが逆に怖いんですけど。
 ついでに何か物騒な事言い過ぎじゃないだろうか?脅しか?ストレスたまってるのか?女の子の日でイライラしてるのか?

「私がこの事件が全部わかったのは、メリーからの電話ね」
「あのいたずら電話ですか?ヤツが犯人なのか??」
「違う。けれども、重要な分岐点だったと思う。あの瞬間から、この異変は全ての可能性を考えて良くなったのよ。鈴奈庵が外来の文化を取り入れた辺りで薄々思ってたんだけど、貴方達に会って80%ぐらいかな。そしてメリーで100%」
「くわしく」
「何でも有りになったって事。順序を追っていけばいい、というものでもなくなったの。それは私の最も得意とするところよ」
「つまり」
「私が信じた直感で、大体解決出来る。もう終わらせる事が出来る」
「ひえええええ、スゴイ能力ですね死を操る程度の能力!」
「そうでしょ?でもね、生かす事は出来ない」
「あ、そういう事か。終わらせる事は出来ても、なーんも良いことが起こらないんですね」
「私の解決は誰にとっても良くない形で終わるわ。私は理解しているから成長にもならないし、相手側も死以外の未来はないわ。月の連中が何かしら仕掛けてきた時だって、私一人で全て解決出来た。妖夢を連れて行く必要はなかった。頭脳だとかお姫様なんてヒントが揃った瞬間にスグに殺せたでしょうし月の古酒を盗むのも私一人で全て出来た事よ。月へのロケットなんていらなかった……って、貴方はあの事件の後から来たんだったわね」
「それなのに、魂魄妖夢を連れて歩いてるのは何故なんです?」
「絆、かしら」
「なにそれ美味しいの?」

 私は新しい食材が出てくるならメモを取りたい気分だが、西行寺は手をふって初めて困った顔をする。

「絆っていうのは、しがらみの事よ。束縛や呪縛とも言えるかしら。支えあいや助け合いを強要するようなモノかも」
「ええっと友情とかとはなんか違うんですかね」
「少し違うわ。絆の場合はお互いに利益がなくてはならないし上下関係が必要。友情を言い換えて絆ってするような人もいるけれど、大雑把だと私は思う」
「ふーん、なんか思ったより賢いんですね西行寺」
「幽々子様でいいわよ、蝶を使うぐらい賢いんだから。えっへん」

 と、ただでさえでかい胸も前に揺らしながらつきだしってエッヘンのポーズ。
 男性だったら帯で更に強調された胸元にしか目がいかない事この上なかろう。
 私が女キョンシーで良かったな幽々子様!さもなければ18禁だったぞう!!
 それから幽々子様は扇子を取り出して扇ぎながら続ける。

「絆なのよ、私と妖夢は。彼女が庭師として存在していること。あの若さと実力で私の片腕になっている事。全て絆なんだわ」
「邪魔じゃないんですか?」
「子供が生めれば貴方にもわかるんでしょうね。ただ泣き叫んでるだけでも、赤ん坊は邪魔じゃない。そこに希望という利益がある」
「ふーん」
「利益、と真っ先に言っちゃうのは私の死んでる根拠かもしれない……さて。まぁ、わかりやすくいえば私と妖夢は切っても切れないし、あの子が半分生きているつまり成長する可能性があるから私は物語に参加出来るのよ。あの子がいなければ、私は本質に絡むことはないの」
「一人で絡んじゃうと殺してしまうから」
「察しが少しはいいじゃない。だから妖夢がいないから私は解決しない。いつでも大富豪を終わらせられる手札だけど、パス4回するのよ」
「えー、じゃあその手札くださいよ」
「譲渡できないから、パスし続ける前に、貴方にとって都合のいいカードをきりましょう」

 そう言うと、幽々子様は一枚の紙を出してきた。

「なにこれ」
「従者スレイヤーの出してきた名刺」
「現物かー」

 それは名刺サイズの和紙で、筆で従者スレイヤー推参!と書いてあった。
 あ、違う。推参の文字が『推算』になってる。しかも字がブレブレで異常にヘタだ。こいつ漢字わかんないのか?私も詳しくはないが!

「アホですねもしかして従者スレイヤーって」
「あなたに言われるとは悲しいわね、ふふふ」

 そう言いながら、続いて幽々子様は新聞紙の切り抜きを見せてきた。何れも従者スレイヤーの名刺の写真だ。

「これが、作者より先の力ってところかしらね。寅丸星だけはまだ新聞でも報じられてないからわからないけれど、それ以外は全て持っている」
「作者より先の力?」
「私はね、この事件の解決を貴方に託そうとしているのよ」

 うっわ、責任こっちに押し付ける気だ幽々子様さすが賢い!怖い!!
 まぁ、私も暇なんで一応ノっておく。
 で、見せてくれた新聞の切り抜きを見ながら違いがわかった。
 筆跡がまず全部違う。写真の限りでもわかるが、実は紙の質も違う。
 見た目や文字の細さ太さその他モロモロで使っている筆記用具も違う。
 犯人が誰だか筆跡とかでバレないようにしてるのかな。

 紅魔館のは洋紙に万年筆で書かれていて、わざとカクカク書いたみたい。
 白玉楼のはさっき見たとおりで和紙と筆で書かれていて文字が大きく間違いがあった。
 永遠亭のは和紙と筆で書かれてるけど白玉楼の字よりもひょろひょろしていて線が細く怯えてるみたいだ。
 守矢神社のは便箋を名刺サイズに切ってあり、便箋についている点線を無視して丸っこい文字でボールペンで書かれている。
 地霊殿のは妙に紙自体が濡れ汚れていて文字も判別がつかないぐらい汚いけど、まぁ何時もの文章だよねってみんな理解してるから辛うじて読める。

「今日の寅丸星のところ、命蓮寺にも届いているハズよね」
「まぁ、そうなんじゃないですかね」
「予言しておくけれど、和紙に筆で書かれていて字の質が最も達筆なハズよ」
「えー、なんでわかるんですかね。もしかして貴方が犯人です?」
「それだったら、絶対に未解決事件に出来たわね。犯人はそこまで完璧に出来ないものなのよ」

 それらを片付けながら幽々子様は更に追い打ちをかけてくる。

「もう2つ、指し示してあげましょう。ここまでくれば貴方が好きそうな金田一君でなくても解決出来るわ」
「そんな重要な事をおしげもなく!?」
「そうでしょうね。とても重要よ。この事件、誰も生命的に死んではいない」
「スレイヤーなのに?」
「死んでいたら、もっと大々的に殺したように見せるモノなのよ。例えば、字を血で書いてみせたりとかね。文字色を黒で統一しているのはサイコパスや連続殺人犯ではないって表れ」
「なんだ、全員生きてるんだ」
「だから霊夢達も呑気なんじゃないかしらね。もっと言えば、そもそも十六夜咲夜や東風谷早苗が死んでたら紫が黙ってないの。幻想郷では人間の死は尊い。妖怪はいくら殺してもお咎めないけどルールは人間に合わせてあるのよ」
「妖怪向けの世界って印象なのに、案外と厳しいんですね。私も散々死んでも紫は黙ってるんだなぁ、ひどいやー」
「ヒント2つめは、私が推測する犯人は神霊廟から被害者を出さない。次の被害者は大きな異変とされてる輝針城の関係者であるアマノジャクになるんじゃないかしら」
「ん、我々安全なんですかね?」
「いいえ、最も危険だわ。アマノジャクが消える理由はメリーさんにでも聞いてみなさい」
「なんでよ」
「それを考える事が、あなたには必要なの」
「ふーん。って、マジで。これで全部わかれって?」
「まぁ、わからないから貴方は走るのよ。そうそう、それじゃもうひとつ。私達はね、絆を試されているの」
「絆、ですか」
「従者スレイヤーって言葉の本当の意味はね、従者をスレイヤーしているのよ。したがって絆スレイヤーというのが正しいのよ」
「なんか違うんですかね」
「もうちょっと貴方の察しがよければ、全てがわかったハズなのだけれど……久しぶりに妖夢や藍ちゃんをからかってるみたいで楽しいわー!」

 今日一番の笑顔を幽々子様は扇子越しに見せてくれた。
 ま、楽しいならそれでいいですよ、ええ。
 私がもう少しヒントを引き出そうと口を動かす準備をしていたら

 ライライキョンシーズデデンデンデデン♪

 携帯うっさいなー!便利だけど微妙に邪魔な時もある!!
 私はいそいそと出るしかなかった。
 ピッ!

「はろーはろー、聞こえますか?」
「よしかちゃーん、何か電波遠いみたいだけど、遠くなのー?」
「あ、青娥様ですね。白玉楼は遠いですかそうですか。ご用件はなんでしょう。今、私は核心に迫っています」
「もう、屠自古ちゃんが雷を落としまくってて大変なのよ。早く帰ってらっしゃーい。私も地下会議室にもう入っちゃうんだから。聞こえてるー?」
「あっ、はい」

 ピッ。静寂。
 私は帰らなくてはならない。青娥様が呼び出した、というのはそういう事だ。
 幽々子様を喜ばせて話を引きずり出す作戦は計画前から失敗に終わったって事だ。
 それぐらい、青娥様は私にとってぜっったいなんだ。

「申し訳ないが、幽々子様、失礼します。カレー美味しくはなかったけど不味くはなかったです!」
「また食べに来てね。今度は妖夢に作らせるから」
「それは美味しいんですか?」
「半分ぐらい美味しいかな」
「なんじゃそりゃ。では」

 私は幽々子様に背中は向けつつも、ありがとうございましたと付け加える。
 多分彼女は何時もの不敵な笑いをしているんだろう。
 とにかく帰らなくてはならない。
 襖をあけて中庭の砂利道をダダダッと走って跳躍!
 一気に白玉楼を見下ろす高さまで飛んで、そして落っこちる。
 白玉楼の塀もすぐに見えなくなり、ただただ雲の中にダイヴする。
 私は雲の中をつっきり少し淀んだ空の中を真っ逆さまに落ちながら考える。

 もしかして私にも絆ってあるんだろうか?


☆4


「遅いんよ!至極遅い!!度し難く遅い!!!おどりゃ天下の蘇我家をなめとるんかあぁん!?」

 と、ブチギレてるのは言うまでもない。
 全く困ったものだ。ん、これ私のセリフじゃない?
 とりあえずテヘペローゴメンシテーとウィンクしながら謝ると青娥様がちょーかわいいーとか言いながら抱きしめてきてそれでお咎めがなくなる。
 蘇我様もギャグ以外では雷を青娥様に落とせないのだ。
 これからシリアス進行したい蘇我様はここで付き合ってるとロクに話が進まないのが解っていた。

 神霊廟に戻った私は地下11番会議室まで蘇我様に引きずられた。
 我々の神霊廟には会議室が無駄に多く、太子様の過去の偉業から会議室がなんと12番まである。横並びにホテルが如く1~12まであるのだ。
 習わしとしてそんだけ作っておいて会議をするのは1番奥の部屋と決まっていた。
 なんでそんな無駄に作ってるんだろう?
 これ、最大の謎だよね。

 で、蘇我様と私と青娥様だけじゃなく、物部様と我らが豊聡耳神子太子様も揃って聖徳会議のはじまりはじまりって訳だ。
 私は太子様が、では始めよう!なーんて言ったのと同時に立ち上がり

「神霊廟から被害者は出ないって聞きました!でも一番ヤバイってさ!!」

 と早速成果を報告するんだが一斉に皆は目を点にする。
 ため息をついたのは物部様。
 なんでだ。

「おい、青娥よ。頭のネジ締め直した方がいいのじゃないかアレ」
「いいえ、正常ですわよ。至って正常。いつも通りめちゃ最強プリティーですわ」
「ん、ご苦労である芳香。とりあえず座ってジュース呑んでてよし。三ツ矢が好きだったね」
「今日はお昼カレーだったんで、マンゴーラッシーか甘めのチャイがいいです」
「おい、青娥よ。あいつなんでそんなナウでヤングな飲み物は知ってるんだ」
「正常ですわ。至って正常。いつも通りめちゃ最強超絶プリティーURですわ」

 それから私は黙らされる。
 座ってジュースを飲め、という通りにする為に呑んでも呑んでもお代わりが出てくる。
 マンゴーラッシーとチャイを交互に17杯ぐらい呑んだ上に

「カレーは飲み物ですよね」

 と手をあげて発言したらその交互セットの間にカレールーだけがインサート。
 青娥様が外来から買ってくるスープカレーだから普通に上手い。インスタントすごい。なんかとってもお店みたいな味。
 だから私は会議中にたった2言しか喋らなかったのだ。
 今までの事件の確認をしたぐらいのものだ。
 ついでに、夕刊を早めに太子様はもらってきており、命蓮寺の従者スレイヤーの名刺は「和紙で異常な程達筆」なことがわかった。
 幽々子様がテストに出るよって言ってたところですよ。私にとっては復習にはなったが、神霊廟一同はどこまで知っているのだろうか。
 私を無視して出た結論は、

「我らの神霊廟の空間転移能力は無敵なので従者スレイヤーなんぞ寄せ付けない。よって全員自宅待機」

 というどっかの少年漫画で読んだような作戦だった。
 それ大失敗する作戦ですよ!

 11番会議室には私が一人だけ残っている。もう皆出てしまった。
 青娥様も後で私のお部屋に来てね、面白いわよなーんて言って出て行ってしまった。
 私はちっとも面白く無いのだ。せっかく有益そうな情報を手に入れてきたのに!
 それとも、太子様辺りは私が手に入れてきたのが幽々子様という怪しい亡霊なので無視をするつもりなんだろうか?
 それは結構なんだけれども得た結論が自宅待機っていうのも芸がなさすぎるというか何のための会議だったのか。
 会議ってこんなモンなんである。
 蘇我様なんてあんだけ意欲的に人を呼びつけて、いや違うね死人を呼びつけておいて書記なんてやってるから私よりも喋ってないではないか。
 一番狙われる可能性が高そうだって物部様は言われてから「そんな物騒なヤツは我が燃やしてしんぜよう!」「太子様に守っていただければ安心なのじゃー」とか何時もの唐突な放火魔赤ちゃんプレイである。

 会議なんて!意味が!ないんで!アル!

 私も会議室から出る。いつまでもイライラを落ち着けようと座っててもキリがないっていうか私の怒りは収まらない。
 芳香は激怒した。
 メロスよりも起こっている!メロスみたいに暴虐な暴君を棒でぶっ叩くであろう!
 あれ、そんな話だったけ走れメロス?
 もうもうもう!!
 墓場じゃないから叫ぼうにも気軽に叫べない。
 私は部屋から飛び出して壁でも蹴飛ばして八つ当たりしてやろうと思って気づいてしまった。
 我々が地下11番会議室で話をしていた事に。

「ん、おかしいですねコレ?」

 思わずひとりごとだって言いたくなるのだ。
 皆、一番奥の部屋で会議をするってつもりだったんだろう。大体、会議の時は奥を使うのが我々の習わしになっていたからだ。
 だから、引きづられて連行された私だけが部屋番号をしっかりと見ていたのかも。
 ここ、11番会議室じゃないか。

 地下会議室は12番まであるハズなのだ。

 11番は、1番奥じゃない。
 でも、11番の部屋の先には扉がない。
 1個分ぐらいのドアのスペースがあるが、壁である。
 なんだろう、とてつもない違和感。
 これは明らかにおかしいのだ。不思議の幻想郷?そうじゃない、理由があるハズなのだ。
 
 同時に、私はお馬鹿のフリをして何時ものゾンビネタ満載のよしかちゃんでいればいいのにとも思う。
 この12番会議室の消失は明らかに何かある。異変の香りだ。事件の予感だ。
 で、異変といえば従者スレイヤーじゃないか。私は一人で核心に近づいている。
 それは名探偵の掟だ。名探偵と事件の絆なんである。
 くさびを打ち込まれたように、名探偵は事件を解決するわけだけれど今の私はクギぐらい刺さっているのかもしれない。
 まだ引き抜いて抜け出せる段階だ。

「私はね、この事件の解決を貴方に託そうとしているのよ」

 幽々子様氏の声がリフレインする。
 あぁ、あの瞬間私にも出来てしまったのだ。事件との絆が。束縛を強要されてしまっているのだ。
 私は誰か呼べばいいのになんて思うのに堪えられない。
 壁をペタペタと触っていく。
 何も無いはずの壁を添って触っていくと……11番会議室の隣の一部分にわずかな突起があった。
 ドアノブが改造されているのか? 押しボタンのようにカチカチとするものがある。
 見た目には全く凹凸があることすらわからないが触ってみるとそこに異物感がある。
 うわぁ……これめっちゃ怪しいじゃん。
 でも、私は誘惑に負けてしまう。
 私はボタンをグッと押し込んでみる。
 やっぱりドアになっていてガチリッと鳴ってから壁が左右に割れて開く。噂の自動ドア?
 で、私は手をあげて言った。

「あ、魂魄妖夢さん、ちーっす」


☆5


 中は会議室だった。見慣れた12番会議室だった……で終わればいいんだけど中にいるメンツが見慣れない。
 何故って、それが十六夜咲夜と魂魄妖夢と優曇華院と東風谷早苗と火焔猫燐と寅丸星だからだ。
 みなさまお揃いで。
 挨拶しといて、ワンテンポ遅れてドン引きした。
 見つかってよかったっていうよりさ、

「お前ら何やってんの?」

 連中は私の事をチラりと見るが、基本的に無視の体制だ。
 言わなくてもわかるだろ?ってのが彼女たちの回答らしい。
 まぁ、確かにわかるよね。
 妖夢と優曇華と燐は携帯ゲームをやっている。
 幻想郷のファミ通で最近見た気がする。なんかディスクを飛ばして遊ぶヤツ。
 優曇華院が

「わ、天殻きたわー」

 とか唐突に言って、それにええ~マジですか~私爪しかでませんよ~それ寄越せ~とか言ってキャッキャウッフウしてるんだが多分それモンスターを集団でリンチしてぶっ殺すゲームだよね?
 東風谷早苗は携帯電話を開いて何やら目をうるませている。何か読んでるのか?ここ電波繋がらないから、ケータイ小説ってヤツでも保存してるんだろうか。
 十六夜咲夜は自分の目の前に4つのポットとお揃いのティーセットに紅茶を入れて飲み比べをしてる。
 なんて見てたハズなのにいつの間にか横にいて

「一杯いかがかしら?」

 紅茶の入ったカップを手渡してくる。香りからしてアールグレイのフレッシュなアレ。アレってなんだ。
 十六夜咲夜は不敵にかつ瀟洒に営業スマイルを私に捧げる。
 あ、いただきます。
 音はたてずに呑むのが礼儀なのだスイーッうーん見事なマンダリンオレンジのフレーバー……
 ってなんで私は自分の仕える廟で西洋風メイドから紅茶いただいてるんだアホか!
 アホか。
 納得。

 寅丸星に至っては座禅を組んでもう死んでるんだか生きてるんだかわからない。
 それ自分の寺でやれよ。

 なんで、ここにいるんだよ!
 え、これは被害者確保って事でいいのか!?
 突然の超展開に私はついていけない。
 問題は山積みになってしまったのかそうでないのか。
 従者スレイヤー事件で消えた連中は生きてた。これはもう幽々子様氏から聞いていたので驚かないでおく。
 でも、揃いも揃って呑気してる。ゲームやって和気あいあいな始末だ。
 良く見れば隅っこの方に寝袋やトランクや旅行鞄やらがあるではないか。
 お泊り会かよ!
 しかもナンデ神霊廟でやるんだよ!!
 説明が必要だよね君達!!!

 私が頭をグルグル回してるのを知ってかしらずか、十六夜咲夜は言った。

「どうしましょうか?」

 それに対して冷たい声で対応したのは優曇華院だ。 

「あんまりおもしろくない方向に予定通りですね」
「それによりにもよって、キョンシーですみょん。だからこのまま住み込み継続でいいんじゃないですかねみょん」
「魂魄妖夢はなんですか、その口調」
「ゲーム中に死んだら罰ゲームで次のクエスト終わるまで変語尾するって事になってるみょん。恥ずかしいみょん」
「ゲームじゃなくていまスグ恥ずか死ね。お前たちもう一回質問してやるから答えるがよい。何やってんの?」
「それは秘密で」
「お前たちがいないの、ちょっとした騒ぎになってるんだけど、なに乙女の女子会開いてるんですかって聞いてるんだ!秘密ですむか!!」
「諸事情があって話せない。それ以上貴方には言えないわ」

 なんて素っ気無い調子で言うから、私は余計にどうしたらいいかわからない。
 そのまま十六夜咲夜は続ける。

「貴方に話したところでイマイチ意味がないのよね。全部わかったところで、誰が貴方のことを信じるの。行方不明者が自分のウチでゲームやってた、なんて射命丸文だって飛びつかないわよ」
「そ、それは……青娥様とか」
「邪仙がわかってもオオカミ少年が増えるだけだと思わなくって?」
「青娥様の事悪くいうのは、ミンチだよ。どれぐらいの大きさになりたいんだ、オマエ」
「6対1なことは承知で言ってるのかしら、阿求の書いた通り脳みそ足らずなのね貴方」
「むぅ。ぐぐ……」

 流石に分が悪い。しかも結構な実力者揃いである。
 私だって幻想郷に来てから日も経ち妖力もついて、今では脳みそ足らずよりは一歩普通に近づいてるんだけど、そんな弁解したって鼻で笑われちゃうんだろう。
 何人かいると、文殊さんの知恵なのだ。

「よって私達はここでの籠城を続けるし、私も能力を使えばまた別の場所に移動することは容易なのよ。どうぞ私達がいた事をお話になってまたいらっしゃい。蛻の殻ですけどね」
「あ、次、ラオシャンロン行きたいんでバトル展開はそれ終わってからでいいですかおねーさん」
「黙ってなさい猫女」
「そうだ、魂魄妖夢!おまえこそゲームしてる場合じゃないぞ!西行寺幽々子、オマエがいなくて結構ショックっぽかったぞ!!」
「え」
「カレーもロクにつくれてませんよ!さっさと帰れ!!」
「ふぅん。そうですかみょん。そうかそうか」

 そういって、魂魄妖夢は嬉しそうに笑う。
 なんだよその反応。

「帰らないのか……?」
「ええ。まだ帰りませんよ。帰りませんみょん」

 ゲームからラッパのような音が聞こえた。
 ぱっふぉふぉー……
 それっきり魂魄妖夢は黙ってボタンを押すマシーンと化した。

「紅茶、飲んだら主の場所に帰りなさいキョンシー。貴方は絆を疑うこともなく動き続けるだけなんだから、普段どおり遊ばれてる方がいいでしょう」

 ん、絆?また聞いたフレーズだ。
 そんなに重要な事なのか?

「絆って従い動き利益を出すことだって聞いたぞ」
「それで?」
「だから私は我が主の為に動き続けるのだ。いいだろう、私は遊びきるぞ。何を企んでるかわからないし、誰にも信じられないかもしれないがな、走り回るのはキョンシーの十八番なのだ!」
「動くだけなら時計の針も同じよ。私達はね、秒針ではないからここにいるの。B級風情が理解しようと思うなよ」
「わかりづらい例え使ってはぐらかすなよこのアホメイド!紅茶美味しかったですごちそうさまでした!!」

 私はムカムカしたので背を向けてドアだった所をおもいっきり蹴飛ばして出て行く。
 壁が壊れたりしないで、ヌルッと通り抜けるようだった。
 いつもの廊下。
 振り返ると12番会議室がまるで元通りに取っ手付きのドアで存在していた。
 消えた。逃げられたっていうほうが正しいのかな。

 私はトボトボとゆっくり歩く。
 助走があるほうが自然なように、走る前に整理が必要なのではないか。
 私は、歩く。脳は、走る。
 
 まず、十六夜咲夜の言っていた事で一番違和感があったのは

「私達はここでの籠城を続けるし、私も能力を使えばまた別の場所に移動することは容易なのよ」

 という部分だ……あれ、これで合ってるよな?脳みそに巻き戻し機能があったら便利なのになぁ。

 あれってつまり、十六夜咲夜はこれまで能力を使ってなかったって事なんだよね。
 今は十六夜咲夜は能力を使って一瞬で逃げた訳なんだけど、どうやら部屋の壁を消したりしてたのはアホメイドではない。
 だから部屋を作ったのは、中にいたメンバーとは別にいる可能性が高い……ってところまで考えてそういえば優曇華院なんて幻覚使いがいたなぁって思い出す、けどそれも私はすぐに否定。
 消えた順番が3番目ってのがヘンなんだよね。それまで十六夜咲夜と魂魄妖夢はどこにいたの?って話になる。
 いなくなった面々に携帯電話が繋がらなかったのは、地下会議室という電波が通らない場所にいたからなんじゃないか。
 勿論、電源を切ってたらどこにいてもつながらない訳なんだけれど、東風谷早苗はなんと携帯電話を使っていた。
 ここで使っても電波が届かない事をよくよく知っているんだろうけど、不容易じゃないだろうか。うっかり技術革新で電波つながったりしたらバレてしまうわけだ。
 寅丸星はなんか座禅組んでたけど、あいつは計画性が高いようには見えないし自分の大事なモノを無くして部下のネズミに探させてたようなヤツだし第一いなくなったのは今日なんで怪しさは薄い。
 火焔猫燐は論外。みょんみょんうるさかったヤツはもっと論外。
 全員共犯で何故か逃げ隠れしてるんだけど、主犯は別にいると思った方が正しそーだ。

 また、見つかっちゃってもいいやって思ってるのも住み込み継続がどうこう予定がどうこうって辺りでわかった。
 見つからない方がいいけど、見つかってもいい作戦なのであろう。
 それってどういう事だ?
 見つからなくても見つかっても良い作戦。したがって、もしかしたら私という一般認知度が低い存在以外に見つかってたら彼女らは家に帰ったかもしれないのだ。
 わ、私、そんなにミソッカス扱いされてるのか改めてショックー……
 ま、どーでもいいですけど世間とか世界とか。
 付随して、多分「絆」がある程度関係があるって事だ。
 絆とは束縛とか呪縛とかまぁそんなのから発展して利益をもたらす関係、みたいなやつだってこと。
 便利な言葉だなーとも思うんだけど、どっちかというとマイナスだよね。
 多分「友情」も「世間とのしがらみ」も「上下関係」も「協力」も「ボランティアとか支援とか」もぜーーーんぶ「絆」って言えちゃう訳。
 それも希望じゃなくて呪いだ。
 従者ってつまり、絆なんだなきっと。
 何となく西行寺が言っていた事がわかる。あ、幽々子様って言うべきかもやっぱスゴイなあの亡霊ほんと面倒なんであいつが解決すればいいのに。
 
 私はそこまで考えながらたどり着いてしまった。
 自分の絆の有りかに。
 やたらラメラメファンシーなハートマークと星柄をあしらった「霍青娥」のネームプレート。
 私は青娥様に考えたことや見たことを伝えて、それで役目を終えるだろう。
 絆の下から上へ。我が主に伝えることでこの事件から私は離れるんだろう。
 私は青娥様の部屋のドアを開ける。

「あ、噂のキョンシーちゃんか」
「うわ、ほんとだ、すっごいカワイイ!仙人さんほんと怖い人だね!」
「うふふ、そうでしょう。めちゃ最強ハイパーグレート超絶グランプリティーMAXで超弩級革新的URよ」

 まーた見慣れないのがいるよー!んもー!!
 青娥様の他に部屋には人間が2人いた。
 一人は金髪に卵の殻でもイメージしてるみたいなふざけた布帽子をかぶって紫のブラウスと強調したバストとスタイルがセクシーな西洋人。
 一人はシルクハットに赤いネクタイとベストにスカートというなんかOLなんだかギャンブラーなんだかマフィアなんだかみたいなカッコイイ男装風にショート風で片側まとめた栗茶毛の東洋人。
 いきなりペタペタ体中触られて弄られてなんか服の中にまで手突っ込まれて、私はめちゃ最強超絶なんとかかんとか不機嫌です青娥様。
 って思ってたらそのスキンシップに青娥様まで混じってきて(ここから先はお見せすることが出来ません、ごめんねー)って隅までやりきって結局1時間半ぐらい経過する。
 いそいそと服の乱れを直し始めた人間2人はサラッと自己紹介をする。

「あ、そういえば名乗ってもなかったね。いやー、久々にびしょびしょだ。んっと。始めまして、私は宇佐見蓮子」
「わたしはマエリベリー・ハーン、女子大生よ。お電話ぶりね。メリーって呼んでね」
「2人は……」
「「ヒフッキュアー♪」」

 ワォ……
 色々と遅い!


☆6

 無駄に時間がたった気がしてならないが、とりあえずメリーは本当にやってきたのだった。
 なんというか、コマが全部揃ったってムード。
 このヒフッキュアーなる女子大生達は何か重大なヒントを持っている。
 多分!!!

「で、ここをこうして、点を結ぶと、出来上がりよー」
「術式って素材があれば後は結構楽なんだ、こりゃいいね」
「単位ガッポガポよ。サボってても気づかれないって素敵!キセキだわ!!」
「こんなの序の口。仙道はもっと奥深いの、うふふ」

 2人は青娥様から呪符の作り方を教わっている。
 お札の素材がまず大変なので外来に戻ったところでなかなか作れないだろうけど、青娥様は白紙札を何枚も渡してしまいそうなんで人間界は多少パニックになるだろうって思う。
 それぐらい強力なのだ。オカルト!

「そういえば、キョンシーもこれで操ってるんですよね?」
「殆どそうなるんだけど、よしかちゃんは別。この子、死ぬ前がかなりの妖力術力の持ち主だったから、作って幻想郷入りした直後は設定の必要があったんだけど」
「今は違うと」
「大部分は自分勝手に動くようになっちゃったわー。流石って感じ。私が札に命をかけば最優先に従うけど、それじゃ面白くないのよ」
「人工知能以上まで思考伝達が回復してるってスゴイですね。なるほど、めちゃ超絶なんとかキョンシーってそういう所まで指しているわけだ」
「めちゃ最強ハイパーアメージンググレート超絶グランプリティーMAXテラアルティメットで超弩級革新的無量大数ファタンジックパーフェクトUR、よ」
「求聞口授とだいぶ違うのね。原作は間に合ってないじゃない」
「阿求と神主の連携がとれてないんだよ、きっとさ」

 私はなんとなく話の輪に入れてないので突撃する。

「なんか聞きなれないんだけど、原作とか阿求と神主って何がよ?」

 髪の毛が茶の男装の方が私に振り返りながら指をさして言う。

「君達……いや、私達もだけれど、幻想郷は外の世界に観察されてるんだよ」
「え、何それストーカーってヤツですか」
「多少近いんだよね。幻想郷から見れば外来なんだけど、それは外来から見ればこっちが外来な訳だ」
「ややこしいな」
「キョンシーちゃん、わかりやすくいうとね、貴方ファミ通読んでるんでしょ?」
「ああ、外来からちょこちょこ古いのが入ってきてるぞ」
「同様に、文々丸新聞も外来の人達はバックナンバーを読んでいる」
「あ、そういう事か。こっちだけ色々入荷してるんじゃなくて、向こうも向こうで遅れて取り入れていると」
「まぁ、そんな感じ。君が歴史に詳しければ日本の鎖国令辺りを例えに出せばいいんだけど、その説明が更に必要になるかな」
「蓮子の喩え話、わかりづらいからいいわよいいわよ」
「あ、そう?」

 茶髪は腕をラーメン屋さんみたいに組み直して話を続けた。
 それにしてもそのポーズ似合うな。胸があんまりないからかな。

「で、幻想郷に異変が起きると君達の言う外来……ややこしいな、一般世界って言い直すよ。実は一般世界の人達は幻想郷の異変をゲームを通じて知ってるんだよ」
「外来に我々の観測者がいるのか?」
「神主って言われてる人がシューティングゲームを作っている。それが原作って呼ばれている訳。古くは紅霧異変かな。豊聡耳神子復活とか、人気取り合戦とかもゲームとして一般世界では認知される。神主は阿求とつながりがあるらしいんだよね」
「アマノジャクが反旗した辺りまで、わたし達は知っているわよ」
「我々が出てくるゲームなんて、ファミ通にはのってなかったけどなぁ」
「インディーズとして発売されているからね。マニアックなオカルトソフトで本来は済むハズなんだけど、君達がキュートだからアキバ系には深く浸透してる。聖白蓮降臨辺りまでは一般世界では常識の域だね」

 マジでかー!?
 こっちには物体や新聞を通じて伝わっている、あっちでは我々の事がゲームの中の世界として伝わっている。
 これも絆ってやつ?なんて無理やりつなげようと思ったけど、どうやらそれも薄れてるらしいことをメリーが言った。

「でも、神主がどうにもめっきりお疲れみたいで最近情報更新が遅いのよね」
「原作あり気だし、原作に興味が示されないと幻想郷は一般世界に知られる術を失う。そして忘れされるって事がそろそろ起きそうなんだ」
「別にいいですけど」
「キョンシーちゃんはまだ楽観的でいいわねー」
「ま、元々死んでますし!」

 私の取り柄は何も考えてなさそーな事。
 そういう風にみられているみたいだなふむふむ。
 青娥様は2人に敢えて喋らせているみたいで、ここまで無言を貫いている。
 というより、吟味しているみたいにこっそりと舌を一度なめ釣り回した。
 茶髪は気づいていない様子で、ラーメン屋店主のポーズから芥川龍之介みたいな頬杖に切り替えながら話す。

「創作の勢いも落ちちゃってるからなぁ。時間の問題って言われるのもムリはないよね」
「はいストップー!創作ってなんですかー!辞書よろしく説明どうぞ!!」
「一言で言えば創作っていうのは、原作を元にした空想で物語を作る事」
「同人誌なんて言われているわね。原作を作って発表している神主とは別に、幻想郷の観測もどきを発表している人が何千人といる訳」
「うーんと、原作が柴田先生の漫画で創作は柴田先生の漫画もどきを別の人が関係なしに描くって事?」
「え、それどういう事?」
「キョンシーちゃんたまに変なフレーズ使うわね。バグフィックスしきれてないわよ、青娥さん」
「よしかちゃんはカワイイので問題ありません」
「えへへ」
「話戻すよ。創作は殆どの場合がウソの話で原作を見た妄想にすぎない」
「だから、薄っぺらな性的な創作が多いの」
「因みに、私とメリーも幻想郷に来た時から神主の観測対象になってて、一般世界にいる間の事まで含めて原作で発表されてる」
「性的な創作もされちゃって、初めて見た時は青ざめたわ。薬のガンギメっぷりなら界隈随一よ」
「ついでに、しょっちゅう私達は幻想郷滅ぼしてるよね」
「ねー」

 サラッと怖いことを仰る。

「突き詰めていくと、幻想郷はまるで原作の世界線とは別の世界戦が多重構造で存在し、無数のルートと無数の原作者によって繰り広げられる壮大な世界式とも言えるかもってのは私の考察のひとつなんだよね。さっきいったような私達が性的屈折してたり死んでたりする世界も実は存在していてしかし私の世界線は違うと。今、君が体験している従者スレイヤー事件も原作かもしれないし創作かもしれないけど実際に起こっていて、したがって私達は常に生きているのか死んでいるのか観測されているのかいないのかわからなくなるという。もしかしたら私もゲームかラノベか漫画のキャラクターにすぎないのかもしれないとかんがえるのは至ってまっとうな思考回路と言え――」
「蓮子、それ以上はいけない。厨二病乙」

 なんかいけない事があったらしい。
 私の思考は途中から止まっていたので助かった。
 何故止めてたかっていうと、別の事を考えていたからだ。
 あ、止めてなかったなコレ。別の事考えてたんだ!

 何を考えてたかっていうと、私はとりあえず原作というヤツを見てみたい。
 この2人が青娥様の部屋にやってきたのは偶然ではない。それは必然なんじゃないか。絆なのではないか。
 絆が事件の鍵を握るなら、このレズキュアだっけ?なんかそんなような組織の女子大生2人はキーだ。
 鍵穴は今の原作の話。そう、外来の話はきっと役に立つ。
 この2つを差し込まないといけない。
 でも、どうやって?
 原作とやらを持ってきてもらえばいいのだろうけど、承諾してもらえるのか。そもそも原作を動かすハードは何なんだ。メガドライブとかPCエンジンでいいんだろうか?
 考えすぎかなーうーんまずどこからどーすればーうごごごごごー……
 と、首を捻っていたら

「ねぇ、お二人様、よしかちゃんにその原作とか創作とか見せてあげてちょうだいよ」

 なんてサラッと言うから青娥様は怖いのだ。

「あ、いいっすよ」
「青娥さんも一緒に来ます?さっき、『艦これ』に興味あるって話してたじゃないですか」
「ま、私、外来なんて朝飯前でいけるから自分で調べに行くわー。太子様に自宅待機って言われてるから、私はお留守番するわよ。よしかちゃんならいなくても皆納得してもらえるからOK」
「え、青娥様そんな手頃に外来にいけるの?」
「貴方に呪力を贈って強化する程度に楽ちん。主の能力ぐらい覚えているわよねー?」
「壁をすり抜けられる程度の能力」
「リピートアフターミー。世界は壁で出来ている」
「「「世界は壁で出来ている」」」
「私はその幻想をぶちこわす」
「「「その幻想をぶちこわす!」」」

 いえーい、ビシバシグッグ。
 そして真顔。

「私達2人もその壁抜けの力でサクッとここまで連れてこられたんだよね」
「最初びっくりしたわ。普段なら結界の抜け穴をまず探さないといけないんだけど、あきばお~辺りの路地を歩いてたらイキナリくっぱぁ!って穴が空いて青娥さん出てくるんだもん」
「ホント最初はホラーになるかと思ったよ。で、幻想郷に連れてってもらえるって話になって、君のところにメリーが電話したって訳」
「青娥様そんな事してたんですか」
「うっふふー」
「青娥さん、場所さっきと同じ所で出来ますか?」
「秋葉原でいいのね。いとも容易く可能だわ」

 青娥様はそう言って簪がわりの壁抜けアイテムをブンブン振ったらサクッとワープゾーンみたいなのが広がる。
 裂け目からは道路と遠く彼方にメイドさんの姿が見える。
 八雲紫とか博麗霊夢が聞いたら泣いちゃいそうな事を平気でなさる。
 レズキュアはもうなんの躊躇もなく裂け目に飛び込んだ。
 うぉー、なんか外来に行くなんて実感わかないなぁ……なんて思いながらもついていこうとしたら、青娥様がマジメな声でこっそり耳打ちをする。

「芳香、貴方に行かせるのはなんでだと思う?」
「我々自宅待機の命があるけど、私はザコBみたいな存在だから皆気にならないってさっき青娥様が言ったんじゃないですかー。青娥様もキョンシーになりかけですかね?ボケた??」
「素直に信じすぎ。正解は、私は知りすぎているからよ。異変を難なく解決出来るからなの」
「ハェッ!?じゃあ解決してくださいよ!!行く意味ねーじゃんですよ!!!」
「それなら八雲紫がなんでも解決できちゃうと思わない?」
「え、でもあいつ意外と小市民というか情けないというか」
「貴方、西行寺幽々子にも同じこと言われたハズよ。私も彼女同様にかなり近い所までわかっている。だから行かないのよ」
「なんで皆、わかってるならいかないんだ」
「推理小説を読んだ読者が、開始数ページで犯人やトリックがわかっても、第二第三の殺人事件が起こるのと同じよ。それが楽しいのよ、眺めているほうがずっと」
「私はそんなの嫌だぞ」
「だから、貴方が行かなくてはならない。解かなくてはならない。その資格が、貴方にある」
「青娥様の命であれば」
「あ、そうそう」

 そういうと私の額の御札に青娥様は触って、帽子の中に折って入れ込んだ。

「外来で御札つけて歩きまわってたらそれだけで不審者だものね」
「私、不審ですかね」
「秋葉原では案外大歓迎されるかもね?」

 そういって不敵に笑ったあと、私をドンッ!と突き押した。
 私は結界の裂け目を通過する。
 不思議な感覚も何もなく、ただただトンネルを抜けたみたいな何の当たり障りのないように。

「晩御飯も食べてらっしゃいな。でも今日中に帰ってくるのよー」

 イエッサー。
 裂け目はヒュッと閉じた。
 晴れ時々曇り空、ビルと呼ばれる建造物と出店のような機械のお店が点々と見える。裏路地のせいかお店は少ないっぽい。
 振り向くとレズキュアが手を伸ばして言う。

「「ようこそ、秋葉原へ」」


☆7


 メリーの方が原作を持っているらしく、家まで取りに帰ってしまった。
 だったら家まで送り届けてもらえばよかったのに、と話したら

「だって、自宅の住所知られるのは嫌じゃない?お洗濯干しっぱなしだし……」

 などとあんだけキャッキャウフフしておいて良く言うよな、このレズキュアはとか思ったけど黙って帰らせた。
 そういう事情もあって、私は茶髪に連れられてメロンブックスアキバ店に来ている。
 狭い。
 人間の汗の薫りがそこそこに満ちていて、辺り一面アニメだか漫画だか小説の挿絵だかが洗脳するかのように並べられている。

「ここなら創作がわかりやすいからね。あ、コーナー変わってるなぁ。前はこのあたり全部幻想郷の創作だったのに」

 茶髪が指さしたところには、色々な砲台を取り付けた様々な女の子が女学生服または破廉恥な格好でニコニコしてたり戦ってたりしている表紙の本が山積みされていた。
 ものすごい量である、これが全部売れるのか?
 幻想郷では信じられない事だ。
 茶髪に連れられて通路をごめんなさってーとか言いながら縮こまって歩く。
 ニコマキ合同だとかエリチカ合同だとかいう分厚い本のコーナーがやたら豪勢にセットまで作ってあって、今人気なのかな?
 っていうか女学生服ばっかりだな!
 なんて私が思ってるのを知らない茶髪に手招きされて、その一角を見てショックを受ける。
 東方project例大祭コーナーと書かれた少し汚れたポップの下に、ズララーッと博麗霊夢や霧雨魔理沙や紅魔館の連中や……私の知っている面々を色々な画風で描いた本が並んでいる。

「これが創作ね。何か一言どうぞ」
「たまげた」
「だよね。ここ一般コーナーだし、これだけ隅っこに追いやられているんだけどそれでもまだ一大勢力だなぁって思うよ」
「ちょっとコレとか霧雨魔理沙が美人に描かれすぎてませんかね?」
「一方でオッサンになってたり魚になってたりもするんだよ、ホラ」
「うげぇ、世紀末だなぁ」
「こういうのはパロディってジャンル。ようするに、原作を元に思いっきりギャグにしてる訳」
「柴田先生もギャグだもんな。度胸あるよね」
「なけりゃ創作は出来ないもんだよ。そこの端っこは小説だから、私達の表紙が多いと思うよ」
「お、茶髪の表紙のあるな。オマエも美人に描かれすぎだぞー」
「もしかして君、私の名前覚えてないな?宇佐見蓮子って特徴的な名前なハズなんだけどね、せっかくなんだから覚えてよ」

 わかりました、レンコンさん。
 レンコンはそれから原作コーナーに連れてってくれる。
 原作はCDケースに入っていて、各異変ごとにまとめられているのだそうだ。
 表紙だけだとイマイチなんだかわからない。

「メリーが持ってきたら、その辺りの漫喫でひと通り見せてあげるよ。ついでにウィキとかも見れば君達がどう伝えられてるかわかるんじゃないかな」
「ありがとうございます!」
「君、声おおきいよ。オタクさんってそういうの過敏に反応するから静かにね」
「妖怪には生きづらい世の中です」
「そういえば、従者スレイヤーって多分元ネタこれだよね」

 レンコンは一般書籍コーナーまで私を連れてきて、分厚い本を手渡してきた。
 帯に凄い小説!って書かれてるから凄いんだろう。
 高層ビルをバックに忍者みたいなのが構えをとっていて、英語でタイトルがかかれている。と、思ったら左上の方にひっそりとカタカナでニンジャスレイヤーって書いてある。
 スレイヤー!

「おお、それっぽい!」
「ふふん、実際スゴイでしょ?これ、最近の流行りモノの小説なんだ。昔からスレイヤーって単語は漫画とかでは使われてきた表現なんだけど、今は殆どこれの事を指すね」
「最近ってどれぐらい?」
「すっごく最近だよ。最後に幻想入りした輝針城の面々よりも後に流行っているから、君達の中で知っているのは恐らく幻想郷と一般世界を行き来しててなおかつ文芸に詳しいヤツだね」

 それって青娥様じゃん。
 まさかの身内が犯人ですか嫌だなぁと早合点しそうになったが違う違う。

「霍青娥が知ったところで狼少年ベム・ベラ・ベロだわ」

 って十六夜咲夜が言っていたではないか。
 言ってたよね?
 大体間違ってない、多分!
 あのアホメイド結構ボロ出してたなぁ。
 主犯が青娥様ないし我々神霊廟の中にいたら、そもそも私はもっと歓迎ムードないし「伝言でもあるのかな?」ぐらいに思われるハズなのだ。
 割りと嫌な方向に敵対した印象だったものな。
 私は小説コーナーの奥に進もうとするが、レンコンに肩を掴まれる。

「そっちはアレよ、R18なところだから……」
「え、行ってはいけないのか?」
「詳細な事は言ったり考えなくていいからね。っていうか行くな」
「なんでよ」
「そのなんというか、私達の名誉のためというかね」
「そんなもの私には関係がない」

 せっかくなんだから私はR18コーナーにも行くぜ!
 振りきって踏み入れるとそこは肌色の空間だった。なんかオレンジがかった肌色。あと白とピンク。
 で、レンコンが嫌がった理由が良くわかって、なんか創作においてはレンコンはビッチ扱い(異常な程やらしい人の意味)されているようなのだ。
 こりゃ本人訴えてもいいんじゃないの?
 私はとりあえずそのへんにおいてあったカゴに入れる。

「え、なんで入れてるの。あとソレは買うな買わないでお願いします何でもしますから」
「ん、今何でもするって言ったね?」
「そういう定番はなんで知ってるんだ君」
「じゃ、ゆうはんゴチで!ゴッチゴチー♪」
「わかったから買わないでね」
「じゃ、こっちのにしよ」
「っていうかどうして買うの。それも神霊廟の創作ばっかりじゃない」
「青娥様へのお土産だからな。青娥様はいっそ身内や自分が載ってる方が興奮すると考慮しました」
「ゲスね」
「それを褒め言葉に生きるぐらいゲスが青娥様なのだ」

 私は10冊ぐらい買ってみたが、しかしながら神霊廟の本って少ないなーとガッカリする。
 当然、本の代金はレンコンに払わせる。弱みを握った感じ。

「まだメリーはこなさそうね。ちょっとゲーセン寄ってこっか。この上のフロアにHEYってでかいのがあるんだ」
「へぇ!ヴァンパイヤセイヴァーと真SAMURAI SPIRITSはありますか?」
「多分あるんじゃないかな」
「キョンシーの同胞が戦ってるらしいのと、SNK高津が出てるんだって聞いてさーやりたかったんだー」
「高津って誰よ」

 ゲームセンターは思ったより暗い雰囲気が漂っていて、黙々と皆画面を見ている。
 ゲームをプレイするとみんなそんな風になっちゃうのかな?コワイ!
 でも、私は100円をもらってちゃりーんとゲームに叩きこむ。
 真SAMURAI SPIRITSは超難しかった。普通に2面で私のSNK高津こと牙神幻十郎は殺されてしまうので、3回目のプレイからもうひたすらバックステップして高津が

「どぅりゃ!どぅりゃ!どぅりゃ!」

 って気合を入れてひたすら敵から逃げる様にレンコンと2人で大爆笑。
 そろそろヴァンパイヤセイヴァーをやりに行こうと思ったら声をかけられてグルッと首を向けるとメリーが大きめの布鞄を持って立っていた。
 そのまま漫画喫茶とやらにダダダダダーッと行って、私はウィキペディアという電子辞書を見せてもらったり原作をプレイしたり漫画(原作監修と創作と両方)を読んだりする。
 私がプレイしてる間、2人が何してたのかは見てなかったけど、なんか後ろで水の音がぴちゃぴちゃとうるさかった。
 漫画喫茶って建付け悪いのかな?
 原作をどれもイージーでささーっとプレイしてみてわかったんだが、これ結構難しい。違う、それもそうだが違う。
 今回の従者スレイヤー事件ってどうやらこのゲームの5面の連中が連れ去られているみたいなのだ。
 だから、火焔猫燐があそこにいたのか。
 もっといえば、永遠亭の場合は正確には従者といえば八意永琳だ。優曇華院がいるのは、従者スレイヤー主犯が5面ボスに限定して声をかけたからだ。
 これでますますどうやら幻想郷と外来のつながりが容易な人物が主犯っぽい事がわかってきた。

 そして神霊廟の話の流れをウィキで見て、原作監修漫画を読んだ時に私は犯人に気づいてしまったのだった。

 多分そういう事なんだろう。外界とのつながりがいとも容易く、そして我々神霊廟で一悶着起こしたい文化的な妖怪。
 後ろから妙に息が荒い声を投げかけられる。

「ふぅ……さて、君は何かわかったかな?」
「うーん、多分ね。いや、あやふやなんだけどさ」
「へぇ、キョンシーちゃんわかっちゃったんだ」
「ま、そういう事にしておいてやろう」
「で、誰?」
「犯人は柴田先生です」

 そうとわかったら、急いで解決しなくちゃならない。
 でも、ゴチの方が大事だ!
 私はレンコンにアキバ名物秋HUBとブラジリアンステーキショップトゥッカーノどっちがいいかをきかれたが問答無用でステーキを選択する。
 最近出来たのだという二号店はそこそこオシャレなバーみたいな雰囲気なんだけど、お肉の量が1ポンドとか書いてあって素敵。

「はぁ、とんだ大出費だよ。君、あんまり注文しないでよ」
「わかっております、時間もないしな」
「すいません、ここ2人はAセットで。あ、エプロンありましたっけあったらください。で、キョンシーちゃんは何」
「ステーキを10ポンドください。ごはんいらないよ、ダイエットしてるんだ」
「ぎゃぼおおおおおおおおおおおおおおーーーーーー」
「ナイストドメ!ナイスよキョンシーちゃん、これで蓮子は私に頼りきりになるわ」
「それはいいことなのか」
「私達の絆は金銭をもってより固くなるわ。貸しは返さないといけないでしょ?それも利子をつけてね」
「メリーからは絶対借りない……絶対借りないんだから……」
「あ、それさっき読んだ。でも負けちゃうんだぞ!」
「覚えてろよ、私達白紙の呪符もらってるんだからな」
「ひええ~」

 そうこうしてるうちに鉄板が5皿ぐらい私の目の前にやってくるから大喜びだ!
 じゅーじゅーと焼ける音がたまらないので私は速攻で口に入れる。
 肉はやっぱりウルトラレアに限りますね!
 メリーが心配そうな目で見てるけど、無視して食べる。
 レンコンは物凄い青ざめた顔をしてるけど、無視して食べる。
 食べ終えるとごちそうさまして私はそそくさと外に出て、携帯電話をかける。

「はろーはろー聞こえますか?」
「電波繋がってるわよー。電波は結界で遮断されないのかしら」
「犯人わかりました、私にもわかりました。説明は出来ませんが、目星はくっきりです」
「そ。じゃあ、今そこに開くからね」

 私はむっ?って思ったが口には出さないでおく。なんで青娥様は私の位置がわかるのだ。
 ぱっくりと裂け目が現れた。

「はい、帰ってどうぞ」
「あ、それとですね、物部様っていますか?」
「あの子が自宅待機してない訳ないじゃない」
「蘇我様も?」
「モチロン」
「それなら、今夜中に解決出来る気がします」
「そのための自宅待機ですからね。みんな待ちに待ってたわよ」
「え、そうなの?青娥様だけじゃなくて??」
「神霊廟に何か曲者が混じっているって最初に気づいたのは太子様の能力だもの。欲を聞き取れるんですもの、従者スレイヤー事件のあった木曜日になるたんびに新しく同じタイプの欲望が増えてたらそりゃ怪しむわよね」
「うっそ、じゃああの無駄会議でなんとかすればよかったじゃないですか」
「太子様は甘い人だから。なんとなく同情しちゃったんじゃない。物部蘇我に言ったらすぐに一網打尽にしようと提案するだろうから」
「余計に私の立場がないんですが」
「いいえ、貴方が決断することが大事なの。私達は知りすぎているから、解決にならないのだわ」
「そこがよくわからないんですよ。なんで知ってると解決しちゃいけないんだ」
「絆がないから。この事件はその為に起こってるから、ただただ解決する事じゃ意味がないの」
「ええ?もう何がなんだか……」
「とりあえず、戻ってらっしゃい。私は元々一網打尽にしたかったのよ」
「う、ううむ」

 ピッ。静寂。
 視線を感じたので振り向くとレンコンとメリーが立っていた。
 2人の女子大生の方が私より絆があるんだし、あんまり知らなそうだし、それでいけば名探偵に相応しいんじゃないか?
 なんて思うんだけど、2人が優しい笑顔で

「さ、行って来なよ。君達の健闘を祈るよ。それとご飯抜いたくらいじゃダイエットにならないからな、あんなに食べてたら」
「キョンシーちゃん、楽しかったわ。また遊びましょ」

 なんて手をふるもんだから、私も手をふり返してしまうわけだ。
 私が行かなくっちゃならないみたい。
 裂け目の中に挨拶をしてから飛び込む。

「ありがとう、メリー!レンコン!またな!!」

 なんかレンコンが「おい待て、私の事結局覚えてないだろ私の名前は――」とか言ってた気がするが、もう私は青娥様の部屋に立っている。
 物部様と蘇我様もいた。

「解決出来ると聞いてな!事と次第によっては承知せんぞ!」
「やってやんよ……」

 私は2人のやる気を確認して、ニッコリ答える。
 これはさっき、創作で覚えた言葉だ。

「これから毎日、家を焼こうぜ」


☆8


 燃えている。
 神霊廟が燃えている。
 文字通り物理的に燃えている。

「お~、良く燃えるのう!」

 と嬉しそうなのが物部様。

「全く、流石我が能力の集大成だなぁ。まるで本物の木のような燃え具合」

 と誇らしげなのが豊聡耳様。

「こいつらどうするんよ。脳みそ焼ききっちまいたいんじゃが」

 と怒っているのが蘇我様。

「ぐっ、こ、殺す、気、なの……」

 と喋れてないのが魂魄妖夢だ。

 私達はすぐに実行した。
 どこに隠れているのかわからないし、例え見つけても逃げられてしまうだけの能力をもったメイド達を部屋から出す方法は私にはひとつしか思いつかなかった。
 部屋から逃げ出させればいいのだ。
 太子様が空間を操って神霊廟を形成している。空間まるごと、太子様が念力みたいなモノで作っているわけで地味にすごいんだけど、だから太子様はいくらでも再構築することが出来る(時間はかかるらしいが)。
 一方、奴らの能力はあくまでも部屋を誤魔化して利用しているにすぎない。
 そこで、神霊廟をまるごと燃やすことにした。
 物部様はそう言った瞬間に大興奮で火の海になるまで時間がかからなかった。
 放火魔代表物部様の術は猛り狂う。
 そこら中燃えているのだから、建物そのものから逃げなくてはならないのでアホメイド達は必ず玄関に出てこなくてはならない。
 二階以上にも火の手をあげてあり、玄関付近が手薄にしておけば出ずにはいられない。火事のさなかにトラップだとか考えらえるような頭脳明晰さだったらこいつらは今回みたいな事件は起こさない。
 で、出てきたところを蘇我様の雷でズドンッ!
 まとめて麻痺した6人は、見事に痙攣して動けない。
 ついでに縄で縛り上げれば、もう女の子というより魚か何かに見えるぐらいだ。地上でビチビチ跳ねる。
 半分霊魂らしい魂魄妖夢だけ、雷の効きが悪かったのか微妙に意識があるが、他は酷くて猟奇趣味連中だったら喜びそうな有り様だった。
 
「この、クソッ……う、う……」
「おう半霊、今からお前らの主がくるからな。正直に顛末を話せよ」
「そんなこ、としたら、どのみ、ち殺、されるものが、出てく、る、かも……」
「そんなのウチらにゃ関係ないんよ!あぁ!?お前らが試したかったんだろ、絆があるのかどうかをよ?なら試しゃええじゃないか、そんで死ぬなら本望じゃろうが、あ!?」
「う、ぐう……」

 こいつら6人の狂言誘拐は、要するに神霊廟に全てを押し付けてちょっとバカンスしちゃおうって具合のモノなのだった。
 6人は全員、異変が最近無いことに退屈していたし、自分がいなくなった時に主人がどんな行動をするのか確かめてみたかったのだ。
 絆があるなら、突然自分がいなくなったりすれば助けを出してくれるだろう。探しまわってくれるだろう。そういうのを期待していたらしい。
 ただの家出に思われたら意味がないし、また狂言誘拐にしても一大事にまでしたくはない。
 そこで、従者スレイヤー推参の名刺の登場ということになる。謎の愉快犯めいた犯人による、要求のない誘拐。
 彼女たちはそれぞれに自ら名刺を書いて置いて、家出すればよかったのだ。紙や文字がバラバラだったのは現地で調達したものに逃げる本人が筆跡を変えて書いたからだ。だから、誘拐された本人の分の指紋だとかしか残らないから犯人が明確に絞れなかった訳。
 後は主犯の能力で我々を化かして部屋に居座り続ければいい。
 外の様子は主犯ないしは後からやってきたメンバーから一週間の様子を聞くことで、情報収集して満足すれば良かったんだろう。
 なんで神霊廟なのか?そこが主犯との利害一致なんだよね。
 主犯は神霊廟を攻めるのに……もっと言ってしまえば我々を追い出すのに「神霊廟こそが従者スレイヤーの犯人にして誘拐犯」にしたかったのだ。
 だから、誰かしらに見つかったら6人には「豊聡耳神子に連れてこられたんですぅ~」とか言えばいいわけだ。
 全責任を我々になすりつけて、この事件は終わる。
 もしも私が部屋を見つけた時に、それが蘇我様だったり太子様だったりしたら、一目散に逃げ出して「命からがら神霊廟から逃げてきた」で筋が通る。
 主犯の声掛けにこいつらは飛びついた。
 自分の価値がどの程度のものか、絆が本当にあるのかを確かめる為に。

 私は至極アホだなぁと思う。

「あのさ、魂魄妖夢さ、西行寺幽々子はなんかまるっとお見通しだったみたいだぞ」
「なん……ですって。じゃあ、どうして助けに、こなかったんだ幽々子様は」
「オマエが嫌いだからって言いたいところなんだけど、西行寺幽々子は悲しんでたみたいだった。事件の犯人は殺しちゃうとも言ってた」
「……」
「オマエ、絆を裏切っちゃてるんだよね。絆って束縛なんだって、しがらみなんだとも言ってた気がする。あの名刺を置いた時点で、しがらみを断ち切っちゃってるんだよ。従者スレイヤーって犯行名、主犯が提案したでしょ」
「あぁ……」
「それ皮肉だからね。のこのこ付いてきたこと、マヌケって思われてんだよ」
「でも、幽々子様は私達にたどり、着かなかった。ここにいる6人、全員発見される事がなかった。幽々子様は、わかってたのにこなかった!」

 大声が出せる程度には魂魄妖夢は回復したっぽい。
 ま、縄は解けまい。なにせ青娥様が縛ってるんだからね!
 
「わかってる人達は、そんなだから解決したくなかったんだよ。オマエ達のワガママだもん。かまってちゃんって外来では言うんだぞソレ。そりゃいなくなって苦労する事もあったろうけど、内心自然に解決するだろうってうすうす思ってたんじゃないか。どこの主人もさ」
「そんなの、ただ、探す手間を省いただけだろう!私達は毎週毎週次のメンツが入ってくるたびに、大して探されていない報告を聞いてきたんだ。幽々子様は私の事なんてどうでも良いんだ」
「オマエ、幽々子様がショックを受けたって私が言った時、嬉しかったろ」
「そ、そりゃそうだけど、結局助けに来てないじゃないか!」
「他の連中の主人はどうか知らないけどね、少なくとも幽々子は悲しかったんだよ。オマエが勝手に家出したのお見通しだったんだからさ、つまりそれって幽々子の事信用してないって事じゃんか。確かめないとわからないって事じゃんか。悲しいってずっとずっと深いんだぞ半霊」
「……」
「この大馬鹿。まぁ、正直に白状しなよ。そんで殺されなかったらカレー作ってあげてください。私もゴチになる約束なんだ」

 魂魄妖夢は少しして、エグエグと声を殺すようにして泣いた。幼い。
 こいつは殺される覚悟で正直に言ってくれるだろう。
 さて。
 主犯を探さなくっちゃならない。
 でもこれは全く難なく出来て、私の鼻はタヌキ妖怪が集まっている場所を特定している。
 そう遠くない森林の中にいるっぽい。術が解除されたり神霊廟が燃えてるの見たりして焦ってるかも。
 太子様が少しマジメな顔で近づいてくる。

「大詰めとしましょう。宮古芳香、やることはわかっていますね」
「イエッサー。たぬき汁に今夜はしましょう」
「我も行きたいぞ太子様!タヌキのローストならお任せあれ!」
「布都はダメだよ。この炎、君の術なんだからこの子達を引き渡したら消してもらわないと」

 この火災は共犯6人がうっかり燃やしちゃったってことにする予定なのだ。ちょっとした罰の追加である。
 物部様は術者としては優秀なのに、アホだなぁ。

「ちぇっ、つまらんのう」
「屠自古は芳香についていってもいいけどどうする?私が神霊廟の主としてここに残るから、ムシャクシャしてるなら討伐に行っていいよ」
「ムシャクシャしてるからここに残って、こいつらが引きずられて帰るの見届けるよ。ケジメはしっかりつけんとな」
「君は昔っから怖いなぁ」
「夜もふけています。タヌキ退治は迅速にしましょうか」

 鋭い目つきで青娥様は言った。

「宮古芳香に命じます、この度の主犯、二ッ岩マミゾウに制裁を」

 IEEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!

 待ってました!
 私は大きく頷いた。
 キョンシーは術者の命には絶対フルパワーなのだ!!

「走れ、宮古芳香、走れ!」


☆9


「理由なんて聞くのか」
「そうだ。なんとなくわかるんだけど、直接犯人が言うのが筋だ。オマエ、このミステリーがすごいだかなんだか読んでたからそういう道理を知ってるだろうが」
「妙に覚えがいいのうキョンシー……」
「柴田先生じゃなくてガッカリしてるんだ。さっさと言って頂戴」

 二ッ岩マミゾウは立膝をついてどっかりと大きな岩盤に座っていた。いや、正確には自分の尻尾に座っているって感じだろうか。
 たき火のパチパチという音が耳障りだ。
 うっすらと表情が見える程度の明かり。
 我々はお互いに笑っていた。

 私が察知してからマミゾウに動きがなかった。
 諦める、というよりはもう迎え撃つという気概なんだろう。
 私が1分ぐらいで到着したのにもさして驚いた様子はなかった。
 柴田先生ことマミゾウはキセルを吸ってから、ぽっかりと吐き出して自白する。

「そもそも、儂が幻想郷にやってきたのは――」
「封獣ぬえに妖怪の威厳を調整するために呼び寄せられたんだろ。で、あっさりと博麗霊夢に負けてつるんでる」
「おいおい、なんだなんだ質問しておいてお前さんが喋るんか」
「あ、ごめんごめん知ってたからなー」
「まぁ、そういうこった。儂は長らく、ぬえからの依頼をクリア出来ずにいたわけだ。それでも良いという感覚だった。鈴奈庵で暇を潰せれば充分面白おかしく過ごせたしな」
「でも、それでは封獣ぬえとの絆にヒビが入る」
「加えて、幻想郷は近頃じゃ忘れ去られそうになっておった」
「なんか女子高生服のアイドルとか、武器持った女達の創作ばかりになってたもんな」
「なるほど、お主、外来を見てきたな」
「えっへん!」
「なら話は早かろう。幻想郷は忘れ去られそうになるもの達が、最後の輝きをとやってくる隔離の地。それが忘れ去られては本末転倒なんじゃ。八雲紫の大結界そのものが忘れ去られては、儂の存在自体も危うくなる。だから異変が起きるのだ、忘れられぬ為に」
「だからって、こんな適当な異変を起こすこともないだろー!」
「外来のやつらは、絆というか友情というか、そういうのが大層好きだったろう。この異変にも食いつきはいいハズじゃよ」

 そうか?っとちょっと考えてみたが、そうかもしれない。
 レンコンとメリーなんて、度が過ぎてるぐらいに仲が良かったし創作ではそれが更に爆発したみたいになってたもんな。
 外来の連中は、幻想郷よりも――魂魄妖夢達よりも絆に敏感で、信じきれていないのかもしれない。

「儂は外来を久々に見に行って焦ったよ。なにせ山のように溢れ、しかも売り切れ続出であったハズの幻想郷を象った商品が、人気3番手4番手に甘んじて売れ残っている始末」
「本当は今までの組織全てを巻き込んだ大乱闘をやりたかったんだな。ちょうど伊吹萃香が起こしたような」
「はっはっは!お主なんぞにそこまで見破られてるとは、儂も情けないモンだなぁ」
「宮古芳香、探偵さ」
「そうとも!人気取り合戦では動かない連中もいたが、これならば全ての組織が動き入り乱れて弾幕合戦に日夜なるだろうとな!!」

 ところがそうは行かなかった。
 みんな、そんなに真剣に探したりすることをしなかった。
 マミゾウは忘れていたのだ、幻想郷の連中というのが飲兵衛にして自分主体で生きているってことを。
 絆なんてのは言葉にしたり作為したりした瞬間に終わってしまうってことを。
 忘れ去られた絆に対しては、執着なんてされないことを。

「さぁ、長話はもういいじゃろ。儂はしばらく外来に逃げ延びる」
「へぇ」

 詳しくはわからないけど、マミゾウは結界を「化かす」事で出入りしてるんだろうって青娥様が言ってたような言ってなかったような。
 壁抜けといい、応用が多い技能は羨ましい。
 
「差し向けた追っ手がお主だけってのが、神子殿の浅はかさよ。出かける前にいっちょ弾幕勝負と――」
「いかないんだなぁ、これが」

 頸動脈がギュルギュルと流れているのが感じられる。
 マミゾウの首は案外とほっそりしていて、これならサクッと折れちゃうから加減しないといけない。
 術者に命じられたキョンシーのスピードと体術をなめてはいけない。
 私はマミゾウが言い終えて、弾幕勝負に持ち込みスペルカード宣言をする前に間合いをドッとつめて腹に拳を叩き込んだ。
 こうすると、くの字になって殴ったビール腹のあたりをついつい手でかばっちゃう。
 無防備な首をガッと両手でしめあげればおしまい!
 ジタバタして爪をたてたり蹴飛ばしたりするが、私の死後硬直めいた硬さには全く通じないし離すわけがない。
 術を使う間も与えなかった。ヴァンパイヤセイヴァーで例えれば0フレームで私は首絞めまでやってのけるって感じだね。開始0秒でKOできちゃうってチートどころじゃないぞ私!
 とりあえず気絶させればいいかなー、なんて思ってたんだけどそこに青娥様がやってきた。

「思ったよりあっさり倒しちゃってるのね」
「あ、青娥様、捕らえましたよ。とりあえずこのまま気絶させますねー」
「違うわ。折っちゃいなさい」

 ん、んん?なんて?

「首の骨を折りなさい。で、脳天を樹の枝にぶっさして野ざらしにしておくのよ。我々に牙を向けた見せしめとしてね」

 そこまでするのか?
 私は躊躇する。
 ちょっと待て、殺すのか!?

「あの、青娥様?気絶させて持ってくんじゃダメですか?」
「ダメよー。太子様は優しいから許しちゃうわ。爪が甘いから宗教戦争だったりで何度も反抗されたりしちゃうのよね。キッチリ殺すときは殺さないと!」

 邪仙モードだ。いかん。マジで殺気が青娥様から立ち上っている。
 長く締めすぎててマミゾウの顔も青くなってきた。ヨダレも垂れているし目が血走しり初めて苦しそうで蹴りを入れる気力がなくなっている。
 私が考えすぎると醜く窒息死する。

「私は殺してしまうでしょう」

 西行寺幽々子の声も頭のなかでよぎった。解決には何かの死が必要なのか。
 私はしょうがないかなーとも思う。
 そもそも、私達に風当たりが強くなるような事件を仕向けたのはマミゾウなのだ。
 自業自得だよね。屠自古様も言っていた気がする、絆の為に死ぬなら本望だろうがって。
 マミゾウはここで死ぬのが良いのだ。
 もう役目は終わってるし。
 大丈夫大丈夫、創作の世界では何度もメリーもレンコンも太子様も西行寺幽々子も青娥様も私も死んでたよ。
 化け物一匹死んだって、問題ないのだ。
 よし、やるぞ。

 でも、マミゾウが息も絶え絶えに

「ぬえ……ごめん……ごめん……」

 なんて言うから私は折るのをやめる。
 手を緩めて、マミゾウが息を大きく吸ったのを確認してから頭をガシガシと折れない程度に振って気絶させる。
 ドサリッと力なくマミゾウは地面に横たわるが死んでいない。

「何してるの?」

 そりゃ、青娥様は怒るよね。
 でも私はもう殺さないことに決めた。マミゾウは生かす。
 誰も死ぬことなくこの事件は終わるべきなのだ。
 女の子がワガママで死んでいては、世界は男だけで出来てしまう。ホモは嫌だ、汚い。

「さ、青娥様、太子様のところに戻りましょう。事件は終わりました」
「終わってないわよ。罪には罰を与えないと。だから幻想郷は刺激が足りないのよ」
「青娥様まで幻想郷の心配してるんですか」
「いいえ、私自身の為よ。害は消す、徹底的に、末代までやらなければならない」
「そんな大げさですよ……」
「宮古芳香に命じます。マミゾウの頭をその脚で叩き割りなさい」

 私は頭を踏まない。
 目から鼻から皮膚全体からダラダラと汁を垂れ流し震えているマミゾウを、私は抱え上げる。

「芳香……」

「いかんのじゃ」

 私は叫ぶ。

「死ぬのはいかんのじゃ!それだけは、いかんのじゃ!!」


☆10


 木曜日なのでそろそろファミ通を読みに行きたいのだが、今日は青娥様が墓地までやってきていたので動かないでいる。
 私は私の名前が書かれた墓標の上に腰掛け、青娥様はその墓石を磨いている。
 この墓標は本当の私の墓じゃなく、目印に作ってもらったものだ。ちょっと不吉だけどね。
 青い空と白い雲は私の平和であり、ボーッとしていていいのだけれど、そうする訳にもいかないかなぁなんて思っている。

 従者スレイヤー異変は、あの夜から一週間が経ってしれっと忘れ去られた。
 各々の主達が逃げ出した従者を許し、その後何事もなくすんでいるようだった。
 太子様が

「この子達も大概阿呆であるが、そうしたストレスを追わせていた君達にも責任があると思うね」

 なーんて言って、話をまとめたもんだからレミリア・スカーレットも一番落雷のダメージを受けてビクンビクンッと泡ふいて小便漏らしながら痙攣する十六夜咲夜を泣きじゃくりながら片手で持ち帰ったそうな。
 魂魄妖夢も無事殺されずにすんだ。
 今度の日曜日には妖夢がお詫びにスペシャルなカレーを神霊廟のみんなにご馳走してくれることになっている。
 楽しみ!

 マミゾウからは月曜日に電話が来た。
 スマンかった、ありがとう。
 それだけ聞こえて電話は切れてしまったんだけど、昨日すっかり元通りの神霊廟に色紙が届いた。
 『こんな話にマジになっちゃってどーするの』という謎の文句とタヌキの絵がかかれた柴田先生のサイン色紙だ。
 左下の方にサインペンで、『みやこよしかちゃんへ』って書いてある。
 私は太子に頼んで神霊廟の宝物庫に加えてもらった。
 私はずっと宝物にするだろう。物部様がうっかり燃やしたら、その時は流石に殺す。

 青娥様は無言で石を洗い続けている。
 私はそれを上から見下ろす形だ。
 実は青娥様とちゃんと会ったのは一週間ぶりだった。
 あの夜、私がマミゾウを殺さずにだっこしたまま逃げまわって逃げまわってなんとか神霊廟にたどり着いて太子様に保護してもらってからずっと会ってない。
 いや、会ってなかった。会わないようにしていた。
 だから青娥様の方からやってきたときはびっくりしたし、バラバラに解体されるんじゃないかと思ってハラハラしたんだけど、黙々と墓石を洗っている。

 私は思いついたことをいうことにした。

「青娥様」
「……なに?」
「怒ってますか」
「怒っていない、とは言えないわね」
「そりゃそうですよね。私は裏切ってしまいました」
「ええ、そうよ、びっくりした。まさか我が命を聞かないなんて」
「とんだ失敗作ですよね私は。従者スレイヤーは最後までまんまとやってくれました」

 私は息を吸ってはいて、それから言った。

「青娥様の言うことを聞かなかった。私達の絆は終わってしまった」

 きょとんとした青娥様と久しぶりに目があった。
 どうしてそんなに驚いてるの?
 私は続ける。

「絆って束縛でしがらみで呪縛で、どんなモノや事に対しても存在してるんですよね。だから私と異変に絆が出来た瞬間からそれは鎖でつながるように青娥様にもつながっていたハズなんです」
「それで?」
「私、外来で自分の出てるゲームをやって怖くなりました。文献を読んでもっともっと。いくらなんでも今の私は頭が良すぎる」
「それで?」
「青娥様は私を操っていたのでしょう?どこからかわかりませんけど、もしかすると今も私は私のつもりでも青娥様が操っているのかもしれない」
「それで?」
「なのに私は裏切ってしまった。マミゾウは殺さなくてはならなかったのに、殺さなかった。絆を断ち切ってしまったんだ」
「それで?」
「だから私達はおしまいなんです。暗い暗い終わりしか無い。青娥様、私の事をお墓に埋めにきたのでしょうに」

 青娥様は答えない。
 黙っている。
 そして立ち上がり、私の事を抱え上げた。
 それからグッと近づけて抱きしめて、

「バカね。絆ってモノじゃないのよ。切れたりなんてしないのよ」

 私は何を言われたか一瞬わからなかった。

「私は今回、タヌキの討伐に行くように命じただけよ。それは誓いましょう」
「本当に?」
「たまには信じてもいいんじゃなくてー?貴方自身が成長したのよ、だから考える事が出来る。でもありがちな考えすぎに今は陥っちゃてるわね全く」
「死人が、か?」
「幻想郷は何でもありだもの。貴方は誰も知らない間に考えて、行動し、事件を解決に導いたのよ」
「それは誰だってできたんですよ。私じゃなくったって……」
「いいえ、貴方が解決する必要があったんだわ。もっとも安全に、もっとも綺麗に終わるために。だから誰も死ななかったのよ。貴方のおかげで。私にとっては退屈だったけど」
「そうなのか?私の、おかげなのか??」
「そうよー、威張っていいのよー」

 私はけれども、何時もみたいにノリよく返事をしない。

「でもでも、私達の絆は……」
「従者達だって、元の鞘に戻ったのでしょう?絆なんてね、それが本物だったらちょっとした事でなくならないの」

 今度は私が黙ってしまう。

「束縛やしがらみの中で私達は生きているのよ。絆は簡単になくならない。一瞬縛りを外れたようでも、またすぐに戻ってくるわ。絆はよっぽど大事がなければ腐らないの。取り戻すことも出来るのよ。それは貴方も私もおんなじよ」
「私と、私と青娥様は……」
「絆があるわ。今、ここにあるのよ。貴方が外したくても、私がギュッと離さない。これは呪縛よ、束縛よ、しがらみよ。貴方をずっとは解放しない。けれども、私も貴方にしがらみ、束縛され、呪縛され続けることになる。それでいいのよ」
「私に絆はあるんですね」
「怒っていても、悲しくても、嬉しくても、私は貴方を離さないわ」

 私は泣いた。
 さっぱりわからないけれど、青娥様が私の事をより強くもっと強く抱きしめるたびに私の涙腺は緩くなっていよいよ我慢なんて出来ない。
 束縛するなんて言われて、けれども私はどちらかと言えば喜ばしいのだ。
 一人じゃなくっていいんだ。
 私は泣き叫ぶ。大声で、金切り声で泣き叫ぶ。
 墓場は誰も気にしないから、ありったけ泣いてもいい。



☆11



 ファミ通を読み終えて今週の柴田先生も面白かったなぁ、というところで私は神霊廟に向かう。
 青娥様とさっき墓場で別れてから、もう日が沈みかかっている。
 今日は太子様にゴチになろうと思っている。ゴッチゴチー♪
 私は実のところ、お金を青娥様に全財産1億円ほど預けてるので(なんでそんな持ってるんだろうな?)手持ちはすっからかんなのだ。
 皆様のおかげで今日も華麗に死にながら生きているのだ。

 今週のなんとか外伝は、バイオ・ハザードっていうゲームをやりに行く話で、みんな揃ってゾンビになったりするお話だ。
 私の仲間かな?なんて何時もと違うワクワクがあったけど、基本的には柴田オバサンとオザワオジサンが浜村通信やら何やら色んな人と吐血して終わった。
 それにしても、この人達の絆って深いよね?
 毎度鼻血を出し物騒な事を言いあいながら、しかしそれでもお仕事してるんだから!
 深い深い絆だ。
 お疲れ様だよ。

 ライライキョンシーズデデンデンデデン♪
 ピッ!

「はろーはろー、聞こえますか?」
「君のそれ、幻想郷で流行ってるのか」
「お、蓮子かー!大学終わったのか」
「そそ、青娥さんのおかげでレポート捗ったよ。またお礼いっといて」
「はいはい。あ、それじゃ今度同人誌持ってきてよなー、作者の名前忘れちゃったけど気に入ってるのあるんだ」
「それじゃちっともわかんないから、今度行くまでにそっちから電話ちょうだいよ」
「ういー」

 宇佐見蓮子とメリー、覚えた。
 ん、あれ、メリーって本名だったっけ?まぁいっか。
 2人はあれから一日一回程度電話してくる。幻想郷と繋がってるのが面白いんだろう。私も話し相手がいるのは暇でなくてすむ。
 新しく出来た絆。
 
「こっちくるなら蓮子、今度デートしようぜ」
「え、そんなのメリーが黙ってないから無理無理。あの子怒ると怖いんだって」
「冗談ですよ、言ってみたかっただけなのだ!」
「あ、ヤバ、メリーこっちに手振ってる。近づかれたら勘違いされそう」
「なんでよ」
「デートなんて誘われたら、顔にでるもんなんだよ人間は」

 ははは。
 今頃顔真っ赤にしてるのか、もうそんなどころじゃないことしてた気がするんですけど。
 2人はこれからディナーか……まぁ、そんな時に電話してたら無駄に怪しまれるよね。

「それじゃきるわ、こっちからかけといて悪いね」
「うん、じゃあね!生きて遊びにこいよ!!」
「不吉すぎるよ!じゃっ!!」

 ピッ。最近、この後の静寂が寂しく思う。

 さて。
 私はもっかい背伸びをして、神霊廟の方に足を向ける。
 空を飛ぶことだってできるけど、今日はなんだか歩きたいのだ。
 歩いていると思考が働く。
 ディナーのことを考えよう。今日は神霊廟ではどんな夕飯を作っているんだろう?
 物部様が作ると焼き肉ばっかり。形を変えてとりあえず肉を焼くことに命をかけている導師なのだ。
 屠自古様は和食が得意で、赤味噌のお味噌汁なんか言動の割に暖かくて優しい。
 青娥様はチャイニーズフードなんだけど、今日は脂っこすぎるのはいいかなって気分。
 太子様は実はちっとも作れなくて、何でもみんなの欲を聞きすぎちゃって訳わからない味付けになってしまうんだとか。
 うーん、要は屠自古様がやってやんよ!ってなってくれてればいいんだけど、気分屋だしなぁあの亡霊。
 それなら、私が作ればいいのか。
 うんうんそうだ、たまには私が作ってみよう!
 レシピ本があればきっと私は完璧に作れちゃうだろう。キョンシーだもんね!!
 あ、でも、幽々子様氏はdancyu読んでたのにイマイチだったからなぁ。

 でも、とにかく今大事なのは、料理のメニューじゃない。
 神霊廟のみんなでご飯を食べることだ。
 誰かひょっこりやってきて、増える分には大歓迎だけど減るのはダメだ。
 テーブルを囲んで、会議じゃなくって会話してご飯を食べたい気分だ。

 絆ってものがあるのなら、きっと私は団欒の中で今日はご飯を食べるだろう。
 太子様と物部様と蘇我様と青娥様。
 それに+で私。
 そうに決っている。
 私がそう信じているんだ。

 同時に私は物部様が料理をしませんようにってお祈りする。
 私は今日一日を満足してしまっているのだ。
 今日みたいな日に、焼き肉ってのはキツすぎる。
 少し小腹が空くぐらいのが丁度いーや。

 私は携帯電話で確認してみようと取り出すが、やっぱやめてポケットにしまってしまう。
 夕焼け道を歩く。
 私は私の帰るべきところに帰る。それで充分なのだ。 


☆11+1=12

 
 で、神霊廟についたわけなんだけど、ニッコニコなのは物部様。

「今日はケバブじゃぞ!青娥がアキバとやらから機械と肉を持ってきたのじゃ!!20人分は作れるからな、うっひょーたっぷり焼くぞーッ!!!」

 げぇーッ!?

 私は両足を上げるようにしてわざとぶっ倒れた。
 なんじゃなんじゃと、神霊廟のみんなが笑う。
 私も勢い余って笑ってしまう。

 絆は呪縛だ……

 ハッピーエンドにするならば、お腹いっぱいになる事から、逃れることは出来ない!!!!!!!!!!



☆おしまい☆


☆幻の13


「蓮子、何みてるの?」
「この間の事件さ、ほら、ここに載ってる」
「おー」
「SSこんぺってのでそうした異変をまとめてるみたいだ。おんなじ題材の話が沢山のってる」
「つまり、創作の集合体って事?」
「でもこの事件は君も経験しただろ」
「ええ、まぁ」
「だったら本当なのかもしれない。神主以外の観測者がいるのだろうか……実はこっそり君が書いたのか?」
「いいえ」
「なら、私も疑いなく、どの事件も原作だと思ってみることにするよ」
「そうムリに思わなくてもいいんじゃない?」
「そんな事はない。作品に向かう姿勢こそが、作品と私達の絆さ。このコンペ風に言えばね」
「まーた無駄にインテリぶっちゃって」
「それが私のキャラクター。いいでしょ、女子大生なんだし」
「貧乏なのも女子大生だからかな」
「うっ」
「そして貧乏にするのは、私」
「か、勘弁してよー!?」
がいすと
government-of-darker@live.jp
http://twitter.com/geist_G_O_D
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コメント



0.簡易評価なし
1.110月削除
これはヒドい。苦笑いしか出来なくてイライラする。
2.4みすゞ削除
世界観に馴染めず、途中で何度か読むのを止めようと思ったのですが、結局最後まで読まされてしまいました。不思議な魅力があったと思います。
3.8ナルスフ削除
前半でがっちりと心をつかまれた。なにこのやりたい放題感。ステキ。
ファミ通て。ファミ通て。
みんないいキャラしててぐいぐい引っ張っていく上に、秘封まで普通に出てくるオールスター。メリーさんてマジでメリーさんかよ! レズキュア自重しろ!
そして怒涛の外界パート。ぼくにはとてもできない。
反面締めが落ち着きすぎてたというか・・・いや、それまでがそれまでだったから単純に落差に酔っただけか? 若干マミゾウさんがなんだかよくわからない。
というか五ボス同盟、絆を疑う余り自分から信頼を裏切ってしまうとかマジ愚か。
みょんやうどんげならともかく、咲夜さんまでこれに加担するのはちょっと違和感というか。そして咲夜さんが抜けすぎてるというか。まぁ芳香ちゃんが妙に賢い世界線だし、咲夜さんがアレでもおかしくはない、のか?
しかしお燐。お前心を読める主がいるのに、失踪する順番が5番目で大丈夫だったのか? バレバレだったんじゃないのか?
そして星。あんた寺の序列的には白蓮より格上なんだからさぁ・・・。本尊が家出するなっつの。
キャラクターもノリもストーリーも魅力的だったけど、細かいところの違和感がぬぐいきれなかった感が少し残念でした。
4.9u!冫ldwnd削除
謎の満足感に包まれつつ読み終え、感想を書くに当たっては「どんな話だったか」と真剣に悩みもしましたが、柴田亜美推しは記憶にあるからいいかと思いつつ、とりあえずこの勢いと説得力には負けたということでこの評価です。
5.9がま口削除
ぎゃあ! 東方の人気解析描写が心に突き刺さる!
あんまりにリアルな東方の現状を再確認して、うっすら涙目になったのは内緒です。
しかしキャラクターが原作と比べて崩壊しているようで、ちゃんと最後にはマッチしているのが不思議。
濃いパロ・メタネタに負けない骨太なストーリーを堪能させていただきました。
貴方の様な作者様にこそ、今後の東方を盛り立てていただきたい! 頼む!
6.7烏口泣鳴削除
芳香のキャラがとにかく良かったです。
全体としては面白かったのですが、メタミスネタを入れるのなら、犯人に捻りが欲しかったなぁと残念。完全に私の趣味ですが。
7.4めるめるめるめ削除
 芳香一人称独特のノリは楽しいけれど、やっぱりどうしてもわかりづらい。それに加えて元ネ
タがわからないパロディが頻繁に延々と挿入されている、崩しすぎて原形を留めているかも怪
しいキャラなどで、物語に没入することが難しい。(ファミ通のなんとかいう漫画を知らないの
で、ひたすら暗号のようなものを読まされてる気分で)
 幽々子の思考など要所要所のロジックにはかなり魅力的なものがあったものの、オチという
か従者たちの動機に説得力が感じられなく、ちょっとおざなりかなぁと。
 奇抜なロジック展開もあってどう締めるのか期待していた分だけ拍子抜けしてしまった感じ
で。
8.10うるめ削除
冒頭からやられてしまった……。これでもか、とメタネタにまで踏み込んだこの姿勢。脱帽です。
9.8名前がない程度の能力削除
あ、廟の人達「死んでもズッ友だよ」を実行した人達だった。そりゃ絆の強固さは疑いようも無くさいつよですよね。
10.9文鎮削除
コミカルでファミ通が好きな芳香ちゃんがもう素晴らしいですね。
未亡人めいた幽々子様も、外の世界の影響を受けた幻想郷も良い味を出していました。
ただ、これは個人的な趣向なのですが、メタ的な話が出てきたところでちょっと興醒めしてしまいましたし、
もっと従者スレイヤー事件や芳香と青娥の主従の絆について触れて欲しかったなぁ、と思いました。
お話自体はリズミカルでさっと頭に入ってきましたし、楽しく読ませていただきました。
とても面白かったです。
あと、放火魔布都ちゃんが作ったケバブ食べたい…。
11.8K.M削除
芳香ちゃんの思考回路が素敵すぎる。そしてネタもナイス。いきなりファミ通を唐突に出されて笑わないわけがない。